冒険者枠
冒険者枠
「お?アレクサス達じゃん。どうしたこんなところで?」
「ちょっと進路先に関して相談があってな」
「進路先?ああ階級関連か。確かにそれも大事だな。授業では学べれないことを教えてくれるからな」
「?」
「どうした?」
「いや。脳筋のあんたの口からそんなセリフが出るとは思わなかったな。だろ?」
「ああ。正直驚いた。マークよ。本当に脳筋のお前か?それとも中身が違う赤の他人か?」
「おい!!俺は俺だぞ!?」
「新手のオレオレ詐欺?」
「何だそれは?分からんが碌な事ではないのは分かるが・・・」
「いや。こっちの事だ。それより本当にマーク?お前か?」
「頭でも打ったか?」
「俺は病人ではないぞ!?」
「なら俺達が未だに夢の中か?」
「それはそれで変だな・・・。キッチリと朝起きたはずだが・・・。これも夢か?」
「現実逃避するな!!」
「まだ夢の中みたいだ。お?丁度お仲間さんが来たぞ」
「おいお前ら。脳筋が頭逝ったみたいだ」
「『え?』」
「どういう事じゃ?」
「いやな?授業も大事だが階級も俺達にとっては将来に関わることだというセリフを口にしたんだ」
「『!?』」
「アレクサス・・・。それ本気?」
「ああ。ライゼンもその場で聞いている」
「ライゼン・・・。俺達は衝撃を隠せないぞ・・・。この脳筋がそのようなセリフを言うなんてな」
「ああ。だから俺達でその頭を元に戻してやろうと思ってな」
「それか治療室に行く?」
「それも良いかもしれん。けどこの症状が治せれるどうか・・・」
「そっか・・・。元に戻らない可能性もあるのよね・・・。どうしよう・・・」
「ユレイナ!!本気で悩むな!!ライゼンとアーカイブは俺の身体を持ってどこに連れて行く気だ!?」
「何処にって・・・」
「治療室に。そのポンコツ頭も叩けば治るだろ?」
「治れば良いけど、治らなかったら・・・」
「ライゼン!!俺の頭を叩いても変わらんぞ!!アーカイブも何故同情している!?ユレイナはそんな悲しい顔をしている!?」
「・・・正直ユレイナの意見に賛成だぞ俺らは・・・」
「お前らもそんな顔をするんじゃねぇ!!俺はどうすればいいんだよ!?」
「いや。お前は脳筋だぞ?それなら分かるだろ!?」
「それが分からないと・・・私達の頭もおかしくなりそうだから」
「じゃあなんだ!?今のセリフがおかしいならこう言えばいいのか!?『そんなに悩まないで当たって砕けろ!!』とでも言えばいいのか!?」
「『あ、いつものマークに戻った』」
「お前ら!!!」
「『え!?小卒向けに行く!?』」
「ああ。俺達はその予定だ」
「何でだよ!!せっかく今年はクラス分けが無くて全クラスが同じ教室になったのに!」
「そうだよ!!!初めからそんな寂しいこと言わないでよ・・・」
「すまんが俺達はもう決めたことなんだ」
「ああ」
「じゃあ、アレクサスとライゼンは進級も他学校に行くわけでもなく、本当に小卒でおさらばってか?」
「ああ。そうなるな」
「行く当てはあるのか?」
「俺は元々武官、ライゼンも文官だからな。既に職には就いている。だから本来は不要なんだ。だがお互い任務でここにいるからよ。次いでになんだ」
「『・・・』」
「そう言えば忘れていたな・・・。こいつらが日本国の法執行機関の所属であることを・・・」
「そうだったわね。なら聞きたいんだけど、卒業したら2人はどうするの」
「俺はまだ正式に決定していないけど次の派遣先が決まってるからそこに異動かな?」
「俺はそもそもこんなガキが派遣なんてことが異例だからな。終わったら元の星に帰ってひたすら事務作業だろうな」
「そうなんだ。じゃあお互いバラバラという事?」
「そういう事だな。俺はこの星在住だが次は別世界だし、ライゼンは元々別星から来ているしな」
「じゃあ今後会わないってこと?」
「それは分からんが、まあ会う確率はかなり低いだろうな。通信設備はあるが、必要以外の連絡はしないだろうな。ま、そういうもんさ」
「ああ。案外こんなもんだ。幾ら機関が一緒でも下が違うと交流機会も減るしな」
「『・・・』」
「ま、そんな寂しそうな顔をするな。もう暫くは俺達もいるしな」
「まあな。何もなければこのまま終えることが出来るだろう」
「・・・分かった。これ以上は聞かん。それより何故小卒向け・・・、は今聞いたとして、どこに行くんだ?」
「一応冒険者系に行こうと思ってな」
「冒険者か・・・。男の憧れではあるわな。自由な旅をしながら一期一会がな」
