想像の力、創造の力
あなたは私の父となり、私の全てを愛しむ
この広い世界で再びあなたに出会えたその奇跡に、私はとても嬉しく思う
拝啓。今はもう覚えていない親父殿、御袋殿。
俺は今、裸の幼女に押し倒されタコ殴りにあっている。どうしてこうなった?
「ん。オシオキダベー」
真っ裸の幼女が腰の上に跨り棒読みに言う。これは夢ではない。夢であって欲しい。
幼女の拳が一片の慈悲無く振り下ろされる。その度にドゴッとかバキッとか可愛くない音が鳴る。あの細い腕のどこにこれだけの力があるのだろうか。うーむ、不思議だ。
不思議と言えば俺がまだ生きているのも不思議だった。スライム触手で滅多打ちされたあの瞬間、俺は自分が死んだと思った。それぐらいの痛みだった。だが俺はまだ生きている。生きているのが不思議なぐらい今も大ダメージを受け続けているのだが、死ぬ事は無かった。
[アインの攻撃。ゼイオンに3921のダメージ!]
[アインの攻撃。ゼイオンに4809のダメージ!]
[アインの攻撃。会心の一撃! ゼイオンに18240のダメージ!]
[アインの攻撃。ゼイオンに4117のダメージ!]
いやいや、普通は死んでるだろう。ダメージ値がヤバイって。
お、最高値更新。クリティカルはやっぱダメージ幅が大きいな。一気に3000以上も更新したぞ。
それはそれとして、アインがこうまで怒っている理由だが――巫山戯ているんじゃなく怒っているんだよな? ちょっと自信が無い――事の経緯は、ほんの十数分前まで戻る。
あの時、俺は死を覚悟した。いや、アインに殺される覚悟じゃなく、ダンジョンコアを破壊される方の覚悟を。
俺のダンジョンに侵入した冒険者達は、ダンジョンコアを……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『よっしゃ、もう一丁!』
『ダンジョンコアもいっただきー♪』
怒涛の触手鞭攻撃で瀕死の状態に陥り、そして裸の幼女に頭を踏まれていた俺は死を覚悟した。そんな最後も悪くないな、と思いながら。
――ストップ。
間違っている。間違っているぞ俺。俺はこの時、そんな風に思っていたか?
「ん。踏まれて喜ぶなんてゼイオンは変態」
「そんな訳あるか!」
[エスラの攻撃! エスラは体内から空気を抜いた]
[冒険者Aは窒息した。12のダメージ!]
[冒険者Bは窒息した。16のダメージ!]
[冒険者Cは窒息した。10のダメージ!]
[冒険者Dは窒息した。11のダメージ!]
ガバっと起き上がったタイミングで新しいダンジョンログが流れた。
うん? エスラの攻撃? 誰だ?
[エスラは様子を見ている]
[冒険者Aは窒息している。22のダメージ! 冒険者Aは酸欠に陥った]
[冒険者Bは窒息している。21のダメージ! 冒険者Bは酸欠に陥った]
[冒険者Cは窒息している。19のダメージ! 冒険者Cは酸欠に陥った]
[冒険者Dは窒息している。17のダメージ! 冒険者Dは酸欠に陥った]
『うぐっ! な、なにっ!?』
『い、息が……レ、イ……』
『しまった……こ、これは……』
[エスラは様子を見ている]
[冒険者Aは酸欠している。34のダメージ!]
[冒険者Bは酸欠している。29のダメージ!]
[冒険者Cは酸欠している。30のダメージ!]
[冒険者Dは酸欠している。25のダメージ!]
3秒刻みぐらいでログが流れていく。冒険者達の命が物凄い勢いで削られていく。
冒険者達がバタバタッと倒れた。
「なぁ、アイン。なんか冒険者達が苦しんでるんだが……」
いつの間にか移動していたぽよぽよベッドの上でぷよぷよしているアインに聞いてみる。幼女モードは終わりらしい。
「ん。私の方でも確認した。ちょっと予定は狂ったけど、概ね予定通り。ん。私、良い仕事した」
ぽよぽよベッドの上でバインバイン跳ねて遊びながらアインが言う。ドロドロアメーバ状態ではなく、涙の雫を潰したかの様な姿でぷよんぷよん。跳ねる度に二次元顔が福笑いの如く崩れては元通りになるのがちょっと気持ち悪かった。
「なんだ、ちゃんと手を打ってくれてたんだな」
「ん。私のスライムに不可能の文字はない。スライムの可能性は無限大。だからゼイオンももっとスライムを崇める。さすればスライムの加護が手に入るであろう」
「そ、そうか。考えておく」
「ん」
[エスラは様子を見ている]
[冒険者Aは酸欠している。16のダメージ!]
[冒険者Bは酸欠している。10のダメージ!]
[冒険者Cは酸欠している。22のダメージ!]
