小等部の最高学年
小等部の最高学年
「さて。遂に小等部最高学年になってしまったな」
「なに哀愁を漂わせているんだよ?」
「いや?何となく?けど正直俺もこの学園生活を楽しんでいたんだな~と最近になって思い始めてな」
「・・・そうだな。入学当時は任務を終えたら学園を退学するつもりだったんだがな。いつの間にか一緒にいるのが当たり前になってきたな」
「ああ。そして俺とライゼンは来年の今頃には卒業式を終えてこの学園を去っているだろう」
「ま、それも運命さ。ところで風紀委員はどうだ?人数変更とかあるのか?」
「いや?それは分からん。けどそれとは別にこの学年から留年、降級制度が適用されるとは思わなかったな」
「それは俺も初めて知った。けど他の奴は驚いていなかったから恐らく知らなかったのは俺とアレクサスくらいだろう。基準は聞いたか?」
「ああ聞いた。階級制で、
1~20で数字が多ければ多いほど良いんだっけ?確か20が一番良い筈だ」
「数で階級制か。中々聞かないな。てっきり名前が付くと思っていたんだが。それは良いとして、どういった形式になっているんだ?」
「形式って程ではないが・・・こればっかりは他の奴に聞くか・・・。どうだお前ら?俺達はその当たり疎いからな」
「良いでしょう。先程アレクサス君が言っていた通り数が多い程高い成績という方針を取っています」
「数は1~20で幾つかに分かれているのよ。まず6年に上がった時点でみんなスタートラインが一緒なの。それが5からスタートなの。ここから数を上げていくのよ」
「さっきレラカイナが言っていた5がスタートラインでこれより下、つまり4以下が簡単に言えば不味い状況になる。4はまだ平気なんだが、3以下になってくると降級の可能性が出てくる。2以下になった時点で降級が確定する。これが3年に一回くらいの頻度でいるんだ」
「そうなんだな。今回は何人降級、つまり5年に落ちた人数は?」
「ざっと1000人ね」
「多くね!?」
「おいミア。幾ら何でも盛りすぎだろ?」
「いいえ。事実ね」
「何したんだよ・・・」
「降級したほぼ全員が素行不良ね」
「「・・・」」
「何も言えないわよね。それはそうだわ。私もこんな奴らと一緒何て嫌だしね」
「しかし幾ら降級と言っても限度があるだろ?」
「まあね。3回降級、または留年すると退学ね。そして一定期間の再受験を断られるのよ。どれくらいの期間かは私は知らないけどね」
「そうか。んじゃさっきミアが言ってた留年とか、逆に昇級の基準を教えてもらおうか」
「まずは取り敢えず5以上なら降級の恐れが無いから良いとして、勿論このままでは留年の可能性がある」
「ほう?それは何処から?」
「ある一定時期を過ぎると5~12までが留年の可能性が出てくる。それが初冬だな」
「つまり初冬までに13以上にする必要があるという事か?」
「いいや。別に初冬を過ぎても問題はない。けど教師から催促されるのさ。『このままで行けば留年するぞ』とな」
「最終決定はいつ頃だ?」
「年明け始めの月末が期限と思った方が良いな。そこで最終決定がされるからな」
「最終決定までに13以上じゃなければ留年か。今回の留年者は?」
「ジャスト500人だな」
「それでも多いな・・・。エザゾブロよ。内訳は?」
「5人が素行不良。300人が通園中にも関わらず期間内までにクリアできなかった者。150人が家庭の事情などで留年してしまった者。残りが不明だな」
「不明ってなんだ?」
「それは俺に聞くな」
「分かった。13以上が条件か?それで良いか?」
「基本はそうだな。13以上が卒業または中等部への進級だな」
「因みに13以上は何があるんだ?」
「13~15までは通常なんだが、16以上になると高成績者として一定のサービスを受けれれるようになる。今まで小等部で掛かった授業料とかが免除または返還とか、自由登校とかな」
「それはかなり優遇されているな。それって16以上になった時点で下がることは無いのか?」
「16だとまだ下がることはあるんだが、17以上になると下がることは無いな」
「何かそれだと悪用する奴が現れそうだが・・・」
「そこは平気だろ。16以上は一人の先生が決めるわけでは無く、4人以上の先生が精査して大丈夫そうなら上げる仕組みだから、不正は出来ない筈だ」
「そうか。大体わかった。サンキューアーカイブ」
「良いってことよ」
「なら次は昇級の上げ方なんだが、そこはどうだ?ほとんど変わらないのか?」
「基本は変わらんのじゃ。試験の成績が良かったり授業態度が良かったり理解力が速かったり、当たり前のことが昇級の基準なんじゃ。じゃが逆に言えば今まで目を瞑ってきたことがここでは聞かなくなる事よの。例えば眠くなって居眠りをしてしまったとか、テストの成績が悪かったとかの」
「なら16以上上げている奴ってもしかして化け物とか?」
「簡単に言えばそうなんじゃが、そう簡単にはいかんのじゃ。それ以外にも課外活動で統率を取ったり研究熱心とか試合とかでは自分だけでなく他とのレベル上げとか、とにかく色々あって16以上になるものもいるのじゃ」