「ああ。確かに良いな。うまい飯食って仲間と共に強力モンスターを討伐したりしてな」
「まだ俺らはガキだからあまりないが、良い姉ちゃんととっかえひっかえしたりな」
「冒険者ね・・・。女の子でも憧れるわね。有名になったら女王とか」
「良いですね~。カッコいい仲間と共に助け合いしたりね」
「あとは男が俺なら女の子としては白馬の王子と一緒にうふうふしたりしてね」
「お前らは頭の中お花畑か?まあいいや」
「けどそれは今じゃないでしょう?それはいつでもなれるからね」
「確かにな。今は学業を優先しないと将来が不安になってくるぞ」
「冒険者になって有名になれば確かに俺達が長い間培ったノウハウを仕事にして食っているのが、たったそれだけで超えることが出来るから、憧れるのは分かるが、逆に言えば死と隣り合わせの仕事だからな。誰でもなれるが逆に人を選ぶ職業でもあるんだ。あいつらも地道に下積みにしてきてるだろう」
「だから今だけは学業を優先して安定した生活の方が良いかもしれないよ。職業贔屓ではなく、自分の為にね。その証拠にアレクサスとライゼンは冒険者に行っても不安ある?無いもんね。けど私達はそうではないからね」
「・・・そうですね。早漏でした」
「けどお前らが冒険者系に行ったら大騒ぎになるぞ?」
「構わん。俺達が希望したんだ。誰も邪魔はさせないさ」
「そうか。その雄姿応援する」
「今年はどうだ?」
「今年ね・・・。毎年いるわけじゃないから何とも言えないけど、今年も外れなんじゃないかな?」
「まあ、こんな学園に通ってながら冒険者目指すとか、俺が親なら頭叩きたいな」
「そうね。けどいるのは事実だし、ここは待ちましょう?」
「けど小学校を卒業して冒険者になりたいやつとか、差別はしたくないが訳アリしかいなくね?」
「それも事実だけど、それを先生の前で言っちゃだめよ?」
「勿論分かってる」
ゴ~ン~~・・・
「おっと。ベルが鳴ったみたいだな。さてと。今年は来るかどうかわからないけど、来たら相手にするか」
「何人来るんだ?」
「精々多くて5人来たら良い方なんじゃないかな?」
「期待しないで待っておくか」
トコトコトコトコ・・・
「おっと?こっちに来る影があるな。冒険者か?」
「・・・そうみたいね。今年は居たみたいね」
「人数は・・・2人みたいだな」
「小学生2人って、何があったんだよ・・・」
「分からないけど詮索はダメよ?それは相手に失礼だから」
「分かってる」
「どうも。こんにちは」
「ああ。今年は2人か?」
「はい2人です」
「そうか分かった。初めまして。この冒険者を担当する者だ。横にいるのは俺の冒険者仲間と冒険者ギルドからの派遣だ」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
「・・・深くは聞かない。何故これを希望した?」
「ちょっと・・・」
「ちょっとだ。改めて言うが深くは聞かない」
「いえ。大丈夫ですよ。簡単です。元々小卒希望でしたから」
「俺もだ。特に深い理由はない」
「『・・・』」
「・・・そんな奴は初めて聞いたな。なら学園に通って培った技術や知識を使おうとかは?」
「十分学びました。これ以上は特に学ぼうとは思いません」
「そうか・・・」
「でしたら冒険者ギルドから質問があります。宜しいでしょうか?」
「ああ」
「中等部や高等部まで学ぼうとする気は?」
「「ありません」」
「ご友人との別れは・・・」
「寂しいとかですか?そういうのはないですね」
「俺もだ。基本俺達は一匹狼だからな」
「その割には・・・」
「俺達が仲良さそうってか?残念だったな。学園内では一番仲が良いだろうが、それまでだ」
「同じ種族でも一匹狼を貫くのってどこでもいますよね?それと一緒です」
「という事は卒業したら交流とかは・・・」
「「よっぽどのことが無い限りはないな」」
「・・・」
「かなり寂しいことを言うわね。何故そこまで拒絶が出来る?同じクラスメイトでしょ?」
「「ああ。けど卒業したらそれまで」」
「あくまでも卒業したら本当に関わる気が無いと?そういう事だな?」
「「ああ」」
「・・・分かった。これ以上は聞かない。お前らみたいなやつは初めてだな。だが同時にお前らに嫌悪感を感じてしまう」
「人の印象なんてそういうもんだ。どう思われても構わん」
「ですがそれで公私混同は止めていただきたい。宜しいですか?」
「ああ。分かってる。お前らも良いな?」