[冒険者Dは酸欠している。8のダメージ! 冒険者Dは気絶した]
継続ダメージの値が安定していない。残存HPに比例してダメージが変わるとかそんなところだろう。
まずは一人、戦闘不能状態になった。よしよし。誰だか知らんが実に良い仕事をしてくれた。後で褒めてあげよう。姿が見えないのは特性かな? コアルームに何かがいるというのは分かるんだが、姿も声も気配も感じられない。実体のない幽霊でもいるのだろうか。
『シン、ディー……』
[冒険者Aは酸欠している。3のダメージ! 冒険者Aは気絶した]
[――冒険者達は全滅した――]
「ん。乙」
一際大きく跳ねたアインが空中でモードチェンジ。昨日見た姿となり床に着地。10点満点。ちなみに服は着ていた。どこから出したのだろうか。謎は深まるばかり。アインの生態が恐ろしく不明。スライムの一言で片付けて深く考えない様にしよう。
「ああ。何とか窮地を脱し……!?」
そう言いかけた瞬間。物凄い勢いで大量のログが流れた。
「うぉ、なんだ?」
「ん。たぶん、初回のご褒美」
「ご褒美? それはダンジョンを造る時にもあった特定条件達成時の報酬みたいなものか?」
チラッとログを追ってみたところ、それらしき文言が確かにズラズラと書かれていた。初めての侵入者退治、初めての野良モンスター退治、初めての無形系モンスター退治などなど。
「ん。そう。最初の頃は簡単な物が多いからご褒美を貰いやすい」
「そうなのか。確かに、頑張らなくても簡単に達成できそうなのが並んでるな。これは、どういうものがあるのか事前に知る事は出来ないのか?」
「ん。可能」
確信が持てたからなのか、アインの答えを皮切りにコマンドが増えた。
早速、確認してみる。
「……ハテナばっかりだな。何が条件なのか分からないものばかりじゃないか」
「ん。条件を知るにはその条件を満たすしかない。意外と不便」
「ほとんど役に立たない」
「そこはゼイオン次第。例えばスライムを崇めて加護を貰えばスライム系の条件はかなり見えるようになる」
「酒スライムなら崇め愛してるぞ」
「ん。その愛はスライムより酒に傾き過ぎている。バッテン」
[ゼイオンは酒スライムを探している。しかし見つからなかった]
[ゼイオンは落ち込んでいる]
そういう無駄ログはいらない。後できっちりフィルター掛けや分類しておこう。先程みたいな戦闘中に報酬ログとか流れても困るし。
「ゼイオン」
「――ん?」
「ちょっと確認して欲しい事がある。私の計算が狂った理由を調べたい」
「計算が狂ったって、俺のDPが0になってダンジョンが解放されてしまった件か?」
「そう。今後の為にも知っておきたい」
今後とはつまり、俺の教育が終わって次の新参魔王を教育する時の事だな。アインは意外と面倒見が良いらしい。それとも完璧主義者なのか。スライム至上主義者なのは確かだが。
「参考までに、元々の計画はどんな内容だったんだ?」
「ん。それは秘密」
唇に人差し指を当てて可愛く言う。顔が無表情でなければ満点だった。
「というのは嘘。DPが無くならない範囲で報酬を色々ゲット。ダンジョン拡張とレクチャーを繰り返した後にダンジョン開放。協力依頼してたお友達を倒してエアスライムがレベルアップ。最後に餌を与えて完」
まぁ、そんなところか。一応、筋は通っている。お友達を倒させるとか餌という言葉が冒険者達の事を指しているとかは聞き流す。
「ん。忘れてた。<スライムリーインカーネーション>。あーんど、<サモンスライム>」
[――ワンダーリングプラチナスライムは???スライムに転生した――]
[――???スライムは召喚陣に吸い込まれた――]
[――???スライムが現れた――]
「やっほー」
[???スライムは逃げ出した]
……おい、逃げてるぞ。友達じゃ無かったのか?
「ん。恥ずかしがり屋さん」
そういう事にしておこう。
ああ、そうそう。エアスライムという名前で思い出した。ログにあったエスラとは俺が生成したエアスライムの事だった。すっかり忘れていた。
と思い至ったところで、ちょっと戦闘ログを見直してみる……ああ、あった。まるで横取りする様にエスラがさっきのワンダーリングプラチナスライムのラストアタックを決めている。そのすぐ後に大量のレベルアップログ。
配下モンスター一覧からエスラの情報を確認してみると8だったレベルがもう42になっていた。冒険者4人を倒した時には5ぐらいしかレベルが上がっていないから、ほとんどはワンダーリングプラチナスライムをキルした事によるレベルアップになる。能力を示しているアルファベットもDがちらほら。そこそこ強くなっていた。
うん? SPがなんか減ってるな。しかも現在進行形。聞きたい事がまた一つ増えた。
「アイン」
「ん」
「エアスライムが急激に成長している。予定通りか?」
「ん。予定通り。エアスライムは核以外は無色無味無臭無感天真爛漫無病息災の暗殺者タイプニート。気配を悟られず獲物を体内に取り込んで窒息させるのが得意。罠部屋などに放し飼いにするのが吉」
天真爛漫無病息災は兎も角、最後のニートという言葉で色々台無しだな! ニートでしかもレベル42。なんか途端にいらなく感じてきた。しかし有用なのは間違いないだろう。結果が全てを物語っている。ちょっとずるいとも言うが。嵌め殺し……。まさかのチートモンスター?
