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「悔いなき人生などない」  作者: まめこ
2/13

悔日

菜穂は周りの女子が騒いでる高木謙介からのコールに自分は選ばられたと思い浸った。

それが取り返しのつかない人生になる事など思いもせずに。

「今から部屋で飲まない?」

高木謙介からの誘いは自分が特別な存在に選ばれたと思わせるような錯覚を起こし、周りの女子からも勝ち誇ったような気分だった。

「どっちの部屋で?」

と平静を装って返事した。

勿論心臓の音が聞こえる程高ぶっていた。

「そっちに行っていい?」

と高木謙介からの誘いを何故断れなかったのか未だに謎で仕方がない。

「どうぞ」

急いで脱ぎっぱなしの服を片付け、薄っすら化粧を直してドアホンがなるのを待った。

コンコンとドアがなるのが聞こえて高木謙介を迎え入れた。近くで見ても綺麗な顔をしていた。


どうして菜穂の部屋に来たのか、自分だけに声をかけてるのか、どういうつもりで部屋に来たのか聞きたい事は山程あるのに、冷蔵庫からビールを取り出し「飲む?」

と格好良い女を思わせたかったのか、素っ気なく缶ビールを渡した。高木謙介もオーラを崩さず、

「西野さんは彼氏いるの?」と上から質問をしてきた。西野とは菜穂の旧姓だった。

「いるよ」

と菜穂も上から答えた。あなたには心を開かないと思わせたかったのか、心の何処かで向かって来いというアピールだったのかは未だに解らない。


何に戦ってたのか、意地を張らなければ高木謙介は引いたのではないかと心から後悔している。

意地を張り合う男女が真夜中同じ部屋にいれば、意地を張り合いながら身体を求め合う事になる。

お互い負けないように身体を重ね合いながら意地を張り合う。

こんなに愛のない営みを行う意味があるのだろうかと思いながら、負けられないという意味のない意地で一夜を過ごした。そこに愛など微塵のかけらもなかったのは事実だ。


菜穂は夜明けの朝後悔の散歩をしながら、武本勝の身体の温もりを思い出した。

早く帰りたいと思った。

両親よりも勝の元に早く帰りたいと心から思った。


それでも、翌日もその次の日も高木謙介からのコールは続いた。

何に負けるのか意味も解らず、断ったら負けると自分との戦いに既に菜穂は負けていたのも気がついていなかった。

高木謙介と身体を重ねる事が勝への裏切りとは思わず、自分が選ばれたという存在意識に兼ねられモチベーションを上げていたのかもしれない。

その場限りで終わると思い込んでいたから。

地方の研修が終わればそれぞれの仕事場に戻る。

後は一生会う事もない。

帰ったら勝とのいつもの生活が待っている。

勝と共通の友達と騒いだり旅行行ったり安定の毎日に戻るんだと。


まさか、高木謙介の子供を産むなんて1ミリも思う事なく研修を終えた。高木謙介とも何もなかったのように地方を離れた。これでいいんだと自分に言い聞かせながら。


研修が終わり、配属部署でも慣れてきた頃仕事場に電話がかかってきた。


「高木です。今大丈夫?」

菜穂は血の気が引いた。

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