「『分かった・・・』」
「なら始めるか。まずは軽く俺達の話を聞いてくれ。これは誰だってある問題だ。
まずは冒険者とは何か。それは分かってるだろうけど一応説明させてもらう。冒険者とは何か。とある依頼などを受けて依頼達成時にその対価として金品を受け取る職だ。内容は多岐にわたる為、別名何でも屋とも言われている。だが実際に冒険者とは何でも屋なんだ。冒険者の花形である強力モンスター討伐やダンジョン攻略、都市防衛、護衛、お使い、掃除、果ては老人介護とかも行う。文字通り何でも屋だ。これが冒険者だ。これは分かったな?」
「「はい」」
「んじゃ次だ。こういった仕事を生業としているから、目的達成には色々ある。その都市に向かうとか、パーティーを編成して集団で討伐に向かうとか、冒険者ギルドから指名依頼を受けられるとかだな。皆初めは憧れを持ったり仕方なく冒険者になったりするのもいるが、今みたいな話をして、それでも大丈夫そうなのだけ試験して受け入れている感じだ。どうしても死と隣り合わせだからな。死なれると俺らも悲しいし置いて行かれた家族や仲間も悲しむからな。だから本当に生き抜く意思があるもののみ受け付けている。これも良いか?」
「「はい」」
「英雄とかのイメージが強い冒険者だが、冒険者というのは平たく言えば血の気の多い連中の塊だ。当然トラブルが付きものだ。例えば『俺が先だ』とか『これは俺の分だ』とかな。こういうトラブルというのは結構あるんだが、冒険者というのは基本全て自己責任なんだ。当然ながらこういうトラブルもギルドでは保証も介入もしてくれない。解決するには事前に取り決めをするしかない。例えば『この金品があったら俺が受け取る』とか『経験値を増やしたいからここは任せてくれ』とか、そういった取り決めを事前に決めておけばトラブルを防げる。最も好都合なのは力でねじ伏せることだな。だがやりすぎると警備隊のお世話になるぞ。そこは気を付けてくれ。質問はあるか?」
「禁止事項は?」
「今は説明できない。それは冒険者ギルドに入ってから説明してくれる。だがこれだけは教えよう。仲間討ちや武器の使用は警備隊の確保または同じ冒険者からの討伐対象になる、というのを覚えてくれ」
「分かりました」
「あくまでも参考に聞きたい。一番事案が酷かったのは何だ?」
「参考程度か・・・。それは俺達には分からんな。どちらかというとこっちの職員の方が詳しい筈だ。どうだ?」
「私が知る限りの一番酷かったのは、ランクAの仲違いですね。只の仲違いなら良かったのですが、一人の魔法使いが討伐対象の意思のない魔人になってしまって、それの討伐だけで数百の犠牲者を出してしまったことですね」
「あらら。それは最悪だったな」
「あとは?」
「ソロとパーティーのそれぞれの利点は?簡単で良い」
「ソロの利点は報酬が多く貰える。経験値の増大が見込まれる。仲間との争いが無いからフットワークも軽い。連帯責任がない。
パーティーの利点は討伐時の負担が減る。怪我した時の救済が使えるまたは使ってくれる。パーティー限定依頼を受けれる。というところ」
「ならその対が不利点か?」
「そういう事だ。他には・・・。ないな?んじゃこれが今日最後の授業だ。ここにいる誰かと勝負しろ」
「勝負?」
「ああ。勝負だ。大丈夫だ。冒険者になる前の試験と思えば良い。これは何処でも共通だ」
「・・・なら俺はリーダーを希望します」
「良いのか?俺は強いぞ?」
「構いません」
「相方は?」
「副リーダーってだれだ?」
「副リーダーはいないけど、リーダーの次に強いのなら私よ。相手になる?」
「頼む」
「分かったわ」
「それで?何をすればいいのですか?」
「この貸しだし用木剣を使って俺に勝て」
「勝て?もしかして試験官も務めているのですか?」
「いや。務めていない。だから俺は加減が難しい」
「分かりました。因みにランクは?」
「俺はBーだ。といってもなりたてだがな」
「それでも凄いな。そこまで行くのは中々努力したんじゃないですか?」
「・・・お前は他の命知らずとは違うみたいだな」
「どうも。ルールは?」
「この木剣を使って勝て。木剣以外の使用は禁止だ。あくまでも今の身体能力とか技術面を見たい」
「それだと強化魔法も禁止だな。本当の自分の力のみで勝てと」
「そうだ」
「分かりました。タイミングは?」
「任せる」
「不意打ちは嫌いなのでね。まずは素振りをさせてください」
ブンブン!!!
