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歩みの過去  作者: んやな
22/32

解放

更新遅くなりすみませんでした。


いろいろと立て込んでいまして、これからも少しずつですが、書いていきますので、応援よろしくお願いします。


--アスタルside--


「さぁ、くぐるのデス!」


ショーのために着させられた派手でダボダボした服に、真っ白の仮面をつけた僕は無理やり片足で立たせられて、火がついた大きな輪をくぐれと団長に命令されている。


僕は片足で飛び、その輪をくぐることに成功するが、着地が上手くいかずに顔から地面に落ちてしまう。


「わははははっは!!」


僕のそんな無様な姿を見た会場のお客さんは、とてもムカつく表情で笑っている。

あいつも、あいつも、ここにいる全員、殺したいなぁ……


「じゃあ次はこいつデス!」


倒れた僕をそのままに舞台袖から一匹の犬が入ってくる。

その犬は、僕がくぐり抜けた輪を難なく飛び越えると倒れている僕の上に着地する。


僕のさらにみじめになった姿を見て、また客は笑い始める。


殺す……殺す……あいつも、あいつも、あいつも、


僕が一人一人殺す相手を記憶していると、一人の男の顔で視線が止まる。


「あははは!犬以下とは、滑稽で笑えるな!」


なぜか笑いに包まれる会場でその男の声だけが、はっきりと聞こえた気がした。


お父さん……


その男は僕のお父さんだった、今でもはっきりと覚えている、あの顔、声、表情。

忘れられない男が今僕の目の前にいる。


お父さん!お父さん!お父さん!


僕は片足で這いづるように舞台を移動する。

舞台は少し高い段になっていたが気にせず顔から落ちる。

そのまま這いづり、お父さんに近づこうとする。


「なにをやってんデスか?」


団長が舞台からおり、僕の首を掴み持ち上げる。

僕はお父さんのところに向かいたくて、体をよじって暴れる。

身体強化をしている団長の手を抜けることは出来ずに、どんどんと、距離が離れて行ってしまう。


あぁ、ダメ!今行かないと!お父さんを、お父さんを…………殺せないじゃないか!

 自分をこの世に生み落とした元凶に、この男さえいなければ僕は生まれなかったのに、生まれさえしなければ、こんなに辛いことも、苦しいことも、痛みだって、何より死にたいと願う必要さえなかったのに。

 僕のすべての不幸の始まりの男を目に入れてしまい、今までで一番の憎しみ憎悪が膨らんでいくのがわかる。


 今すぐ!行かないと!離せ離せ離せ離せ離せはなせハナセハナセ!


「ハナセッ!!!」


「な、なんデスか!」


なんで声が?、でも理由は後で良い、早くあの男の所に向かわないと!


「ハナセ!は、離せ!僕を今すぐ離せッ!!」


久しぶりで上手く話せなかったが、徐々に慣れてきて大きな声で叫んでいた。


「なんデス?喋れたんデスか?」


団長は面倒そうな表情のまま僕を奥に連れていこうとする。


「ぁぁぁああ…………」


僕はどうにかしようともがいていると、体から懐かしい感覚があふれてくる。


この、この感覚は、魔力……なんで……


「ぁぁぁあああああ!!!」


団長が叫び声をあげた瞬間に、僕の体が団長の手から離れる、正確には団長の手が団長の体から離れていた。


「やはり封印を解いたか、人間」


倒れそうになった僕の体を、何かが支える。

確認するとそこには、僕の体を支えているあの魔族がいた。


「何で…お前がここに」


「不思議なことではない、お前にかけていた封印が解けるのがわかったのでな、迎えに来ただけだ」


観客は僕と魔族の会話を聞いておらず、団長の状態が演出かどうかもわからず混乱していた。


「封印……?」


「まぁその辺は、後で教えてやろう、まずは……」


倒れこんで、傷口を必死に抑えている団長の頭に足を乗せる。


「聞くがいい、人間ども!我は魔族、名はマト、これからお前たち人間を絶望に落す魔族の名だ!!」


そう魔族が宣言したと同時に、団長の頭を踏み抜いた。


会場に一瞬静寂が訪れたが、張り詰めた糸が切れたように客は騒がしくなり、我先にと出口に向かっていた。


そこに僕の父さんが混じっているのが目に入る。


僕は魔族の腕の中から倒れるように逃れ、地面をはいずりながら父さんのほうに向かっていく。


「待て人間、お前は我と来るのだ」


魔族が僕に近づき、僕の首根っこをつかみ上げてきた。


「待って、父さんのところに…今いかないと」


僕の言葉が終わる前に一瞬にして視界が暗転したかと思うと、見知らぬ古びた6畳ほどの小さな部屋に移動していた。


「何度も言わせるな、我が何故人間の言うこと聞いてやらねばならん」


そういうと魔族は、部屋に置いてある今にも壊れそうな木製のベットに僕を突き飛ばして、自分は近くにあった椅子に腰かけていた。


「少し話をしようか人間……いや、勇者アスタル」




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