幼日
菜穂は子供の頃から綺麗な母親や姉妹のように見える親子にとても憧れていた。
菜穂と母親が一緒にいれば
「お孫さん?」
と聞かれる事も少なくなかった。
そんな時は菜穂は本当に恥ずかしく思い、母親と距離を作ってよく歩いたものだ。
そんな気持ちを母親は知る事もなく、よく大きな声で
「菜穂ちゃーん!!」
と人目も憚らず呼ぶのであった。
友達達はよく真似をして菜穂をからかっていた。
着るものも、持ち物も他の友達とは比べられないほどの地味なものばかりだった。華やかなデパートで買った服を着ている友達が羨ましくて仕方なかった。
自分の子供には、可愛い服を着せてあげよう。
早く子供を産んで若いお母さんでいよう。
子供には恥ずかしい思いをさせたくないと子供ながらに強く心に決めるのであった。
自分のお給料で洋服が買えるようになると、あらゆる流行りの服で着飾った。美容院にも通い流行りの髪型をいつも習得しては、髪も乱さないようにしていた。
元々顔が整っていた菜穂は、見違えるように綺麗になった。同級生からは整形したかと問われる程だった。
ただ、着飾っただけだった。もっと早く着飾っていれば、子供の頃から綺麗な服を着ていたら幼少時期も美しい思い出に変わっていたかもしれないと菜穂は母親を恨んでいた。
男性にもよく声をかけられていたが、菜穂には勝という彼氏がいた為いつも男性が振られていた。
勝が身を引かず菜穂に交際を申し込んだのも、だんだん綺麗になっていく菜穂を今手放すと自分の元には戻って来ないと確信していたからであろう。