侵入者
侵入者
「今日は風紀委員での仕事か・・・。基本はいつもと変わらないんだろ?」
「基本は変わらない。強いて言えば昨日会ったようなことの繰り返しだ。ナンパ野郎が居たら追っ払う。まあ相手が嫌がっていない場合は除くがな」
「その様子だと逆ナンもあったな?」
「そういうこった」
「後は?道案内とか、厩舎置き場の案内か?」
「それと公賓の案内及び引継ぎだ」
「今日も来るのか?」
「勿論今日、というか毎日来るぞ」
「毎日かい・・・。けど全く同じ公賓が来るわけでは無いんだろ?」
「勿論。自分の子息令嬢が出場する機会があれば来るのは当然だろ。それ以外の生徒を見るなんてことは、無いとは言えんがそこまで無いだろ。ま、精々期待の星を見つけれれば万々歳ってとこだ」
「そうか。あとは盗難ぐらい。まあこれくらいはいつもの事だな」
「こんなもんさ。昨日は盗難系が10件程。幸い昨日は全部返還済みだが、犯人は2件捕まらなかった」
「プロか?」
「恐らく。なので昨日みたいにならないように今日の警備は管理長たっての希望で強化した」
「そうか。公賓に対しての対応はどうだった?」
「軍事国と宗教国相手が面倒だったがそれ以外は大丈夫だった」
「ああ~~・・・。軍事国相手だと向こうは武力とか極端な実力主義だから、学生でも容赦なしに強者が対応相手じゃないと目すら合わせてくれないからやりづらいだろうし、宗教国だと言葉一つでタブーに当たる可能性だってあるから敬語一つまともに使えなくなる可能性だってあるから神経使うわな」
「そうなんだ。俺達の親父が地球人だから俺も聞いてみたんだ。神経使う宗教はあったか?とな。そしたらやはり地球もあったそうだ。だからその相手に苦労したとも言っていたな」
「それは異世界も一緒なんだな。まあこのここの星のみならず、他星や別の異世界も同様にあるだろうしな」
「そりゃそうだろうからな。それより仕事内容は分かったから今日は俺は何処に行けばいいんだ?」
「アレクサスは巡回を頼む」
「巡回?あったかそのポジション」
「いや昨日急遽決めたそうだ。昨日はどうしてもそのポジションから離れられないという課題があったから新たにそれを付け足してどこでも行ける、いわゆる即応班を作ったそうだ。これは臨時だからこの闘技祭が終われば解体されるからこのまま続けることは無いそうだ」
「それなら全員巡回でも良いじゃないか?そしたら効率というかどこでも見張っていることを見せつければ良いんじゃないか?」
「俺もそう思ったが、それだと偏りが生まれるそうだ『俺はここには行きたくない』『私はあのイケメンをずっと見ていたい』とか」
「・・・まさかの自己主義かい・・・。分かった。それで?その班は何処だ?」
「班というのは名目で、各隊から1~2名選んで単独または2名で巡回するそうだ」
「そうなのか。経路は?」
「今端末に反映させるからこの通りにだと」
「了解。この部隊の巡回ポジは俺だけか?」
「アレクサス一人だ」
「分かった。んじゃ頼む」
「了解した。休憩の時間になったらセリーヌが来るからその時に休憩してくれ」
「分かった」
「さて。経路は・・・そういう経路な?死角をとことん無くす経路だな。中々管理長も優秀だな。いやもしかしたら事務が提案したのか?今までのデータを算出して犯罪の温床になりやすいところを重点的に往復することで犯罪率低下が期待できるっと。けどそれだと疎かになっている部分がありそうだが、そこは今は良いや。回るか」
「まずはここ門の横から始めで、ここから庭を横断する形に進むんだな・・・」
「次は通路を歩いて暫く歩いたらまた庭を進むんだな・・・」
「ここから一旦関係者以外立入禁止ゾーンを進むんだな?確かにここから先は生徒とか先生以外は入れないしな。部外者立入禁止ってとこか・・・」
