逮捕
逮捕
「曹長。容疑者はここですね」
「そうか。随分とデカい屋敷だな。流石犯罪組織だな。まあ良い。では乗り込むか。全員銃を持て。装填は終わっているか?まだなら今のうちに装填しておけ」
「『はっ』」
「よし。乗り込むぞ」
・・・・・
「いや~。今日も良い監視日和ですね~先輩~」
「気を抜くなよ~。こういう時こそ敵からの襲撃が来るものだよ~」
「そう言いながら先輩ものんびりしているではないですか~」
「まあこれだけ天気が良くて日向ぼっこ日和ならな~。寝そうにもなるがな~」
「ですね~・・・」
サァ~~~~
「さてと。そろそろ起き上がりますか・・・ん?」
「どうしたよ~・・・ってどうした?襲撃か?」
「・・・先輩。同組織に千里眼スキル持った方を呼んでいただけますか?」
「いや。ここにいるぞ」
「あっ、先輩と一緒に寝てたのですね」
「まあな。それで?どうした?」
「門のところから誰かが侵入してきたように見えます。ただここからだと見えづらいので千里眼で見てもらえますか?」
「分かった。一応襲撃に備えろよ?」
「はい」
「・・・!?」
バーーーーン!!!!
「!?何だ!?」
「・・・先輩!?」
「どうした!?」
「先輩が・・・」
「おい、どうしたおい!?」
「・・・先輩。これ死んでます」
「何!?ここから額を狙い撃ちだと!?何て手練れだ・・・。兎に角襲撃されたんだ!!知らせろ!!」
「はっ、はい!!」
カンカンカンカンカンカンカンカン!!!!
「お前も備えろ!!早くしないと殺られるぞ!!頭を低く・・・」
バーーーン!!!ゴト!!!
「せ、先輩!!!ひええ~~~~~!!」
「おい!!何があった!?それになんだあの乾いた音は!?」
「分かりません!!ですが、最低でも監視に当たっていた先輩二人が襲撃者に殺害されました!!」
「『何!?』」
「これは襲撃とみて間違いありません!!備えましょう!!!」
「『おう!!』」
「君!!敵の特徴とか分かる!?」
「いいえ!!全くです!!千里眼を使える先輩に頼んだら乾いた音がして、そしたら先輩の額には血が。別の先輩も一緒です!!」
「そんな・・・。何でも良いのよ!!人数とかでも良いのよ!?分からない!?」
「人数・・・。確実ではありませんが、最低でも20人はいます!!その一人は門から先輩のところまで一撃で殺せるほどの者です!!」
「何だって!?門からここまでって結構な距離よ!?それを一撃って・・・」
「間違いありません!!この目で、しかも二人も殺されたのです!!絶対に間違いありません!!」
「そう、分かったわ!!全員!!襲撃者に備えて!!現在いる当主とその家族、そして関係者を保護して!!向こうが手練れならこっちも手練れで勝負よ!!万能執事とメイド、隠密など普段関係ない役職の者も総動員で対抗して!!」
「女豹はどうされますか!?」
「遠距離でも建物の中に入ったら短距離戦、あわよくば格闘戦になるわ。私はそこで勝負よ!!」
「頼もしいです。俺は各自のフォローに回ります!!」
「頼んだわよ!!」
「女豹!!間もなく襲撃者が建物内に入ります!!」
「分かったわ!!因みに外の味方は!!?」
「・・・全滅です」
「・・・え?全滅?バカ言ってるんじゃないわよ!!」
「本当です!!外が好きな女郎やその補填のゴーレムが全部です!!挙句には外のボスで有名なあのお堅い盾持ち渋イケメンが首切りで殺られました!!盾持ちが貫通させられたのですよ!?かなりの手練れです!!」
「クソっ。敵の戦闘値が測れない・・・。解析スキル持ったあの天然娘はどうしたの!?」
「それが・・・頭抱えています」
「何!?あの天然娘がこんなに怯えるなんて・・・おいどうしたのよ!?何怯えているの!?」
「・・・わた、私、これほど戦闘値が高い集団・・・。初めて見ました・・・」
「何!?そんなに高い相手なの!?」
「私の解析能力はかなり高いと自負していますが、ここまでの集団は・・・見たことありません」
「因みにどれくらい高い!?」
「・・・まず一人一人の戦闘値ですが・・・ここにいる全員の戦闘値を全て合わせてもまだ敵の一人の一万分の一にすら達せない値の高さです・・・しかもこれが敵22人全員です」
「そんなに・・・。なら敵の不得意は!?例えば短距離がダメとか、単独がダメとか!?」
「・・・それが全くもって通用しません・・・。全員オールラウンダーです。近短中長全て得意としています。流石に突出しているところはありますが、それでも話にもなりません」
「・・・私達の勝率は!?」
「・・・覆し不可能で0%です。ほぼとか限りなくでもなく0%です」
「なら敵は何処の組織だ!?それくらいなら隠密に任せて・・・」
「・・・まず隠密に任せて組織を暴こうとでも無理な話です。何故なら彼らは・・・」
「『彼らは?』」
「彼らは・・・・」
バゴーーーーン!!!!
