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ザ・ダンジョンバトル!

これはゲームであってゲームではない

ゲームだと思う者には死の祝福が与えられるだろう

 運命の猫リリーと出会ってから一時間後。魔王のお仕事(ダンジョンクリエイト)そっちのけでリリーと遊んでいると、アインの部屋にお客がやってきた。


「やっほー。お邪魔するよー」

「失礼致します。アイン」


 やってきたのは二人。元気そうな子供と、キリッとしているメイドのような少女。二人は俺の姿を見ても驚くような事はなく、むしろ俺がいて当然の様に振舞っていた。


「少し遅いのでこちらからお迎えにあがりました。何か問題でも起きましたか?」

「ん。忘れてた。めんごめんご」

「だと思ってました。いつもの事ながら、どうしてあなたはそう忘れっぽいのでしょうか。あなたの頭の中には脳みそではなくスライムでも詰まっているのですか?」

「ん。たぶん」

「そんな訳がないでしょうに」


 さりげなく毒を吐いたメイド少女がアインに近づき、彼女の頭を優しくコツンと叩く。するとアインの頭のすぐ近くに「入ってます」という文字が浮かび上がった。いったいどっちが入っているんだろうか。


「ゼイオン様ですね? お初にお目にかかります。私はイルミナーシュと言います。イーシュとお呼びください」

「ゼイオンだ。様付けはいらない」

「お断りいたします。そしてこちらが」

「(断られた!?)」

「ウルルカだよ! おじさん、よろしくね!」

「お、おじさん!?」

「あ、猫ちゃん! 僕にも触らせて触らせて!」

「あ、こら! って、なんで俺に抱き着く!? 猫はこっちだろうが」

「ジャンプ失敗。でもまいっか。かいぐりかいぐり。ゴロゴロニャーごろごろにゃー」

「御前が猫になるのか……」


 暖かくて柔らかくて猫にも負けない抱き心地。おお、これはこれでなかなかに撫で甲斐がある毛並だな。これが獣人というやつか。しかも僕っ子。抱きとめた際に押し付けられた胸はそこそこの発達があり、彼女がいっぱしのメスである事を主張していた。

 頬に鋭く三角形に生えている黄金色の毛がグリグリと俺の手の甲に当てられる。その肌触りを楽しみながら空いている手を彼女の頭に乗せると、黄金畑の暖かな髪の草原が俺の手を優しく包み込みとても気持ち良かった。そこはまるで天然カイロの様に暖かく、そこに手を置いているだけで全身がポカポカと温められていく。というか抱き着かれて少し熱いくらいだった。だが、少しじめじめッとして肌寒かったこの部屋には丁度いい塩梅で、リリーも彼女の温もりを求めてウルルカのお腹へと潜り込んでその温かみを享受していた。どうやら気に入った様だ。


「よし、こいつも俺の子にしよう」

「いきなり何を言っているのですか。ウルルカも早く離れなさい」

「はーい」


 首根っこを掴まれウルルカは借りてきた猫の様に大人しく従った。そのお腹にはリリーが張り付いたままだった。

 ちなみにウルルカは猫の獣人ではなかった。そこが非常に残念だった。


「うん、この猫ちゃんは僕の子にしよう!」

「ハッハッハッ。いきなり何を言ってるんだろうな。殺すぞ」

「ちぇ。やっぱダメかー。ならやっぱ僕がおじさんの子になるしか……」

「ウェルカーム」

「あー、でも僕を倒すのはまだ無理かなー。おじさん弱そうだし」

「ん? 試してみるか?」


 その瞬間。地面に張り倒され本日二度目のマウントポジションを取られていた。獣な少女が拳を振り上げながら言う。


「続き、やる?」

「――もう少し成長してからお願いします」


 彼女もまた化け物だった。アインといいウルルカといい、この世界は思っている以上に非常識で危ない世界らしい。見るからに元気そうな獣っ娘なので素早い攻撃には注意していたのに、まるで見えなかった。恐らくはイーシュも……。


「僕はおじさんと同じ赤鉄位だけど、生まれたばかりの魔王ごときに負けるほど落ちぶれてないんだよね。おじさんはもう少し自分の立場というのを理解した方が良いと思うよー?」

「身をもって勉強してる最中だ」

「……M?」

「絶対に違う」


 差し出された手を握り返すと強引に立たせられた。ウルルカにとってはちょっと力を込めた程度なんだろうが、強度も人並みまで下がっている俺の腕はミシミシッと悲鳴をあげ、ただそれだけでぶっ壊れた。


「ぐぉおお……」

「あ、ごめん。痛嬉しかった?」

「痛嬉しくない! 痛悲苦しいだけだ!」


 涙目になりながら壊された腕をおさえる。この負傷もすぐに再生されて元通りになるというのは既に学習済みなので心配はしていなかった。ただ痛いだけ、痛いだけなのに……ちょっと心も痛かった。子供に負けた。しかもアッサリと。それが悔しかった。それが無意味な感傷であると分かっていても俺の中に無駄に残っていた知識が邪魔をする。知識の弊害がこんなところにも影響を及ぼしていた。知識のないまま生まれる事が出来たエレン達ならそんな感傷に浸る事は無いんだろう。ちょっと羨ましいと思ってしまった。


「ウルルカ。弱い者いじめはそれぐらいにして、この後の予定を話しましょう。アイン、宜しいですか?」

「ん。任せる。弱者はただ強者に従うのみ。それが自然の摂理」

「最底辺にいるおじさんに人権なんて無いんだよ! なーんてね」

「……好きにしてくれ」

「あ、すねた」

「放っておきましょう。いざとなれば引き摺って行けばいいだけですし」

「ん。スライム馬車用意してくる」

「御前等、容赦ないな!?」

「あ、生き返った」


 本当に引きずられて部屋から出された。ぴょんぴょん跳ねるスライム二匹に引きずられて。仕事が早すぎる……。


「うん? 屋敷? いつの間に」

「あ、僕達の家に入るの初めてだった? ようこそおじさん。ここが僕達の秘密の花園、チームアインの箱庭屋敷だよ」


 そう言ったウルルカが手すりにピョンと乗りクルクルッと回転する。スカート姿でそんな振る舞いをするものだからフワリとスカートが舞い上がる。可愛い絶対領域が見え俺の目を楽しませてくれた。あと、キュートな尻尾を発見。外には出していないのか。

 微妙に目線を誤魔化しつつ左右を見る。昨日はゴツゴツした石畳だった通路はそこにはなく、あるのは綺麗に掃除された屋敷の二回の廊下だった。手すりの先を見ると一階と三階が見える。吹き抜け構造の先の窓の外には青い空に雲が気持ちよさそうに風に吹かれゆっくりと流れていた。どうやら今日は散歩日和の良い天気らしい。


「アイン。説明を頼む」

「ん。ウルルカの今日の下着はピンク色。ちょっと危ない日」

「いや、そういう説明は求めていない」

「あ、バラされた。折角見えそうで見えないようにしたのに。いやーん、おじさんのエッチっちー」


 挑発してくる子供は適当にあしらってイーシュに説明を求める。


「部屋の扉は別の空間に繋げる事が出来ます。後程、ゼイオン様にもお部屋を用意いたしますのでご自身でお確かめください」

「扉を閉めると部屋は空間的に孤立するから部屋の中で何をしても外に音が漏れる心配はないから安心していいよー。他の魔王が入ろうとしても許可してない魔王は入れない様にする事が出来るし、娼館や奴隷商みたいな趣味のお店に繋げておけば誰にも気づかれることなくいつでも女の子をお部屋に連れ込み放題! ほんと便利なんだよー?」

「DPを使えば拡張する事も出来ます。例えばこの屋敷を含むこのエリア一帯も元はアインの部屋だったそうです」

「ここが?」

「ん。頑張った」

「ダンジョンには関係ない場所ですので少し割高となっていますので、ここまで拡張する方はあまりおられませんが。それをするぐらいならダンジョンに専用のスペースを作った方が良いかと思います。個室を一軒家程度の広さに変えるぐらいが現実的でしょう」


 そう説明されながら一階に降り案内された先には、長大なテーブルが置かれている一室だった。貴族の屋敷にありそうな食事をとる部屋。ゆうに二十人は座れそうなテーブルの上にはバスケットの中に入った果物が置かれており、いつでも食べられるように皿やナイフ、フォークなども近くに置いてあった。


「この屋敷には何人ぐらいが住んでいるんだ?」

「住んでいるのは私達二人ぐらいですね。ただ、部屋をこの屋敷に繋げている方は結構いらっしゃるので、利用者はかなりの数になるかと」

「それは、昨日会ったメロディラやポトロリカとかも含まれるのか?」

「『詩音』のメロディラ様は以前にアインのスライムを虐めた事があるため出入り禁止になっていますね。『偽公』のポトロリカ様はアインと位が同じであるため、そもそもこちらに来ることが出来ません」

「位が同じだとダメなのか?」

「一応、全ての魔王は敵対関係にありますので。同じ位同士は上を目指す為に潰し合うのが鉄則となっています」

「そうなのか。全然そういう風には見えなかったが……」

「同じ勢力に属してますから。もっともアインの場合、それだけではありませんが」

「それはどういう……」


 その続く言葉をまるで遮る様に、開け放たれた扉から強い風が吹き入ってきた。ウルルカが開けた様だ。


「ゼイオン様。これから町へ向かうのですが、その前に一つだけ注意しておくことがあります」

「町? ここは外の世界なのか?」

「いえ、違います。ここは魔王達が住む魔王の世界。空間同士が複雑に繋がりあう果ての無い無限世界。魔王が造るダンジョンが存在する下界ではありません」


 振り返り俺を外へと促すイーシュ。反対側にはウルルカが手を頭の後ろで組んで立ち、やはり俺が扉を潜るのを待っている様だった。


「ここから一歩踏み出した時、ゼイオン様は『まだ歩き始めてもいない魔王』というレッテルが外れ、『魔王としての生を歩み始めた者』となります。アインの庇護下から外れる事で、他の魔王達はゼイオン様に手を出す事が出来るようになります」