「ならば全て事も無し」
終わりよければすべてよし。この話はこれで終わりだ。
「まだ。ゼイオンのDPが0になった理由が判明していない。詳しく調査する」
くっ、騙されなかったか……。実は何となく気付いてたりするんだよな。その原因に。
「ん。質問1。初期DPは1万?」
「……1万だった」
「ん。質問2。初回のダンジョン作成に必要なDPは0?」
「ああ。必要なかった」
「ん。質問3。ダンジョン作成後、DPは変わらず1万のまま?」
「イエス」
や、やばい。物凄く細かい。誤魔化しがきかないぐらいに。
「ん。質問4。エアスライムの生成に必要なDPは300DPだった?」
「さ、さぁ。どうだったかな? よく覚えていない」
「ん。大丈夫。調べればちゃんと分かる。もう一度エアモンスターを作るか、過去情報を見れば一発」
うん、知ってる。どっちも300DPって出ている。しかもログの方にはご丁寧にもモンスター生成後の残りDPの確認まで出来るという徹底振り。ログメッセージ文自体は簡易表記だが、より詳細に調べようとすればそこから更に情報を掘り下げて詳しく見る事が出来た。有り難過ぎて涙が出てくる。
その後も細かすぎる質問が続いた。答えるのが億劫にはるほど。
「ん。次が最後の質問。エアスライムに名前を付けた?」
滅茶苦茶確信していますって質問キター!? 最後って何だよ最後って。まだこの後にも質問がある筈なのに。
万事休す。
「……付けた」
「ん。ギルティ」
そして冒頭に戻る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
何故か幼女モードに戻ったアインが俺をドカバキ。ポカポカとかいう可愛らしい音ではなく、ドカバキという物騒な音。人間ってそんな音が出せるもんなんだな。
裸の美少女に腰の上に乗られ殴られるシチュエーションはその筋の人達にはご褒美に違いない。だが俺にその気は無い。無いぞ? 絶対に無いったら無い。
「ん。良い汗かいた」
程なくして騎乗位から解放された。頬っぺたや瞼が大きく腫れて視界がおかしくなっていた。
「ん。次、勝手な事したら、この世に生まれてきた事を後悔させてあげる」
「ふぁい……しゅみましぇんでしふぁ……」
もう既に後悔していた。これ以上の罰が存在するのか……。スライムなのに物凄く強ぇ。魔王化の影響で身体能力がリセットされていなかったとしてもまるで勝てる気がしない。
「とりあえ、ず。少しダンジョンを拡張したいんだが、良いか? 流石に一本道即コアルームというのは心が休まらない。またいつ冒険者達がやってくるとも限らないし」
「ん。許可する。ちなみにコアを狙ってくるのは冒険者だけじゃない。野良モンスターも狙ってくる」
まぁそうなんだろう。コアの価値がどれほどのものなのかは知らないが、モンスターだからといって味方とは限らない。逆に、使いようによっては冒険者も味方に付ける事が出来る。その辺のところは追々だな。
「ダンジョンを造るのは大事。だけど同じぐらい魔物を作るのも大事。外から入ってくる野良のモンスターとは違って、魔王が作ったモンスターはダンジョンを守ってくれる。忠誠心が高ければ色々と頼み事も聞いてくれる。餌を呼び出す為の贄にもなる」
レベルがあるくらいだからな。レベル上げにやってくるんだろう。後はお宝狙い。
「エスラは俺が作ったからダンジョンモンスターになるのか」
「ん。名付けもしてるから、正確にはネームドダンジョンモンスター」
「長いな。ダンジョンモンスターはDモンって略すか。野良モンスターはNモンかな」
「!?」
アインが驚いている。ダンマスの時もそうだったが、この世界には略称ってのがあまり根付いていないのか。
「他は無いのか?」
「ん。ある」
アインがちょっとワクワクしている。空中にワクワクという文字が浮いていた。ちなみに現在のモードは通常モード。一番落ち着く。
「ダンジョンモンスター同士が交配し産まれた子供の事をジュニアモンスターと言う」
「略してJモンか。DモンやNモンと比べて何か違うのか?」
「ん。色々違う。ダンジョンモンスターは生み出す時に色々とカスタマイズ出来るし産まれた瞬間に配下に加わる利点がある。だけどジュニアモンスターはその限りではない。産まれた時はまだ配下じゃない。本人の意思で配下になるかどうかが決まる。また、親であるダンジョンモンスターの能力を引き継ぐ可能性がある。それも父親と母親の能力を。だから産まれた時からとても強い場合がある。それに、通常あり得ない組み合わせでも引き継ぐ事が可能。突然変異もある」
