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歩みの過去  作者: んやな
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見たいものだけを見て

なかなか書きたいように書けずに時間がかかってしまいました。


遅くなってすみませんーーーー!!!


しばらく待っていたがあの男が中々戻ってこない。


「あいつもしかして」


「……索敵する」


私はすぐに魔力を広げ索敵を始める。普段は魔物を見つける時に使うが精度が高い私の索敵は人にも使える。


「……いた、二人急いでここから離れている魔力がある」


「行くぞ!」


レンの前を走り索敵で捕まえている魔力の前に先回りする。


「なんで……」


「なんっすか、いきなり走らせたと思ったら急に止まって、どうしたんっすか?」


「……いい度胸、覚悟する」


「ああ、俺たちから逃げれると思うなよ」


「お前は走って逃げろ!どうにか俺がっぁ」


私の得意魔術の一つ、ウェーブハンドで逃がそうとして私たちの前に立ちはだかった男を掴み上げる。

水の魔術で作られた人間の手の形をしたこの魔術は、操作性がずば抜けて良いことぐらいしかないが、人を拘束するにはとても便利な魔術である。


「なっなっなんっすか!なんかしたっすか?」


「一応確かめとく、アスタルを殺したのはお前か?」


「アスタル?えっちょっと待って欲しいっす!人を殺したことなんて自分無いっすよ!!」


「……瘴気化したゴブリンに襲われた冒険者の名前」


「まさか、忘れたとは言わねぇよな?それでもまだ、自分は人を殺したことがないなんて言うのか?」


「あ、いやそれは……」


「苦しむように殺してやるから気合い入れろよ!」


私はウェーブハンドをもう一つ作り出して男を拘束する。

レンは腰の剣をゆっくりと引き抜くと強く剣を握り込んだせいで骨のなる音が聞こえる。

レンがその場から姿を消したと錯覚するほどのスピードで拘束されている男の隣に並び立つ。


「まずは、腕一本目だ!」


「ま、まま待って殺してないっす殺してない死んで無いっす!!」


「……一応聞いてやる、本当なんだな?」


「ホントっす!い、命の恩人だったっす!殺せなかったっすでもそんなこと言えないから黙ってたっす!だから殺さないでくださいっすお願いっす」


「……ソレ本当?私はもう一度アスタルに逢える?」


自然と私は魔術を解いていた。


「会えるっす彼の意志を無視したのは悪いっす!でも死んで欲しくなかったっすから知り合いの見世物小屋の団長に頼んで雇ってもらったっす、信じてくださいっす」


「……見世物小屋……それより怪我は?私は確かにアスタルの手と足を見た」


「怪我は救出に向かった時にはなぜか塞がってたっす」


「死んで無いのは知らなかったが怪我が塞がっていたのは本当だ、実際に塞がって無かったら俺たちが救出に向かう前に死んでいてもおかしくない程の怪我だった」


もう一人の男が早口にまくしたてる。


「もう一度だけ聞くぞ、本当に生きてるのか?」


「はい……生きてるっす、それは間違いないです」


「……レン!」


「あぁ!」


私は嬉しさのあまり、気づいていたらレンに抱き着いていた。レンも答えるように片手で私を抱きしめていた。


「よかった……本当によかった」


私の頭に顔をうずめているレンから、そんな呟きが聞こえたと同時に私の髪に小雨が降ってきたように感じる。

髪の毛を伝って落ちてくるそれはいつもの小雨より少なく、それでいてとても澄んでいた。


少し時間が経ってレンから離れた私は、レンの胸元がぐっしょりと濡れているのに少しだけ申し訳なく思う。





「先ほどは本当に申し訳なかった……そして、アスタルを救ってくれてありがとう」


「……ありがとう」


「い、いえ自分は……」


「この謝罪とお礼はキッチリとさせてもらう、ダインズ家とレグリス家の名にかけてな」


「……うん」


「お二人は貴族なんですか?」


「そうだな、あなたにも謝罪をしないといけない本当にすまなかった」


「い、いえ貴族に頭を下げられると逆に怖いんですが……」


「本当にすまないと思っている、今は謝罪やお礼が出来るようなものが無いから使いの者に持ってきてもらうことになるが、良いだろうか?」


「本当に頂けるんですか?」


「……うん」


「やったっ!やったな、色々災難だったけど結果オーライだよな?」


「えっ、あっはいっす」


「なんだ、貴族様から何か貰えることで嬉しくて呆けてんのか?」


レンと私は二人の様子を見ていたが、明らかに様子がおかしい男が気になる。


「……まさか、嘘?」


「嘘じゃないっす!見世物小屋のフリークスって名前のとこにいるっす。ただ、貴族様に謝罪されたことに呆けてただけっす」


「そうか、それならいいんだが……二人の謝罪とお礼の物はあの宿に運ばせたらいいか?」


「はいありがとうございます」


「はいっす……」


「勝手ですまないが、屋敷に連絡したりするので俺たちは行かせてもらう、ありがとうな」


レンは男の肩に手を置き、私はアスタルを救ってくれた男性に笑顔を見せる。


ずっと変わらないはずの快晴の空を見上げた私は、アスタルに逢えるそうわかっただけで凄くきれいに見えていた。


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