「どうだ?行けそうか?」
「大丈夫大丈夫そうですね。行きます」
「おう。いつでも来い」
「『!?』」
「な、何が起きた・・・」
「・・・この俺が・・・剣を弾き飛ばされるなんて・・・」
「どうした!?手は大丈夫か!?」
「あ~・・・やりすぎた?」
「そんなことは無い!!けど、大丈夫か?」
「手が痙攣している・・・。これは相当な実力だな・・・」
「いったい何者だ・・・。俺達のリーダーから剣を弾き飛ばすなんて・・・」
「分からん・・・。しかもその様子だとかなり重かったんじゃないか?」
「ああ。只の一振りがかなり重厚のある振りだった・・・」
「大丈夫ですか?」
「ああ。問題ない。それより、その力をどこで・・・」
「俺、こう見えて冒険者なんですよ」
「『?』」
「つまり、冒険者ギルドに所属していながら学生でもあるという事です」
「そ、そうなのか・・・。なら教えて欲しい。ランクは?」
「ああ。待ってください?これが冒険者カードです」
「見ても良いのか?」
「はいどうぞ。冒険者ギルドの方もどうぞ」
「そ、そうですか・・・。では失礼させていただきます・・・!?」
「え」
「『A++!?』」
「う、うそだろ!?お前まだ12とかだろ?」
「はい。12歳です」
「偽造は・・・」
「出来ないのはご存じですよね?自身の所有している魔力じゃなければ表示しないことを」
「そうですね・・・。これで文字が浮かび上がったという事は、紛れもなく本物の印です!」
「こんなガキが、A++・・・。なら何故受けた?」
「興味があったのです。今までパーティーとかで仲間と共に行動したことが無かったので、どういった事になるのか?という興味が」
「つまり俺と対峙して俺が仲間と想定してどういう立ち回りをするのか頭で考えていたと?」
「その通りです」
「・・・これは化け物だな・・・。なら逆に聞こう。俺と組んだ場合、どういった立ち回りになるのか想定は出来たのか?しかもたったひと振りで」
「100%ではありませんが、こういった立ち回りになるだろうという想定は。前衛ながら他の動きを見ているように見えたので、恐らくは意思疎通とかで攻撃場所を変えているスタイルをしていると予想しました。例えば仲間の動きを見て『こいつがここなら俺はここ』とか『これは補助がいるな』とか」
「凄いな・・・。たった一振りでそこまで分かるのか・・・。俺の完敗だな・・・。そうなると君の相方は・・・」
「そこは想像に任せる、としか」
「・・・気を付けろよ・・・。彼も恐らくはかなりの手練れだ」
「分かったわ・・・。しっかりと見極めるわ」
「さて。今度は君ね?君の実力はどうかな~?」
「知らん。あいつとは違って偽りとかは苦手もあるが、自分で言うのも何だが、思ったことを口にするタイプだからな。お世辞とかも俺は出来ない」
「それが逆に良いわね。そのほうが時に良い時があるからね」
「そうかい。んで?俺もルールは一緒か?」
「一緒だけど、今回はちょっと試したいことがあるわ。君って魔法は使える?」
「使える」
「なら今回のルールは魔法勝負で行きましょう」
「ルールは?」
「難しくないわよ。私と君。どっちが勝つか、それだけよ」
「それだけ?」
「ええ。攻撃されたから防御した。攻撃したいから攻撃した。それだけよ。但し今回は魔法のみの使用ね」
「つまりあんたに勝ちたかったら魔法で討ち勝て。そういう事だな?」
「あんたという呼ばれ方は些か気に食わないけど、それで良いわよ」
「魔法はどれでも良いのか?」
「使える魔法があれば何でも良いよ」
「なら話が早い。早速始めるか?」
「君って意外とせっかちかしら?まあ良いわ。魔法大学の成績を一桁で卒業した私の実力を思い知れ!」
「なら始めるか」
「う、うそ・・・」
「・・・」
「うちのパーティーで一番の魔法火力を持つ彼女が・・・、敗北?」
「・・・」