「なるほど。親モンスターを計画的に育てる事で、例えば空飛ぶスライムとかを生み出す事が出来たりするのか」
「ん。理解が早くて助かる。この子達も私が生み出した新種」
酒スライムを生み出したのはグッジョブだ。ベッドがスライムなのは微妙。普通で良いだろ。
「二世同士を組み合わせた場合はどうなるんだ? やっぱりそれもジュニアモンスターと呼ぶのか?」
「ん。三世以降は野良モンスター扱い。能力もほとんど引き継がれない。ジュニアモンスターが産まれるのはダンジョンモンスター限定」
「DモンとJモンの掛け合いは?」
「ん。Nモン」
「そうか」
DPさえあれば自由に作れるDモンに、鍛えたDモン同士を交配させて生み出すJモン。そして外からやってくるNモン。一番強くなる可能性があるのは手間暇が掛かり運にも左右されるJモン。しかもJモンに限っては新種を生み出す事も可能っと。育成するのが楽しみだな。
「ちなみに、俺とDモンとの間に子供を作った場合はどうなるんだ?」
この世には美人モンスターはたくさんいる。ドライアドとかセイレーンとか。俺も男だからな。そういう間違いもきっと起こるだろう。これは念の為の確認だ。そう、決して邪な考えではない。
「ん。魔王は子供が作れない」
「な、なに!? ま、まさか……」
俺のジュニアを見る。まさかの不能……!? そ、そういえば裸の幼女を前にしてもジュニアが全然反応しなかった様な!?
終わった。俺のバラ色の人生終わった。
「ん。安心して良い。問題があるのは魔王の種精の方。機能に問題はない。エッチは可能」
「おお……」
子供が作れないのはちょっと悲しいが、ポンポン産まれても困るからな。むしろDモンが俺の子供みたいなものだし。となるとJモンは孫か。だが血は繋がっていないので愛でるのも……ゲホッゲホッ。うむ、邪な考えはよそう。その時はその時だ。
あと、幼女の裸を見ても反応しないのは俺が健全な証拠だという事が分かってちょっと安心した。俺はロリじゃない。俺はロリじゃない。重要な事なので二度言った。
「あともう一つある。マスターモンスター」
「略してMモンだな」
「ん。グッジョブ。マスターモンスターは、言わば側近の近衛」
「四天王みたいなものか」
「ん。そんなところ。但し最初は3匹までしか指定できない。四天王にするには高いハードルを越える必要がある」
ククク……奴は四天王の中でも最弱、というネタで遊ぶには頑張らないといけないのか。ハードルは高いほど燃える。
「Mモンにすると何が変わるんだ? 物凄く強くなったりするのか?」
「ん。特に何もない。ただの肩書」
「うぉい」
いらんだろう、それは。
「というのは嘘。元々は他の魔王を降して奴隷にしたところからきている。強さは変わらないけど、魔王としての権限を幾つか与える事が出来る。例えばダンジョン構築を任せるとか、侵入者の迎撃命令をさせるとか」
「面倒な事は部下に丸投げして自身は悠々自適に酒池肉林の毎日って訳か」
「是」
冗談で言ったのに肯定されたよ、おい。つまり前例がいると。
モンスターの話はそれで終わり。まだ色々と隠されている情報は多そうだが、いつまでもモンスターの話ばかりしていても仕方がない。ダンジョンもまだ増築出来ていないしな。
『迷宮構築』コマンドから『通路作成』を選択しダンジョンにお絵描きしていく。『部屋作成』で部屋をポコポコ配置し『扉設置』で塞ぐ。選べる扉は木製のものしかなかった。条件が足りないのだろう。鍵を付ける事も出来なかった。
水が無いとモンスター達も生きていけないので『水源設置』で水場を作る。個人的には温泉を作りたかったが今は無理な様だ。
通路と部屋が出来れば、当然ながら罠も必要。モンスターだけに苦労させるのは忍びないからな。『罠設置』で罠を配置……しようと思ったら落とし穴以外設置できず。アインに聞いてみたところ、その他の罠は自分で作るか、他の魔王から購入するのが普通らしい。ちなみにアインは売ってくれなかった。というか持っていないらしい。誤ってスライム達が罠にかかったら大変だからとか、よく分からん。さっきエアスライムは罠部屋に放し飼いするのが吉とか言ってなかったか?