「全員動くな!!!我々は日本国自衛隊である!!!ここの主に対して逮捕状が出ている!!無駄な抵抗は止めておけ!!!抵抗するなら容赦はしない!!!」
「・・・なのですから」
・・・・・
「全員動くな!!!我々は日本国自衛隊である!!!ここの主に対して逮捕状が出ている!!無駄な抵抗は止めておけ!!!抵抗するなら容赦はしない!!!」
「お前ら。ここの当主はどこ行った?」
「『・・・』」
「?副隊長。どうやら護衛連れて秘密通路から脱出する気です」
「分かった。追え。抵抗したら殺害も許可する」
「了解しました。お前ら俺と来い」
「『了解』」
「行かせないぞ!!当主は我らが・・・・ぐふぇ!?」
「止めた方が良い。君らに相手できる技量はないだろう?それに今君を投げ飛ばしたが、投げ飛ばした影響で君の肋骨は折れているんだ。無理に喋らないほうが良いぞ?」
「そ、そんな脅しは・・・あぎゃ!!!」
「ほら。言わんこっちゃない」
「おい・・・。隠密全員連れて当主を・・・」
「それもやめた方が良い。何故なら」
ガギャ!!??ふぎゃ!!のわぁ!?いぎぃ!!??
「このように隠れ蓑から引きずり下ろすことも俺達には可能だからな。あと、隠密が全員女だからって俺達は容赦しない。言ったはずだ。抵抗したら容赦しないとな」
「君達!?大丈夫!?」
「申し訳ございません。敵は私達の居場所を完全に把握されてしまって。目くらましもやったのですが全くで。罠に誘ったのですがこちらもダメでした。私達の戦闘でも歯が立たず、集団で一人に戦いもしましたが、まるで赤子を捻るが如くでした。そして、隠密の三人が・・・」
「?まさか・・・」
「はい。生首を差し出して来たのです。恐らくはまだ彼らの手にある筈です」
「お前ら!!私達の顔をどうした!!??」
「?何の事だ?」
「とぼけるな!!戦闘した挙句、生首にしたそうではないか!!!」
「ああ。その事か。今は俺達の手にはない。そろそろ戻る筈だが・・・」
「隊長。戻りました」
「おう。ご苦労。因みに誰か生首を持っていないか?」
「生首ですか?でしたら俺の部下の一人が持っている筈です。今頃はのんびりと歩きで来るはずですよ」
「隊長~。副隊長~。戻りま~した~」
「お前は相変わらずのんびりだな。二曹から聞いたが、生首は?」
「ああはいはい。だれの顔かな~と思ったらここの屋敷の方でしたか。どおりで隠密っぽい恰好をしていて、狼とか狐とかコウモリなどの種族が多かったわけですよ~。ほれ、これが生首です」
「この顔で合っているか?」
「そんな・・・そんな!!!」
「どうやら当たりの様ですね」
「もう良い・・・。こうなったら、お前ら!!私達全員であいつらを殺しよ!!」
「え!?ですが・・・」
「仲間の仇よ!!」
「はい!!お前ら!!」
「『仲間の仇。仲間の仇!!!』」
「お前ら!!覚悟しな!!!」
「ありゃりゃ。本性を現しちまったよあの女豹」
「それでも暢気ですね。隊長」
「そら口ほどにもない連中だしな。そうだな・・・ここは初戦闘の二等海士。行ってこい。付き添いは空士長フォローを頼む」
「了解です!!初戦闘ながら、尽力させていただきます!!」
「分かりました。後輩に良いところを見せつけましょう」
「お前ら。俺達からはこの二人を出す。いつでもかかってこい」
「は!背後を取られても知らないよ!!お前ら!!」
「『おおお!!!!』」
「さて。俺らはお茶にするか」
「そうですね。今は暇ですからね」
「と言っても何故か」
ぐぎゃ!!!!
