私の過去 2
私は自分の教室の前で上がっている心拍数を整えようと、深く深呼吸をする。
「お、おはようみんな」
多分私のあの日の失敗は伝わっているだろう、実際にあのパーティーに来ていた子もいるし、正直みんなの反応が変わらないかが怖かった。
「おはよう、リリアちゃん」
いつもの仲が良かった、友達が返事を返してくれる。
その返事で不安がなくなった私は友達の輪の中に入って行く。
「みんな、あの日はごめんね……それであの時傷つけちゃった子に謝りたいんだけど、どのクラスの子か知らないかな?名前は、アスタル・ワートンって言うらしいんだけど」
「あっ、ごめんねリリアちゃん、私たち今日の宿題忘れてた今からやるからまた後でね」
「えっ、あ、うん」
私は邪魔しちゃいけないと思い、そのまま自分の席に着く。
その日の授業が終わり、結局目的の少年を見つけることが出来なかった。
「今日は……帰ろう」
いつもの友達が私の前を通る。
「みんな、一緒に帰ろう!」
「ごめん…今から習い事だから、急いで帰らないと、ごめんね」
「私も」
「私も先に帰るね」
「み、みんな待ってよ、私も一緒に急ぐから…」
私の言葉が言い終わる前に友達たちは、先に帰ってしまった。
なんとも言えないしこりを残しながら帰宅する。
「ただいま……」
いつもと様子が違い、その言葉に返事が返ってくることはなかった。
「あれ…?」
不思議に思い屋敷をめぐるが、いつもより使用人の数が明らかに減っていた。
私は父様の執務室に急ぐ。
「父様!」
「リリアですか、ちゃんと謝ってきましたか?」
「あぅ…それは、今日はその男の子を見つけれなくて…」
「そうですか、、もしかしたら一応検査にでも行ってるのかもしれませんね」
そこで、私が執務室に来た本題を思い出す。
「父様、使用人の人数が減っているようなんですが」
「そうですね、何人か暇を出しただけですよ戻ってきますよ、必ず…必ず」
父様の顔がほんの一瞬だけ、凄く真剣なものに変わったのを私は見てしまった。
「もしかして…私のせいですか?」
「そんなわけないですよ、リリアが気にしないといけないのは、どうやってあの子に謝るかですよ、ほら早く考えてきなさい」
そう言われ、半ば無理やり出されてしまった。
「私のせいだよね……早く謝らないと」
私はその日から数が減った使用人の分が少しでも補えるように、手伝いを始めた。
「リリア様、掃除は私たち使用人がしますので」
「いいの、やらせて、私がやりたいだけだから」
使用人の制止を聞かずに一日中屋敷の掃除をした私は、自室に戻るとすぐに、疲れて眠ってしまった。
次の日の学校で、今日こそはと絶対に見つけないと、と思い教室に入る。
「おはよう」
「あっ……おはようリリアちゃん」
「どうしたのみんな、昨日から様子が変だよ?」
「なんでもないのリリアちゃんは気にしないで、ほらそろそろ先生来るから席に着かないと」
昨日の残っていたしこりが大きくなったのを感じるが、そんなことを口にも出せるはずもなく、そんまま席に着く。
休み時間に他のクラスを周り、そのクラスの人に男の子のことを聞こうと話掛けるが、昨日から私が近づくと、みんな速足でどこかに行ってしまう。
「ねぇ、ちょっといいかな」
「ヒッ…あっいえ、ど、どうしました?」
今度こそはと思い、後ろを向いている子に話掛けるが、私の顔を見た瞬間にその子が顔を強張らせたのがわかった。
「ごめん…何にもない」
私はその子と話し続けることが出来ずに、走って自分のクラスに帰る。
その日も結局見つけれず、帰宅の時間になってしまった。
友達を一緒に帰ろうと誘うが、昨日と同じように習い事があると断られてしまう。
うつむき気味に、帰宅するが真っすぐ家に帰る気分にもならなかったので、少し遠回りをして帰ることにした。
その途中で友達たちが談笑しながら、露店で買い食いしている姿が目に入り、私はその輪に近づいて行く。
「みんな……習い事は?」
「えっ!?リリアちゃん……これは、その違うの、たまたま今日は、お休みなの思い出して」
「……そうなんだ、みんなも?」
「そうそう、みんな同じように、勘違いしてたみたいで「いいよ、正直に言っても」えっ?」
「……みんな、私が怖いんでしょ?」
「……………」
みんなは無言で何も返事をしないが、否定してくれる人もそこにはいなかった。
「……そっか……ごめんね、怖がらせて」
心ではそんなことないと言ってくれると信じながら、言ったセリフには何も返事は返ってこなかった。
「……先に帰るね」
「リリアちゃん!」
そう呼び止められ、少し希望を込めて振り返る。
「あの…リリアちゃんの、お父さんにはこのこと言わないでね」
私の希望は、粉々に砕かれる。
「……うん」
私は一言だけそう返して、自宅を目指した。




