現状
現状
「そしたらまずは資金の流れからだな。一般的には税収や傘下などから資金を徴収するのが普通だろうが、こういう輩ってどこかしら不味いところから徴収している可能性があるからな」
「そしたらどこからメスを入れようか。まずは正常に徴収されているか見たほうが良いな。あからさま過ぎるのもどうかと思うが、ここは灯台下暗しと考えて、な」
「したら現地の人を呼ぶか。ここの都市にいるのか?」
「同じ国に住んでいるから普通にいると思うが?俺達で言うところの隣の県とか、地方が違うだけだろうからな。どこかしらいるだろう」
「そしたらまずは・・・」
「財務大臣、ちょっと良いか?」
「はい。何でしょうか?」
「すまんが例の領主に在住している知り合いはいないか?」
「・・・あの子かな?少々お待ちください」
「お連れしました」
「大臣。呼ばれて来ましたが、こちらの方々は・・・・!?え!?本物ですか!?」
「?私は何も言っていな・・・ああ。彼らの着ている鎧の右胸の文字を見たのですね。そうです。彼らは本物の方達です」
「それが何故・・・!?まさか!?」
「お気づきになりましたか?」
「・・・あのクソ領主を懲罰しに、ですか?」
「流石ですね。その通りです。ですが彼らと言えど、証拠や情報収集をしなければなりません。そこで」
「私のところに、ですね」
「そういう事です。して、何か心当たりとかはありますか?別に貴女を疑っているとかではなく、領主たちで何か良からぬことを企んでいるとか」
「・・・何でも良いのでしたら山ほどありますね。それこそ口頭でとかでなく、書面とかの方が分かりやすいくらいに」
「・・・そこまでですか・・・どうしましょう」
「いや。そこは口頭で全て言ってもらって構わない」
「宜しいのですか?」
「ああ。構わない。なので知っていることを全て話してくれ」
「分かりました。まずは大問題からですね。大臣は何故あんなにあの精霊から資金が出るのかと疑ったことはありませんか?」
「?あの多額の資金ですよね?それは普通に領民から税収とかで補っていたのでは?」
「表向きや議会ではそのようなことを発していたでしょう。ですが蓋を開ければ全くの別です。まずは税金ですが消費税は40%。他領の15%を大きく上回っています。これは領主独断で決定しました。勿論それに見合う福利があれば領民も納得するでしょう。全員ではありませんがね。勿論それくらい上げないと運営出来ないのならその領は終わっているのも同然です。ですが皆さん異論を唱えない。何故なら領を出れば領主公認の盗賊に襲われて惨劇な最期を遂げるのです。それだけでなく、暗殺ギルドや盗賊ギルドなど非公式ギルドを立ち上げ、そこに資金を提供して領民の首を絞めているのです。当然ながら非公式ギルドを立ち上げること自体処罰対象で正ギルドから何らかのお達しや制限などが掛けられるのですが、残念ながらあの領に正ギルドは存在しないのです。いくら国や勢力に加担しないギルドと言えど支部がない領に横槍を入れることは出来ません。内部干渉になってしまうのです。ですのでギルドは手を出せずにいるのです。そしてこれだけでなく、あの領には郊外にダンジョンがあるのですが、領民たちは領内で仕事する以外はそのダンジョンで生活金を稼ぐしかなく、そこに向かうのですが、何も訓練も鍛錬もしていない領民にそこに向かわせるのは愚の骨頂としか言いようがありませんが、生活するうえで将来安泰なのはそのダンジョン制覇しかないのです。ですが先程も申した通り、愚の骨頂であり更に言えばダンジョンの推奨レベルもそこそこ高いダンジョンなのです。求められるレベルは冒険者ランクB以上なのです。ですが領主はそれを承知でダンジョンに領民を送っているのです。何故なら、領民を送るだけでもお金になるし、領民がそのダンジョン内で亡くなれば、そのデスポイントがそのまま領主のものになるのです。
つまりあれだけ資金の貯えがあるのは全てそれまで通常に暮らしていた領民なのです。領民は外に出られない、出たら盗賊たちの蜂の巣、商売は許可されているが必要不可欠分しか許可されていないのでそれで生活できるかというと微妙、一番稼げるのはダンジョン攻略だけどそれには最低でも冒険者ランクB以上、それでも生活するならとダンジョンに潜るのは良いが結局ダンジョン内にいる魔物の餌食になるのが世の末、そして餌食にされればポイントに変換されるがそのポイントはお金に変換されてそれは全て領主の懐の中、懐の潤った領主は更に資金を提供するといったループになっているのです」
「・・・それははっきり言って只の傲慢というかなんというか仮面を被った悪魔、いやそれは本物の悪魔に失礼だが・・・」
「そういう事なのです」
「ですが幾つか分からないところがあるのですが、
1 何故貴女は無事にここにいるのですか?