『すいません!誰か応援をお願いします!現在職員棟にて不審者対応中!応援を・・・』
『!?おい応答しろ!!』
「HQ。俺が行きます。丁度その付近を今から通るところなので」
『了解。一人だと心もとないから他も寄こそう。暫くしたら通過する、または通過して暫く進んだのも一旦通常経路から離脱しても構わないから応援を頼む!』
『『了解』』
『HQ。俺、遠距離得意だからスタジアムの上から監視してみる』
『頼む』
『HQ。遠距離担当ZZだ。発見した。風紀委員女子2人に謎集団10人規模が2人を取り囲んでいる。恐らく通信が途切れたのもあいつらに妨害されたと見込む』
『了解。その中で戦闘力に長けている奴はいるか?』
『ここからだと分からん。見た限り恫喝にしか見えん』
『了解』
『あ、何人か今到着する』
『了解。したらまずは2人の安否確保が最優先だ』
『『了解』』
「きゃ!!」
「お嬢さん?こんなところでなにやってるのかな~?」
「貴方達!!ここは立入禁止禁止よ!!分かってる?」
「あ?だから何よ?そんなの俺達には関係ねぇよ」
「関係なくない!!」
「あ~あ~こんなに怒っちゃって・・・可愛い顔が台無しよ?」
「誰のせいで!!」
「さて。お嬢さん方はこっちに行こうか?そのまま身体も・・・」
「いや・・・いや!!!!」
「く・・・離してよ!!!」
「『ちょっと待った!!!』」
「ち・・・応援が来やがったか・・・お前ら!!」
「『おう!!』」
「HQ!!現着!!対応します」
「お前ら。男はコテンパンにしろ。女は捕らえろ」
「『おう』」
「頭。この娘たちは後で?」
「ああ。俺達の手で後でしっぽりと遊んでやるんだ~」
「ヒャッハー!!最高だぜ!!俄然やる気になったぜ!!お前ら俺に付いて来い!!」
『HQ・・・。対応した風紀委員全滅です・・・』
『なに!?もう誰もいないのか!?』
『はい・・・』
『クソ!!!他を向かわせても今から間に合うのか!?現状は!?』
『男子生徒はボロボロ・・・地面に伏せています。女子生徒はロープでグルグル巻きにされて、何人か服が破けています。更にそのうちの2人は・・・』
『なに?まさか・・・凌辱・・・』
『『!?』』
『いえ。そこまでではありませんが、裸で縛られています・・・』
『・・・誰が裸で・・・』
『・・・高2のヨルカと大3のフレイです・・・』
『『!?』』
『学園中のアイドルとクイーンが・・・』
『ねえ!!!私達のクイーンたちが縛られているって!?今言ったよね!?』
『!?はい。言いました』
『総括!!!事務の風紀委員に出動命令を!!!あいつらは女の敵!!今すぐにでも!!!』
『落ち着け!!!お前らがいないと・・・』
『今はそれどころじゃないでしょ!!!良いから早く!!!』
『先輩方。いえ風紀委員全員一旦落ち着いてください。俺が単独で今向かっている最中ですよ』
『『!?』』
『お前!?まだ着いていなかったのか!?』
『向かっている最中に腹下してトイレに引きこもっていました。けど今から向かいます』
『行ってくれるのはありがたいが、20人以上行って全滅だぞ!?相手は並大抵の相手ではないぞ!?』
『ご心配ありがとうございます。けど大丈夫ですよ。3分で向かいます。それと不安でしたら端末で映像を見たらどうですか?今から自分も端末を起動しますので』
『・・・しかし・・・』
『女の敵。討伐、いや狩猟しますよ。なので事務の先輩方も一旦落ち着いてください』
『・・・分かったわ。命運預けたわよ』
『預かりました。総括』
『・・・遠距離。単独が3分で着く。遠距離から見える光景を端末に反映してくれ』
『・・・了解・・・。頼んだぞ』
『了解した』
「おい。行くぞ。どうせ誰も来ないぞ?」
「『・・・』」
トコトコトコトコ・・・
「頭。誰か来ます」
「?全員捕らえたと思ったんだがな・・・。どこにいる?」