「――魔王同士が戦う理由はなんだ? 魔王は人間達を苦しめるのが仕事じゃないのか?」

「それは違います。下界に造ったダンジョンで人間達を捕えたり殺したりするのは、使用できるDPを増やす為とダンジョンの研究を行う為です」

「研究? おいおい、人間達は実験場の家畜か何かか?」

「そういう風に考えている魔王は多くいますが、積極的に人間達を狩って楽しんでいる魔王は少数ですね。どちらかと言うと魔王と下界は共生関係にあると考えて下さい。魔王が造るダンジョンは下界に多くの宝や食料、娯楽を与えています。モンスターを倒させる事で力を与える事も出来ます。ダンジョンに足を踏み入れるのは下界に住んでいる人間達の自由であり、そこで命を落とすのも彼等が選択した結果。たまに意図せずモンスターが氾濫する事もありますが、基本的にどの魔王も積極的に人間界を滅ぼそうという動きは致しません。何故なら得られるものがほとんどないからです」

「……人間達はそれを知っているのか?」

「当然、知りません。例え気付いたとしても様々な手段で忘れさせたり勘違いさせたりする事が可能であるため問題になりません」

「魔王と言うより神に近そうだな、それは」

「そう人間達に呼ばれている魔王もいます。例えば唯一絶対のスライム神アインフォシル、とか」


 チラッと横を見るとその神様は立ったまま寝ていた。涎がボタボタと落ちてちょっとだらしない。そんな神様で良いのか、おい。


「我々魔王の目指すところは一つ。他の魔王を殺しその力を奪い、至高なる存在へと至ること。ゼイオン様はまだ覚醒されたばかりですのでその衝動はとても小さいですが、これから徐々にその衝動――他の魔王を殺したくなる気持ちを自覚する事になるでしょう。特に同位の者に対してその衝動が強く出ます」

「物騒だな。その衝動は抑えられないのか? というか俺にはそんな衝動は無いんだが」

「可能です。衝動は、己が欲望に背を向けている方ほど強く感じるそうです。特に覚醒したばかりの魔王は欲望自体を自覚していないのでその傾向が強いですね。それなのに肉体と魂がまだ完全ではないため本来はダンジョンコアを破壊する事でしか殺せない筈の魔王もその時だけはまだ物理的に殺せる状態にあるため、昔は意味もなく魔王が死んでしまう事故が頻繁に起こっていたそうです」

「あれか……」


 もう一度チラッとアインを見る。監視役であるアインが転寝していた結果、俺達は危うくその結末に至るところだったのだろう。エレン達が理由もなく俺を含め回り全員を殺そうとしたのはそれが理由か。魔王としての本能が彼女達をそうさせたのか。

 俺だけその衝動が無かったのは知識が残っていた為だろう。それが無ければ恐らく俺はあの時あいつ等を殺していた。そう出来るだけの力をまだ持っていた。今はもうその力は失われてしまったが。恐らくあの力は生前の俺が持っていた力なんだろう。


「俺はまだその一歩を踏み出したくない――と言ったらどうする?」

「蹴って追い出します」

「そして僕の糧になって貰うかな?」


 即答だった。


「選択の自由は無しか。怖いな」

「誰もが通る道です。それとも死ぬ事を選びますか? 御自殺を希望でしたら強力致しますよ」


 御自殺って、おいおい。御をつけるような言葉じゃないだろうに。


「冗談。俺に自殺願望はない。ただ、今度は(ヽヽヽ)のんびりと自分の意思で自由に前へと進んでいくだけだ」


 そう言って、俺はその第一歩を踏み出した。

 魔王としての新しい人生をまるで祝福するかの様に、明るい日差しが俺を包み込む。吹き付ける風がとても肌に心地よかった。


「よくぞ言った!」


 それも束の間。


「それでは早速、我とダンジョンバトルをしようではないか!」


 一つ目の巨大な熊が俺の前に立ちはだかった。


「我は『凶』の魔王ゾ・ダージ・ャ・ゾルダー! 『刀』の魔王ゼイオンに勝負を挑む者であるっ!!」


 バッシィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 突然勝負を挑まれた、そう思った瞬間。耳に鳴り響いた衝撃音に遅れて世界が闇の光に包まれた。視界の中心から闇が広がり、世界から色を奪い去っていく。

 そして気が付けば、俺は宇宙空間のような場所に熊と二人だけで向き合って立っていた。

 いったい何が起こった?


「その驚き様はまさしく初心の反応! 恥に忍ばず待っていた甲斐があったな。御前の初めて、我が頂いたぞ!」


 そうニカっと笑った熊は、星の光が彼方に瞬く世界で熊がぶんぶんと腕を振るっていた。左右に振るだけでなく拳を握り前にワンツーパンチ。指をバキバキと鳴らし殺る気満々の挑発すらしていた。


「御前は、誰だ?」

「先程名乗ったであろう。覚えておらぬのか? 物覚えの悪い魔王だな。ならばもう一度名乗ってやろう。我は『凶』の魔王ゾ・ダージ・ャ・ゾルダー! 汝、『刀』の魔王ゼイオンと同じ赤鉄位の魔王なり。そして……」


 鋭く伸びた爪をギラッと輝かせながらゾルダーは俺を指さして言う。


「これより我と汝は己が造りしダンジョンをぶつけあい魔王としての優劣を決するのだ!」

「ダンジョンを、ぶつけあう? なんだそれは」

「それをこれから我が汝に説明してやる。そして有り難く思うがいい。最初のダンジョンバトルで説明を受けられるのは結構稀だぞ。普通は問答無用で回避できぬ勝負を挑まれる上に、一方的に叩きのめされ連戦連敗するのだからな。『夕凪』の魔王に感謝するがいい」

「『夕凪』? それは……」

「ああ、質問は無しだ。時間は有限だからな。時間がない」


 そう言って熊手を前に出しその風圧で言葉を遮ったゾルダーは、その後、細かな指の動きを何度かした後に一方的に説明を始めた。というか指の動きがきもい。熊の手でそんな動きが出来るとは思わなかった。


「ダンジョンバトルとは、文字通りダンジョンで戦うという意味である。但し使用するのはこのダンジョンバトルの中で造ったダンジョン。我々の命とも呼べるダンジョンコアがある人間達が入れるマスターダンジョンとは別の物である。

 ダンジョンバトルのルールは幾つか基本のルールがあり、バトル者同士である程度カスタマイズも出来る。今回は汝が初心という事で我の方で一方的に決めさせてもらったが、通常は挑む者と挑まれる者互いに事前に条件を設定しておく。今回の条件は汝が初心ゆえに短く簡単なものにした。


 ①ダンジョン構築時間は1時間。最大3階層まで。

 ②初期DPは5万。

 ③バトル形式は1時間の攻防戦。互いにダンジョンを攻め、そして守る。

 ④勝利条件はダミーコアの破壊。もしくはダンジョン占有率90%以上。

 ⑤時間切れの場合はダンジョン占有率と残存戦力、および残存DPの合計点で判定される。


以上だ。ちなみにこの説明を行っている間もダンジョン構築時間は進んでいる。そう、進んでいるのだ。だから汝はすぐにでもダンジョンの構築を始めた方が良いぞ。勿論、我の説明に耳を傾けながらな」


 そう言われて俺は慌ててメニュー画面を呼び出した。全体的に項目をざっと確認してみると『残り55分』という数字が表示されていたり、このダンジョンバトル用と思われるコマンドが幾つか増えていた。所持しているDPはゾルダーが言っていたように5万になっていたし、アイテム欄には捕らえた冒険者達も剥ぎ取った装備品も無かった。生成した筈のモンスターもいない。当然、俺の最強手札であるエスラもいない。ダンジョンすらまだ作られていない状態だった。

 まさに真っ新な状態……ゼロからのスタート。そう思いきや。


「にゃー」


 リリーが何もない空間の上をトコトコと歩いて俺の足にすり寄ってきた。


「ぬぬ? それは汝のマスターモンスターか?」

「ん? ああ、そうだが」


 創造召喚で呼び出すと同時にMモン登録を済ませていたリリーを腕に抱き、その首下を優しく撫でる。リリーがゴロゴロと鳴いて喜ぶ。耳がピクピクと動き「きもちいいよー」と物語っていた。


「ガハハハハッ。貴重な枠をそのような愛玩動物に使用するとは汝は変わった性格をしておるのだな。その選択を今まさに後悔しているのではないか?」


 その質問に俺は沈黙という答えを返した。

 別に俺は後悔はしていない。

 そもそも創造召喚で呼び出した存在はどういう扱いになるのか。リリーは猫である。普通なら動物枠というのが正解だろう。だが実際に創造召喚で呼び出しその情報を確認してみたところ、リリーは野良モンスターという扱いになっていた。ダンジョンモンスターの枠ですらなかった。

 野良モンスターはそのままだと魔王の配下ではないので自由に行動してしまう。それだけならまだいいのだが、フリーの存在という事は他の魔王も自由に手を出す事が出来るという事でもあった。つまり他の魔王の配下になるのもリリーの自由だし、最悪では殺されてしまう可能性もあった。折角、月に一度しか使えない俺専用スキルを使用して呼び出したのに、その結末はあんまりだろう。