「この様に邪魔が来てしまうのですがね」
「仕方ないだろ我が同期よ。彼らも犬の様に大人しくは出来ないみたいだしな」
「今のところ彼らの様子はどう?」
「順調に進んでいるようだ。さほど苦戦はしていないようだしな」
「いや。この程度相手に何苦戦するんだよ。笑わせるな」
「まあでも彼らにとっては初めての戦闘とフォローですからね。教育という意味でも彼らに託しましょう」
「何を託すのかは知らんがな。まあ良いだろう」
「それに俺達ものんびりしていたら」
バーーン!!
「もしかしたらもあり得るかもしれませんからね。取り敢えずは楽観的に見ましょう」
「だな。あっ、菓子食うか?」
「お?流石食事大好き人間だな」
「いや~。それほどでも~」
「しかしそれをこの場で食うというのも中々の所業だな。もしかしてお前って血とか内臓とか見ても平気で飯食えるパターンか?」
「どうだろう?ただ単にこういった機会が無かっただけだと思うけど?特段何も変わらないしな」
「そうか。まあいいや。今日のオススメは?」
「今日は洋菓子ならこのブラウニー。和菓子ならこの抹茶味の餅だな」
「そうか。まあ食後の間食だしな。これくらいが妥当か」
「そういう事さ~。ささ、皆も」
「ありがとうございます。頂きます。そして?」
「暢気に菓子を頬張るな!!戦え・・・ぎゃ!!!」
「撃墜一つ。おら!お前ら!!よく周りを見てるか!?俺らのところに敵が来てるんだぞ!?それが出来なくて何がフォローだ!?」
「すいません!!まだ慣れていなくて・・・」
「言い訳している暇があるなら周りを見ろ!!今度しくじったら隊長と副隊長の怒りの戦闘が始まるぞ!!それだけは避けたいだろ!!」
「!!!はい!!!」
「なら敵を倒せ死ぬ気でな!!!」
「はい!!!」
「お前もだ!!初戦闘だからって気抜いていいわけでは無いからな!!!」
「はい!!!」
「何貴様らは・・・ぐへぇ!!!」
「これ以上上司に恥ずかしい姿を見せられないのでね!!!ここはお先です!!」
「お?遂にやる気出た?」
「やる気かどうかは分かりませんが、これ以上は恥じらいを晒したくはないですからね」
「そうか。ま、その調子で頑張ってくれ」
「はい!!」
「しかし、まだ捕まらないのか?あの屑当主は?」
「いや?さっき連絡入ったのですが、捕獲は成功して護衛も排除したそうなのですが、今はタイミングを見計らっているそうです」
「?何のタイミング?」
「ここに突入して敵が戦意喪失する姿を見たいそうなので、そのタイミングですね」
「・・・一曹も中々腹黒いな。けどよ?それで戦意喪失するとは到底思えないのだが?逆に戦闘意欲を高めてしまうのではないか?」
「そこは大丈夫でしょう。何しろ護衛すら殺害したのですから。生き残っているのはここにいる戦闘狂と当主と関係者だけなのですから」
「そうか。なら引き続き俺達は高みの見物でも洒落込みますか?」
「良いですね~」
・・・・・
「女豹!!敵たった二人に我々は全く歯が立ちません!!背後から敵隊長クラスを討ち取ろうとしますが、目の前二人と敵の仲間に憚れてしまいます!!しかも憚れたのち、我々の仲間はそのまま返り討ちにあってしまいます!!このままでは全滅も時間の問題です!!」
