新たな旅立ち
少し長めに書いてみました。
ぜひアドバイスなどいただけたら幸いです
冒険者ギルドについた僕は、いつものようにクエストボードの前まで行く。
「あれ?常時以来の薬草採取が無い…」
つい周りを見渡すと、クスクスと笑っている冒険者が僕の目に入る。
いつもはレンとリリアの三人で冒険者ギルドにくるので、一人で来た今日は周りの冒険者の目も冷たいものになっている。
仕方が無いので、受付の人に聞いてみることにする。
「あの、常時以来はどうしたんでしょうか?」
「少々お待ちください…」
ずいぶん冷たい対応をされ、受付の女性は奥へと引っ込んでいった。
「はぁ…いつも受付はレンにまかせっきりだったしな…」
慣れたと自分に言い聞かせても、周りの反応を見た自分の体は正直で、身体は硬直する。
しばらくすると、奥からしっかりとした体付きの男性が出てくる。
「ギ、ギルドマスター…」
久しぶりに見るその姿に、緊張も相まって僕は、固まっていた体をさらに硬直させる。
「お前か…お前学校辞めたんだってな?」
「え…?」
予想外の一言が僕に投げかけられる。
「あー昨日な、まぁ誰かは言えないんだが報告が来てな、まぁそれと常時依頼も関係あるっちゃあるんだけどよ、お前のパーティーの二人いるだろ?ギルドとしちゃあの二人からお前を離したいわけなんだよ」
「なんで…」
僕はつい聞き返してみるが理由はわかってる、二人が僕と離れるように、いつもギルドメンバーから話されたり勧誘を受けたりしているのを、二人は隠してるみたいだけどたまに見かけたりする。
「お前薬草採取しかできないだろ?ギルドとしちゃそれでもいいんだけどよ、それにあの二人も着いていくからなぁ、二人はいつかAランク、もしくは最高ランクのSランクにだっていつかはなれる逸材だ、そんな奴らをいつまでも薬草採取なんて、地味な仕事で潰すのは勿体なくてな、どうしようかと悩んでる時に昨日の朗報だ!」
ギルドマスターは意気揚々と話していくが、それと正反対に、僕の血の気はどんどん悪くなり顔は真っ青になっていく。
「お前が学校辞めてくれたおかげでな、やっと行動に移せたよ、うちのギルドはお前がこの町にいる間薬草採取、もしくは戦闘の必要のない依頼は出さない、よかったなこれで何の気兼ねもなく違う街にいけるぞ」
はっはっはと豪快に笑いながら僕は死刑宣告を受ける、ギルドマスターの話を聞き始めてから想像はついていた。
戦闘依頼のみだったら僕はこのギルドでお金を稼ぐことは出来ない、今実質のクビを宣告されたのだ。
「ギルドマスター、あの…違う街とは?」
一つ聞き逃せない情報があったので、不安げに聞き返してみる。
「あぁそっか、お前がこの町にいる時間を短くなるし教えてやるか、お前のことを報告してもらった奴がな、あの二人とどうしてもパーティーが組みたいんだとよ、でな、お前がどうやったか知らんがあの二人がお前の事を何故だか慕っているだろ?お前が冒険者辞めたらあの二人も一緒に辞めるかも、なんて話をしたらなお前が働けそうなところに根回ししとくってよ」
何が面白いか僕には分からなかったがギルドマスターが豪快に笑う。
「で、パーティー組む依頼の代わりに、あの二人が冒険者を辞めないよう、根回ししてもらうことで話がついたんだよ」
「それって…」
「そうだな、お前はこの街に住めなくなるな、だから今日中にでも早めに荷物まとめて違う街でも目指して来いよ!お前が無駄に就職活動しなくてよくなったし、お礼でも言っていいんだぞ」
はっはっはっはと上機嫌に笑っているが、僕の耳にはその声は入ってくるが、そのまま抜け落ちって行った。
頭の整理がつかず、フラフラの足取りで冒険者ギルドを後にする。
「また……あの二人か……」
今度は自分の考えを否定せず真っ直ぐと家路を目指した。
家に着くと、僕は重たい手つき荷造りを始めた。
「たぶん根回ししてるのは、クライス君…クライスだよね、二人とパーティー組みたそうだし、先生とは繋がってたのかな?」
少しでもの抵抗のつもりだったのか、呼び方を変えてひとり呟く。
「クライスは、決闘か退学か選べって言ってたし、僕が退学したのを知るには早い気がする、でももしかしたら、先生に確認しにいっただけかもしれないし…でもクライスが知ってるってことは、二人も今頃聞かされてるかもしれないなぁ…」
朝に本当の事を話せなかった自分を少し後悔する。
「でも、良かったのかもしれない…このままこの生活を続けてたらたぶん二人の事を嫌いになってたかもしれない」
と自分に言い聞かせて、荷造りのスピードを早める。
二人に書置きだけでもと、ペンを走らせてそれを布団の上に置く。
必要最低限のものだけを持ち、すぐに部屋を後にする。
「大家さん、ごめんなさい」
旅には持っていけない荷物をそのままにすること、それと何も言わずに出ていくこと両方の意味を込めて頭を下げる。
きっと大家もクライスの根回しに入っているだろう、と思い何にも言わずそのまま街の馬車の停留所まで向かう。
「最後に、二人に会いたいな…」
迷惑をかけれないと、書置きだけを残した二人の事を思い浮かべながら、少し離れた街に向かう馬車に乗り込む。
生まれ育った街並みを馬車の中から眺め、大切な友人の顔を思い浮かべる。
「ごめん二人とも…僕がせめて普通だったら、まだ友達続けれてたかなぁ…」
消え入りそうな声と、涙を出した後、僕が乗った馬車はゆっくりと出発した。