相談事
相談事
「ああ~。朝起きてから筋肉痛がキツイ~・・・」
「我慢しなさい。部屋だって本当なら男女別々にしなければならないのに、昨日の件で混同が良いというのが殆ど出たから、それなら戦闘したクラスメイトを癒そうと思って昨日も女子総出でマッサージしてあげたんだから、文句言わない」
「なら何であいつらは平気なんだ?」
「誰よ?」
「アレクサスとライゼン」
「・・・もう諦めな?あの二人は次元が違うんだから」
「・・・けど悔しいな。どんどんあの二人に置いて行かれる感じがしてな」
「それを言うなら私達なんてただ立ち尽くしていたんだから。よっぽど私達の方がお荷物よ?」
「そんなこと言うな。君達だって必要な時が現れるさ」
「ありがとう。それより続きは良いの?」
「すまん。頼む・・・うぇ~~・・・」
「変な声出さない」
「そう言うけど・・・、筋肉痛は結構きつい・・・」
「はいはい・・・」
「今日はいよいよ船に乗って隣国に行くんだな。そう言えば俺船に乗るのは初めてだな」
「そうなの?まあ確かに船に乗る機会がある方が珍しいわよね。よっぽどのことが無い限り船とは無縁な生活をしているものね。そう言えば船って乗船料どれくらい取るの?」
「海運会社によってそれぞれですが、隣国くらいでしたら高くても30フィートで乗れますよ」
「結構安いんだね。これももしかして場所によるのかしら?」
「そうですね。場所や会社でも違いがありますね。例えば国営や大企業でしたら割高ですけど安全が優れているとかサービスが充実しているとか、逆に格安は安いけど危険とか劣悪な部屋とか、色々ですね」
「そうなんだ。今回は大企業だから通常なら結構割高?」
「隣国でしたら格安とそこまで大差はありませんよ。中距離から変わってくると思います」
「そうなんだね。遠距離なればなるほどやっぱりちょっと割高の方が良いのかな?」
「そこは個人個人なので何とも言えないですね」
「カイルならどっち?」
「う~ん。船に乗ったことないから分からないな・・・。けどやっぱり船くらいはゆっくりしたいから多少割高でも良いからそっちに乗るかな?シェスカは?」
「私も一緒ね。色々あるけど劣悪なのが何よりいやね」
「それは誰だってそうだろ」
「そうね」
「それより私は一旦船を見てきます」
「用意できたの?」
「それを確認してきます」
「なら俺も一緒に行こう。女子一人では不安だからな」
「ふふっ。意外に男らしいところあるじゃないですか?」
「乙女でも言いたいのか?俺は男だぞ?」
「分かってますよ。ではホブロ。よろしくお願いします」
「おうよ。んじゃちょっと行ってくる」
「「いってらっしゃい」」
「そう言えばナタリアってロンボー海運の令嬢なんだよね?ナタリアもここ在住?」
「いえ。私は別ですよ。ここはあくまでも中くらいの支社があるだけなので直接関係はないですよ」
「ならあれか?お父上と共に視察とかそれくらいか?」
「そんなものですね。勿論現在の後継者が私なのでいつかは経営に携わることになるでしょうが、今は学業に専念してくれというお父様たっての希望なので、卒業までは何もしないようにしています」
「そうなんだな。やっぱりこういうのは大変?」
「そうですね。お父様は何千の部下を持っているのです。当然それは生活にも関わってくるので負担が大きいですね。『まだ12歳だから気にするな』とは言ってくれますが、お父様の部下が『お嬢様、お疲れ様です』と頭を下げられる度に思うのです。『この重荷が私には耐えられるのか?』と」
「・・・考え過ぎとは言えないな・・・」
「そうなんですよ。いずれは社長になるのです。いつまでも呑気には居られないのです」
「・・・俺とはレベルの違う重荷を背負ってるんだな・・・」
「レベルですか?それは一体?」
「俺はいずれどこかの役所に勤務したいと思っているんだ」
「それは何故ですか?良い夢ではありませんか?」
「只の夢なら良いけど、俺はどうしてもそうならなければいけないんだ。俺の家族は貧相なんだ。家族も大家族だから養うのも大変なんだ。そんな中俺をこの学園に入れてくれたんだ。それの恩返しのために役所に入りたいんだ」
「そうなんですね。因みに役所にこだわる理由は?」
「企業とかだとリストラの可能性があるし家族サービスが出来ない可能性もある。俺は仕事も大事だけど家族サービスも俺には欠かせないんだ。実はまだ生まれたばかりの妹がいるんだ。その顔を見るたびに思うんだ『可愛い!けどこの子の将来が色んな意味で心配だ』とな」
「・・・そうなんですね・・・。だから私とは違う意味で?」
「そういう事だな。けどな?案外ナタリアの悩みってまだマシかもしれんぞ?」