「それが・・・歩いてきます」
「ほう?命知らずか?面白い。現れた瞬間リンチだ!!その後はお楽しみだぞ?」
「『ヒャッハー!!』」
「・・・誰が来るんだ・・・」
「・・・誰でも良い・・・この状況を・・・」
「お願い・・・助けて・・・」
「・・・来て・・・」
「ふぅ~ん?多勢に無勢ってか?」
「お前、随分と気楽な登場の仕方だな?お偉いさんか?」
「?いや?違うぞ?学年だけで言えばこの場にいる全員の中で一番の下級生だぞ?」
「?・・・は・・・は・・・はっはっは!!!!笑わせるんじゃないぞ・・・やべえ・・・腹が・・・痛い・・・。おい聞いたかよ・・・」
「ボス・・・俺達も腹がよじれて・・・」
「はあ~まあいい。やれ」
「坊や?一緒に来よっか?そしたらこの打撃武器の餌食にならずに済むぞ?」
「残念ながら。それはお断りだ」
「なら・・・食らえ!!!」
ビュン!!!ガシ!!!
「な、なに!?」
「?どうした?」
「この小僧・・・。俺の渾身の打撃を・・・平気な顔で・・・」
「それはないだろ~。お前が手を抜いたんだろ~?ほら本気でやれよ~」
「そうは言うが・・・」
「?その程度か?ならこうだな」
「?・・・ぎゃ!おいそれは俺の武器!!」
「な~に取られているんだよ!!」
「奪われたからには取り返すんだよな?なら返してやるよ。ほれ」
バゴ~ン!!!グサ!!!
「な、なんだ!?」
「お、おいボス・・・。こいつ」
「何だ!?・・・おい、お前・・・身体はどうした!?何故あいつの一振りであれだけデカかった体格のお前が、何故そこらへんにいるガキ、それもチビくらいの体格になっている!?それだと200あった身長が、今では50くらいしかないぞ!?」
「しかも頭!!こいつ・・・もう死んでません?」
「お?気づいたか?これ転がすから受け止めな?」
「『??』」
ゴロゴロゴロゴロ・・・・
「おい!!ただの玉転がしはそんなに速く・・・」
「おい!!早く退け!!」
「どっちに逃げるんだ!?」
「し、知らん!!良いから早く退け!!!」
ガラ~ン!!!ガラガラガラ・・・
「『!?』」
「ストライ~ク~。いや~久しぶりのボウリングは最高だな」
「『ぼ、ボウリング・・・』」
『おい事務・・・今の小6ってこんなに強いのか?』
『い、いえ・・・。その子だけかと・・・』
『何者なんだ・・・。同じ風紀委員としては恐ろしい存在だぞ・・・』
『そんなことは今は良いじゃないですか!!あの子が今は頼みの綱ですよ!!』
『そうだな』
『けど遠距離から見てもあいつは凄い存在ですぞ・・・』
『遠距離からはどう見える?』
『どうと言われましても・・・実力の差があの集団と比べても圧倒的に違うとしか』
『それしか言えんわな・・・』
「さて。取り敢えず半分は潰すか。ほら来な?」
「・・・それは挑発か?」
「そう見えるのなら結構。んで?」
「・・・調子に・・・」
「『乗るな~~!!』」
「おいお前ら!!!本気でやれ!!召喚でも魔法でもやれ!!すればあいつも対応できない!!」
「悪魔よ!!召喚に応じよ!!!あいつをやれ!!!」
「はっはっは!!!こいつの悪魔は強いぞ~」
「そうかな?良く見な?」
「?」
「おい、どうした!?何故攻撃しない!!!」
「何故だ!!」
「なら命じてみろ?」
「言われなくても!!『殺れ!!』」
「(・・・)」
「どうした?何故聞かない!!」
「俺が言ってやろう『攻撃しないからこいつとは契約解除しな?そしたら君には攻撃せずに契約主だけ攻撃するから』」
「(コクコク・・・)」シュルルル・・・
「『!?』」
「なぜ消える!!!」
「簡単だ。お前との契約を切ったんだ」
「切る!?そんなこと・・・。ひっ・・・」
「まあ今はそんなことどうでも良いじゃないか~。お前は」
グリン!!!バキ!!!!