「そういう事か。なんとなく分かった。ま、俺とライゼンは間を取って14を目指すか?」
「そうだな。そのほうが楽だな」
「もったいないよの~。アレクサスくらいの実力があれば20も夢ではないと思うんじゃが・・・」
「俺はそこまでの人間ではないぞクエスタ。それにな・・・」
「何じゃ?」
「いや。今は良い。それより風紀委員はどうなった?エザゾブロ達6年は今年度から中一だぞ?変更とかあるのか?」
「いいえ?無いと思うけど?」
「そういうからにはセリーヌが詳しいそうだな」
「そこまで詳しいわけじゃないけど、それでも大丈夫なはずよ。管理長に聞けばわかるけど、そういうのは聞いたことが無いから」
「そうか。なら今年度もこれで行くか。しかし6年全員中等部に進級か。卒業者はいなかったのか?」
「そう言えば降級と留年を除けば誰も他学校や他の分野に行くのはいなかったな。まあ卒業して他に行くのは大体中等部卒業からだと思うから、今回はないだけだろう」
「そうか。なら風紀委員は良いとして、また新規に募集しなきゃいけないのか?」
「これより大きくか?それは必要ないんじゃない?精々俺達20人で十分だろ?」
「ならよ?あの視線を感じて何も思わないのか?ライゼンはとっくに気づいているぞ?」
「?」
「『?』」
「『(ジ~~・・・)』」
「あれ何・・・怖いんだけど・・・」
「言わないでよユレイナ。私まで怖くなってくるわよ・・・」
「なら俺が聞いてくる」
「は!?平気か!?」
「多分俺の予想だとしょうもない理由だろう。おいお前ら!代表者を出してコソコソしている理由を出せ!!」
「『・・・』」
「こないな?なら・・・」
「ま、待て!!!俺が出る・・・」
「・・・この集団は何だ?」
「この集団は・・・」
「『貴方達アーカイブ(ユレイナ、クエスタ、ジャリーグ、エザゾブロ、ネンリ、ギュロール、セリーヌ)に憧れてきました!!』」
「『!?』」
「ほらな?大方兄貴分姉貴分と思って尽くしたいと思っているだけだだろう。それと風紀委員に対してあこがれもあるだろう」
「『・・・』」
「んで?どうするんだ?」
「『どうするも何も・・・』」
「こればっかりはお前らで解決してこい。因みに俺のファンもいたのは記憶に新しいと思うが、そいつらは過度なことをしなければ良いと先に釘を打っといたからな」
「・・・ま、まさかこうなることを読んでいて・・・」
「読んではいたがここまで大規模は予想外だ」
「『・・・』」
「それで?あいつらに俺達は今年度の卒業式で去るなんてこと言わなくて良いのか?」
「?良いだろ?ま、言うとしたら年末だな。それに薄々気づいているんじゃないか?」
「・・・かもな・・・」
「それで?結局こいつらを引き受けることにしたのか?」
「ま、まあな・・・」
「しかもその中には俺に世話になったのもいるじゃねぇか・・・」
「この貴族らだろ?こいつらがどうしてもというからよ・・・」
「挙句には小等部5年に上がったのもいるし・・・。管理長に話は付けたのかよ」
「さっき聞いてきた。一応誰でも歓迎とは言ってくれたけど、ただ単に誰かの近くに居たい奴は引き受けない。本当の業務に従事する者のみ引き受けると言ってくれたんだが・・・」
「だが?」
「取り敢えず精査したのち最終判断はアレクサスに任せると」
「はぁ!?何故俺がしなくちゃいけない!?それは上が判断することだろ!?」
「それがタイミング悪く総括から招集があって出なきゃならないから手が付かないそうから、と」
「『と』じゃないわ!!というか仮に精査が完了したからと言って俺達のチームに入る保証なんてないのに、それでも良いのかよ!?」
「そこは俺じゃないから分からん」
「・・・今日は解散させろ。後日話付けてくる」
「分かった」
「・・・待っていたという顔だな」
「当然でしょう?俺に委託するなんて、何考えているんですか!?」
「済まなかったな。聞いての通り総括から招集されてな。それに手一杯だったんだ。だから無責任なことを言った。すまん」
「それは良いですが、そうなると責任は負えませんよ?」
「それでも良い。責任は俺が負う」
「それなら良いですが、今年はガロウスが管理長ではないですよね?」
「ああ。だが総括以外の役員のつく風紀委員は新風紀委員の役員が結成されるまでは去年度のままなんだ。だからあと2週間は俺が統括だ」
「そうなんですね。まあそれでしたら良いです。因みに新しい総括って誰ですか?」
「もうちょいエルレイゴが担当することになった。急遽予定変更でな。普通ならあり得ないんだが、今回は例外でな。内容は話せない」
「聞かないでおきましょう。ではあいつらを精査してまいります」
「・・・何か不気味なオーラを放ってないか?」
「それは気のせいですね」
「・・・」
「なあ・・・。あのアレクサス、初めて見たんだが・・・」
「私もよ・・・まさか役員全員彼のオーラに戦慄を覚えるなんて・・・。委員長は?」
「俺もだ・・・。何かキレている様子だなあれは・・・」
「何か琴線に触れたのかしら?」
「分からん。だが一つ言えるのはこの精査をアレクサスに頼んだのは失敗だったかもしれんな・・・」
「彼らの無事を祈りましょう」