 もちろん、その解決策を俺はすぐに幾つか考えついた。だが俺はリリーを手放す気はさらさら無かったので、最速で最も安全な方法を取った。それがリリーのマスターモンスター登録だった。


「さて、このダンジョンバトルの最大の特徴であるが、実は相手魔王に対して妨害行動が出来る様になっている。例えばこのように」

「!?」

「汝を攻撃してダンジョンの構築を邪魔すると言った具合にな」


 ぶっ飛ばされた俺に向けて熊がニカッと笑った。意識を構築中のダンジョンの方に向けていたので避けるのが間に合わなかった。

 リリーがゾルダーに対し毛を逆立てシャーっと威嚇する。


「ガハハハハッ。少し強すぎたか? すまぬな、加減するのは得意ではないのだ」

「――奇遇だな。俺も加減するのは得意じゃないんだ」


 一息で懐に入り込み、全力で拳をゾルダーの腹に向けて放つ。だが繰り出した攻撃は肉厚な筋肉の壁とやたらと固い剛毛に遮られほとんどダメージを与える事は出来なかった。


「ぐ、ぅ……硬いな」

「その意気やヨシ! だが如何せん、汝はまだ己を強化しておらぬ。もしくは知っていても後回しにしているな?」

「今、知ったばかりだ。強化はどうすれば良い?」

「敵である汝に我がそれを教えると思うか?」


 俺の腕を剛腕で掴み持ち上げる。倍近くある身長差に俺は宙吊り状態にされた。そのゾルダーの腕に蹴りを放つが全く効果なかった。


「――思わないな」


 握り潰されるのではないかという剛力で締め付けられる腕の痛みに耐えながら、それでもダンジョンの構築へと意識を向ける。まだ最初の段階――どのようなタイプのダンジョンをベースに造るかと言う選択肢の部分で止まっていた。洞穴、洞窟、鍾乳洞、巣、巣穴、巣窟などという選択の他、必要なDPや階層数といった細々とした設定項目もある。俺自身の命でもある本物のダンジョンを造った時とは異なるダンジョン構築ルールに戸惑っていた。


「ほう、それは何故だ? 我は汝にこのダンジョンバトルのルールを説明すると言った筈だぞ。それは『夕凪』の魔王からの依頼でもある」

「そこに御前の利はあるのか?」

「無いと言えば無いし、あると言えばあると言える」

「御前は俺を敵だと断言した。であるなら、俺に塩を送る理由はなんだ?」

「塩? なんだそれは。そんな物を送ってどうするんだ? 意味が分からない。あと、我は汝を敵とは言ったが、それは魔王全員に言える事でありあまり深く考えずともよい。そもそも我は今の汝に対し本当のダンジョンバトルを挑むつもりもないしその意味も無い」

「本当のダンジョンバトル? どういう事だ?」

「いずれ分かる。それよりも、今は我とのダンジョンバトルに集中するべきだな。ダンジョンは出来たのか?」

「そんなに早く出来る訳がないだろうが。腕の痛みで集中も出来ない」

「ぬ。すまぬ。やはり加減するのは難しいな。汝の腕を握り潰していたか」

「意識してやってた訳じゃないのか……がはっ。いきなり投げ捨てるな!」


 投げ捨てるというより地面に向けてぶん投げられた。手を離せば済む筈なのに、ぶんっと腕を振って離す。その結果は地面との大激突。魔王の身体じゃ無ければ絶対に死んでいただろう。受け身を取れるような速度じゃ無かった。


「簡単に敵に捕まえられた汝が悪い。迂闊に近づけばそのようになるという事を身を以て知る事が出来ただろう?」

「ダンジョンバトルするのにガチバトルも同時にこなさないといけないのか?」

「絶対と言う訳では無い。純粋にダンジョンバトルを行う者も多くいる」

「そう思わせておいて重要なタイミングで攻撃を仕掛けてくる姑息な奴は」

「当然いるな」

「だろうな」


 ゾルダーから距離を取りつつ、しかし互いの声が届く範囲に留める。その程度の距離など俺とゾルダーの現在の実力差を考えれば意味など無い気がするが、説明してくれると言ってくれている以上、ここから逃げる訳にもいかない。痛みには辟易するが、命には関わらないと分かっているので、そこだけは安心する事が出来た。だからこそ俺はゾルダーに攻撃を仕掛けた訳なのだが。


「それで? 自己の強化方法は教えてくれるのか?」

「我が教えるのはダンジョンバトルの事だけだ。もちろん教えられない事も無いのだが、これは個人差が大きすぎるうえに、このダンジョンバトルや本物のダンジョンで侵入者達を撃破せねば強化も出来ぬ。時間も無い事だし、今は頭の片隅にでも置いて目の前のダンジョンバトルに集中するがいい」

「その集中を遮っておいてよく言う」

「今知っておかねば、今後のダンジョンバトルで不利になるだけだぞ? その方が良かったか?」

「……良くないな」

「であろう」


 初っ端から頭を悩ませてくれたダンジョンタイプをようやく決めると、今度はモンスターの生成で頭を痛ませていた。モンスターガチャってなんだよガチャって。エスラを作った時の様に選択出来るんじゃないのか? どうしてシステムが違うんだよ、おい。

 ガチャを引くのに必要なDPは最低100から。上は今のところ1万DPガチャまであった。期間限定ガチャなんてものもある。それどころか、本物のDPを費やして引けるガチャまであった。こっちは随分と割高で1000DPから。本物のDPを使用した場合、そのDPは後で返ってくるのか? 返ってこないような気がする。

 とりえあず100DPを10回引いてみる。見事にカスモンスターっぽいのばかり出てきた。

 最弱と名高いゴブリンに、スライム、スライム、スケルトン、スライム、ピクシーラット、スライム、ゴブリン、幼ゴブリン、スライム。スライム多いな、おい。アイン補正か? 全然嬉しくない。


「数で攻めるも質で守るも汝の自由。なに、心配するな。生成したモンスターは次のダンジョンバトルに持ち込む事が出来る。しかも成長した状態を維持したままな。但し注意せよ。引き継いだモンスターは、その個体レベルや能力によって自動的にDPから引かれる事になる。あまり強い個体を引き継いでも次のダンジョンバトルでダンジョンを造るDPが不足する事態にもなりかねない。バランスが大事だぞ」


 という有難くもまた頭を悩ませそうな説明を受け、ガチャを引く手が止まった。今回限りのモンスターだったなら気兼ねなくガチャを引けたのだが、後々まで関わってくるとなると話は別だ。攻撃用指揮官と防御用指揮官に1万ガチャを2回引こうかと思っていたんだが成長と引継ぎを考えるなら一千ガチャや二千ガチャをたくさん引いて選択肢を増やし、長期的な視点で戦略を練った方が無難かもしれない。この一戦を捨てるという選択肢も出てきた。

 ああ、こういう時には酒が欲しいな。酒を飲んで頭を解きほぐしつつ少し酩酊しながら考えるのが心地いい。アイテム空間内にあるものをこの場に持ち込めるのなら酒をたんまり仕入れておき、敵と晩酌しながらダンジョンバトルを愉しむという事も出来たのに。相手を酔わせて勝つというちょっと姑息な手段も使えたのに。


「ああ、そうだ。先に言っておくが、後々の事を考えて今を捨てるという様な考えはせぬ方がいいぞ? 勝者と敗者の間には明確な差があるからな。負け続けている奴に勝っても旨味はほとんど無いというのもある。一戦一戦を全力で行わぬ者は容赦なく殺される可能性も出てくるので気を付けるがいい。まぁ、強すぎてもやはり問題がある訳だが」


 一度止まった手を動かし、思い切って1万ガチャを引く。酒スライムが出てきた。よっしゃ……って、うぉい!

 いや、外でも同じ1万DPだからもしかしたら出てくるかな?と思っていたんだが、本当に出てくるとは思わなかった。やはりアイン補正なのか……酒スライム、弱いんだよなぁ。どうしろと言うんだ。

 とりあえずダメ元で手元に呼び出してみる。お、召喚出来た。


「ほぅ……そこに気付くとは。流石だと褒めておくとしよう。そうだ。ダンジョンバトルで使役するモンスターは何もダンジョン内だけに配置するものではない。この場に呼び出し自身を守らせるのも、知恵者に自らの代わりにダンジョンを造らせたりモンスター達を指揮させるのものいい。もちろん幾つかのルールはある。再びダンジョン内に配置する場合にはDPが必要だし、転送も一度行うと一定時間行えなくなる。もっとも、普通は切り札であるマスターモンスターがその役を担うのだがな」


 マスターモンスターの使い道はそんなところだろうと俺もすぐに気が付いた。とりあえず後の祭りなので、懐にリリーと酒スライムを侍らせてガチャを引いていく。二匹にもガチャを一回ずつ引いてもらった。俺より良いモンスターが出た。ちょっと嬉しい。

 っと。酒スライムに名前を付けておかないとな。ちょっとだけ強くなるらしいし。ロマーネと名付けた。ロマ●コンティのように美味しくなりますようにと願って。きっと強くなるだけでなく美味しくなっている筈。

 ちょっと味見を――む、HPを示しているアルファベットが一段下がった。ちなみに味はまぁまぁだった。アインが飼っていた酒スライムB29の様にはいかないか。


「ず、随分と余裕があるんだな……(あのスライム、飲めるのか? だがスライムは確か……)」


 色々と偏りのあるモンスター軍団を一覧上で並べ替え(ソート)し、傾向と対策を練る。モンスターの特性に合わせてダンジョンを改造。エリア分けしたり、罠ガチャから『落とし穴』や『落石』の罠をゲットし配置。DPを消費する事でモンスター自身を強化する事も出来たが、DPが心もとないので今回は断念。代わりにモンスター密集地には『魔素散布』を行い、モンスター達が快適に暮らせる様にした。