「首の骨を折る運命しかないからよ」ドサ・・・
「おまえ・・・」
「お?怒ったか?ならどうする?」
「お前ら!!!全員で取りかかれ!!!殺せ!!」
「『おら!!!』」
「どうだ?もう命乞いは無駄だぞ?死んで俺達に償え!!!」
「償う?何変な言葉使っているんだ?それはお前だぞ?」
「は!何言う・・・」
「1分で片付ける」
「ば、バカな・・・こんなことって・・・」
「予想外だったか?そうだろうな。因みに全員昇天してもらった。いやこの場合は昇天だと天国だから下地“下る地獄”と書いて下地行だ。それで頭はどうするんだ?まさか逃げる気ではないよな?」
「まさか。俺は最後まで戦うさ。だが俺はこれこれ行ったのはない。殆ど俺は・・・これで賊をまとめていたからな!!!はぁ~~~!!!!これなら防げまい!!!」
「おぉ~~。敵ながらあっぱれだな~。拍手を送ろう。まさかの剣二刀流で振り回しながら魔法で防御魔法を発動するとは。もしかして元上ランク冒険者だったか?けど俺には無意味だぞ?何故なら」
ガシ!!!
「な、なに!!!ゴオエ・・・・」
「こうやって隙を突きながら首を片手で掴むことが出来るからな。不思議に思ってるだろ。魔法を発動しておきながら効果がないってな。答えは簡単だ」
「・・・防御魔法は・・・」うげ・・・
「・・・物理的には・・・」ゲボ・・・
「・・・無意味・・・」ガハ!!!
「・・・つまり防御魔法に・・・」ズルズル・・・
「・・・素手での防御は・・・」ゲホゲホゲホ!!!
「・・・効かない・・・」いてて・・・
「・・・効くのは・・・」血ダラダラ・・・
「・・・相手が剣、魔法、使い魔などの・・・」うっ・・・
「・・・攻撃に対して・・・」ユラ・・・ユラ・・・
「・・・発動するもの・・・だ・・・」ドス・・・
「という事だ。残念だったな。攻撃力は盗賊・・・盗賊?まあいいや。お前らが上だったが、学問とかで言えば先輩たちが上だったな。そこがお前の敗因だ。後悔しろ」
「ま、待て・・・息が・・・」
「そらそうだろ。今お前の動脈と気管を圧迫しているんだから息できないのも当然だろ。さて命運はこの方たちの任せよう。先輩方はこいつをどうしますか?」
「・・・決めて良いなら・・・」
「・・・私達を裸体にした事を・・・」
「・・・来世まで後悔させてやる・・・・!!」
『遠距離のMBだ。俺は地獄行に一票』
『HQとしては全一致で生き地獄だ。死ぬ方がマシという心情を味合わせてやる!!』
「・・・警備中の全員に聞く。端末映像を始めから見たはずだ。お前らはどうだ?物理地獄か生き地獄か。物理地獄は?」
『『(スッ)』』
「生き地獄は?」
『『(スッ)』』
「・・・決まりだな・・・。お前は生き地獄だ。まずはこの強制奴隷の首輪を着けて、主を俺にまずは設定。因みに声すら出せないし暫くはここからも動けないからな。その醜態をさらしてもらう」
「・・・」
「ま、無理だな。自決も出来ないしな。まあ待てや。HQ及び各員。賊の確保完了。大至急衛兵と治療担当の通報を。それと手が空いている風紀委員の応援を頼みます」
『『了解!!!』』
『HQは治療担当に伝える。誰か衛兵に通報してくれ』
『了解。自分が行きます。どれくらい必要ですか?』
「したら10人以上で頼む」
『了解です』
『そしたら私のところにも居るので伝えます!』
『了解』
『すいません。お願いします』
『丁度試合は始まったばかりですのである程度でしたら向かわせることが可能です!』
『なら頼む。事務からも出動するから手伝ってくれ』
『分かりました』
「さて。先輩方。お疲れ様でした。背中付け合って。そのほうが楽ですよ。手伝います。今はどうですか?」
