注目選手
注目選手
「やっと決勝トーナメントに進めた。ここまで長すぎだ。今日まで2週間、しかも既に後半にまで突入しているじゃないか・・・」
「しょうがないさ。こういうのは時間が掛かるもんさ」
「だからと言ってな・・・」
「まあそうグチグチ言うな。逆に言えばあとはこれだけなんだからよ」
「逆に言えばそこまで辿り着くのが長いんだからよ。まあ正直な話これで切り上げても良いんだがな。どう思う?」
「う~ん・・・。確かに優勝しても何があるわけでは無いしな~・・・。勝ち進んでも変に期待されても困るしな・・・」
「そうなんよな。この闘技祭って棄権って出来たっけ?」
「一応聞いてみるか・・・。アレクサスがこれ以上試合に出る気が無いから棄権するって言ったけど棄権って出来るのか?」
『『!?』』
『え!?アレクサスって棄権するの!?』
「ああ。正直別にこれ以上勝ち進んでも面白味もないしな~。だからもう良いやって思っている」
『そんな・・・』
『初めて聞いたぞ?もうやる気がないから棄権するって』
「そうか?人生そういうもんだろ?」
『それはそうだが・・・』
『けど本当に良いのか?勝ち進むにつれ色々褒美とかもらえる数も多くなるぞ?』
『けどエザゾブロ。考えてみ?逆に考えるとさ、いつものアレクサスならこういうのは断っているけど今回は出場しただろ?それだけでも変と思わないか?』
『・・・そう言えばゴウリーグの言う通りだな。お前なら真っ先に断りそうだがな。何かあるな?』
「流石お前らだな。答えを言うとその通りでそれは既に達成されたからもうやる意味がないんだ」
『やはりな。お前ならこういうのは嫌がるだろうからな。まあそれは置いといて、そういう事なら棄権しても良いんじゃないか?特に棄権がダメとは書かれていないからさ』
「そうか。なら後程辞退の旨を伝えないとな。けど誰に伝えるんだ?」
『大会関係者に言えば大丈夫なはずだ。受付の場所知ってるだろ?そいつらに言えば良いだろう』
「分かった。ちょっと行ってくる」
「すいません」
「はい。なんでしょうか?お困りごとですか?」
「いやそうではないんだ。試合の棄権をしたんだが?」
「試合の棄権ですか?こちらで受付可能ですよ。ですが棄権したら現在のコマで止まり、出場資格が無くなってしまいますが宜しいでしょうか?」
「ああ。構わないぞ。それで頼む」
「それでは確認のため氏名と学年をお願いします」
「小等部5年アレクサス」
「小等部5年アレクサスさんですね・・・。はい確認取れました。現在のコマは決勝トーナメントでまだ未試合ですが、こちらの出場資格を消去致します。確認ですが宜しいでしょうか?」
「ああ。頼む」
「では消去致します・・・。はいこれで大丈夫ですよ。ありがとうございます」
「すまんな」
『さあお待たせしました!!いよいよ決勝トーナメントの開始です!!皆さんここまでの長丁場お疲れ様です。ですがここから先は更に白熱したバトルを見られますので乞うご期待ください!!では始めの試合を行う前に解説の方に決勝トーナメントでの注目選手をお聞きいたしましょう。どうですか?』
『皆さんおはようございます。それでは私が思う注目選手を10人上げましょう。
まず一人目が大学部3年の選手ですね。こちらの選手はかなりの怪力の持ち主で文字通りのパワーでここまで勝ち進んできました。今までパワー勝負の選手を見てきましたがここまで体力とパワーを兼ね備えた選手は中々見かけないですね。いつもでしたら途中で力尽きることが多いのですが、彼の場合は底の見えない体力をお持ちです。これが今後の試合にどう動くのか期待が高まりますね。
二人目が同じく大学部3年の選手ですね。彼女は同じ怪力の持ち主ですが、彼女の場合はしなやかさを武器にここまで進んできました。見た目からは分からない華奢な体格ですがその内側に秘められた実力は本物に値します。その上詳しくは申し上げれないのですが、とある企業の護衛としても抜擢する程なのです。彼女の実力も本物でしょう。特に彼女の持ち味のナイフ投擲の制度は目を見張るものがあります。
三人目は大学部4年、最上学年の選手です。彼の持ち味は体力に定評がある選手です。ですがそれは肉体的ではありません。彼は魔法特化型なのです。何だ魔法?と思われる方もいるでしょうが、実は使用する魔法によっては実は魔法使いの方が体力を消耗することがあるのです。頻度は物理的が得意な方と比べるとそこまで多くはありませんが、それでも体力が消耗すると立てなくなることがあるのは皆さんもお分かりでしょう。それほど彼の魔法は強力なのです。
四人目は大学部2年の彼ですね。彼も魔法特化型で体力に自信がある選手ですが、先程の選手とは違う部分があるのです。先程の彼は魔法量でとにかく押し切るタイプなのですが、彼の場合は純度、つまり質で勝負してくるのです。これが何が凄いのかというと、少ない使用量で強力な技が出るのです。例えば劣悪な魔法ですとより強力な技を使用しようにもドンドン魔法に対して注ぎ込まないと発動できないのですが、良質ですと少ない魔法で発動が出来るので、ある意味では量より質が重要になってくる場合があるのです。彼はそれを得意としています。
