SS:次元を超えたキス
二次元の世界を三次元の球体が通過する時、球体は伸縮する円として現れるらしい。
ある作家が執筆途中の原稿をくしゃくしゃに丸めて捨てた。
「ジョナサン」と「ケイト」は急接近した。「ワイングラスに近づけた唇」と「バラの花束に落とした唇」が触れ合った。段落という壁を超えて二人は出会うはずの将来よりずっと先に結ばれた。
これは運命のように思われた。二人のキスをジロジロと見る無礼な目はなかった。
しかし悲しいかな。出会った理由が理由のために彼らの物語に先はなかった。パラレルワールドの「ジョナサン」と「ケイト」にハッピーエンドがあることを願ういながら、二人は互いを感じるために抱きしめ合う。
床に放り投げられた彼らはボロボロになりながらも小さくなって耐えていた。車に乗って終着駅に向かった。
炎が優しく二人を解放した。