俺のダンジョンは洞穴なので、床や壁は基本的に岩や土。それ故に『エリア指定(鉱物資源)』で鉱物が出る様にするのが冒険者を呼び込むのに良いとアドバイスを受けた。しかしこの『エリア指定(鉱物資源)』は、永続的にDPを消費するらしかった。通路や部屋の場合は作る時にのみDPが必要なのに対し、永続的にDPを消費するタイプのものは安易に使用すると下手したら破産してしまう。採れる資源をオリハルコンとかミスリルにすれば減っていくDPも増大する。大人しく無難な鉄と銅だけにしておこう。ちなみにちょっと頭を働かせてズルしておいた。
「じー」
アインが避難の色を瞳に浮かべて見ていたが俺は気が付かない振りをする。
一階の作成が大方終わったので、地下一階へ。ダンジョンコアも下に移す……移そうとしたらエラーが出てきた。なんだ?
「ああ、そうか。コアルームには冒険者がまだいたんだったか。アイン、こいつらどうすれば良いんだ?」
「ん。回収すればいい。コアルームならそれが出来る」
「了解。回収っと」
別に死体じゃないので忌避感はない。むしろこいつらは俺を殺そうとしたので抵抗は無かった。
[ゼイオンは冒険者リックを手に入れた]
[ゼイオンは冒険者シンディーを手に入れた]
[ゼイオンは冒険者レイを手に入れた]
[ゼイオンは冒険者ミズキを手に入れた]
なんかわからんがアイテム化した。
魔王はデフォルトで迷宮倉庫なるものを持っている。迷宮倉庫とは、いつでもどこからでもアクセス可能な外部ストレージだ。ゲームで言うアイテム空間、ドラ●もんで言う四次元ポケット。とても便利だ。
その迷宮倉庫に4人の名前が並んだ。他にアイテムは持っていなかったので初のアイテム所持だった。達成のご褒美も貰った。
それは兎も角。4人の名前の横には何やら時間が現れ、それは徐々に減っていた。何かのカウントダウン?
「時間制限が出てるが、これは何を意味してるんだ?」
「ん。その数値がゼロになったら自動的に奴隷オークションに質流れする」
また嫌な言葉が出てきたな……いや、夢のある言葉か。
「ただ、大抵は自分の奴隷にしてモンスターの餌にする。お肉は貴重」
夢の無い言葉だった!
「えーと……モンスターの餌以外の用途は無いのか? 例えば労働奴隷にするとか」
何に対する労働かは敢えて言及しない。
「ん。コストに見合わない。それに、専用のダンジョンモンスターを作る方が安全安心。力仕事なら剛力タイプ、身の回りの世話なら冥土タイプ」
「人である必然性はないという事か」
「ん。ただ、趣味で奴隷を囲っている魔王は結構いる。奴隷で王国を築き上げた猛者もいる」
「そんなのがいるのか……」
ところで冥土タイプってなんだろうな。やっぱ死んでるのか? 生成可能なモンスター一覧には……やっぱ出ていないか。
ちなみに俺が生成可能なモンスターは何故かスライムタイプしかいなかった。間違いなくアインの影響だろう。スライム以外は許さないとか言ってたしな。くそ、サキュバスとかドライアドとかを早く作りたい。ダンジョンの場所、変更できないんだろうか。
「回収した4人については暫く保留にしておくか。まだ時間があるみたいだし」
「ん。じっくり考えるといい。迷宮倉庫内なら時間も進まない」
「保存性もバッチリか。料理とかも入るのか?」
「ん。入る」
だが、酒スライムの熟成には使えんな。こっちは別に場所を確保する必要があるか。
酒スライム達様の部屋を作って密閉。そして酒スライムを大量に生成。あとでちょっと味見してみよう。最初はどんな味がするのやら。おっと、酒スライムの餌が何であるのかも聞いておかないと。ふむふむ。なるほどなるほど。餌の内容はご想像にお任せします、だな。ちょっと食欲がなくなってきた……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ウォーターベッドスライムの上に横になってダンジョン構築に勤しむこと小一時間。なかなかに快適なベッドである。思わずうつらうつら。このスライム、ちょっと欲しくなってきた。
「ん。そろそろ終わった?」
暫く放っておいたら固まって動かなくなっていたアインが、思い出したように起動した。
「そう簡単には終わらんよ。出来る事が多くて悩むばっかりだ」
地下二階の作成も終わり、現在は地下三階を作成中。スライムが入っている宝箱と空の宝箱の2つを横並びで配置し、冒険者に対し嫌がらせのトラップを作り終えたところである。中身が空なのは、当然中にいれるアイテムがないからだ。
一応、アイテム化している冒険者から装備品を剥ぎ取った訳だが、装備を外したら4人とも真っ裸になってしまった。一個一個指定して剥ぎ取る事は出来ないらしい。もしくはまだ条件が揃っていないからなのか。
裸の男女が近くにいるのは気が引けたので、男女をアイテム一覧上でちょっと離しておく。気休めだ。
