日常
「今日は、魔術の実践の練習だ」
僕は実習場に移動して、授業を受けている。
「じゃあまずペアを作れ!余ったら先生のとこに来いよ」
そう言って周りは思い思いにペアを作っていく。
もちろんいつも一人余るので、先生の所に向かう。
「あの…余りました」
そう先生に近づいて言うが、返事は帰って来ない。
「せんせーい余っちゃった」
そう言いながら、一人の女子生徒が近づいてくる。
「そうかーじゃあ先生とやるか?」
「えー先生少しは手加減してよー」
「俺だって教師だ、かわいい生徒に怪我なんかさせるわけないだろ」
そんなこと言いながら、二人は僕から離れていく。
「よーし全員ペアは組めたな、じゃあ一人は攻撃魔術、もう一人は防御魔術を発動させろ、あーそうそう、言い忘れたけどお前ら怪我は気を付けろよ!誰とは言わないけど流れ弾には気をつけてな、じゃあ始め」
先生がそう言うと、周りからクスクスと笑い声が聞こえる。
いつもの事だと、気にしないフリをしながら練習場の隅で剣の素振りを始める。
「ぐはっ」
素振りをしているところに、魔術で作ったであろう拳大の石がみぞおちめがけて飛んで来た。
「わりわりぃ」
「クライス、それじゃお前のペアの練習にならないだろ」
膝をついた状態のまま顔を向けると、さっき教室で絡んで来た生徒がニヤニヤした顔を向けていた。
先生も僕じゃなく、ペアの相手に謝るように言っているのが聞こえる。
「げほっげほっ」
「アスタル!」
聞きなれた声が聞こえて、声がしたほうに自然と視線を向ける。
「レン?リリア?」
そこには、練習場の入り口にレンとリリアが立っていた。
「アスタル、お前大丈夫か?」
「誰………やったの…」
駆けつけたレンが僕の体を支えている横で、リリアは静かに怒っていた。
リリアの一言に誰も声を発することができず、ただ静かに沈黙が流れる。
「なんで二人がここに…?」
「授業が変わってな、俺たちも今日は実習になったんだよ、それより体大丈夫か?」
「うん…それた魔術に当たっただけだよ」
「あの…」
うつむき加減にクライスが僕たちに、近づいてきた。
「レンさんリリアさんすみません、自分の流れ弾が運悪く当たったみたいで…」
「…………」
リリアは黙ってクライスを睨みつけている。
「えっと君……」
「自分、クライスといいます」
「クライス君、まず君謝る相手が違うんじゃないの?」
そう言われて、苦虫を噛み潰したような表情で頭を下げる。
もちろん、言葉はないせめてもの僕に対する抵抗だろう。
「まあいいんだけど、見てる限りペアで、攻撃と防御の魔術の授業かな君の相手は?」
「か、彼です」
クライスは、少し離れたペア相手を指さした。
「ふーんそっか、あそこから流れ弾ねぇ…クライス君、君魔術のセンス無いんだね」
そう言って、レンは笑顔を見せる。
リリアは対照的に睨み付けたままだった。
「あ…いやそういうことでは…」
「じゃあ、俺たちはアスタルを医務室に運んでくるから」
クライスをそのままに、僕たちは実習場を後にした。