「どういうことですか?私の悩みがマシって・・・。それ以上に悩む方が他にいるとでも?」
「いるじゃないか?複数人」
「誰ですか?私の知っている方ですか?」
「勿論知っている。というか昨日もあってるじゃないか。王女様とかだ」
「王女様ですか?それは何故?」
「あれ?ナタリアなら直ぐに思いつくと思っていたんだがな。まあいいや。あの方たちはもしかしたら次の王候補かもしれない。勿論でたらめなことを言ってるわけでは無いぞ。女だからって女王になれないところなんて手で数えるくらいしかない。そんな感じで継承権のある王女様たちは何を背負ってる?」
「王女様が抱えるもの・・・。国の未来、生活」
「そうだ。分かって来たか?王女様は何万何十万の国民の未来と生活を抱えているんだ。それこそ一企業令嬢の悩みとは比べられない程のな」
「!!」
「だから俺私が一番悩んでいると言っても上には上がいるんだ。そう考えると俺私の悩みってどうなんだ?あれに比べたらまだちっぽけでは?と気づくんだ」
「・・・」
「実際俺もそうして乗り切っているんだ。だから何とかなる。何とかならない時は頼れ。そのための俺達がいる。一人ではないぞ?」
「・・・ありがとうございます。気持ちが楽になりました」
「そうか。それは何より。それよりそろそろ着くんじゃないか?」
「あ、話し込んでいたら通り過ぎるところでしたね。すいません。私の悩みに時間を割いてしまって」
「良いさ良いさ。お互い様だ」
「ここですね」
「中くらいという割には結構大きいじゃないか?」
「そうでもありませんよ。本当に中くらいです。本当に大きければ軍の戦艦が入りますから」
「そこまではいらないな・・・。それより船は?」
「ああ。手前から10個目のところにある一際大きな船です」
「・・・あのほかの船から飛び出ているあれか?」
「あれです。あれを6隻用意しました」
「あれを6隻か・・・。確かに留年者も合わせるとそれくらいは必要だな・・・」
「ええ。ですので丁度船が足りないそうなので、私が掛けあってみました」
「流石令嬢・・・。そう言えばこれで輸送しているという事は、ギルドにも?」
「はい。登録していますよ。荷物を運ぶのと販売などをしているので商業ギルドと荷物の取り扱いのため鑑定ギルドにもお願いしています。あと船の製造と解体も行っているので製造ギルドと役員の護衛、荷物の見張りとして冒険者ギルドなどにも依頼を出しています」
「それだけ関わるギルドが多いと総合ギルドの方が楽じゃないか?」
「はい。ただ単に総合ギルドに登録をお願いしたところ、このような多岐に渡ってしまっただけなので」
「そういうことな。それより準備は出来たのか?」
「あ、ちょっと聞いてみましょうか?」
「こんにちわ」
「?あ、これはこれは。どうなさいましたかナタリア様?」
「整備長。船の具合はどうですか?」
「今のところは順調ですよ。特にトラブルはなく進んでいます。本日出港でしたかな?お昼ごろとお伺いしましたが」
「それで合ってます。学園の皆さんはお食事を済ませてから乗船します。それまでに終われそうですか?」
「はい。間もなく終わります。最後に動力源の魔法石の起動を確認して問題なければ出港可能です」
「そうですか。見ても宜しいでしょうか?」
「はい。安全のため安全帽をかぶってからでお願いします。今貸し出しを出します」
「ありがとう」
「良いのか?俺部外者だぞ?」
「構いません。それに魔法石はわざと目立つ位置にあるのです」
「わざと?それまた何故?」
「わざと目立つ場所に置いて近づく不届き者が現れたらすぐに確保できるようにしてるのです。それがたとえ複数人でも、ちょっとでも近づいたらその時点で総動員できるように、ですね」
「そうなのか。それで?」
「甲板にある中央の帆の高いところにあるのです。そこに魔法石を組み込んでいるのです。周りにあるガラスは結界が敷かれていて、対魔法と耐衝撃、対紛失対策を施しているのです」
「つまりあのから魔法で奪う事が出来ないし、ハンマーとかで砕くことも出来ないし、仮にあの場所から離れたら元の場所に戻るようにしているのか?」
「流石ですね。今は整備のため魔法士の方が異常が無いか確認のため手にありますが、本来は触ることも出来ないのです」
「てことはあれが魔法石か?意外にそこまで大きくないんだな?」
「魔法石は動力源と先程申しましたが、船とかを動かす力に制限があるのです」
「制限?具体的には?」
「簡単ですよ。魔法石によって可動出来る大きさが限られてくるという事です」
「あ、つまりこの魔法石ならこれくらいの船を動かせれるけど、多少誤差はあれどこれより小さい船や逆に大きい船は動かせれない、そういう事?」