5人目の選手は大学部1年の彼女です。彼女は全体的にバランス調整がうまいのです。これだけ聞くとなんのこっちゃ?となりますが、彼女の場合は魔法も剣も召喚系などのあらゆる分野でバランス調整を戦いのたびに調整をしているのですが、その調整がうまいのです。例えばこの選手は打撃系がうまいからその対処として最適な方法は体術の方にバランス調整をすると相手選手の隙を突けるとか、この選手は種族柄弓がうまいから、わざと近接系に調整して相手の苦手な分野に誘うとか、そういった調整がうまいのです。こういった選手に当たった選手は難儀をするでしょう。ですがその代わりバランス調整に力を注いだ結果不意に弱いというのは否めないでしょう。
6人目は高等部3年の彼女ですね。彼女は遠距離を得意としています。武器でも魔法でも。特に森系のフィールドは強いですよ?彼女の種族はエルフではないのに、それに近い力を持っているので、エルフと対決したら案外彼女が勝つかもしれませんよ。そして何が強みかというと、野生のカナリヤといった鳥をその場で使役または鳥と同調して敵の動きを読むことが出来ます。正直言ってそんなことがあり得るのか?と目を疑ってしまいます。同族でしたらどんなに強い訛りでも通じるのですが、彼女は全く関係のない鳥と対話が出来てしまうのです。しかも鳥のみならず極端な環境じゃなければどんな動物と対話が可能としているので、もしかしたら敵はそこらへんにいる動物かもしれませんよ。
7人目は高等部2年の彼ですね。彼は機体兵器に特化した選手ですね。彼の場合は魔法を使用できない代わりにその魔力を機体に注ぎ込むことで間接的な魔法使用を可能としているのです。特にあの機体から繰り出される魔法の威力は容易ではないですよ。いつもなら弱い魔法も大きくなれば脅威となるように、彼の機体も中々の代物ですので只の魔法と侮ったら大火傷しますからね。決して弱い魔法だからって不要に近寄らないほうが身のためかもしれません。
8人目は高等部2年の彼です。彼は非常に統率能力に優れています。こういった単独専用の試合に複数は本来禁止なのですが、それを潜り抜ける穴があるのです。それは自身が形成または購入とかをした機体や使役している魔物、調教している生物でしたら数として含まれないので、この制度をすり抜けることが出来るのです。ですが一人に対して一体ならまだしもそれが複数となると統率能力が無いと直ぐに暴走したり怠けたりするのです。そうなると制御が出来なくなって場合によっては統率者ごと討伐しなければならないのですが、彼の場合はそれをものともせず複数、下手すれば十数の統率者として機能もするほどの持ち主なので、数での勝負は止めた方が良いかもしれません。
9人目は中等部3年の彼女です。彼女の場合は周りからは“聖女”と呼ばれています。間違えないで欲しいのは彼女の場合はあくまでも周りから言い始めたことなので決して国の聖女とかではありませんのでそこはお間違えなく。それはさておき彼女が何故聖女と言われるのか。それは彼女の場合はどんな種族から好かれる存在なのです。どういう事かというと、我々と同様で好かれる存在の方は必然に人や動物が集まりやすくなるのです。彼女はそれを才能とせず見せびらかさずあくまでも努力の積み重ねと謙虚になった結果、どの方からも好かれる存在になったのです。これがどう試合に影響するか。実は簡単で彼女はその集まった生物と共に相手を攻撃するのです。まだ分からないかもしれませんが、彼女はその集まった動物などを決してテイムなどをせずあくまでも動物と共に協力し合って相手を倒しているのです。“強制”ではなく動物たちと共に“協力”という簡単そうで実は難易度の高いことを彼女はやってのけるのです。説明不足で申し訳ございませんが、彼女はそれくらい凄いのです。
最後は彼、今回のダークホースとなる小等部5年の彼です。この彼は正直未知数なのです。とある試合では防御特化型の選手を一撃撃破したり、とある試合では相手の土俵に自ら上がりまるで敵を赤子の如く試合を圧倒した彼なのですが、どうも引っかかるのです。今までの試合は全く力を出さずに試合を勝ち進んでいる様に私はそう見えたのです。勿論気のせいだと思うのですが、そう思えてならないのはやはり彼には何かがあると私は思っています。今回の決勝トーナメントでは彼の実力を垣間見えたら良いですがね。
長くなって申し訳ございませんが、以上が私が注目する選手10人の紹介でした』
『はい。どうもありがとうございました。今年もなかなかの強者揃いとなりましたね。わたしはやはりあの小等部5年の彼でしょうか?彼にはとてつもない力を秘めているに違いありません。それをこれからの試合で見れることを期待していますよ。さて。間もなく決勝トーナメント第一回戦が開始いたします!!!皆さん心の準備は宜しいでしょうか!?』
『『うぉぉぉ!!!』』
『その雄たけびがここまで聞こえてきました!!!では審判!!!試合開始合図を!!!』
『はい分かりました!!!では試合開始!!!』
「おいおい。俺は棄権したが?」
『まだ伝わってないんだろ。遅くてもお前の試合当日には発表されるさ。それより俺達は俺達の事をするぞ』
「はいよ。さて今日もやりますか」




