進路先(偽装)
進路先(偽装)
「今年度こそは何事もなく終わらせれるとありがたいんだが・・・」
「それは無理だろ。ここまで何かしらはあったんだからよ。まあ強いて言えば去年度が今までで一番マシだったろうな」
「あの闘技祭だろ。結局あの後色々噂が絶えない謎の生徒として語り継がれることにもなったしな」
「それは知らん。勝手に奴らが言い始めただけだからよ。俺には関係ない」
「ま、確かに関係ないな。あの件であの貴族らを追い出すにはあれしかなかったしな。けどあの後お前を追って風紀委員に入ってくるとは夢にも思わなかったな」
「それは俺も予想外だ。それだけ恩を返したいんだろ?」
「そこは当事者にしか分からんさ。それより今年度は何がある?」
「今年度か・・・。確か修学旅行がある筈だ」
「・・・おい・・・。それは嫌な予感がもの凄く漂うんだが・・・」
「諦めろ。恐らくはこれも関わるだろう」
「欠席は出来んのか?今年度も最後まで担任の先生は俺の心労仲間のラフ先生だしよ?」
「知らん。俺は先公ではない」
「まあ良いや・・・それで?その修学旅行はいつ行われるんだ?」
「初秋だな。まだギリギリ残暑が残ってるかもな」
「意外と先なんだな」
「その前に色々あるからだろ?」
「何かあったっけ?」
「そんな大したことではない。今から夏真っ只中まであの昇級に関わることがあるだけだ。それが集中しているだけだ」
「そうなんだな。何があるんだ?」
「将来に向けてこの学園に来訪者がその都度来るから内容に応じて対応するだけだ」
「なに?案内までするのか?」
「違う違う。この来訪者はどこかの教師だから、教師になるにはどうしたら良いのか?と言った進路相談みたいなことをする。それが軍や騎士なら国の防衛や戦闘力の有無を確かめるために試合場を借りて試合を行うとかだな」
「という事は鍛冶場や服飾雑貨の販売、果ては商人や輸送屋まで来るのか?」
「そうだ。だから正直言って進路相談だなここまで来ると」
「それが初めの方に集中しているから修学旅行は後半に回されたと?」
「詳しくは知らんがそういう事だろう」
「そうか。成程な・・・。その進路相談って俺達も参加しなければならないのか?」
「参加して好成績になればなるほど昇級の数が上がるそうだ。だからこれも授業態度なんだろうな」
「つまり参加は自由だが上がりにくいことを承知でやれ、か・・・」
「どれくらい上がりにくいのかは知らんがそうだろうな」
「面倒だな・・・。この学年で進級も他学校に入学もせずに卒業したの進路先は何処だ?」
「誰かに聞くか調べないと分からんが、多分多いのは土木や冒険者だろ。服飾系は計算が必要だし商人も同様だろう。輸送屋は案外管理が大変だそうだ。だから計算というよりかは、パズルの方が近いだろうな。警備隊とか騎士団、軍は高い技術能力を必要としているから小卒じゃあ論外だろう。圧倒的に力が不足しているからな。だから実質土木か冒険者しかないんだろ」
「土木は誰でもなれるのか?」
「土木は土木でも下っ端ならだれでもなれるだろ。上層部は高学歴とそれに見合った技術が無いとなれない」
「なら一番確実なのは冒険者か。・・・ふと思ったんだが俺達が冒険者枠に入ったら周りはどう見るんだろうな?」
「そこは知らん。それに今回は授業の一環だから噂になったとしても小等部それも高学年しか噂は広まないだろ」
「授業の一環と考えればそんなもんか。なあ、既にこういった枠って既に募集が始まっているとかはないか?」
「聞いてみるか」
「どうもラフ先生。小等部最高学年でもこうして担任をして頂きとても嬉しゅう存じ上げます」
「おい。凄い棒読みだな。そこはせめて心を込めて言ってくれ。じゃないと俺まで悲しくなる」
「先生に悲しいとかあったんですね~」
「おいバカにしてるだろ?俺も生物だ。そんなのあって当然じゃないか」
「ソウデスネ~」
「・・・まあいい。それで?どうした?」
「その切り替えも相変わらずいいですね。それはさておき、進路相談みたいなことこれからやりませんでしたっけ?」
「昇級に必要な単位だろ?そういうカリキュラムなら確かにあるな。何か希望があるのか?」
「あればいいんですけど、小卒でもなれる職業ってありますか?」
「・・・答える前に二つ聞きたい。アレクサスはこの学園または他学校に進学する気は?」
「無いです」
「ならもう一つの隣にいるライゼンは?」
「俺も小卒希望だ」
「・・・本気か?」
「「本気です」」
「・・・そうか・・・。その様子だと家庭の事情とかではなさそうだな」
「自分の家庭は裕福ではありませんが、それなりの生活を送っています」
「ライゼンの場合は別の星から来ているから尚更か?」
「そうだ。金銭的余裕は普通にある」
「ならこれはあくまでも自分の意思で小卒を希望しているのか?」
「「そうです」」
「分かった。事情があるのなら相談に乗ろうと思ったが、あくまでも自らの意思なら止めはしない。だが働き口はかなり絞られるぞ?」
「構わないです」
「俺もだ」
「なら教室に戻れ。今俺の教団机の上に小卒向けの資料が置いてある。今なら誰も見つかることなく行けるぞ」
「ありがとうございます先生。ですが俺とライゼンはこれが希望です。そんなコソコソする気はありませんよ。それにそういうやつらは毎回返り討ちにしています。それは先生がよくご存じでは?」
「・・・これは参ったな。流石だな。俺の心配は杞憂だな。行ってこい」
「ありがとうございます」
「これか?」
「そうだな。小卒向けと書かれているからこれだな。中身は・・・」
「やはり計算や筆記が必要ない職業しかないな。具体的には肉体労働しかないな。だが逆にこれで良い」
「それで?どうしたら申し込めるんだ?というか申し込み式か?」
「お?ここに書かれてあるぞ。行きたいところがあったらそこに行けばよい。申込は不要だそうだ」
「ならこのままそのカリキュラム実行日まで待てばいいんだな」
「そういう事だな。因みに講師とかは書かれているのか?」
「いや。書かれていないみたいだ。どうやらランダムみたいだな」
「それが逆に良いな。どんな奴が現れるのか、楽しみだぜ・・・」
「珍しくライゼンやる気だな?」
「何しろ相手は成人だぜ?やる気出るだろ?」
「・・・ああ成程。今まで不完全燃焼か・・・」
「そうだ。不が大量に着くほど燃焼不足だ」
「なら土木とかではなく冒険者はどうだ?あれなら燃焼しきるだろ?」
「土木はどうなんだ?」
「あれも確かに良いと思うが、あいつらは勝負事はしたことない筈だ。精々お仲間さんと荷物勝負しかしたことないだろ」
「ああ。競う相手がいないのか。それなら冒険者がピッタリか。冒険者なら誰だって切磋琢磨するだろうな。けど別の学年と被らないか?」
「中等部とかだろ?大丈夫だろ。ここは学園だからな中卒より高卒、高卒より大卒の方が圧倒的に有利だしな。被ることは無いだろ」
「確かにな。学園に通ってるのに冒険者は考えないな。これで行くか」
「それまではちょっと休憩。まだ放課後じゃないからな」