「彼も何者なのですか?あの実力があればその名を知らしても誰も文句など出ない筈ですが・・・」
「職員さん。多分彼はそもそも冒険者ギルドに登録すらしていないのでは?」
「そんな・・・」
「なら知らないのも無理はないな・・・」
「大丈夫?」
「まさか負けるなんて・・・。しかも防御形成を最大限発揮してこれよ・・・。本当に何者?」
「・・・」
「それにずっと黙ったままの彼が怖いわ・・・」
「私もよ・・・」
「それよりそろそろこの枠が終わるわ。挨拶くらいしないと」
「そうだね」
「今日はこれでお終いだ。次はまた別日でまだ日付は決まっていないが、来てくれるとありがたい」
「分かりました」
「・・・」
「それにしても君達は何者なんだい?」
「それは秘匿です」
「そうか・・・。それに相方はずっと黙ったままだが、良いのか?」
「問題ないですよ。お気にせず」
「分かった」
「ライゼン。どうだった?」
「いや・・・。正直言って拍子抜けだ」
「あいつらの実力につくづく失望したんだろ?」
「分かってるじゃないか。そうだ。まさかあれがリーダーB-とはな。ちょっと呆れた。もうちょい骨のある連中だと思ったが、そうでもなかったな」
「それを心の中で収めておけ?あの場で言わなかったのは良い判断だと思うぞ」
「幾ら俺でも場を弁えている。そこまでアホではない」
「だな。だがその様子だとあの授業の枠には参加したくなさそうだな」
「正直言って参加したくない。だが暫くは無理やり参加するさ」
「そうか」
『ねえ・・・。聞いた?』
『何を?』
『小卒の枠に数人は行ったという噂』
『聞いた聞いた。恥ずかしくないのかな?小卒で』
『そんなの当事者じゃないから分からないわよ。けどちょっと恥ずかしいわよね~?』
『そうね。誰なんだろう~?』
『ちょっと見てみたくない~?』
『そうね。ちょっとくらい授業を抜け出しても問題ないわよね』
『けどどこだろう?』
『分からないけど、小卒だから土木か冒険者しかないんじゃない?』
『そうかも!!まずは土木から行ってみましょう?』
『ここね・・・。ここには誰もいないわね。いるのはあくまでも土木上層部に就きたい先輩方しかいないし・・・』
『それなら冒険者じゃない?』
『そうね。行ってみましょう~』
『ここね・・・。あ、いたわ・・・』
『あの二人ね~。どっちもイケメンなのに可哀そうに・・・ってあの子!?』
『なに?知り合い?』
『ううん。違うけど、木剣を持った子、あの子って・・・』
『?・・・え!?あの子って・・・』
『『アレクサス君!?』』
『アレクサス君って、小卒で社会に出るの!?』
『それに隣の子って・・・』
『・・・あの子はアレクサス君の相棒じゃない!?あの子も!?』
『そ、そんな・・・私達の可愛い王子様が・・・』
『小学校で社会に出るなんて・・・』
『早速広めないと!!!』
『そうね!!引き留めよう!!!』
「お~いお前ら」
「どうした?それにこの騒ぎは何だ?」
「それが・・・」
「アレクサスの小卒希望がどこからか漏れてしまって・・・」
「「・・・」」
「それで今騒ぎになっているんだ」
「お陰で風紀委員の仲間もその問い詰めで手が負えないのよ!!」
「・・・」
「やはり漏れたか・・・。んで?どうするよ?噂の当事者のアレクサス君?」
「どうするも何も、漏れてしまったのはしょうがないからこのままにするしかないだろ」
「このままにするのか?」
「それしかなくね?結局どんなに言っても授業を抜け出して冒険者の授業をやっている試合場に来る奴だっているんだぞ?放っておくしかないだろ」
「確かにな。それしかなさそうだな。どうせ漏れるもんは漏れるからな」
「・・・アレクサスとライゼンは案外冷静ね・・・」
「慌ててもしょうがないだろ。それに幾ら厳重に蓋しても漏れるもんは漏れるからよ」
「それに俺らはそこまで気にしていない。何故なら分かるか?」
「いや・・・」