「クソ!増援は!?」
「ダメです!!今来ているのが全員です!!」
「別施設からは!!??」
「ダメです!!連絡が付きません!!恐らくはあちらにも自衛隊がいると予想します。いえ、それしかあり得ません」
「嘘でしょ・・・。良いから兎に角戦え!!敵の体力を削るんだ!!今はこのまま耐えるんだ!!当主を守る為にも!!私達は戦わなければならないんだ!!」
「『おおおお!!!!』」
「とにかく今は耐えるんだ!!敵のミスも誘って隙を突くんだ。そこにきっと勝機はある筈だよ!!」
「おい!!お前は背後に回れ!!そこから魔法で撃て!!」
「お前は背後からの魔法を撃って敵がバランスを崩したらすかさず敵を闇討ちにしろ!!」
「・・・敵、バランスを崩しました!!」
「今だ!!行け!!!」
「お見事ですよ。けどまだ行きましょう」
「敵、まだ立っています!!余裕をかましています!!」
「これだけ苦戦を強いられながら戦闘しても、敵は全く疲れを見せない・・・。次だ!!まだ手段は残っている筈!!大魔法使いはまだ健在!?」
「大魔法使いは!?・・・くっ!!」
「・・・既に殺られていたとは・・・何という事なの・・・。兎に角総攻撃で少しでも削す!!これしかない!!」
「『はぁぁぁぁ!!!!』」
・・・・
「さて、そろそろお茶も済んだことだし、そろそろ仕上げといこうか?」
「行きましょうか」
「曹長、二等海士。そろそろ時間だ。銃を用いてこの戦闘を終わらせろ」
「了解です!!」
「同じく了解!!銃を使用します!!」
「お前ら。敵の割には良く健闘したな。いや~あっぱれ。けどそろそろ終わらせようか。この戦闘」
「な、何を言っているの!!まだ終わらせない!!」
「と言いながらお前もお前のお仲間さんも疲弊して言えるぞ!!」
「戯言を!!」
「けど残念ながらここまでだ。冥府で悔やみな」
「は?何言って・・・」
ババババババババ~~~~ン!!!!
「耳が!!!・・・クソっ。いったい何が起きたんだ?目が開かない・・・。あっ、やっと開いた。・・・え?なに、これ・・・。ナニコレ!!!」
「何これといわれてもな?ただ単にお前以外を殺害しただけだが?」
「殺害って・・・え?お前ら?返事して・・・返事してよ!!!」
「それは無理だろうな。どうぞ死体のところまで行ってみな?」
「・・・なにこれ・・・何でみんな額と胸を貫かれているの?何で?」
「何で?と言われてもな。お前らが抵抗したからだろ?俺達は再三言ったぞ?抵抗したら容赦しないと」
「だからって・・・私の仲間も殺す!?」
「ああ、あんたの仲間だけではないぞ?」
「え?」
「今からここの当主とその関係者を連れてくる。その状況を見て判断しな?」
「な、何言って・・・」
「隊長。お願いします」
「了解した。副隊長。一曹に連絡だ」
「了解した。一曹。当主と関係者を連れて来い」
『了解です。待ちくたびきれました』
「すまんな。けどこれで動けるぞ」
『ですね。では連れてきます』
「宜しく。という事で扉に注目」
「・・・何も起きないじゃないか!!」
バン!!!