 他にも、リリーが呼び出した当たりモンスターと『配下契約』し命令出来るようにする。彼女が指揮官だ。『小隊作成』して部下を指定。そうする事で部下モンスターは『配下契約』しなくとも彼女の命令にそこそこ従ってくれるようになる。

 酒スライムが呼び出した当たりモンスターはラスボスとしてコアルームに配置。あ、勝手に出ていきやがった。一か所に留まれない性格をしているらしい。さて、どうするか……明らかに戦力にならなさそうな幼ゴブリンでも置いておくか。どうせコアルームまで攻め込まれた時点で負けは確定しそうだし。5万DP程度で作成できるダンジョンに余計な場所など作れない。多少は分岐させるにしても、ちょっと虱潰しに探索されればコアルームに辿り着く頃には占有率90%を越えている……筈だ。


 突貫工事だったが大凡ダンジョンの形は出来た。残り時間は約20分。ちょっと小休憩がてら酒をチビチビと飲む。多少不味くとも酒は酒だ。気持ちがほんのりとしてくる。リリーもチロチロと舐めていた。意外といける口の様だ。

 残ったDPを注ぎ込みモンスターを増員する。と言ってもガチャを引くのはリリーとロマーネ。二匹のステータスを見る限り恐らく俺より絶対に運が良い。どちらもBランクという破格の性能だった。ひたすら100DPを引かせてみたが、そこそこ納得の結果を叩き出してくれた。

 リリーが引いたモンスターは主に動物系。ワイルドラビット、ホーンラビット、ダンジョンリンクス、ケイヴスクィーラル、リトルティガーホーン、ミニフォックス等々。小動物が多いが小回りがきくので斥候に重宝するだろう。リトルティガーホーンは攻撃力が少し高いみたいなので攻撃メンバーに加えてもいいな。

 ロマーネが引いたモンスターは、やはりというかスライムばかり。但しノーマルではなく水属性持ち。ウォータースライム、アクアスライム、ブルースライム、バブルスライム、リキッドスライム等々。何がどう違うのかステータスを見る限りでは分からなかった。バブルスライムだけは弱い毒を持っているみたいなので、罠とセットにしておくか。

 モンスター部隊を編成し配置していく。攻め手はリリーを中心に。守り手はロマーネを軸に。俺自身は全体の戦局を見る係だ。どうやら相手のモンスターを倒せばDPが手に入るみたいなので、必要に応じてリリーかロマーネにガチャをお願いしてモンスターを配置していく予定。

 んくっ、んくっ。ぷはぁ。一仕事をした後の酒は美味い。

 っと。つい飲み干してしまったか。


「そ、そろそろ時間なのだが……本当に良かったのか?」

「ん? ああ。準備はなんとか間に合った。こっちはいつでもいいぞ」

「そうか。ならば……」


 不敵な笑みを浮かべていた俺を見たからなのか。ソルダーが大きく息を吸った。


「ダンジョンバトルを始めようか!」


 そう言い放ち、ゾルダーが咆哮した。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 大気がビリビリと震え、強風が俺達の身を襲う。ゾルダーの咆哮が風の障壁を生み、先手を取ろうとした俺達の足を強引に止めた。


「ぐぅ、う……はぁっ!! 開始と同時に攻撃とはやってくれる。だがこの程度では!」

「ガハハハハッ! それだけの数のモンスターをこの場に呼び出しておいて良く言う! 汝こそ我を攻撃する気だったのではないか?」

「さぁ、どうだろうな!」


 俺の周囲には先程リリーが呼び出した小動物系モンスターがズラッと並んでいた。ケモナーが見れば絶対に歓喜しそうなモフモフの群。熊を相手取るにはちょっと体格差に問題があるが、目的はゾルダーを倒す事では無くダンジョンから意識を反らせる事なので戦力的には十二分である。

 リリーが「ニャー」と鳴く。その命令を受け、ワイルドラビットが「キュッ」と、ホーンラビットが「キューッ」と、ダンジョンリンクスが「キュキュッ」と、ケイヴスクィーラルが「チュー」と、リトルティガーホーンが「がおー」と、ミニフォックスが「コン」と鳴き、ゾルダーの回りを取り囲む。それと同時にダンジョンの方でも小隊が動き出し、せっせと仕事をし始めた。

 リリーの命令をちゃんときくか少し不安だったが、どうやら大丈夫の様だな。ならばこの場はリリーに任せて俺はゾルダーの攻略部隊の対応をするとしよう。


 斥候は蝙蝠編隊だった。光源を一切作らなかった俺のダンジョン内を、超音波という手段を用いた索敵で難なく進んでいく。初っ端からちょっとあてが外れてしまった形になった。

 暗闇に潜ませていたスライム達を退避させる。当初の予定では入口付近でいきなり奇襲&暗殺を行い敵の斥候に痛打を与える予定だったのだが、蝙蝠相手には難しい。一応、天上にもスライムは忍ばせていたが、それはあくまで地上で足を止めた敵に頭上からボトッと襲い掛かる事を目的としたもの。素早く動く相手にそれはちょっと厳しいだろう。休憩がてら天井にとまってくれれば攻撃のしようもあるが、ダンジョンに入ったばかりでそれは無い。それ以前に、恐らく超音波索敵でスライム達は早々に発見されてしまっている。目的は達成できないのは明らかだった。


「鍾乳洞タイプのダンジョンか。我のモンスター達では少し動きづらそうな場所だな」

「御前と相性の悪そうなダンジョンを用意させてもらった」


 地面は大きな凹凸で動きを阻害し、足元は滑りやすく、見渡しも良くなく、そして少し暴れれば自然と天井から尖った鍾乳石が落ちてくる。死角は多くスライムの隠れ場所は多数。スライムでなくても隠れられる場所は無数。攻めてくるのが人型タイプや動物タイプのモンスターなら、そこそこ有利に戦闘を進める事が出来るだろう。その分、ダンジョンの初期構築とカスタマイズで結構なDPを使う羽目になってしまいモンスターの数を揃えられなくなったが、そこは後々入ってくるDPに期待。


「ほぉ……我との相性だと? 汝とは今日初めて会うというのに何故そう思った? 事前に『夕凪』の魔王から我の事を聞いていたのか?」

「『夕凪』の魔王というのがいったい誰の事を言っているのか知らないが……これはただの勘だな」

「勘、か。そんなものに自らの命を委ねているといつか足元をすくわれる事になるぞ」

「まともな知識も経験も無いんだから勘に頼るほかないだろうが」

「それにしては汝からは全然初々しさの欠片も感じられぬのだが……普通はもっと馬鹿な事を色々と言ったりしでかしたりするものなんだぞ。例えばダンジョンを造るのに没頭して罠も無いモンスターもいないダンジョンになってしまうとか、逆にモンスターの作成を先に行いついついムキになって全DPを注ぎ込んでしまうとか。説明を聞くばかりで一切ダンジョンを造らず、制限時間がきてバトル開始と同時に敗北した者もいたな」

「……一応聞いておくが、そういう馬鹿はどれぐらいの割合でいるんだ?」

「ふむ、そうだの……恐らく7割はかたいな」

「ちょっと多すぎないか!?」

「そうか? 生まれたばかりの魔王というのはほとんど赤子の様な状態なのだぞ? 優先順位も必要な事も分からぬ知らない事ばかりなのに、そこにいきなりまた未知の事態に陥る。まともに対処できる方が稀だろうに」

「それはそうだが……俺が最初に会った魔王達はそこまで馬鹿には見えなかったぞ」

「それは汝等がちょっと特殊だっただけなのだろう。会話が出来るなら十分マシな方だ。我の時は意思疎通すら不可能な植物や炎の塊だったぞ」

「炎の塊って……意思疎通すら出来ないのに、それでいったいどうやってダンジョンを造らせるんだ?」

「そんなの我が知る訳がないだろう。大方、ひたすら長い時間をかけて周囲を観察し失敗を重ね自らが出来る事を探り出していくんだろう」

「気の長い話だな。ちなみにそいつの今は?」

「うむ。死んでおるな。あやつは実に良いカモであった」

「そうか。残念だ」


 そんな風に表では暢気に会話を交わしつつ、裏では激しいダンジョンバトルが繰り広げられていた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




『ゾルダー様。斥候の蝙蝠達がやられました』

「なにぃ? 本当か? 確認する」


 我が所有するマスターモンスターの一角。三獣騎の中で最も防御に優れているベアザーグからの報告からそんな報告が上がってきた。ベアザーグは守勢の要。ダンジョンの守りを任せている。それ故にダンジョンバトルの序盤はあまりする事がないので、全体のサポートを任せていた。

 ベアザーグの報告を疑う訳では無いが、すぐに蝙蝠達と意識を繋ぐ。繋がらなかった。

 『刀』の魔王が造りしダンジョンのマップを確認する。索敵したエリアは一定時間見る事が出来る。占領まではしていないのでいつまでも見れる訳では無いが、敵のダンジョン内に放ったモンスターが得た情報はすぐさま魔王が見れるマップに反映される。蝙蝠達を放った当初は超音波探査で一気に広がっていたのに、今はそれがない。


「こちらでも確認した。意外にやるようだな。どのような手段で殺られたか分かるか?」

『申し訳ありません。ただ全機が一度に全て交信を途絶えさせたので、何らかの魔法を使ったのかもしれません』

「ぬぅ、そうか。ベアドーズとベアンゼブには注意せよと伝えよ」

『はっ。直ちに』


 斥候に索敵されるのを嫌ったか。それとも初めから予想していて対処された? まさかな。ありえん。

 投入した蝙蝠の数は7。2匹や3匹を一度にというのなら分かるが、7匹同時というのは驚きだ。どんな手品を使ったのか。蝙蝠達は少し距離を開けて飛ぶ様に命令している。別の個体が攻撃を受けたらすぐに散り報告する様にも命令している。それが報告する暇もなく殺られたという事ならば、確かにベアザーグが言うように魔法という可能性を疑いたくなるだろう。

 だが魔法はそう簡単には使えない。ガチャは運次第とはいえ、最初から高位の魔法を使えるモンスターは限られている。一番安いガチャではまず魔法を使えるモンスターなど出てこない。その十倍するガチャなら可能性はあるが、レベルが1のままなら大した魔法は使えない。このルールの中で引ける最高のガチャならばあるいは使えるかもしれないが、切り札ともいえるそれを序盤からいきなり使うか? それをするぐらいならマスターモンスターを疑った方が早い。とはいえ、それでもやはり序盤からいきなり使うとは思えない。

 となれば『刀』の魔王が固有で持っている能力――いや、それこそありえないか。

 一端、様子を見るか?