「・・・あ、ありがとう・・・。楽になったよ~・・・」
「そうですか。今はお休みなさってください」
「・・・そうさせてもらうわね・・・」
「・・・しかし君はとても強いね・・・」
「・・・ああ。とても下級生とは思えないな・・・」
「光栄です。ああ。裸体の先輩はまずは紐を解かないと。寝っ転がっているところすいません。座れますか?紐を解きますね」
「・・・ええ。お願い・・・」
シュルシュル・・・・
「はい。これで良いでしょう」
「・・・あ、ありがとう・・・」
「・・・しかし君は・・・私達の・・・身体を見ても何にも・・・思わないなんて・・・」
「冗談を言えるくらいには大丈夫そうですね。それより血を拭きますよ。まずは〈洗浄〉。服とか下着はどうしようもないのでこのまま捨てますよ。何か貴重品とかはありますか?」
「・・・したらごめんね?・・・鍵とか生徒手帳とか色々入っているの・・・」
「・・・それを全部取って、私達の近くに置いたらいいわ・・・」
「分かりました・・・。これで全部ですか?確認できますか?」
「・・・大丈夫よ・・・。うん。全部ね・・・」
「・・・良かった・・・。お姉ちゃんとの思い出も残ってる・・・」
「お姉ちゃん?」
「・・・うん。私達姉妹なの・・・」
「そうなんですね。それより〈洗浄〉よし。あとは血を拭いて。全身掛けて申し訳ないですが、出来るだけ血を拭かないと衛生面でも不味いので。一旦横になりましょうか。今板とシーツ用意します・・・これで良し。この上で横になりましょう。動かなくていいですよ。俺が魔法で持ち上げますので」
「「・・・ごめんね・・・」」
「よしこれでOKっと。したらこの上で休んでください。一応カバーを掛けますよ。後々血とか垂れて気持ち悪いかと思いますけど、今は我慢してください。次は先輩方ですね」
「すまん。頼む」
「〈洗浄〉〈冷却〉〈氷形成〉今先程重症の先輩方と同じように洗浄して血を拭きとりました。それと打撲とかで腫れたところを冷却して、氷が入った袋を作ったので、これで患部を冷やしてください」
「『・・・ありがとう・・・』」
「『・・・すまんな・・・』」
「〈木製板形成〉先輩はちょっと痛いですよ?折れている足を一旦持ち上げるので。それで木の板をかまして足を固定しますので」
「・・・すまん。頼む・・・。いって!!!」
「ですがこれで良いですよ。包帯でグルグル巻きにしたので。これで後は応援が来るのを待ちましょう」
「お?来たみたいですよ」
「すまん。待たせた!」
「いえ。それよりまずは負傷者を」
「分かった。負傷者を!!」
「『はい!!』」
「すまんがちょっと良いか?」
「ああ衛兵さんですね?容疑者はあそこの奴隷の首輪をした男性一人です。残りはお亡くなりに」
「分かった。首輪は何処で?」
「装着したのは俺ですが、所持していたのはあの容疑者、正確にはその仲間です」
「所持までしていたのか・・・。それを容疑者に装着するのは頭の回転が良いな。そしたらすまんがちょっと詰所まで一緒に良いか?」
「事情聴取ですね?良いですよ。けどまずは先輩方を」
「勿論だとも。私らは容疑者のところにいるから。容疑者のお仲間さんは別の衛兵が責任をもって始末する」
「お願いします」
「?事情聴取は良いのか?」
「まずは先輩方をと思いまして。衛兵、多分隊長だと思いますが、気を利かせてくれました」
「そうか。君の応急処置が的確で取り敢えずはどうにかなりそうだ。あの先輩の中には貴族とかもいるから尚更助かっているんだ」
「そうですか。それで?取り敢えず先輩方はどうなりますか?」