2 それだけ領民が殺害されれば領民が尽きてしまうのでは?
3 ダンジョンと申しましたが、ダンジョンマスターは?
4 他に協力者は?それだけとは思えません
5 領民は声を上げないのですか?
6 逃亡とかは?
7 何故貴女がこのような情報を?何故報告しなかったのですか?
・・・一旦この辺にしておきます」
「随分と先程の話で鬱憤を溜めていますね。無理もありませんが。では一つずつ。
1A 確かに私はあの領民ですが、籍は違うところです。どうやらあのような重税や惨劇は本当のあの領民のみ適用されるようです。それか私が公務に関わっているからかもしれませんが。
2A 実際に領民の数は減りました。ですがある日を境に回復傾向にあります。理由は福利に関わってきます。その福利とは、子供に対してです。出産や一定期間までは援助金を支給するという公約を掲げたので、それで領民の数が回復しているようなのです。ですが比率や年齢層を私個人で計上した物があるのですが、男女比率は3:7で女性が多く、年齢層も若者の比率が高いのは当然ながら、中年層が圧倒的に少ないのです。全体の2割が40代以上なのです。いくら長寿で有名な精霊と言えどこれだけ中年が少ないと焦るのも当然です。今までは精霊基準の年齢で問題なかったのですが、あまりにも荒唐無稽な領主の政策により、領民の年齢基準を下げせざるを得ない状況になっているのです。そして大半の男性は所帯を潤そうとダンジョンに潜り、帰らぬ者になってしまうのが殆ど。ですので成人女性の大半が未亡人という事になり、男性の取り合いになる始末。挙句にはまだ幼い男の子に成人女性が群がったり一早く手に入れようと躍起になり許嫁まで申し込む者までいるのです。お陰でトラウマを持つ男性もいるとか。
3A ダンジョンはダンジョンでも、既に放棄されたダンジョンを領主が勝手に占拠し、冒険者を雇い入れ、強引にダンジョンとして再開させたのです。ですのでダンジョンマスターは不在なのです。ですがダンジョンスポーンというか、コアは存在しており、今は領主が厳重保管しているのです。
4A 私が知る限りですが、他の協力者は非公認ギルドや領主関係者以外はいないと思っています。
5A 領民が声を上げない理由は、以前声を上げた者はいたそうですが、即座に粛清されたのです。しかもその反逆の関係者は先程申した盗賊や領主直属の衛兵に捕虜にされたのです。それで声を上げたくても上げられないのです。
6A 逃亡とかは以前ありました。成功したのもあれば、失敗したのもあるのです。そして成功が続いたことが領主の耳に入り、逃亡者は粛清の公約を掲げた後、死を恐れ逃亡が無くなったのです。
7A 最後にこの情報をどこでですが、簡単です。私も領主館で公務していたので、そこから情報をもらっていました。それと何度か精霊女王と精霊王に相談したのです。実際に何度か動いたのですが、殆ど効果が無かったので、どうしようもないと思った矢先に日本国が来たので、今こうして話しているわけです」
「成程な。これは相当ヤバいところっぽいな」
「ふう・・・これは本気で他大臣達と綿密な会議を重ねる必要があるようですね」




