研修2
研修2
「さて。先程の逮捕、ご苦労だった。それで先程の動きを見て何人かは改善があることを自身でも分かっている筈だ」
「『はい』」
「それで次だが、先程の経験を生かし訓練と基礎知識、筋力増加などを行う。まずは個々の筋力上げだ。班の内外関係なく一対一で組んでくれ。一応今回は体格差を考慮してくれ。後々実際の逮捕の際は自分よりかなり体格が大きい者と対決もあり得る。けど暫くは同じ体格同士でやってくれ。最後にアレクサスとライゼンは新人皆にアドバイスを頼む。出来る限りで頼む」
「『はい』」
「分かった。けど俺は言葉より行動派なんだ。その時は構わないか?」
「構わない。そのほうが教えやすいのなら」
「分かった」
「分かりました。俺も行動の方が早いこともあるかもしれませんので」
「分かった」
「よし。まずは君達の仕事は何だ?」
「『相手を制圧、逮捕、引き渡しを行う事』」
「お、早速俺が軽く教えたことを覚えているな。関心関心。そうだ。つまりは全力で叩き潰す必要は無いという事だ。なのでこれから行う事は制圧術、及び対抗術だ。中には魔法や武器などを使った方が早いというのもいるだろうが、やりすぎると相手を殺めかねない。実際に十数年前に相手を逮捕する際に誤って相手を殺めてしまったことがあった。勿論問題を起こした本人が悪いが、過剰攻撃してしまったことが露呈。取締りを行った風紀委員は風紀委員会から除外、学園から退学した」
「『・・・』」
「ここまで言えば分かるが、俺達は一つ間違えれば相手を殺してしまう事もあり得るというのを心得て欲しい。だからこそ制圧術や対抗術、という事だ。勿論魔法や武器などの使用は許可している。けど出来る限り抑えろ、という事だ。分かったか?」
「『はい』」
「よし。長話になってはなんだし、そろそろ始めるか。まずは制圧からだ。
まずは相手を倒すことからだ。簡単な話が相手を転ばせる事だ。と言ってもただ単に転ばせるだけではダメなんだ。何故なら相手も転ぶとマズいというのも分かっているからだ。だから相手も対抗する。その意表を突くんだ。という事でまずは、そうだな。君、ちょっと来てくれ」
「?はい」
「よし。まずは足腰腹に力入れろ。この後転ばすから受け身もな」
「はい」
「・・・・フッ!!!」
「!!??」
「とまあ、このような簡単な動作でも転ばすことは可能だ。という事で幾つかの動作を教える。付いて来いよ」
「『はい!』」
「よし。次は対抗術だ。これは制圧術よりイメージがし易く、かつ難易度が先程より高くなる術だ。
先程は変な話、ただ単に歩いているのですら捕らえれる術だ。けど次は相手が攻撃している最中に使用する術だ。人によってはここで魔法や武器を使うのもいるだろうが、今回は素手のみで行うから留意してくれ。なので力の強い上位獣人や種族は力加減に注意してくれ。実際に殺めた人もオーガ系種族で殺めた相手はまさかのハーフリング系という身長で言えばドワーフ系より小さい種族でしかも女の子を殺めてしまった。なのでここは注意してくれよ。分かったか?」
「『はい!』」
「よし。これで制圧術と対抗術を学んだな?これからはこれを組み合わせて実践訓練を行う。その際怪我とかには注意してくれ。身体に違和感があればすぐに申し出てくれ。アレクサス、ライゼン頼む」
「『はい』」
「分かった」
「分かりました」
「そこ。そこはもう少し腕振りを早く。途中で止まると一ヵ所に力が加わって君自身が下敷きになるぞ」
「はい!」
「お前はもう少し動作を相手に悟らせないようにしろ。そうしたほうが相手に隙を作ることが出来る」
「分かった!」
「先輩。先輩は少々力入れ過ぎです。特に腕と足です。
腕は力を入れ過ぎると相手を倒す際に相手の骨を折る可能性があります。何なら相手を掴んで腕振っている最中でも折る可能性も。
足の場合は力逃がしや柔軟が出来なくなってしまいます。分かりづらいかもしれませんが、力逃がしの時は力を入れ過ぎると次の動作に移りにくくなってしまいます。例えば相手を転ばすときに力を入れ過ぎると片足は良くてももう片方が付いて行かないこともあります。実際にやってます。まずは先輩のやり方です。相手をお願いします」
「OK。いつでも良いぞ」
「先輩のやり方はこうです。ここで止めます。どうですか?力が入れ過ぎているのが分かりますか?」
「・・・あ、ああ・・・。確かに入りすぎているのが分かる」
「次に転ばせた後です。ここで本来は色んな動作があるのに逃げてないから動きが制限されてしまい、挙句にはまるでこのような痙攣を起こしてはいませんか?」
「!?その通りだ・・・。何故かこうなってしまうんだ・・・。これも?力が?」
「そうですね。入れ過ぎて一気に抜くとこうなってしまいます。ですのでここも改善点ですね。次に俺の動きを見てください。すいません。また相手をお願いします。結構違うと思いますよ」
「?そんなにか?よし来い」
「では参ります。まずは止めないで行きます」
「・・・ふ!!」
「!!??」
「・・・」
「どうですか?違いは分かりましたか?」
「あ、ああ。全然違う・・・。全く動きが・・・軽やかでかつ動作が早い・・・。ここまで変わるのか・・・」
「確かに・・・俺達も途中から見ていたがアレクサスの動きは全くもって無駄がない・・・」
「これなら私達非力な女子でも・・・」
「とまあ、こんな感じですが、分かりましたか?」
「あ、ああ・・・。こうも変わるのか・・・」
「そういう事です。柔軟も説明しようと思いましたが、今は力逃がしが重要なのでそこを重点的にお願いします」
「分かった。因みに具体的にどこを注意したらいい?」
「そうですね。分かりやすいのがこのやり方でしょう。相手を転ばすときは片足は力を入れて、けど入れ過ぎずに。調整は難しいかもしれませんが慣れれば簡単です。そしてもう片方の足は出来る限り少しだけで良いんです。何故ならもう片方の足を軸にするのです。すると少ない動きで制圧に移れます。次に転ばせる際なのですが、落とした後にわざと自分に引き寄せる事ですね」
「『?』」
「ごめんね?何で自分に引き寄せるの?転ばせた後は普通に制圧に移ればいい話ではないのかしら?」
「確かにそう思うのも仕方ない。ただ単に投げ飛ばずだけならそれで良いんだ。そう“ただ単に”なら。けどそれでしたらリスクがあるのです」
「何の?」
「相手を投げ飛ばす、相手を投げ飛ばすという事は相手の身体にダメージを与える可能性があるのです。時には致命傷も」
「『!!』」
「気が付きましたか?そういう事です。俺達は相手を“制圧”するだけで良いのです。殺しではありません。そこは忘れないでください。話を戻します。何故わざと引き寄せるか。これはとある意図があるのです」
「意図?かい?」
「そうです。引き寄せることによって相手の首の骨を折る確率を限りなく低くできるのです。どうしても体格差で差は出てしまいますが、そういう事です」
「・・・なるほど・・・確かに折る可能性もあるのか・・・盲点だったな」
「そうね・・・そこまでは考えていなかったわね・・・」
「という事は・・・俺のやり方って・・・」
「確率は低いですが、可能性はありますね」
「・・・気を付ける。アドバイス、ありがとう」
「いいえ。分からなければ色々と言って下さい。力になります」
「よし。とりあえずはこの辺で良いだろう。一旦休憩するか」
「『はい』」