ちなみに裸になったと分かった理由は実際に4人の姿をこの目でじっくり見る事が出来た訳では無く、装備画面上で人型のアバターが裸状態になったからである。どうにかして見れないかと色々頑張った訳では決して無い。迷宮倉庫から出せば見れない事も無いだろうが、目の前にアインがいるし、本人が目を覚ましてしまうと面倒なので実行に移していない。
「ん。ダンジョンを造り込むのは大事。でもそんなに頑張っても侵入者がいなければ意味はない」
「ん。それはそうだが、ダンジョンコアが破壊されたら死ぬんだぞ? なら打てる手は早めに出来る限り打っておくべきだろう」
「ん。そうじゃない。ゼイオンのダンジョンに暫く侵入者はやって来ない。野良モンスターも右に同じ」
「ん? どういう事だ?」
ん。なんかアインの口調がうつってしまった。
「ん。そこは私の王国。だから何とでも出来る」
「なんだ、来ないのか……折角、楽しみにしてたのに」
「ん。あまり頻繁に侵入されても迷惑なだけ。程よく侵入してくれるのが一番」
「まぁそうだが」
24時間ひっきりなしに来られても困るしな。とはいえ、そういう場合にはMモンに権限与えて任せるだけだが。ああ、そういう場合のMモンか。
「ん。次のレクチャーに入る。それはゼイオンにしか出来ない事。ゼイオンだけの能力」
「俺だけの能力? そんなものがあるのか?」
「ある」
そう言って、アインはまた姿形を変えた。グニグニっと人間にはあらぬ蠢きをした後、グググっと身長が伸びる。数秒後、一頭身ほど急成長したちょっと大人なアインがそこにはいた。服装も簡易なワンピース姿からシックなドレス姿にチェンジ。原理はサッパリ不明。
「魔王は全員、自分だけにしか使えない能力を持っている。例えば私の場合、これ。あらゆるものに私は変化出来る」
「……そういえば自己紹介の時になんかそれらしき言葉を言ってたな。ええと確か、千変万化だったか」
「ん。惜しい。【転変万化】が正解」
「便利な能力だな。それで人の姿になったり服を作ってたりしてたのか」
「ん。ちょっと違うけど、だいたいそんなところ。重宝してる」
「俺の姿にもなれたりもするのか?」
「ん。造作ない。思考や能力を完全に真似るのは無理だけど、形状や材質なら自由自在に変える事も出来る。例えばオリハルコン製のゼイオンみたいな?」
「無駄にスペックが高いな……」
まるでどこかのチェスの駒モンスターみたいだな。というか強すぎだろう。他の魔王達もアイン並みに化け物揃いなんだろうか。
「ん。次はゼイオンの番。まずは能力の確認から。ステータスを見る」
「俺の能力は……どうやら【創造召喚】というらしい」
『創造召喚。使用者が想像した物、存在などを召喚する固有技能。近しい物、存在が無い場合は創造される。気に入らない場合は1回だけチェンジ出来る。召喚可能回数は月に1回増える。※現在の召喚可能回数3』
「ん。配下を増やすのに便利そう」
「だな。但し無限にという訳にもいかなそうだ。3回使ったら、その後は一月経つまでお預けらしい」
随分と便利そうだ。DPもいらず、Dモン同士を交配させて新種を生み出す必要もなく、願ったモンスターを生み出せるのならこれほどチートな能力はないだろう。それに説明にある通り、召喚出来るのはモンスターに限っていない。武器や防具、アイテムすら召喚可能。使い方次第では一気にトップに立てるんじゃないか?
「ん。回数制限があるのは残念。でも今はそれでも試しに使ってみるのが吉。特徴を知っておくべき」
「――下手したらとんでもなく強いモンスターが生まれてくるぞ?」
「配下にならない?」
ああ、その落とし穴があったか。
「説明文を見る限り、喚び出すだけだな。そういう文言は一切書いてない」
召喚した存在が必ずしも召喚者に従うとは限らない。むしろ相手が強力であればあるほど逆らう可能性が高くなる。
よくよく考えれば便利ではあるが使い勝手がちょっと難しそうな能力だった。いっそ個人的な趣味に限定して使用した方が無難かもしれない。
「ん。召喚できるのはモンスターだけ?」
「いや、アイテムとかも可能っぽいな。とりあえず、何でも召喚出来そうだからな。例えそれが存在しない物だったとしても」
「――それは危険。あなたの身が危うい。その事は絶対に他言してはダメ」
アインの突然の豹変に、気が付けば冷や汗を掻いていた。何がどう変わった訳では無い。見た目にはアインは変わらずちょっと大人モードの姿で無表情に俺の方を見ているだけなのに。
俺は生唾を呑む。想像の可能性と、創造の可能性を考えて。
「一応、理由を聞いても良いか?」
「ん。ごく単純な事。ゼイオンの能力には、上位の魔王ですら難しい事を容易く出来るようにする可能性を秘めている。例えば■■■を生み出すための何かを創造し、無限の■■■を手に入れるとか。言い換えれば、それは月に一度とはいえ想像次第でなんでも願いを叶えてくれる非常識な能力。欲しがらない訳が無い」
「まぁ、そうだろうな。他の奴がこの能力を持っているのを知ったら、俺でもやっぱそう思うだろうし」