『親父、らしくないぜ。いつも通りガンガン行こうぜ』

『そうだぜ大将。うだうだ考えて失敗するぐらいなら突っ込んで玉砕した方が野獣ってもんだ。命令をくれ大将! 玉砕だ!』

『玉砕してどうするのですか。突撃でしょうに』

『おっと、そうだったな。悪ぃ悪ぃ』


 我が手塩にかけて育てた我の半身とも呼べる二匹が気合十分と言わんばかりに咆哮する。

 そうだな。我は何を頭を悩ませているのか。怖気付いたか? ありえん。敵は新参の魔王。そんな輩に我が力で負ける筈がない。我が子達が負ける筈が無い。


「……行け、ベアドーズ。ベアンゼブ。そしてその力を示してくるがいい!」


 信じるのだ。そして勝利を掴むのだ。これは初めから勝ちが約束されたバトル。


『待ってたぜ親父! 了解だ!』

『よっしゃ! 逝ってくるぜ大将! 骨は後で拾ってくれよな!』




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 斥候の蝙蝠達は意外にもゴブリン達が撃破した。どこから持ってきたのか超火力の火打石による閃光攻撃で気絶させられた蝙蝠達はボトボトと地面に落ち、お腹が空いていたんだろうゴブリン達が我先にと蝙蝠達に齧り付きムシャムシャと食べていた。ただのお馬鹿な雑魚モンスターかと思っていたのだが、どうやら意外と知恵は回るらしい。

 索敵したエリアは見る事が出来る。それは俺の方から送り込んだ斥候のスライムによって判明した。

 また、敵の位置はモンスターの誰かが認識した時点で赤い点となって表示されるらしい。今もそのスライムは洞穴の天井に張り付いてコソコソとズルズルと忍び進んでいる。恐らく見つかった時点で殺されるだろう。それまでコソコソ頑張れスライム。全ては御前の触手にかかっている……訳では決して無いが、情報は多いほど良いからな。


 ゾルダーのダンジョンは洞穴タイプで、下に下にと向かっているらしい。俺の方はというと、鍾乳洞タイプのダンジョンで、入口付近は基本的に上に上にと向かっている。

 滑りやすいのに登り坂。時々ツルっと足を滑らせた子熊があちこち身体をぶつけながら入口付近まで戻される光景は見物だった。最初はいきなりの大部隊の突進で驚いたものだが、相性というのはやっぱ大事だな。ツルツル滑り落ちていく子熊達の姿がどこかコメディカルで面白い。尚、提供はお馴染み|天井に張り付いているスライム《ごらんのスポンサー》達だ。彼等の目を時々盗んで見させてもらっている。


 斥候の蝙蝠達が過ぎ去った後に配置についてもらったスライム達には、時折に天上の鍾乳石を溶かして落としてもらうというお仕事を命じていた。しかも敵のいないところにも落とすランダム性も持たせて。そうする事で、このダンジョンは自然の落石が頻繁に起こるという特徴を持っているとゾルダーに誤認させる事が出来る。何故ならそれだけの数の罠を配置するには明らかにDPが足りないからだ。

 だが、ただ単に鍾乳石を落としても疑われるだけなので、それらしい演出も実は行っている。それがスケルトンのお仕事。二階で大きな木槌を振るってもらい、音と振動を起こしてもらっていた。実際にそれで鍾乳石が落ちる訳では無いが、それっぽい音と振動が断続的に不規則に鳴るのでゾルダーも誤認してくれる事だろう。

 尚、指定したモンスターの目と耳を一定時間共有出来るのはゾルダー情報だ。かなり便利。というかモンスターにプライバシーは無いのか。


「くっ、長い登り坂だな。だが道は見えた。第二陣を突撃させよ」


 と、わざわざ俺にも聞こえる様にゾルダーが命令を出していた。わざと揺さぶりをかけているのか、それとも俺を侮っているのか。十中八九、後者だろう。初心者に対する配慮とも取れない事もないが、それは相手を舐め過ぎである。

 第一陣の子熊軍団に続き、第二陣の熊軍団が俺のダンジョンに侵入した。同じガチャを引いているなら熊一択という軍団を編成する事など出来ない。過去のダンジョンバトルで呼び出したモンスターを引き継いでいるんだろう。

 四足歩行でダンジョンをのっしのっしと進む超攻撃的な部隊。生半可なモンスターでは彼等を足止めなど出来ない。ただ蹴散らされるのみ。その分、侵攻はゆっくりとしているが着実に制圧されていくのは目に見えていた。角度のきつい滑りやすい坂が目の前に立ちはだかっても四足歩行で堅実に前進する熊達はなかなか滑らない。例え滑ったとしても後ろにいる熊がすぐに支えるので多少速度を落とすぐらいにしか意味を成していなかった。子熊達とはえらい違いだ。

 防御力も高いのか、落石攻撃もあまり効果が無かった。天上がそれほど高くない事もあって速度が足りない。殺傷力が足りない。胴体に当たっても熊達はケロッとしていた。

 随分と手強そうだ。こいつらを手持ちの駒で撃退しなければならないのか……。


「覚えておくといい。モンスターの中には近くにいる同族の能力を底上げしてくれる者もいる事を。そしてそれらの能力は魔王が付与する事も出来るという事を。最初は出来る限り種族を統一し、かつ指揮官クラスのモンスターを作るのに専念するのが勝利への近道だろう」


 隠れて機会を窺っていたスライム達が見つけられると同時に圧倒的な火力で屠られていく。子熊ならばまだ数匹で取り囲んで倒す事も不可能ではなかったが、熊は無理だった。むしろ子熊を倒した影響か狂暴化し、ただでさえ高そうな攻撃力がアップしていた。


「スライムでは苦しいか……」

「違うな。スライムでも苦しいだ。圧倒的な力の前にはどんなモンスターでも屈するのみ。小賢しい罠など彼等の前には無意味。このまま押し切らせてもらおう」

「素人相手に容赦ない。少しは手加減しろよ」

「生憎とこれ以外の手段を我は持ち合わせていない」


 目の前でどんどん攻略されていく我がダンジョン。エリアが完全に制圧されるとミニマップ上でそのエリアが蒼色から朱色に変化する。その逆も然り、斥候のスライムがゾルダーのダンジョン奥へ進むと、朱色だったエリアが徐々に蒼色に変化していく。中間では完全に色が無くなる、もしくは透過する。完全占有は相手モンスターが付近にいなければ出来る。味方モンスターが多いほど占有に時間が掛からない。

 む、その斥候スライムが発見され倒された。これは失敗したな。占有状況を見れば近くに敵がいるかどうかが分かってしまう。完全に隠密と言うのは無理なのか。


「攻めて来ぬのか? 見ての通り我はモンスター寄りにDPを使用しているので、ダンジョンは狭く守りも少ないぞ?」

「それは良い事を聞いたな。だがそうしたいのは山々なんだが、ちょっとまだ準備が整っていないんだ。もう少し待ってくれ」

「時間が有限である事を忘れないようにな。決着が付かなければより多くのエリアを占領した方が勝利する事が多い。モンスターを倒してもポイントは入るが、その場合はDPも手に入るため実は評価が低い」

「……あいつらを倒せと? 無理言うなよ」

「ガハハハハッ。そうだろうな。我はあれらを全滅させられた事など一度として無い。我自慢の部隊だ」

「名前は付けているのか?」

「ああ、あるぞ。ベアーズレギオンと言う。恰好良いだろう?」

「そうだな。というか羨ましい。俺もそのうち似た様な部隊を作りたい」


 出来ればスライム以外で。スライム軍団ならアイン補正で簡単に作れそうで怖い。

 揃えるならやはり猫が良いな。モフモフ的な意味も込めて。その愛くるしさで敵を魅了し篭絡していく魔性の猫部隊。よし、この線でいこう。俺は猫の王になる! リリーを抱き寄せながら俺は心に誓った。

 何をするにしても、まずはこの戦いを乗り切らなければ話は始まらない。力で捻じ伏せてくるゾルダーの熊部隊は非常に厄介だ。しかもゾルダーの独り言を聞くに、あの中にはゾルダーのMモンが二匹も混じっているとか。まともに戦っても勝ち目は薄い。