「ほら?連れてきたぞ?」
「え。本当に・・・。当主!!大丈夫ですか!?」
「・・・大丈夫なわけないだろう・・・」
「護衛は!?」
「・・・俺の護衛、家族の護衛、関係者の護衛、その関係者の護衛、全てほぼ全滅した。残っているのは今俺の後ろにいる新人のメイドだけだ。殺傷能力がない、家事も何も出来ないこの種族不明の奴隷双子新人メイドだけが生き残りだ」
「そんな・・・」
「あんたのお仲間さんでしたら、俺の腕に七個の生首があるからよ。確認すれば?」
「・・・」
「そんな返事する気力すら無しか。まあ良い。当主と関係者。君達に逮捕状が出ている。至急、俺らと同行してもらう」
「・・・何故ここに自衛隊がいるんだ・・・。どおりで護衛が全く歯が立たない筈だ」
「何故ここに?それは貴方方が一番分かっているのでは?」
「・・・例の、島国にあった研究所の件か?」
「そうだ」
「それでここにか・・・。どおりで各所と連絡が取れない訳だ。まさかその連絡が取れない原因は、君らか?」
「まあそうだな」
「けど残念だったな。最後まで抵抗させてもらうぜ!!ドラゴンよ!!大精霊よ!!参られよ!!さあこれに対抗は出来るかな?」
「そんなの対抗するまでもないさ。何しろほら?大物ドラゴンが、大精霊が怯えてこっちに頭下げているぞ?」
ペコ・・・
「何だと・・・。どうなっている?」
「そらお前。自我を持つドラゴンと大精霊が俺達の存在を知らないとでも?お前は通訳は出来るか?」
「通訳だと?それなら普通にできる。逆に出来ないのはアホだな」
「グダグダ言ってないで、通訳してみな?」
「言われなくても!!何故俺の指示に聞かない!?」
『そんなの簡単よ!!味方が自衛隊なら物凄い心強いけど、敵が自衛隊ってどういう事よ!!私達精霊が全員、それこそ私の配下のみならず、他の配下や大精霊、それより上の今は四大かな?その四大精霊、それよりさらにまた上の精霊(女)王など、本当に精霊全員が束になって本気で戦っても一億戦に一回勝てるかどうかの相手に戦いを挑もうなんて気が気でないわ!!お陰で意思疎通でほぼ全精霊が住む精霊都市にいる精霊全員がこの場面を見て、固唾を飲んでみていたわ。自衛隊に殺されるんじゃないかと!?一部なんか身売りしても自衛隊の怒りを抑えようとしていたくらいよ!!もうあんたとの信頼関係は無くなったわ!!元々あんたと関係を維持するのは嫌々だったけど!!』
「は!?貴様!!喜んで関係を維持してきたではないか!?今更裏切る気か!?」
『別に強制ではないのよ!?その気になれば一方的に振ることも出来たわ!!けどそうしなかったのはこっちの面子というのもあったのよ!?けどまさかここまで落ちぶれたとは思いもしなかったわ!!!私、今から精霊王と女王に交渉して信頼破棄にしてもらうから!!!』
「そ、それはちょっと待ってくれ!!ならドラゴンは!?ドラゴンなら大丈夫だよな!?」
『坊主。お主は何を言っているんだ?悪いが隣の精霊小娘と激しく同意だ。儂らも全員総動員して、それこそ儂みたいに現物ドラゴンや、人族風に変化できる竜族が束になっても、大精霊と同じ勝率だぞ?実は儂も故郷くらいなら意思疎通が出来るのだが、大精霊と同じ状況が出来上がっているそうだ。まあ強いて違うとしたら、精霊は7対3で女が多いから身売りと考えているが我々はそうはいかない。竜の間で有名な超希少食材を自衛隊方にお詫びの品として今準備を進めているそうだ。残念だが儂との信頼も無しだな』
「お、おい!!という事はお前ら二人とも俺を見捨てるのか!?」
『そう言ってるでしょう!!』
『まだ言うなら坊主が戦ってみろ。勝ったら考えを改めよう。どうする?』
「・・・やってやるよ!!うぉぉぉぉ!!!!」
「お前の足は超が付く程ノロマか?ほい逮捕」
『あ~あ。捕まってやんの~』
『どうやら儂たちはこんなマヌケと信頼していたようだ。まだ教育が必要だな。とそれはそれとして』
『ドラゴン。ここは私が。えっと?自衛隊の皆さま。失礼ですが、隊長は?』