チートを持つという事は必ずしもメリットだけでおさまるものではない。ほとんど常にデメリットとどう付き合っていくかという問題をはらんでいる。この場合はリスクか。
「ちなみにアインはどうなんだ?」
その最初のリスク――俺の秘密を知ってしまったアインがどう出てくるか。その一挙手一投足をじっと観察する。とは言え俺が認識するよりも早く俺を無力化出来るというのは先程痛感したばかりなので気休めにもならないが。
「ん。私は既に満たされているから問題ない。叶えたい願いは全てこの手で叶えてきた。だから別にいらない」
「見た事のない新しいスライムを生み出せるとしてもか?」
「ん。そういうのは間に合っている。自由にならないからこそ愛が生まれる。ただ生み出すだけの創造主に成り下がる気はない」
「そうか」
その言葉に嘘偽りは全く感じなかった。俺の担当がアインであって本当に良かった。
「あまり深く悩んでも仕方ないな。秘密にしつつバレない範囲で使っていく事にするか」
俺が想像し欲するのは……苦楽を共にし、一緒に生活する家族が欲しい。ありとあらゆる可能性から選ぶのは、家族。
産まれたばかりの俺には繋がりというものがまるで存在しない。孤独な存在。同じ時、同じ場所で目覚めたエレン達はある意味で言えば兄弟姉妹とも言えるが、血の繋がりもなく姿形も異なっている彼女達では俺の家族にはなりえない。互いを認識した瞬間から殺意を向けあって事あるごとに殺し合った時点でむしろアウトだろう。家族だと思うぐらいなら奴隷にして扱き使う。
求めるのは家族。この言葉をピースに想像を具体的にしていく。欲しいと思う家族を思い描く。
俺の記憶の奥底に眠っていたソレの姿から適切な言葉を探り当て、どういう存在であるのか記憶の中から紐解いていく。それは別に新しい命が必要な訳ではない。恐らくこの世界にも存在する既存の存在。愛くるしい姿を持った野獣。俺が愛してやまなかった魔性のモンスター。
「――我が創造に応え、我が前に顕現せよ。こい、<創造召喚>!」
アインの部屋が眩しい光に包まれる。目の前に伸ばした手の平の先に光の柱が立ち上がり、その中から何かが姿を表す。
光が消えた時、そこにソレはいた。
闇を溶かしたような漆黒の毛並、ピンと立った三角形の耳、お尻の付け根からのびる長い鞭の様な尻尾。四つ足で立ち、艶めかしくも愛らしいフォルムの中に独特の気品さを持った存在。その小さな顔にある二つの野獣の瞳がこちらを値踏みするように見ていた。その姿はまさに俺が頭の中で思い描いたソレと瓜二つ。
どうやら召喚は無事せいこ……。
「ヌヌ? ……ヌフフフッ、この我を呼び出したのは汝か。まずは見事なりと言っておこう。そして聞くがよい。我は闇黒の闇をも統べる至高にして崇高な――」
「チェンジで」
「神々の魂すら噛み砕く我が牙の前にぬぅぉぉぉぉおおおおおっ!!?」
ソレは再び立ち上がった光の柱に包まれ、その中へと姿を埋めていった。
「ん。失敗?」
「ああ、失敗だ。俺は普通に猫を所望したんだがな。しかしまさか喋ってくるとは……そういう猫はいらん。だからチェンジ権を行使させてもらった」
「そう。ちょっと面白そうだったのに残念」
「厄介事しか待っていなさそうだったからな。明らかに配下に出来そうにもなかったし」
「ん。そこは同感」
二人して光の柱を見続ける。今度こそ俺が求めた普通の猫が出てくる事を願いながら。ちょっと眩しかった。
少しして光の柱から猫の手らしきものがニュッと生える。小さくてとても愛らしい前足だ。早くその肉球をぷにぷにしたいぞ。
「……ぅぅぅぅぉぉぉぉおおおおおおっ! 我はこんな力には屈せぬぞ~っ!! 消滅させられてたまるくぁぁぁぁっ!!」
「さっさと帰れっ!」
「ぎぃぃぃぃぃぃぃいいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっっ!! た、助けぇぇ……っ!!」
そんな苦しそうな悲鳴と反響音を残して、細くなって消えた光の柱と共に猫は消えていった。
後には何も残らなかった。
「しまったな。折角チェンジしたのに、あいつが頑張り過ぎるからついキャンセルしてしまった。1回分損した」
「ん。ご利用は計画的に」
「ま、貴重な失敗を経験できたんだ。授業料だったと思えばいい」
「ん。失敗の原因をちゃんと考える」
「分かってる。失敗の原因は大雑把過ぎたということなんだろう。ただ単に頭に思い描いた猫を呼び出そうとした結果、その姿に近い猫をどっかからひっぱってきたんだろう。それがあいつだったと」
「あの猫ちゃんの都合は無視?」
「っぽいな。そこんところも先に指定しておいた方が良いか。強制召喚は止めておこう。相手の意思や立場、飼い主の意思とかも全部クリアしたやつだけにするか」
「ん。それがいい」
むしろ創造した方が早い気がするが。既存で存在する種の場合は不可能とかそういう仕組みなんだろうか?
