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歩みの過去  作者: んやな
28/32

私の過去 2


私は自分の教室の前で上がっている心拍数を整えようと、深く深呼吸をする。


「お、おはようみんな」


多分私のあの日の失敗は伝わっているだろう、実際にあのパーティーに来ていた子もいるし、正直みんなの反応が変わらないかが怖かった。


「おはよう、リリアちゃん」


いつもの仲が良かった、友達が返事を返してくれる。

その返事で不安がなくなった私は友達の輪の中に入って行く。


「みんな、あの日はごめんね……それであの時傷つけちゃった子に謝りたいんだけど、どのクラスの子か知らないかな?名前は、アスタル・ワートンって言うらしいんだけど」


「あっ、ごめんねリリアちゃん、私たち今日の宿題忘れてた今からやるからまた後でね」


「えっ、あ、うん」


私は邪魔しちゃいけないと思い、そのまま自分の席に着く。


その日の授業が終わり、結局目的の少年を見つけることが出来なかった。


「今日は……帰ろう」


いつもの友達が私の前を通る。


「みんな、一緒に帰ろう!」


「ごめん…今から習い事だから、急いで帰らないと、ごめんね」


「私も」


「私も先に帰るね」


「み、みんな待ってよ、私も一緒に急ぐから…」


私の言葉が言い終わる前に友達たちは、先に帰ってしまった。

なんとも言えないしこりを残しながら帰宅する。


「ただいま……」


いつもと様子が違い、その言葉に返事が返ってくることはなかった。


「あれ…?」


不思議に思い屋敷をめぐるが、いつもより使用人の数が明らかに減っていた。

私は父様の執務室に急ぐ。


「父様!」


「リリアですか、ちゃんと謝ってきましたか?」


「あぅ…それは、今日はその男の子を見つけれなくて…」


「そうですか、、もしかしたら一応検査にでも行ってるのかもしれませんね」


そこで、私が執務室に来た本題を思い出す。


「父様、使用人の人数が減っているようなんですが」


「そうですね、何人か暇を出しただけですよ戻ってきますよ、必ず…必ず」


父様の顔がほんの一瞬だけ、凄く真剣なものに変わったのを私は見てしまった。


「もしかして…私のせいですか?」


「そんなわけないですよ、リリアが気にしないといけないのは、どうやってあの子に謝るかですよ、ほら早く考えてきなさい」


そう言われ、半ば無理やり出されてしまった。


「私のせいだよね……早く謝らないと」


私はその日から数が減った使用人の分が少しでも補えるように、手伝いを始めた。


「リリア様、掃除は私たち使用人がしますので」


「いいの、やらせて、私がやりたいだけだから」


使用人の制止を聞かずに一日中屋敷の掃除をした私は、自室に戻るとすぐに、疲れて眠ってしまった。




次の日の学校で、今日こそはと絶対に見つけないと、と思い教室に入る。


「おはよう」


「あっ……おはようリリアちゃん」


「どうしたのみんな、昨日から様子が変だよ?」


「なんでもないのリリアちゃんは気にしないで、ほらそろそろ先生来るから席に着かないと」


昨日の残っていたしこりが大きくなったのを感じるが、そんなことを口にも出せるはずもなく、そんまま席に着く。


休み時間に他のクラスを周り、そのクラスの人に男の子のことを聞こうと話掛けるが、昨日から私が近づくと、みんな速足でどこかに行ってしまう。


「ねぇ、ちょっといいかな」


「ヒッ…あっいえ、ど、どうしました?」


今度こそはと思い、後ろを向いている子に話掛けるが、私の顔を見た瞬間にその子が顔を強張らせたのがわかった。


「ごめん…何にもない」


私はその子と話し続けることが出来ずに、走って自分のクラスに帰る。

その日も結局見つけれず、帰宅の時間になってしまった。


友達を一緒に帰ろうと誘うが、昨日と同じように習い事があると断られてしまう。


うつむき気味に、帰宅するが真っすぐ家に帰る気分にもならなかったので、少し遠回りをして帰ることにした。


その途中で友達たちが談笑しながら、露店で買い食いしている姿が目に入り、私はその輪に近づいて行く。


「みんな……習い事は?」


「えっ!?リリアちゃん……これは、その違うの、たまたま今日は、お休みなの思い出して」


「……そうなんだ、みんなも?」


「そうそう、みんな同じように、勘違いしてたみたいで「いいよ、正直に言っても」えっ?」


「……みんな、私が怖いんでしょ?」


「……………」


みんなは無言で何も返事をしないが、否定してくれる人もそこにはいなかった。


「……そっか……ごめんね、怖がらせて」


心ではそんなことないと言ってくれると信じながら、言ったセリフには何も返事は返ってこなかった。


「……先に帰るね」


「リリアちゃん!」


そう呼び止められ、少し希望を込めて振り返る。


「あの…リリアちゃんの、お父さんにはこのこと言わないでね」


私の希望は、粉々に砕かれる。


「……うん」


私は一言だけそう返して、自宅を目指した。


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