「当たりです。そういう事です。今回の船ではあれで事足りる、という事です」
「成程な。勉強になるな。やっぱり実物で見るのとでは印象が違うな。こんな貴重な経験ありがとう」
「いえいえ」
「あ、お疲れ様です。点検ですが丁度今終わりましたよ。どこにも以上はございません」
「ありがとうございます。毎度のことですが急ぎなのに申し訳ございません」
「大丈夫ですよ。そういうときこそ整備士にお任せください」
「ありがとうございます。では戻りましょうか」
「そうだな。すいません。ありがとうございました」
「いえいえ。お気を付けて」
「お?帰ってきた。どうだった?船は予定通り出れそうか?」
「ああ。ナタリアが直接整備士に聞いて確認取ったから行けるぞ」
「よし!!そしたらまずは飯にするか。お前らも腹が減ったろ?丁度出来上がってるから食え」
「あらら。それだけ時間が経ってしまいましたか。それではお食事にしましょう」
「?随分と仲が良いように見えるけど?何かあった?」
「いいえ。ただ単に私個人的な事ですよ。それを横にいたホブロに相談していただけです。解決したので良いですけどね」
「ふ~ん」
「それより、まずはご飯ですよ」
「おお~~。これが船か結構大きいな!!」
「そうですね。初めて見る方は大きいでしょう。ですがこれくらいはまだ中くらいですよ」
「え!?これより大きいのがあるの!?どれくらい大きいの!?」
「そうですね。ざっくりですいませんがそれでも良いのなら」
「良いよ良いよ?説明して?」
「本当に大きいのは軍港みたく、海軍の大型戦艦が入るくらいは大きいですね」
「それだけ大きいと想像もつかないな~」
「そうですね。それくらいになると言葉では表せれないほど大きいですからね」
「今回はこれを6隻もか・・・。太っ腹~」
「それほどでもないですよ」
「それほどでもあるって~。流石だよ~ウリウリ~」
「止めてくださいよルナ~。くすぐったいですよ~?」
「良いじゃんか~ウリウリ~」
「仕方ないですね~・・・」
「ナタリア。改めてお礼を言うよ。今回は船の手配、助かった。ありがとう」
「いえいえ。偶々ですよ。私だって確証はなかったのですから」
「そうか?けどありがとうな」
「いえいえ。さあ、いつでも乗船準備は出来ていますので用意できたから乗ってください」
「『は~い』」
「「・・・」」
「?どうしました?」
「「・・・」」
「アレクサスとライゼン?」
「ああ~。その二人何故か知らないけどずっと船を見ているのよ。何故か知らないけど放っておいて良いかも」
「ですが気になってしまうので、先に乗ってください」
「分かったわ」
「・・・どうしたのですか?何かありましたか?」
「いや?構造を見ていただけだ」
「構造ですか?」
「ああ。舵はあるとして、動力源が何かと思ってな。スクリューが無いから不思議に思ったんだがさっき思いついたんだ『この船の動力源は魔法石じゃないか?』とな」
「!?一目で分かるとは思いませんでした」
「いや。自分なりに考えただけだ。それならあの帆は何だ?動力源があるなら不要だろ?と思ったがこれも考えついた『魔法石の効力が無くなったときの緊急手段か』ともな」
「それも分かりますか」
「おう。だがそうなるとこの下部の内部構造はどうなっているのか?と思い始めたんだ。だがそれくらいでな」
「いやアレクサス。それは簡単だろ。それなら重心低下のため船の下部に貨物スペースを設けているんだろ」
「そうですね。その通りですね。上にしてしまうと重心が高くなってしまって不安定ですからね」
「とまあ、そういった具合でずっと構造を見ていたんだ。大したことはない」
「そうですか。それなら安心しました。ところで日本国も船の移動は?」
「普通にある。だがどちらかというと貨物船が多いな」
「貨物船ですか?」
「そうだ。一昨日だっけ?サラが飛行機の話題を出したのは」
「そうですね。一昨日ですね。それがなにか?」
「実はな色々関係あるんだ。人の動きとかは空飛んだ方が速いんだ。それは何故か分かるか?」
「そうですね・・・。空ですと乗せれる量が限られるから、ですね?」
「そうだ。この空軍もそうだろ?精々竜に少量の荷物しか積載出来ないだろ?」
「そうですね。竜の大きさにもよりますが、殆どはあまり積めれないですね」
「そこで船だ。船なら大量の荷物を積めるだろ?」
「あ、だから日本国では貨物は海上、人の移動は飛行機、そういう事ですね」
「そういう事だ」
「んじゃあまり変な動きすると職質されるから船に乗るか?」
「そうだな。すまんなナタリア。迷惑かけた」
「いえいえ。大丈夫ですよ」




