私の過去 1
過去って、こんな感じの入りでいいのかな……
「父様!父様!見てください」
今日私の10歳の誕生日で着るドレスを着て、裾が開くように1回転しながら父様に見せる。
「ふふ、よく似合ってますよリリアでも、パーティーの時間までまだまだですよ?」
「いいの、今日1日このお洋服で過ごすの」
そして、私の待ちに待ったパーティーの時間が来た。
パーティー会場に入ると、すでに多くの貴族が椅子に座って私のことを待っていた。
レッドカーペットの上を歩き、私のために用意された椅子に向かう。
その時の大きな拍手で自分がお姫様になったように感じる。
「今日はみなさん、私の誕生日に集まっていただきありがとうございます」
その日の、パーティーは1日お姫様の気分を味わって問題いなく終わるはずだった。
「リリア様本日はおめでとうございます。そういえばリリア様はその年で魔術の方も長けているとか、ぜひ見たいものですな」
誰がそう言ったのか覚えていないが、誰かが私にそう言って、褒められて嬉しかった私は魔術をお披露目することにした。
最後にパーティーに来ていた人たちも外に移動し、私の魔術を披露してパーティーは終わるはずだった。
「では行きます、私の魔力に反応せよ、ファイヤーボール!」
手を空に向け、魔術の基礎であるファイヤーボールを空に向かって放つ。
だが、空に上がって爆破するはずだけだったはずの私の魔術が、空に上がらずに放物線を描いてそのまま、私の魔術を見学していた人たちの方に飛んで行ってしまった。
「何で!?」
私は一瞬で体温が下がり、血の気が引くのをその瞬間に感じる。
周りでは、即座に水の魔術を発動させ防御態勢をとる。
しかし、一人の少年が突き飛ばされたようによろけながら、私の魔術が着弾するであろう場所に入ってしまう。
「あっ!ダメッ!」
その少年に当たる瞬間助けを求めるように近くに視線を泳がせるが、一番近くにいた貴族の男性は醜悪な笑みを浮かべ、それを隠すように水の壁を自分の前に発動させていた。
私の願いは届かず、私が放った魔術が少年に直撃してしまう。
「あっ……わっ私の魔力に反応せよ、ウォーターボール」
気が動転していた私は詠唱も噛み、魔力も上手く練り上げれずに魔術を失敗してしまう。
「早く!火を消すんだ!屋敷から回復魔術師を早く!」
初めて聞く、父様の怒号も今の私には雑音のように聞こえ、正確には入ってこなかった。
少年が救助を受けている間も目の前の光景が信じられず、呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
それからの記憶は曖昧だが、自室に戻っているように言われ私は、自室に戻ったことだけは覚えている。
自室に戻った私は、自分のしてしまったことが怖くなり布団を頭から被って、目をつむった。
どうか、目を開けたらすべて夢であるように願いながら。
それから、数日私は自室から出ることもできずに、ただ布団にくるまって震えていた。
その自室にノックの音が響きわたる。
「リリア、入るよ」
扉の向こう側からは、父様の声が随分と久しぶりに聞こえた。
布団から頭だけを出し、父様の顔を見ようとするが、私はまともに視線を合わせることが出来なかった。
「リリア、魔術が当たってしまった少年は無事回復しましたよ」
「本当!?」
その報告を受けた私は布団をめくり上げ、父様の方に視線を向ける。
「ええ本当です、先ほど連絡が入りました。今日から学校にも向かうようですよ」
「よかった……」
「リリアも明日からはちゃんと学校に行きなさい、リリアが怪我をさせてしまった子も同じ学園にいるようですし、しっかり謝ってきなさい」
「でも……」
私はもう一度布団に潜ろうと布団に手を掛けようとするが、父様に布団を取り上げられてしまう。
「逃げてはダメですよ、悪いことをしたらしっかり謝りなさい、わかりましたね?」
「……はい」
「大丈夫ですよ、リリアが真剣に謝れば許して貰えますから」
「……本当?」
私は不安げに父様を見つめる。
「はい、本当ですよ」
「ありがとう、父様明日謝ってくる……でも、私その子知らない……」
「名前は、アスタル・ワートンですよ後は自分で頑張りなさい」
「はい!」
私は机に向かい、なんて謝れば許して貰えるか真剣に考えることにした。
「ふふ、頑張りなさい」
そういって父様は、私の部屋を後にした。