 やはり奇策に頼る他ないか。


「ゾルダー」

「ん? 質問か? なら少し後にしてくれ。我は今、忙しいのだ」

「そうか」


 謝っておこうかと思ったんだがな。その原因の対処でどうやら忙しい様だ。

 ゾルダーの熊達は既に1階の最奥まで到達し、現在必死に壁をよじ登っていた。一応、梯子とロープを用意していたのだが、それらはついつい人間サイズで作っていたので、熊達の体格では利用する事が出来なかった。梯子もロープも使い慣れていないという事もあるが、DP不足でついDPをケチってしまったため耐久が低く、熊達の体重を支え切れず早々に壊れた。壊れた時に落下し被害を与える事が出来たのは嬉しい誤算と言うべきか。

 それにしても、階層間の移動にまともな移動手段を設置しなくても良いんだな。ちょっとした実験だと長い縦穴を作る事も可能だった。横穴を作らなければその長い縦穴が一つの階層と見なされるというのも確認済。高さ制限はあったものの、立体的なダンジョンも作る事が出来るようだ。

 但し、今回はそこまでの事はしていない。精々が一番低い所から一番高い所までを坂で繋いで、次の階層への境を縦穴式にするぐらいである。ちなみに高さ制限は全階層でほにゃららという訳では無く、階層ごとに取り決められている様だ。もちろんまだまだ検証不足なのでそれが正しいとは限らない訳だが。


 二階層もやはりひたすらに登り坂が続く俺のダンジョンに、ゾルダーがちょっと辟易している様だった。熊達に壁をよじ登らせる為に色々と指示をしていた手が、最初の熊が壁を登り終えた時に一瞬止まっていた。スライムカメラからの映像でも、最初に壁を登り終えた熊が苛立ちからか地面をガンガン殴っていた。ご愁傷さま。

 お、ゾルダーがじゃれつく俺のモンスター達を愛で始めた。現実逃避している。

 俺がゾルダーに仕掛けた愛くるしいモフモフ軍団は、ゾルダーの巨体にしがみ付いたり、頭を擦り付けて甘えたり、頭や肩といった場所を寝床にして欠伸をしてたりしていた。敵意が無ければモンスターもペットの如く。それを体現するかの様にモンスター達は愛想をたっぷりと振りまきながらゾルダーに群がっていた。

 それでいて時折にじゃれつく動作でゾルダーの腕や指の動き――ダンジョン操作を妨害する。俺が脳内で全て完結しているのに対し、ゾルダーの場合はどうやら目の前に画面っぽいものを表示させ、指でつついたり腕を振ったりして操作している様だった。仮想タッチパネル方式とでも言えば良いのか。熊がタッチパネルを操作する光景はなんとも違和感が半端ないが、まぁそういう事もあるのだろう。俺達ダンマスだし。


「リリー、俺はそろそろ本格的に潜る。何かあったら頼む」


 暫くは大丈夫そうだと感じ、俺は次の行動に移る事にした。

 奇策と実験。

 前者はこのバトルを勝つために。後者はどちらかと言えば俺の欲望のために。

 俺は動き出す。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




『いつつ……味な真似をしやがる。まさかデストラップとは思わなかったぜ。あいつらには悪い事したな』

『損失2を確認しました。これは痛いですね。死んではいないようですが、前線に復帰させるには時間が足りないでしょう』

『くっ! 親父、俺達はどうすれば良い!?』


 我が子達が焦っている。それはそうだろう。我も少し焦っていた。


「少し待て。一時的に壁登りのスキルを付与する」


 バトルを重ねていれば相手のダンジョンが断崖絶壁の山であったり水の中だったりする事は少なくない。少なくは無いが、やはり赤鉄位の魔王達の中でそういうダンジョンを作り上げている者はそれほど多くない。何故ならコストが非常にかかるのと、他の魔王達に嫌煙されがちになるからだ。そして何より、守るのは良くても攻めるのに苦労する事になるからだ。

 そういうダンジョンを造る魔王は、援助をしている後ろ盾が裏で良からぬ事を考えているか、それとも魔王本人が拘りを持っている事が多い。ダンジョンバトルに仮想DPではなくリアルDPを注ぎ込む事は出来る。だがそれはほとんど一時的なものだ。モンスターを作るのにリアルDPを使うのであれば後に残す事も出来る。が、ダンジョン構築に使用する場合にはその限りではない。ダンジョンバトルをする度に毎回リアルDPが必要となってくる。

 経験を詰むためのダンジョンバトルでマスターダンジョンを成長させる為のリアルDPを大量に消費するのは得策ではない。故に、それ以外で使用するDPを減らすのが一般的だろう。モンスターや罠の数を減らしたり、我の様にダンジョンの規模自体を狭めにするという手段を取る。それで浮いたDPを自らが拘る部分に注ぎ込む。ダンジョンを水で満たす、強いモンスター達を引き継ぐ、などのように。

 ダンジョンバトルでは守りを固めるよりも攻め手を増やした方が良いとされている。守っていてばかりでは勝つことなど出来ない。守りやすい地形で敵を待ち構え撃破点を稼ぎ勝利を狙うという手もあるが、残念ながら自陣営で敵を撃破した時に入るポイントは少ない。撃破時に入手できるDPは同じだが、ダンジョンバトルの勝敗を決するポイントは低いのだ。攻めてこそダンジョンバトル。だからだろう、我の様に攻撃型のモンスターを揃えている魔王が多いのは。


 攻めるにしても、相手のダンジョンと自陣のモンスターとの相性が悪いと攻めは難航する。断崖絶壁や水中は別にしても、狭いダンジョンであれば巨体モンスターは身動きが取れないし、洞窟型ダンジョンであれば暗闇でも視界がきくモンスターでないと格好の的になるだけだ。

 だが、あらゆる状況に対応できるモンスターは存在しない。それ故に、足りないものは補うのがほとんどだ。例えば滑りやすい地面に対応できるように防滑スキルを付与したり、光源がない場所でも視界を確保できるスキルを付与したり。魔王にはそれが出来る。

 もちろん代償は必要だ。代償とはDPである。そして、付与する規模に応じて必要なDPも異なる。効果が高ければ高いほど、永続性があればあるほど、付与するモンスターに適性が無いほど必要なDPは増えていく。逆を言えば、効果を必要最低限にして一定時間の付与という設定にすれば必要なDPは結構おさえられる。このダンジョンバトルならば最大で一時間あればいい。実際に我は我が子達にその一時スキルを付与していた。

 そして今。我は別のスキルを我が子達に付与する必要があった。それが壁登りのスキル。事もあろうに『刀』の魔王は階層間の境を壁に設定していた。階層移動用に一応の手段としてコストがほとんどかからない梯子とロープを用意してくれてはいたものの、それは『刀』の魔王基準――つまり人間サイズであり熊達には非常に使い難いものであった。そしてそれは罠でもあった。

 我が子の中ではそこそこ器用であるゼアンゼブが我の指示も待たず先陣をきって梯子を登ったところ、半ばでバキッという音と共に梯子は砕けた。熊の体重を支えられなかったというよりも、必死にしがみ付く熊の膂力に負けて握り壊されたというべきか。落ちた先にいた熊が慌てて受け止めたものの、その熊のサポートに動いたもう一匹の熊が衝撃で足をツルっと滑らせてしまった。その熊に巻き込まれる様にしてもう一匹も足を滑らし、そして二匹は長い坂をゴロゴロと転がっていった。その様を我等はただ見ている事しか出来なかった。

 ロープも恐らくは罠だろう。そう結論を出すのに時間はさしてかからなかった。


「ゼアンゼブ、ゆけ。時間は30秒だ」

『大将、短すぎだぜ! だがそれは大将がそれだけ俺に期待しているって事だな! よっしゃ、逝ってくるぜ!』


 問題は、熊に壁登りのスキルを付与する際の必要DPが多いことだろう。もちろんそのスキルがなくとも熊は壁登りは出来ない事も無い。だがこの滑りやすい洞窟では話が別である。また余剰DPが少々心もとないというのもあった。余力が全く無いのは問題だが、残しすぎるのも問題である。そういう部分の微妙な匙加減はやはり経験を詰むしかない。

 果たして『刀』の魔王はどれだけの余力を残しているのだろうな。新人魔王の場合、大抵は全部使いきっている。敵を倒せばDPが手に入るので、それをあてにしているのがほとんどだろう。もしくは、そもそも知らないが故に何も出来ないかだ。

 それは兎も角、今、我のDPは心許ない状態にある。当初の予定ではもっと敵を蹴散らしてDPをガツガツ稼いでいる予定であった。だが思ったよりも敵の数が少なく、しかも雑魚ばかり。完全に予想が外れた。もう少し攻めを意識した構成にしてくると思っていたのだが。存外、臆病な性格をしているのだろう。


『25……26……27……っしゃ! 登り切ったぜ大将!』

「ああ、見えている。で、上に敵はいるのか?」


 そう言いながら、視界をベアンゼブのものに切り替える。そして敵の姿が無い事を我自身も確認する。


『いや、いねぇな。だが……』


 ……そしてうんざりした。また、登り坂。しかも今度は、障害となりそうなものがほとんど存在しない随分と見通しの良い登り坂だった。

 だが真に我が驚いたのはその後に見た光景だった。ゼアンゼブが振り返る。そして絶句した。下からでは分からなかったもの、特大の罠が待ち受けていた。

 鋭く尖った鍾乳石が滑り落ちてきたモンスターを待ち受けているという光景。明らかに自然では造られないだろう横向きの針山。串刺しのトラップ。この第二階層が何故障害物が少ないのか、それを見た瞬間に我は理解した。第一階層が凸凹した地面に何度も殴打されて滑り落ちていくのに対し、第二階層では障害物が全く無いので足を滑らすとただただ加速していく事になる。そしてその先に待ち受けているのは凶悪なデストラップ。滑り落ち、空中に投げ出され、そしてズブッと突き刺さる。壁を登っている時には次の第二階層でも足を滑らしたらやはり入口まで戻されるのだろうなと思っていたのだが、どうやらこの新参者は中々に容赦がない様だ。