「今回は俺だ」
『では改めて。この度は大変申し訳ございません。再度私達の教育をし直しますので、ここはどうか』
『上から言えたものでもないが、儂からも頼みます』
「別に君らの落ち度ではないし、君らが犯罪に加担した訳ではないだろう?」
『その通りです。人族と信頼するというのはそう簡単に解消は出来ないので仕方なく』
『それが出来たら儂らも苦労はしません』
「君らの言葉も理解は出来るし、それがそういった事情なら仕方あるまいが、今回は事が事だ。はいお終いとはいかない。それは承知しているか?」
『はい重々承知しています』
『儂も処分は受ける次第です』
「なら今はしないが、後日事情聴取として君達の職場、大精霊なら精霊都市に、ドラゴンなら今回は君の故郷に伺う事にする。処罰はそれからだ。それで良いか?」
『はい。構いません』
『同じく』
「ならこの場はこれで。君らは取り敢えず故郷やら職場に戻ってくれ。詳細は後日」
『『はいご迷惑をおかけして申し訳ございません』』
「さてと、当主の関係者はどうするんだ?」
「私も抵抗させてもらう!!大妖精!!召喚悪魔!!!どうだ!?これなら」
「う~ん。さっきと同じ状況なのだが?話聞くか?」
「あったりまえだ!!何故聞かない!!俺の命令は絶対だろ!!」
『誰がそんなこと言いましたか?ねえ悪魔さん?』
『はい。誰もそんなことは言っていませんね』
「は!?何言っているんだ!!百歩譲って妖精は分かるが、悪魔!!君は召喚だろ!!」
『ええ。そうですね確かに召喚ですね』
「なら命令できるだろ!!」
『残念ながら例外もあるのです。今回が典型的ですね。俺達も悪魔の前に一つの生物。他を殺すという事は自分が生きるため、確かに生きるためには相手の死も必要不可欠ですが、誰しも臨んだ死は無いのです。つまり何が言いたいか。こんな負け戦、しかも死が確定している戦には誰も望まないのです。確かに召喚には護衛も役割として備わりますが、勘違いしてはならないのは、あくまでも召喚であって奴隷ではないのです。奴隷なら死を以って、というのはありますから別に問題はありません。拒否権もありませんからね。ですが、召喚は違うのです。拒否できる権利を持っています。そして拒否できる代表的例が今のような状況です。ここで勘違いしないで頂きたいのは、相手が強者だから挑まない、のではなく、相手が日本国だから、なのです。弱者優先とかではなく、今回は自衛隊だから拒否するのです。つまり、この先は何も言わなくても分かりますよね?』
「・・・クソ!!戦えよ!!俺を守れよ!!」
『意味を分かった上でこれですか・・・。情けない者を俺は応じてしまったのですね・・・』
『悪魔。今回は仕方ないですよ。召喚に応じるまでは何が起きるか分かりませんからね』
『大妖精。ありがとうございます。因みに大妖精も同じような感じですか?』
『ほぼ同じですね。ほぼという程でも無いのですが、私達妖精も意思疎通の際、同じ場面が向こうにも出ましてね。後は言わなくても分かりますか?』
『はい。その先は実はドラゴンとかから』
『でしたら話が早いですね。つまりはそういう事です』
『そうですか。そちらも大変ですね。っと、取り敢えず自衛隊さんにお詫びを』
『そうですね。今回は俺が。自衛隊の方々。この度は申し訳ございません。大妖精と同じ言葉になってしまいますが、それでもご容赦願えたらと思います』
「構わんぞ。今回悪魔はあくまでも召喚されただけだから不問とするよ。大妖精はドラゴンや大精霊と同じで、また後日に事情聴取してもらうから、そのつもりでな」
『『はい。分かりました』』
「さて。という事で当主並びに関係者を逮捕する。ご家族も重要参考人として来てもらうぞ」
「お断りします。私達全員で貴方方から逃走いたします」
「そうですかどうぞご自由に。ですが我々がどんな手段を用いても文句は受け付けないのでそのつもりで」
「ええ。どうぞそちらもご自由にどうぞ?」
「では。お前ら。射殺だ」
「『了解』」
ババババ~~ン!!!