「もう一回挑戦してみるか」
「ん。今度こそ猫ちゃん」
「……そういえばスライム以外の存在を呼び出す事になるんだが、アインはそれで良いのか?」
「ん。後でスライム化する」
「それだけは絶対に止めてくれよ!?」
「ん。冗談」
「アインが言うと冗談に聞こえないんだが……」
「(ん。後でコッソリ。知らぬが仏)」
「……絶対にダメだからな? 猫だけは絶対に許さないからな?」
「ん。分かってる」
「何で目を反らす……」
気を取り直して、今度こそ本当の猫を召喚する。アイン要警戒。
黒猫で失敗したので次は白猫だな。他にもメスであるとか、とても人に懐っこい性格をしているとかの条件を付けていく。当然、呼び出す際には本人の意思などもちゃんと尊重し、姿形は別に俺が思い描いたものに似せる必要は無く種族が猫で毛色が白であれば、なんちゃらショートヘアーでもなんちゃらティッシュフォールドでも良い。
あとは実験として、寿命がない、猫なりにちゃんと成長する、一応はモンスター扱い、俺の言葉をちゃんと理解する頭は持っている、猫らしくニャーとは鳴くがその姿で言葉は喋らない等々、猫の範疇を越えない程度に細々と設定を追加していく。それと、俺自身も良く分かっていない潜在願望も密かに付与。創造主である俺でも予想が付かない枠を持たせる事で個性を持たせる。欲しいのは家族であって人形じゃないからな。
正直言ってどっかから似た猫を呼んでくるだけなら全く意味のない設定も多々あるが、創造召喚の説明を信じるならこの俺の想像設定で呼び出されるのは間違いなく見た目だけ似ている全く別の存在だろう。そんな予感がする。
それは神にも等しき力。人が持っていい力ではない。
――あ。俺は魔王なんだったか。なら大丈夫か。自重せずどんどんいこう。
「――我が創造に応え、我が前に顕現せよ。こい、<創造召喚>!」
再びアインの部屋が眩しい光に包まれた。今度も格好良く目の前に伸ばした手の平――今度は両手だ――の先に光の柱が立ち上がり、その中からピョンっと元気よく猫が飛び出てきた。
そしてその第一声は……。
「にゃー」
「よし! 成功だ!」
早速すり寄ってきた猫を抱き上げ、俺は全力で可愛がり始める。
おぉぉ、この手触り、その温もり。なんと心地よい事か。これでこそ猫。俺が求めてやまない愛すべき存在!
かいぐりかいぐり。
「ん。今度は成功して何より」
猫の瞳が真っ直ぐ俺を見ていた。そのあまりの美しさに顔がほころぶ。可愛らしい口が開き、俺が喜ぶ姿をまるで自分の悦びの様に猫がまたニャーと鳴く。俺は感激し猫の頭をなでなで。猫も気持ちよさそうにされるがままになっていた。
「よし、御前は今日から俺の家族だ。名前は……そうだな、リリーなんてどうだ?」
「にゃー」
「そうか、御前も嬉しいか。リリー、これから宜しくな」
新しい家族に俺はとても喜ぶ。これで俺はもう一人じゃない。守るべき存在がいるし、癒してくれる存在がいる。それがリリー。
これで俺はようやく生きていくための理由を見つける事が出来た。これからの人生に……魔王の人生に覚悟を持つ事が出来る。他者を害する覚悟、他者の尊厳を奪う覚悟、他者の人生を奪う覚悟、そして他者を殺める覚悟を持つことが出来る。意図せず捕まえてしまった冒険者4人にもちゃんと責任と覚悟を持って対処する事が出来る。
リリーがこれからもずっと幸せに暮らしていけるように、俺は魔王のお仕事を頑張ろうと新たに決意した。
囚われの冒険者A : 奴隷オークション行きが決定しています
囚われの冒険者B : 身の危険が迫っています
囚われの冒険者C : 魔王の気分次第でとても過酷な運命が待っています
囚われの冒険者D : 実験体にされそうな予感
パーフェクトウィナー : 空気なスライムちゃん
n回目の輪廻転生者 : また殺されちゃった(*'ω'*)
オーバーキラーの魔王 : 転変万化のダンジョンマスター
ボロボロになった魔王 : 創造召喚のダンジョンマスター
闇黒の闇を統べし存在 : 猫?
真のヒロイン? : 猫