「――ゼアンゼブ。壊しておけ」

『あいよ』


 もっとも、目に見える罠をそのまま放置する訳も無いがな。

 ゼアンゼブが大きく跳躍し横向きの鍾乳石に突っ込む。両腕を組み、落下に合わせて思い切り振り下ろす。アームハンマーの一撃。


『おいおいゼブ。こっちの事も考えて壊せよ。でっけぇ破片が頭にぶつかったぞ』

『それぐれぇ避けよろドズ』

『無茶言うじゃねぇよ! こちとら必死こいて壁登ってる最中だぞ! 落っこちたらどうすんだよ』

『んじゃちっと待ってろ。すぐにこれ片付けっからよ』

『バカやろう、こっち優先だろうが! 時間制限あるの忘れてんじゃねぇっ!』

『悪ぃ。忘れてた』


 そこが敵地である事も忘れてほしくないのだがな。

 ベアンゼブの瞳に落ちていく鍾乳石が映る。それはピンポイントで真っ直ぐベアドーズに向けて落ちていた。

 しかしその攻撃はベアドーズにも見えており、今度はぶつかる事は無かった。


「やはりこのタイミングを狙って攻撃を仕掛けてきたか。すぐに潰せ、ゼアンゼブ」

『大将、俺あそこまで飛べねぇ』

『石でも投げたらどうだ?』

『お、そうだな。ちょうどいっぱいある事だしな。よし、この尖ってるヤツで良いかな? うりゃ!』

『ビンゴ。なかなかやるじゃねぇかゼブ……って危ねぇっ!?』


 一難去ってまた一難。狙いすましたかのようにまたベアドーズの上に尖った鍾乳石が落ちてくるというハプニングがあったものの、無事に熊達は一匹も欠ける事無く壁を登りきる事が出来た。そして最初に行ったのは坂を砕いて平坦な場所と落下防止用の石山を作るという肉体労働。鬱憤や怒りを晴らすように我が子達は暴れに暴れていた。


『お気持ちは察しますが、それぐらいにしておいた方が。それよりゾルダー様。申し訳ありません。半分まで侵入を許してしまいました』

「なに?」


 守りを任せていたベアザーグからの突然の報告。少し驚いた。我も時々占有度などを確認し敵方の動きを注視していたのに気付かなかった。


「それで敵はどうした?」

『もちろんすぐに撃退しました。しかし次があっても不思議ではありません』

「何があった。詳しく報告せよ」 


 ベアザーグの報告を聞くと、ダンジョンバトル開始時からずっと少量の水が流れ込んでいたらしい。もちろんすぐに堰き止めて警戒していたのだが、水の中を四六時中調べている訳では無かった。

 時を同じくして天井を伝ってコソコソと侵入していた敵方の斥候。ようやく居場所を突き止め潰した時、それは既に仕事を終えていた。

 『刀』の魔王ゼイオンの狙い、それは水底から無数の穴を地面とほぼ平行に開け通り道を作る事。天井の賊にこちらの目を向けさせている間に別の賊が――恐らく水との相性の良い属性持ちのスライムだろう――地中を溶かして道を作る。堰き止められた水の溜め池の中に潜まれば発見するのは容易では無いし、作った穴の中に潜まれればもはや穴を発見しない限り見つける事は出来ない。もちろんそのまま穴の中に留まればエリアの占有度に影響を及ぼすので何者かが近くにいるという事は分かるのだが、恐らく天井の賊を潰した際にすぐに撤退したのだろう。その時にはもうダンジョン半ばまで道を作り終えていたんだろう。

 スライムは無形。形を持たない。それ故に細い道でもほとんどない隙間でも通り抜ける事が出来る。煉瓦造りのダンジョンなど、煉瓦と煉瓦の間にちょっとした隙間さえあればスライム達はダンジョンの構造を無視して自由に隣の通路へ移動する。逃げる時もそうだ。地面にほんの小さな隙間さえあればそこを通って隙間とも言えない場所に逃げ隠れする。意外に厄介な存在なのだ。

 侵入はあっという間だったという。幸いにしてその隠された進入路は途中で行き止まりであり、またその場に防衛モンスターがいなかった事で急激に占有度が上がったのですぐに発覚した。しかしいくら探しても見つからなかったため、地面を殴るなどして衝撃を与え反応を探ったところ割れた地面から水が流れ出てきた。

 堰き止めた筈の水が何故、そんなところまで流れ込んでいるのか。答えに辿り着くのは一瞬だった。


「味な真似をしてくれる」


 だがこれで分かった。あの『刀』の魔王は間違いなく知系統。己の知に絶対の自信を持つ魔王。であれば一騎当千の強力なモンスターは間違いなくいない。

 今回のダンジョンバトルで使用できるのはたったの5万DP。その5分の1のという膨大なDPを使用する事で強力なモンスターを手に入れる事が出来る。間違いなく切り札になるだろうモンスター。『刀』の魔王がもしその1万DPモンスターを生み出しているのであれば、恐らく厳しい戦いになる。我はそれをずっと警戒していた。何故なら、我が子にはその1万DPモンスターがいないからだ。

 マスターモンスターであるベアドーズ達のベースは2千DPモンスター。我が魔王としての生を歩み始めたばかりの頃に生み出した古参のモンスターである。そして、今尚生き残っている数少ない個体でもあった。

 ただ、ダンジョンバトルで生み出した仮想DPモンスターをマスターモンスターにする事は普通まずしない。リアルDPではもっと強力なモンスターを生み出す事が出来るし、DPの上限もないからだ。それなのに何故、我はダンジョンバトルのモンスターをマスターモンスターにしているのか。その理由は、ダンジョンバトルで生み出されたモンスターはダンジョンバトルでは絶対に死なないからである。

 一時的な死はあっても、ダンジョンバトルで死んだモンスターはバトル後に復活する。但しそのルールに適用されない者がいる。それはマスターモンスター。外から連れ込んだマスターモンスターはそれが適用されない。もしマスターモンスターがこのダンジョンバトルの戦いの中で死んでしまったら、その時は本当に死ぬのだ。


 マスターモンスターは非常に便利な存在だ。リアルダンジョン、仮想ダンジョン、魔王の住む世界、その3つの世界を行き来する事が出来る唯一の存在であり、また魔王の権限の一部を与える事が出来る特別な存在。

 リアルダンジョンに生み出したモンスターは侵入者が訪れないと成長はほとんど期待できない。もちろんDPを与える事で能力的に成長させる事は出来る。だが経験だけはどうする事も出来ない。ダンジョンの外に遠征に行かせるという手もある事にはあるが、ダンジョンの外では魔王の強制力は働かないし、状況を知る術も基本的にない。それ故に外に放ったモンスターが帰ってくる保証もなく、死んだかどうかも知る事が出来ない。当然ながら魔王の生命線でもあるDPも手に入らない。それだけでなく、下手をすれば大量の侵入者達がやってきてしまい、ダンジョンコアを破壊される危険性がぐっと跳ね上がる事になる。モンスターをダンジョンの外に放つというのはリスクに見合わない行為なのだ。


 リアルダンジョンに住むモンスターを成長させるのは容易な事では無い。だが、そんなモンスター達によって魔王自身の現身でもあるダンジョンコアは守られている。魔王が直接リアルダンジョンに赴く事は出来ない。よって、強いモンスターを生成し成長させるという行動は何よりも優先すべき課題でもあった。

 しかしマスターモンスターだけはその問題を解決できる。指名できる数に限りはあるものの、マスターモンスターはダンジョンバトルに参加する事が出来る。命をかけた戦いを経験する事ができ、戦いの中で得た成長を外でも活かすことが出来るのだ。

 だが、先にも述べたように外から連れ込んだマスターモンスターはダンジョンバトルの中で死んでしまうと本当に死んでしまう。ダンジョンバトルで生み出したモンスターが引継ぎを行う事で生き返るという事に慣れてしまい、ついついその事を忘れてしまい貴重なマスターモンスターを失ってしまうという魔王は意外に多かった。かつての我も、それを幾度も経験した。分かってはいても貴重なマスターモンスターを投入せざるをえない戦いというのもあるのだ。そして後になって悲しみに暮れる。何度味わっても嫌なものだった。


 そこで我は考えた。ならばダンジョンバトルで生み出したモンスターをマスターモンスターにすれば良いのではないかと。そうすれば、ダンジョンバトルで死んでも生き返るのではないかと。死ぬ事を恐れてなかなか戦いに投入出来ないマスターモンスターも気兼ねなく最前線に送り込めるのではないかと。何度も死線を潜り抜けさせ――時には潜り抜けなかったとしても――その経験をリアルダンジョンでも活かせるのではないかと我は考えた。


『すぐに侵入口を塞ぎに掛かります。それと、あまり好ましい手ではありませんがダンジョン入口を私が直接見張る事にします。ご許可を』

「それしかないか。許可する。頼んだぞ」

『はい。時間稼ぎは得意ですから。危なくなったら刺し違えてでも止めてみせます』

「頼もしい限りだ」


 そしてその考えはアタリだった。元は2千DPモンスターであっても、何度も何度も死を乗り越え続け成長した我が子達は敵が1万DPモンスターであっても引けを取らないほどに強くなった。例え勝てなくとも生き返る事が出来るので捨て身の攻撃で敵を討つ術も覚えた。その結果、我のダンジョンバトルでの戦績は勝ち星が多くなった。