「そんなことって・・・」
「え?妻よ?何を倒れている?妻よ?妻よ!?何をした!?」
「だから自由にして良いと言ったから、逃走されそうになったから、あんたの妻を殺した。それだけだぞ?」
「それだけだぞ?って・・・。あんたらに情は何のか!?」
「犯罪者に慈悲はない。その家族が加担するなら尚更。というのが我々のポリシーなのでな」
「ポリシーって・・・人でなし!!!」
「妻を殺されたくなければ、悪に染まるな。違うか?犯罪に染まったからこうなった。普通だろ」
「普通な訳・・・」
「なら犯罪に染まる前と後ではどう違った?考えてみろ?」
「・・・・」
「答えは出たか?」
「・・・それでも、俺は悪くない!!」
「奥様。どうやら旦那さんは全くもってダメの様です。冥府でもお悔やみください。連れていけ!!!」
「『了解』」
「離せ!!!離しやがれ!!!」
「離せ!!!私がいなくなっても知らんぞ!!!」
「CP。こちら3。屋敷当主と関係者の逮捕完了。当主の家族と関係者の家族、及び護衛などは射殺した」
『了解した』
「して。最後の問題は?」
「この新人と言われた双子のメイドですね」
「暗殺も戦闘も挙句には家事すら出来ないメイドとかな」
「どうして雇われたのかが不明ですが・・・。というか本当にメイドですか?その・・・衣類が」
「俺も思った。人質とかで裸体なのかと思いきや、メイドだもんな。てっきり奴隷かと思って首辺りを見たが、どこにも首輪やら紋章やらが無いんだもんな。扱いに困る。取り敢えず服を着せるか。俺の冬用のコートを貸そう。もう一つは副隊長、お前が貸してやれ。長さは膝まであるから身体を隠せるはずだ。ほれ」
「あっ。俺と隊長が渡したらいそいそと着始めたので、自我は壊れていませんね。けど猶更分かりませんね。何故裸体なのか」
「身体の傷とかは?」
「医療班が見ています。一応念のため女性が見ていますが、特になさそうです。栄養失調とか内部にも影響は無しです」
「こいつの経歴は?」
「分かっている範囲では、出身地はここの星ではなく別星。但し生まれ故郷は戦争で崩壊。幼少期にこの星に来て色んな仕事を請け負い、現在はここ。という事です」
「戦闘とかスキル系は?こういう娘程厄介なことがあるからな」
「隊長。それも外れです。ラノベの読み過ぎですよ。とにかく突出した点は無し。強いて言えば魔力が他と比べたらかなり高めなくらいです」
「家族構成は?」
「実父実母ともに逝去。他に親戚は無し。但し育ての親がここと出身地とはまた違う星の宮廷魔術師が育ての親で16歳まで教育を受けていた。現在は宮廷魔術師は戦争の前線で帰還予定は不明。双子と書いてあるので、今目の前にいるのがその双子なのでしょう。歳は両方20歳。どっちが姉か・・・。というのは分かりませんがね」
「?分かるだろ。写真が右が姉と書いてある。これが正しいなら今目の前にいる左の子が姉だろ」
「分かるのですか?」
「ああ。何か知らんが分かった。顔はほぼ一緒だがよく見ると違うしな。一応聞くか。お前らを保護する。服は一旦貸してやる。一つだけ質問だ。お前らは双子だな?」
「「(ウンウン)」」
「お前が姉でお前が妹で良いか?」
「「!!(ウンウン)」」
「合ってたみたいだな」
「凄いな。取り敢えず俺も確認したが、この子たちの経歴はこれしかない」
「?名前は?」
「?そう言えばないな。名無しか?いやよく見たら書いてあった。姉がエリス。妹がアイリスだな」
「そんなに見えなかったのか?」
「いや。薄汚れが酷過ぎただけだ」
「そうか。なら移動するか」
「ああ。お前らも来い。飯食わせたる。取り敢えず風呂もな」
「「(ウンウン)」」
「今のところの問題点は発言出来るかだな」
「だな」
「CP。こちら3。逮捕時に民間人を保護した二名だ。一旦保護エリアに収容しておく」
『CP了解』