「ここだと治療にも限度があるからまずは治療院に搬送だな。軽傷でもまずは的確な治療をしないとな。それにさっきも言ったが的確な応急処置でこれより更に重症化にならずに済むそうなんだ。それとこれはさっき治療院の先生が言っていたんだ『これほど応急処置が的確なのは初めて見た。これなら・・・。応急処置してくれた方に伝えて。君のお陰で余計な労力と時間を食わずになりそうです』と」
「そうですか。それなら良かったです。・・・」
「?どうした?」
「・・・お願いを聞いてもらえますか?」
「お願い?何だ?今回の功労者は君なんだ。何でも言ってくれ」
「衛兵にも言いますが、今回の出来事、匿名でお願いできますか?」
「!?本気か?これだけの事なんだから、表彰されても良い筈だが・・・」
「申し訳ございませんが、それでお願いします。この事はこれから治療する先輩方全員にもお願いします」
「・・・」
「お願いします」
「・・・はあ~~・・・。そこまで言うのなら・・・」
「ありがとうございます。では自分はこれで」
「おう!助かったぞ!!」
「すいませんお待たせしました」
「いいや大丈夫だ。取り敢えず一緒に行くか。この馬に乗ってくれ」
「はい」
「ここで降りてくれ」
「ここは、詰所兼牢屋ですか?」
「良く分かったな。そうだ。ここは牢屋も兼ねている。一応ここで事情聴取をするぞ。と言っても簡単な調書だけだから気楽で良いぞ」
「ありがとうございます」
「んじゃ俺は一旦こいつを牢屋にブチ込むから、奥入って右側からが取調室兼調書室だから。部屋に入ったら椅子に適当に座って良いから。ああ一応話はつけてあるけど一応受付の方に一言声を掛けていてな」
「はい。ありがとうございます」
「失礼します」
「おや坊や。どうしたんだい?」
「調書取りに来ました」
「ああ。もしかしてあの学園の風紀委員かしら?」
「はいそうです」
「そうか。それならこっちよ。・・・手前から2つ目の右側が空いているわよ。そこに座って待ってて」
「ありがとうございます」
「待たせた」
「いいえ。思ったよりしっかりしている部屋ですね?」
「意外だろ?イメージとは違って」
「そうですね。イメージとしては結構劣悪な環境をイメージをしていたので、ちょっと意外言うか」
「無理もないな。取調室と言ったらそんな感じで思い浮かぶわな。けどな?これも理にかなっているんだ。ここは取調室で後ろには牢屋なんだ。そんな凶悪犯かもしれない奴に脆弱な建物だと不味いだろ?」
「ああ~そういう事なんですね?だから鉄棒の数が多いんですね」
「そういう事だ。さて。お話はこの辺にして調書を取るぞ」
「何処から話したら?」
「ありのままの光景で良いぞ。俺はこうされたからこうしたとか、こいつらはどういった人物なのかを」
「ありのままですね」
「以上ですね」
「分かった。幾つか質問するけど良いか?」
「はいどうぞ」
「君は始めはいなかった。途中から参加したと?」
「はいそうです」
「始めは誰がいた?」
「それは分かりません。自分が到着した時には先輩、治療院に運ばれた彼らが既に倒れていたので始めの光景はちょっと分かりません」
「分かった。始めの光景は今は聞けないからタイミングを見計らって彼らに聞くことにするよ。次に犯人に心当たり、または見たことはある?」
「いいえ。心当たりも見たことは無いですね。ただ雰囲気がどこかの盗賊?という感じでした。あとありのまま話したので分からなかったのかもしれませんが、犯人たちはもしかして先輩たちを俺達の獲物?餌?にしたかったそうなので、きれいな先輩たちを自分たちの手で犯したかったのでは?と自分はそう思っています」
「ま、あの雰囲気だとそう思うのも無理はないな。分かった。因みに君はその場所に途中参加だったけど、それはだれの指示で?」