 正直言えば、我が子が死ぬところを我は見たくはない。それは我がマスターモンスター、三熊将(さんゆうしょう)だけでなくベアーズレギオン達にしてもそうだ。首を噛み切られる、頭蓋を割られる、炎で燃やし尽くされる。死ぬ時の痛みや苦しみは本物だ。例え後で生き返ると分かってはいても、そんな辛い経験を好んでしたいと思うモンスターはまずいない。その死ぬ時に味わった苦しみの記憶は引き継がれないにしてもだ。まぁそうでもなければ我が子達はとっくに精神が壊れ廃人となっている事だろうが。

 我は彼等の生みの親である。本当は情など持たぬ方が良いのだろう。だが、我にはそれが出来なかった。

 苦しみ悶え死にゆく我が子の姿を見るのは本当に辛い。だが、それは二度と会えないよりかは何倍も良い。だからなのだろう、我のリアルダンジョンでは情を感じにくい別種のモンスターばかりを配置していた。

 勿論、ダンジョンコアのある部屋を守る精鋭だけは同種のモンスターで固めている。侵入者達の相手はもっぱら捨て駒のモンスター達が相手をして、死の危険性が低い場合にのみ我が子達を前に出して経験値を稼がせている。というよりも、そうでもしなければ生と死の繰り返しで常にモンスターが入れ代わってしまい、強力なモンスターなどなかなか生まれないし残らない。このダンジョンバトルの様に成長したモンスターだけを残すなどという手は取れない。

 現実はゲームでは無いのだから。


『親父、おかしいぜ。どれだけ進んでも敵が一匹も見当たらない』

『俺達の豪快な進軍方法に臆して逃げたんじゃね?』

『あんなに裏でコソコソ動いてた奴等だぞ? わざと一匹はぐれさせて隙を作っても何にも無いってのは流石におかしいだろう』


 ただ、少し悪い影響があるというのも事実。このダンジョンバトルをゲームか何かの様にとらえ、平気で囮や捨て駒、玉砕覚悟の特攻、相討ちを行うという悪い癖がついてしまっていた。それを我も黙認している。あまり良い傾向では無いだろう。


「何か策を練っているのは確かだ。待ち伏せか、それとも守りを捨てて一斉攻勢に出る気か」

『私達が優勢なのは間違いないですし、いっそ陣を構築して現状維持に徹しますか?』

『却下だ却下! んな弱気でどうすんだよザグ。俺達は攻めてこそ真価を発揮するんだぜ? 守りに入ったら士気ガタ落ちだって。んなもんじゃ倒せる敵も倒せねぇ』

『俺もゼブの意見に賛成だ。親父もそう思うだろ?』


 受け入れられる訳が無い意見を出すのはベアザーグのいつもの手。実は我が子の中でベアザーグが最も好戦的だったりする。一番強いのもベアザーグだ。序盤は冷静に敵を観察しているが、それが終わったら一気に前に出て暴力の限りを尽くす。一番後ろに配置しているのは何も守りだけを任せているのではなく、後半の追い上げを期待しての事でもある。現に、今も中間点まで上がってきている。敵の隠れた進軍を利用して。あれはきっとわざと放置していたんだろう。前に出る為の口実として。


「勝つ時は敵のコアを破壊して勝つ。敵の策など力でねじ伏せるのが我等の戦い方。勝利の法則」

『つまり、ウダウダ言ってないで早く突っ込めって事だな、大将!』

「うむ」

『この坂の壊すのにも慣れてきたし、そろそろガンガン行きたいと思ってたところだぜ。気合い入れろよ御前等』

『『『『『『『『『『『GAU!!』』』』』』』』』』』

『私の分もちゃんと残しておいてくださいね』

『ぜってーヤダ』


 ベアドーズとベアンゼブの咆哮に合わせて我が子達が猛進する。滑る登り坂を壊し安全な道を作る為、跳躍しアームハンマーを大地に叩きつける。もしくはベアーズクローを叩き込む。壊す事で滑らない瓦礫の道を作る。

 それはとても雄々しい進軍だった。二列縦隊で進む熊の軍団。その荒ぶる進軍を阻む者はいない。体格が小さい子熊達は周囲を警戒し、疲れた者は最後尾へと移る。熊達が咆哮をあげる度に洞窟がビリビリと震え、地面を破壊するたびに衝撃と振動が洞窟全体を揺らす。落石の数は増えたが、それを気にする様な熊はそこにはいなかった。


『もうこの崖もいっそ壊しちまうか!』


 階層の終わりまで辿り着くのにそれほど時間はかからなかった。やはりというか、待ち受けていたのは申し訳程度に梯子とロープが掛けられている絶壁だった。


『いや、それは流石に無理だろう。親父、もう一回頼めるか?』

「残念だが無理だ。DPが足らん。周囲を壊し瓦礫を集めて道を作ってくれ」

『あー、なるほど。それを見越してモンスターを下げたのか。今回の相手は本当に随分と姑息だよなぁ。くそっ、一発ぶん殴ってやりてぇ』


 猫を抱いて目を瞑っている敵の姿を見る。猫は時折欠伸をしながらじっとこちらの方を眺めているものの、『刀』の魔王に我が攻撃を仕掛けるという警戒の色は全く無かった。それだけ意識をダンジョンに集中させているという事か。

 本体をほぼ無防備にするほどの集中。いったい何を企んでいるのか。

 ベアドーズをこちらに呼び出し殴らせてやる事はもちろん可能だ。攻撃を仕掛ける事でもしかしたら策を潰せるかもしれないだろう。本体を攻撃すればダンジョンバトルに集中できなくなるので、その分こちらが非常に有利になる。

 だがそれは勝負に勝って試合に負けるという事でもある。そんな悪質な行為をするのは、それほどまでに切羽詰まっている魔王か、それとも性根が腐っている魔王だけだ。そういう輩はよほどうまく立ち回らなければ潰される。相手が攻撃してくると分かっていれば反撃すればいいだけだからな。物理的に潰しても良い。


「安心しろ。今、『刀』の魔王はそっちに潜っている様だ」

『お? マジかよ。んじゃ、本当に一発殴れそうだな』


 ベアドーズが腕を振り下ろし、大地を殴りつける。一際大きな衝撃と音が鳴った。地面に亀裂が入り砕ける。予行演習のつもりなんだろう。


『っしゃ! また一番乗りだぜ! 敵の姿は~っと……お?』

『どうしたゼブ。いたのか?』

『おう。いたぜ。しかもちょっと強そうなのがな』


 ベアンゼブがニヤリと笑ったのが分かった。


『……ああ、ヤツがこのダンジョンのボスだな』

『ちょっとは骨がありそうだぜ』


 第三階層は登り坂では無かった。広い部屋がただただ広がっていた。

 そこに佇む一体の人型モンスター。ゴブリンやコボルドなどの人鬼種の様であり、ゴーレムやドールなどの器物種の様にも見える。『刀』の魔王の姿は人そソレであるので、そういうモンスターを引く可能性は低くないだろう。尻尾や耳が見当たらない事からして、動物種が人型に変化したという訳でもなさそうだ。むしろ人の姿に近すぎる様な……まさかドールか?


『ワレ、ツワモノトシア……っと。予想より早かったな。もう少し時間に余裕があると思ってたんだが』


 ソレが喋る。我が子の耳を通じてその言葉を我は聞く。その声は雌のものだった。


『来てしまったのであれば仕方が無い。ここが最後の砦だ。このジオーナを倒せば御前達の勝ちだ』


 女は言う。そして宣言した。


『サァ、ツワモノヨ。ワレトシアオウカ……このジオーナがどれほどのものなのか、御前達の力で試させてもらおう!』




お屋敷の主様 :きっとスライムです

冥土?な女性 :影の支配者!?

獣な少女   :猫じゃなーい!

スライム馬車 :屋敷の中でも自由自在!


刀の魔王   :説明が必要ですか?

Mモン1号さん:にゃー

Dモン1号さん:今回は出番がありません


ゴブリン1号 :火打石で火傷しました。「火力が強すぎたゴブ……」

ゴブリン2号 :蝙蝠は嫌いです。「食べる物がなくて仕方なくゴブ。本当ゴブよ?」

幼ゴブリン  :真のラスボスにされました。「え!?」

スケルトン  :大木槌を持ってえんやこら~

スライム1号 :斥候役に任命されましたスラ

スライム2号 :暗殺者役に任命されましたスラ

スライム3号 :待ち伏せ⇒隠れる⇒奇襲

スライム4号 :天井に潜んでますスラ

スライム5号 :私も天井に潜んでますスラ

スライム6号 :私は二階層から天井に潜んでますスラ。その前は秘密スラ

ピクシーラット:私の出番は何処ですかー!!

1万DPモンスター:飲み干されマスた……


女指揮官   :指揮してない様な……あ、乗っ取られた!?

ワイルドな兎 :うぉ~暴れてやるウサ!

角を持った兎 :この角じゃま~

迷宮に住む栗鼠:穴があったら入りたいよ~

洞窟栗鼠   :じめっとしたのがちょっと好きです

小さな角持ち虎:がおー

子供狐    :僕、本当に役に立ってるのかな~?


ラスボス候補者:ワレ、ツワモ……

水スライムA :序盤に裏で活躍!

水スライムB :中盤、頑張ったけど討ち取られちゃった。くすん

水スライムC :終盤にきっと出番がある筈!

青スライム  :水と何が違うんだろう、僕

泡スライム  :毒は持ってませんよ


熊さん魔王  :森には住んでいない魔王様

守りの要   :気分は知将です。

攻めの要   :気合いだ気合い!

玉砕の要   :大将! 逝ってくるぜ!

小熊さん達  :引き継がれません。なんでー

熊さん達   :引き継がれます。でもみんなライバル!



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