終わりと始まり
短く区切ってすみません、区切りがいい!っと思ったら、いつも短いです。
出来るだけ、長く書けるように、頑張ります。
「勇者……?」
僕は目線のみだけを魔族の方に向けながら、疑問で返していた。
「そうだ、お前が我を倒すはずの勇者……になるはずだったのだがな」
魔族は口角を上げ、悪戯が成功したような笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「そうだあの日、あの時、我にさえ遭わなければお前は、人類の希望として我の前に立ちはだかる勇者となっていただろうな」
「僕が…そんなわけ」
「信じられないというなら、自分の体を見てみろ」
体を見るが僕の体を見たからといって、本当に勇者になるはずだったかどうかの証拠らしきものは見当たらない。
「溢れ出た魔力が勝手に傷を癒しているだろう、それも非効率的に、なのにお前の魔力は枯れるどころかむしろ増えていっている、そんなことをできる人間が他にいるのか?」
ついさっきまで喋れなかったことを思い出す。
「なんで、僕のそんなことがわかる」
「魔眼と言ったらわかるか? 我の目はすべての人間の最後の瞬間を見ることができるだけだ、我の最後の瞬間、我の胸に剣を突き立てていたのがお前だ、アスタル」
「僕が……じゃあ、あの時僕の魔力が奪われなかったら…」
「フハハッハ!面白い、それは違うぞ!我は奪ったのではない、ただ封印していただけだ、お前の強大な魔力だいつかは勝手に封印が解けていただろう、それを人間の希望を捨てたのは同じ人間だ我ではない」
そう言われ、僕は今までの人生を振り返る。
確かに僕は、人間が憎い僕をこんな目に合わせた奴らを全員殺さないと気が済まない。
「人間がどれだけ醜く自分勝手な生き物か体験しただろう? ホントに卑しく今も人間がのうのうと生きていると思うだけで吐き気がしてくる……アスタルよ我と共に人間を滅ぼさないか?」
そうだ、人間は醜く卑しく自分勝手で汚い生き物だ、その力があれば今すぐにでも殺して回りたい。でも……
「僕の中では人間も魔族も同じだ、同じく醜く自分勝手で汚い生き物だ、僕にとっての復讐相手は人間だけじゃないっ!」
「そうか……人間の絶望する姿を見れないのは残念だがしょうがないな……我もお前を利用しようとしてる、結局は魔族になっても元人間ということか……」
「なにを言って……」
魔族は立ち上がり僕の体に手を重ねると、何かの魔術を発動させようとさせる。
「願わくば、我の願いを叶えてくれ人間よ」
「なんで僕が……人間を滅ぼしたいのなら、自分ですればいいだろっ! わざわざ僕に言ったって、この体じゃ……」
「我じゃダメなのだ、まぁそのうち解るだろう……マジックドライブ」
魔族が小さく魔術名を呟き、魔術を発動させると僕の体に大量の魔力が流れ込んでくる。
「ガァッ……っくぁぁぁああ!」
魔力とが流れ込むと同時に体中に激痛が走る。
痛みに体を捩らせるたびに骨が、肉が軋み歪む音が聞こえてくる。
どのくらいの時間が経ったのかは分からないが、痛みが引き意識がハッキリし始めるころには魔族はもう姿が見えなかった。