「小卒希望の枠に俺らがいるというだけで分かるだろ。俺らはあと精々一年しかいないんだ。それなら我慢するさ。まあ質問攻めはご勘弁願いたいが」
「だな。気にしたら負けだ。けどお前らに影響というか支障をきたされても困るからよ。もし聞かれたら『直接言え』と言ってくれないか?そのほうが楽だろ」
「楽って・・・。アレクサスとライゼンはそれでいいのかよ」
「俺らは別に良い。お前らに負担が減ればそれで良い」
「そういうけどよ・・・」
「気にするな」
「『・・・』」
『あ!アレクサス君よ!!』
「ほれ。取り囲まれる前に逃げろ。次いでに総括にこの事の報告を頼む」
「・・・分かった」
「まだ放課後ではないから対応してくれるかどうかは分からんが、最悪先生でも良いからな」
「分かったわ」
「お前らどうしたんだよ?そんな血相を変えて」
「アレクサス君!!あの噂って本当なの!?」
「噂?」
「アレクサスとライゼンが小卒希望という噂だ!!」
「ああ。あの噂か」
「嘘だよな・・・」
「嘘って言って・・・」
「お願い・・・デマだと言って・・・」
「・・・」
「その願いは叶えられん。その噂は本当だからな」
「『!?』」
「な、何でよ!!」
「何でなのよ!!まだこの学園にいてよ!!!」
「私達を置いて何処に行くの!?」
「君はこの学園のアイドルなのよ!!!」
「(アイドルって、この星にもあったんだな。てっきり異世界にしかないと思っていたんだが・・・。これだとワーズナー星もあるな)」
「ねえ聞いてる!?」
「聞いてる聞いてる。アイドルなんてそんなこと・・・」
「『あるの!!』」
「怒声をしなくても聞こえているぞ・・・」
「なら何で!?」
「誰かに虐められたの!?」
「分かった!!いじめられたのね!?私達がそいつ殺してくるわ!!」
「誰なの!?」
「落ち着けって・・・。誰にも虐められていないぞ。この小卒希望は俺達の自己意志だ」
「『!?』」
「何でよ・・・」
「なんで去っちゃうの・・・」
「すまんな。これが俺達の意思だ。だからこれ以上大騒ぎにしないでそっとしてくれると助かる」
「『・・・』」
「頼む」
「『・・・』」
「・・・分かったわよ・・・自らの意思ならしょうがないわね・・・」
「そうね。みんな。今日は解散しましょう?」
「これ以上争ってもアレクサス君に迷惑よ」
「『・・・』」
「悲しいのは分かるけど・・・今はダメ」
「彼の意思を尊重しないと・・・」
「笑って見送ろう?」
「彼の門出をみんなで祝おうよ~・・・」
「そうね。みんな!!これからやることが決まったよ!!やろうよ!!」
「『はい!!!』」
「流石女子は強いな・・・」
「そこは生物の違いさ。何年経っても男女の関係は分からないもんだ」
「逆に割り切るか。女子とはこういう生物であるのを」
「そうだ。考えたってしょうがないさ」
「あとな?女子って分からないなとつくづく思い知らされたようだ」
「?」
「これ。誰か落としたのだろう。絵を見てみ?」
「失礼・・・あ~・・・」
「俺達の中を腐女子はこう捉えたみたいだな」
「やはり女子は分からんな。それとこの先が大変だぞ?多分卒業が近づくにつれて何か催し物が作られることがあるかもしれんぞ?」
「・・・それは出来れば勘弁してくれ。親も来るのにそれは正直キツイぜ」
「それは俺もだが、今から言っても抑えられると思うか?」
「・・・いや・・・思わないな・・・」
「な?諦めるしかないぞ」
「この際だから最後くらいあいつらに任せるか?」
「最後くらいか・・・。その真意は?」
「いや。何故だろうな。ま、気まぐれという事で」
「気まぐれか・・・。なら今回ばかりはその気まぐれに俺も乗らせてもらおうか」
「ライゼンこそ珍しいな。どういう風の吹き回しだ?」
「な~に。俺も気まぐれだ。特に他愛はないさ」
「そうか」
また時間軸が変わります。
春→秋に変わります。




