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蝉(せみ)  作者: 北松文庫
4/10

4蝉

 十一日目がきた。今日は彼に質問することにした。彼の意見がもっと欲しい。彼の意見を聞くべきだ。そうすれば私の考えも成長するだろう。


 「君は人間をどう思っているのかな」


 最初の質問はこれしかない。私はまず一つ目の質問を投げ掛けた。


 「人間をどう思っているか、それはわかっているだろう? 少なくとも好印象ではないな。まず、夏を更に暑くしたのがいけない。木を減らしている、環境を破壊しているのがいけない。あとは、余計なものを増やし過ぎだ。俺はそれくらいか」


 「人間が考える他の動物目線と同じようだね」


 「俺らの気持ちがわかっていて、それでも君らはなにもしない。それはいけない」


 別に私だけがそうしているわけではないし、私が人類代表になるというのもおかしかったので、私は私の分の謝罪をした。


 「申し訳ありません」


 「いや、君は謝らなくてもいい。そんなものに意味はない。君が謝ろうが、現状にはなんの変化もない。君が君を貶めているだけだ。俺は思っているだけで、特に改善して欲しいとも思ってないしな」


 「以後気をつけます」


 蝉は小さな体に寛大な心を忍ばせていた。質問が意地悪だった気がして、申し訳なく思う。


 「まあ、人間も悪いところばかりではないさ。たまに聞く音楽も、俺は好きだ」


 「じゃあ聞きます? なにかお好みは」


 私はスマートフォンを手に取り、音楽をかけ始めた。


 「適当になにか流してくれ、そこから決める」


 びっくりすることに、彼が選んだのは、今世間を賑わせているという人気バンドだった。残念ながら私の心には響かなかったが、彼が気に入ったのなら、それでいい。私よりよっぽど蝉の方が流行に敏感なのは気になるが。


 「時に、人間は色んなものを食べているが、統一できないのか? 手当たり次第に食べ物とわかればとって食べて」


 「んー。何とも言えない言いかたですね。まあ、一つのものばかり食べていると、栄養失調になりますから」


 「しかし明らかに栄養の無い、むしろ体に悪そうな飲み物を飲んでいるじゃないか。緑とか、黒とか」


 「メロンソーダや、コーラでしょうか? 多分コーラですね、黒いのは」


 「そんなことは知っている。そうじゃない。君たちは生きることとは別に、食事をしているだろう?」


 「確かに・・・。あ、そういうことか」


 ここにきて、私はようやく蝉の言いたいことが理解できた。「雑食」という、自分で出したその答えは、考えを変えると答えになったのか。初めからこのことに気付いていた蝉は、なんと賢いのだろうか。

 この理論を当てはめていくことができれば、人間というものを紐解き、私は自分が人間であるということを自らに証明できるのかも知れない。


 「つまり、人間は生きるため以外の理由で、食事をしている場合がある。それが人間ということ?」


 「足りないが、大体そうだ。それは食事以外にも当てはまる。動物は寒さをしのぐために毛という服を着るが、人間は見かけをよくする為に着る。最も、暖まるために着たりもするだろうが。戦争となれば、動物は縄張り争いや、生きるために争うが、人間はなんとなく邪魔だから、何て理由で戦うだけでなく同種を、殺せる。そう」


 人間は、本来の目的とはかけ離れた思考で行動をするんだよ。

 私はその日、人間の本質に一歩近づいた。






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