「風紀委員内の総括という、小等部から大学部までの全学年の指揮官というポジションがあるのですが、そこから指示を受けてその場に動きました」
「総括だね?分かった。それは言えば分かる?」
「そうですね。学園内に入って近くにいる風紀委員または先生を捕まえて“風紀委員の総括を”と言えばだれでも分かります」
「分かった。総括だね。よし分かった。次に、これは俺達ではなく治療院からの質問なんだが、君はこの知識をどこで身に着けていたんだ?」
「治療院という事はあの応急処置ですね?」
「そうだな」
「私達の国ではある程度の知識を身に着けるのが義務なのです。自分はその知識を使って応急処置をしただけです。自分はそれより多少知識があるくらいですので対応できただけです」
「そうか分かった。これは治療院に伝えておく。調書はこれで以上だ。これより先はあくまでも質問して希望する場合にのみ答えて欲しい」
「希望制ですね?分かりました」
「君はこの件で一番の功績者だ。国からそして貴族や権力者も通うあの学園で一時危険にさらされた。だが君の迅速な行動でそれは未然に防げた。これは十分に表彰に値する。そこで君はこの表彰などを貰える権利がある。この権利をどうする?」
「断ってください」
「・・・良いのか?もしかしたら負傷した生徒の中には貴族とかもある可能性があるのにか?」
「はい。一切受付をしない旨を各方面にお願いします」
「そこまでの意思があるのなら口出しはしない。次にこの件は秘匿に出来ることが出来るんだが、そこはどうする?」
「完全秘匿でお願いします」
「そうか分かった。よし。これで以上だな。最後に質問はあるか?」
「質問はないですがこれだけは了承していただけます?」
「了承?まあ一応聞こう」
「仮にこれが漏れた場合は自分はこの都市から去ることをご理解ください」
「・・・今回の件はそれほど衝撃的だったんだな」
「衝撃的ではありませんよ。ただ単に自分はこういった事が大嫌いなだけです」
「大嫌い?調書がか?」
「いえ。誰かから表彰や褒美が、です」
「そんな奴は初めてみたな・・・。それほど嫌いか。だから全て蹴ったんだな?こうなるのが嫌で」
「そういう事です」
「そうか分かった。この件は責任をもって秘匿にする」
「よろしくお願いします」
「すまんな。長々と。お疲れ様。気を付けて帰ってな」
「はい。この時間までありがとうございました」
・・・・・
「しかしあんな子供は初めてだったな・・・」
「何がです?」
「さっきの調書とりさ」
「何処がです?」
「あの極悪盗賊を単独撃破さ」
「『!?』」
「おお。それは凄いな。将来の俺達の機体の星だな~。こりゃ俺達が抜かれるのも時間の問題か?」
「驚くのはまだ早いぞ」
「なに?まだあるのか?」
「ああ。事件解決の功労者に送る褒美を受け取る権利さ」
「ああ。あれを断るやつなんていないさ。俺も貰いてぇもん」
「お前はがめついな・・・。まあ褒美なら私も欲しいな」
「まあこの通り老若男女問わず欲しい筈だ。けどあの子なんて言ったと思う?」
「何だ?」
「受け取る権利を放棄すると。それどころか秘匿にしてくれと」
「『!?』」
「これまた驚いたな・・・。本当に現れるとは・・・、しかも秘匿まで希望かよ・・・」
「何者なんですかあの子って・・・」
「俺も知らないな・・・。けど妙に大人びているというか、小5にしては落ち着きが過ぎるな。かなりの冷静な頭の持ち主だぞあれは」
「お前がそこまで言うやつか。直接会ってみたくなったな」
「やめとけ。不審がられるだけだ」
「特に君みたいな体格だと特にね」
「な、なんだと!!」
「『はっはっは!!!』」




