スタート地点
前回出てきた、魔族マトの話は、別の小説で書こうと思っています。
書き始めましたら、そちらの応援もよろしくお願いします。
--レンside--
「嘘だろ…レイン様とシュプレイ様が負けた…?」
俺がレインに剣を突き立て俺たちの勝ちが確定したとき、周りでその試合を見ていた兵士たちが騒然としし騒がしくなり始める。
「ハハ…まじかよ、まさか負けるとわな!」
困った様子で軽口を言いながら立ち上がるレインの表情は、悔しさを隠しきれていなかった。
「じゃあ、これで俺たちは」
「あぁ、今この場で騎士と魔術師に拝命し、魔族特殊部隊に任命する……というよりシュプレイは大丈夫か?」
俺たちはシュプレイの方に視線を向けるが、まだ気絶したままの状態のようだ。
「あー……誰か医務室まで運んでやてくれ」
レインの言葉に、数名が素早く動き始めシュプレイを担ぎ運んで行った。
「はぁ…まじで負けるなんて思ってなかったからな、どうすっかな、というよりお前たちはどうすんだよ?魔族特殊部隊なんて、響きはいいが実際これから何をしていくんだ?さすがに、暇を持て余すような奴らに払う給料はねぇぞ?」
「……魔族はいる」
「はっ?」
リリアの言葉に、レインも周りで聞いたであろう、人たちも怪訝な顔をする。
「実際に、魔族はいます。少なくとも一人は」
「はは……笑えねぇ冗談だよ……まぁ最近スカージの集団の中に男がいたなんて、噂が流れてるが、実際いたとして何で姿をみせねぇ?」
「それは……わかりません、ですが実際にこの目で見ました。それに友人の魔力もその時に魔族に奪われたままです」
「っつてもなぁ……何かわかりやすい実害でもありゃ、部隊として成立すんだが……どうしたもんか…はぁ、頭使うのはシュプレイの専門分野っつうのによ」
レインは俺たちの今後をどうするか頭を抱えて悩み始める。
「……別に、給料はいい……名簿に載せてくれるだけで」
「そうですね、僕たちの給料は魔族討伐したときのみの歩合制でいいですよ」
むしろ、そっちの方が都合がいい。
給料払っているんだから騎士の仕事を手伝えなんて言われても困るし。
「んんーまぁそういうことなら、いいか……いいのか?まぁ、詳しいことはシュプレイが起きてから」
「いえ、俺たちはこのまま魔族を探す旅に出ます」
「…………」
リリアも、声は出さないが横で首を縦に振っている。
「いや、あのな手続きとか色々あるからまだ………っておい!ちょ!待てって!」
今出来たばかりの上司の言葉を完全に無視…いや、全く聞こえなかったので、そのまま身体強化を使ってダッシュでその場を後にした。
まずは俺の家に二人で向かって、そのまま旅の準備をすることにした。
「ただいま」
「……おじゃまします」
「おかえりなさいませ、試験の方はどうでしたか?」
家に入るとずっと待っていたのか、そこにはウィルがいた。
「うん、問題なかったよ、それよりウィルこのまま俺たちはアスタルを探しに行くから、旅の準備手伝ってくれないか?」
「旅の準備でしたら、こちらの方に出来ております」
ウィルにそう言われて足元に視線を向けると、二つのリュックサックが置かれてあった。
最近はウィルが俺の未来が見えてると言われとも驚かないような気がしてきた。
「そのでっかい荷物は俺たちの旅の道具だったのか、ありがとうウィル助かるよ」
「……私のも?」
「はい、リリア様の使いの者より預かったものです」
「……ありがとう」
小さな声でお礼を言うリリアを、ウィルはほほえましそうに見つめていた。
「父さん達に一言いって行きたいんだけど、時間あるかな?」
「旦那様は仕事が詰まっており、今日の夜なら時間が空いております、リリア様のご両親も夜なら開けておけると使いの者から言伝をもらっております」
「そうか……じゃあウィル、俺たちはもう今から行くよ、父さんには悪いけど、すぐにでも出発したいんだ」
「……同じく」
ウィルは、子供の微笑ましいわがままを聞く祖父のような表情になる。
「やはりそうおっしゃるのですね、旦那様達からの伝言です。定期連絡は必ずしなさい。っとだけです」
その言葉を聞いてこの両親の子供でよかったと再確認したのか、俺のことが見透かせれてる気恥ずかしさからなのか、つい笑みがこぼれてしまう。
リリアもそうなのか、見るといつもの無表情な顔に少しだけ喜びが混ざっているのがわかる。
「じゃあ!行ってきます」
「……うん、行ってくる」
「はい、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
深々とお辞儀をするウィルを背に、アスタルを探すための旅に出た。




