決断
決断
「手を組めか・・・無責任というか、無謀というか、アホというか・・・。しかも方法が俺達が興味ない闘技祭とはな・・・。んで?引き受けたのか?」
「一旦保留にしてもらってあんたに相談と思ってな」
「だから足早に来たのか・・・けど何故手を組むなんだ?鍛えろなら分かるが・・・」
「俺もそう思って聞いてみた。何故鍛えてくれではないのか?と」
「そしたら?」
「箱入り娘や世間知らずが多い。外に出たことのあるのでも実力は皆無だからどうにもできないと」
「貴族、外を見たことのない連中の典型例だな・・・。まさかとは思うが学園に通うまで自分のシマ(縄張り)から出たことがない、とは言わないよな」
「・・・」
「・・・まさか・・・」
「そのまさかだ」
「お前も色んなことに巻き込まれるなアレクサス。モテるのも大変だな」
「そう言うなよライゼン。お前の寄せ付けない雰囲気が今は羨ましい」
「それはそれとして。どうすんだ?引き受けるのか?」
「・・・正直利点はない。寧ろ中立を立てている俺達日本国にとってどこかの勢力って程ではないが、それは些かどうなんだ?とは思う。けど」
「・・・さっきの話を聞いてしまうとな・・・」
「ああ。引き受けた場合はあのクソ貴族の追放が出来るすることを保証するっと・・・」
「けどそれも変だとは思うけどな。貴族とか珍種とは言えども一生徒が介入できるのか?とは思うが」
「けどまさかの先公ですら同意意見が多いとなると・・・」
「受けても断ってもどっちもどっちという状況になっていて悩んでいる」
「う~ん・・・。参ったな・・・。上には掛け合った?」
「まだだが今回はただの学園祭みたいな事だから上に掛けあっても・・・」
「門前払いか良くても助言くらいか」
「そういう事だ」
「「・・・」」
・・・・・
「アレクサス様。先程のお話、引き受けていただけれるのでしょうか?」
「どうなんでしょうか・・・。正直怪しいところではありますが」
「それは俺達も思っている。じゃなきゃ保留にする理由の見当が付かない」
「ま、良くて五分五分というところでしょうかね・・・」
「しかしアレクサスさんが付いてくれるとなると?」
「その分だけアドバンテージができ、私達に有利に働いてくれることは間違いなしですからね」
「良いように運んでくれることを願うばかりじゃな」
「しかし宜しいのですか?」
「何がです?」
「幾ら大公のご子息とはいえ、そんな保証とか無謀なことして。これで思い通りにならなければ・・・」
「『・・・』」
「・・・アレクサスは心優しいとはいえ、流石にそこまでは寛大ではない筈です。彼の怒りを買ってしまったのなら、この身を地獄に落とすことも覚悟の上です。ってそれは先程貴方達も同意したのでは?」
「ああ。けどな・・・。俺達だってあんた一人のその責任は負えないって・・・。幾らあの場では代表として頼み込んだとはいえ・・・」
「私達に非が無いとは言えませんわよ・・・。私達も同じ意見でしたから」
「良いのです。下の責任は上の責任ですから。これくらいは、ですが勝算が無いわけではありませんよ」
「・・・まあ、たまたま居合わせた連中とか先生にも意見を聞いたら9割賛同意見でしたらね。あれを見て反対意見が殆どないとはアレクサス様も想定外でしたらね。これがいい方向に進んでくれたら」
「それを願うばかりだな。てか先生の“独り言”には称賛する」
「ああ。あれは笑いを堪えずにはいられなかったな。逆に先生も“愚痴る”程憎い相手みたいだったからな」
「さて。それよりアレクサス君の意思が出るまで待ちましょうか」
「そうだな」
「『アレクサス。頼みます』」
・・・・・
「返答の期限は?」
「案外直ぐにでも答えを出さないと難色示していることを察せられてしまうだろう」
「・・・あいつらの事だ。放課後を過ぎてもあの場から動かずに待ち続けるだろう。冗談抜きに」
「・・・だよな・・・。それこそ雨や雪、嵐が来てもあの場から動かなさそうだしな」
「それだけ貴族は冗談を言う事は少ない。・・・改めて貴族は恐ろしい存在だな」
「ああ。なあ、ライゼンならどうする?」
「引き受けるかどうかか?俺なら断る」
「理由は?」
「勘違いしないで欲しいが保身ではない。これはあいつらの問題だ。あいつらの問題はあいつらで解決しない限りどうにもできない。助言くらいなら受けるが、あいつらの問題をこっちで引き受けるのは別問題だ。他人も頼って解決しろとは言うが今回は違うと俺は思う。その言葉が使えるのは他人と“一緒に”だ。今回みたくまるで“他人任せ”は話にならないと思う。という事で俺なら引き受けない」
「そうか。意見を聞けて良かった」
「だが依頼、いや、お願いされたのはアレクサス、お前だ。お前が決めろ」
「・・・」
・・・・・
「どうだった?盗み聞ぎは出来た?」
「依頼通りバッチリと聞けたよ」
「結果は?」
「今のところかなりの難色だね」
「『・・・』」
「そうか・・・。具体的には?」
「アレクサスの相棒ってみんな知ってる?」
「ああ。寡黙で近寄り難い雰囲気を出しているアレクサスと一緒のクラスで風紀委員をやっているやつだろ?」
「そう。今回はその人に相談していたんだ。多分助言というか『君ならどうする?』を聞きたかったんだと思うよ」
「それで?」
「彼はこういったんだ『他人の問題を引き受けるのはお門違い。一緒に解決するのならまだしも投げやりなら俺は引き受けない』だそうよ」
「『・・・』」
「ここで正論かまされたか・・・」
「ですが彼の意見にも同意ですね。結局は私達の問題。彼に投げるのは些か私達が非常識な方と捉えてしまうだけ。これでは断られても無理はありませんね・・・」
「けど姐さん達はそれでも良いの?またとないチャンスだよ?ここであのブタをどうにか出来たらそれだけで学園の雰囲気が格段に良くなるよ?確証もあるし」
「そうだけど・・・。なら君達に聞くが今回の件は置いといて、他人の問題を引き受けようと思う?名誉とかを抜きにして、純粋な気持ちで。一応護衛と従者にも聞こう。どうだ?」
「なら挙手で行こう。まずは全員目を瞑って。そこから頭の中で思考回路を巡らせて。
では聞くけど今回の件は除いて、他人の問題を引き受けようと思った者は挙手」
「『・・・』」
「次に引き受けない者は挙手」
「『・・・』」
「最後に決めかねる。分からない者は挙手」
「『・・・』」
「よし。手を下ろして。目を開けて良いぞ」
「結果は?どうでした」
「・・・」
「?」
「あ~・・・。正直に答えよう。受ける4割。受けない4割。不明2割だ」
「『・・・』」
「つまり、今回の件を仮に含めてもこれだけ反対があるんだ。そりゃ難色を示しても無理ないわな・・・」
「そんな・・・」
「なら今回は、引くしかない?」
「そこは分からない・・・」
「『・・・』」
・・・・・
「んで?どうするんだ?刻々と時間は過ぎるぞ?」
「引き受けても断ってもどっちもどっち・・・」
「・・・ああ。まあ立場を追われることは無いな。精々生徒同士の戯言で上は収まるさ」
「但しやりすぎは厳禁か・・・」
「ま、そんなところだろ」
「なら・・・」
「決まったか。俺はあんたの意見を尊重する。結局は俺達も人間だからな」
「・・・ああ。また相談頼む」
「・・・フッ・・・」




