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歩みの過去  作者: んやな
15/32

再会

アドバイスをいただき、以前までの話しに句読点などつけてたら、更新が遅くなりました。


これまでの話が、少しは読みやすくなったと思います。


アドバイスをくれた方々、ありがとうござます。


--アスタルside--


やっと僕は死ねる。

目を閉じ、ゴブリンの拳が振り下ろされるのを、ただ待つ。


ゴブリンの拳を、今か今かと待ち望んでいると、体が妙な暖かさに包まれる。


「な、なんだ…?」


これが死んだときの感覚か?と思い目を開けると、そこには首が飛んだゴブリンが横たわっていた。


「なんで…なんで」


「久しいな、人間」


そう正面から声が聞こえ視線だけ、声がしたほうに動かす。

以前あったことのある魔族が、姿、形変わらずにそこにいた。


「人間、どうだ我の回復魔術は?」


「回復…魔術?」


僕は自分の体を確認する。

僕の体は、両腕と片足は無いままだが、傷口はふさがっていた。


「何で…なんで助けたんだ!!魔族!答えろ!誰が助けてと言った!!」


首を上げ、魔族を睨みながら、僕は叫ぶ。

魔族は面白そうに僕を見つめ、口を開く。


「我が、何故人間の望みを聞いてやらないかん?」


そう言われた瞬間、僕は舌を出して、思いっきり噛み切ろうとするが、魔族の黒い手が僕の顎を掴む。


「我の行為を、無駄にするのか?人間!」


魔族が、僕の顎を掴んでいる手に力を込める。

その瞬間、耳の内側から、骨が砕ける音が聞こえる。


「あがががあ!!」


腕を吹き飛ばされるのと、比べものにならない痛みが、僕を襲い、腕が無い僕は体をよじることしか出来ない。


「フハハッハ!もう少しだ!もう少しでやっと、始まる!!」


片目を閉じた魔族が、両腕を天に掲げ高らかに笑っている。

この痛みは、魔族が何かをやっていたのかもしれない、魔族が閉じていた片目を開くと、痛みが徐々に引いていく。


「あぁがあ…」


僕は魔族に、言葉を発しようとするが、顎が砕けて上手く言葉が出てこない。


「待っていろ、人間ども!もう少しで、全て無にしてくれる!!」


魔族はそう呟くと、そのまま僕を残して、一瞬で姿を消した。


僕は、死ぬことすら出来ないのか!なんで!なんで、何一つ思い通りにならないんだよ。

声にすることすら出来ない、その思いに、僕はただ涙することしか出来なかった。











どのくらい泣いたんだろうか、その場から動くことすら出来ない僕は、このまま魔物の餌になるのを待つしかない、そう思っていたが少し遠くから声が聞こえる。


「見つけたぞ!!」


その声が聞こえ、数人の足音が、僕の倒れている所に近づいて来るのが聞こえる。


「これは………ひでぇな…」


「何で傷がふさがっているんだ?」


「ミネルバさんが言ってたゴブリン、死んでるぞ…」


倒れている僕を、上から見降ろしている男たち、多分ミスティたちが呼んだ冒険者が、僕の姿を見て口々に言う。


「おい…大丈夫なのか?」


そのうちの一人が、僕を背中から支え状態を起こす。


やめて…僕を助けないで。


「顎も………」


返事が来ない理由に気づいたのか、僕を支えている男は、僕の体を上から下まで観察する。

そして、その男はゆっくりと真剣な表情で口を開く。


「俺には、何で傷がふさがっているかわからねぇが、お前は今、自分の体の状況わかっているのか?」


僕はその質問に、首を縦に振り肯定する。


「そうか…お前昨日調合してた奴だよな?お前は、その体でも街に帰ることを望むか?それとも…」


男は顔を伏せ、言葉を止めるが、決心したように顔を上げる。


「街に帰りたいか?」


僕は、その言葉にすぐに首を横に振る。


「ここで……終わりたいのか?」


首を縦に振って僕は、肯定を示す。


「そうか…分かった……」


僕を支えていた男は、ゆっくり僕を寝かせ腰の剣を抜く。


「ちょっと、待って欲しいっす!」


集団の中から、一人の男が僕に近づく。

その男が、僕の涙で濡れた瞳を優しく手で拭う。

視界がクリアになり、男の顔がはっきり見える、僕が初めてこの街に来て、助けた男だった。


「その役割、あっしにやらせて欲しいっす、せめてもの恩返しになるなら」


「………そうか」


剣を持っていた男は鞘に戻す。


「見ていて、あんまり良いもんじゃないと思うっす……皆さんは戻っていて大丈夫っす」


剣を抜きながらそう言う男の言葉に、そこにいた冒険者たちは顔を伏せ、身体強化をした後、何も言わずに街に戻っていった。


「あの時は、迷惑かけたっすそして、申し訳ないっす」


男は僕を両手で抱えだした、僕は嫌な予感がする。

もしかして、助けるつもりなんじゃ無いかと。

何とか、片足で暴れるが、強化している両手から抜け出すことはかなわなかった。




男は、僕を抱えたまましばらく身体強化して街の方に進んでいく。

そんまま街に入らず、僕は男によって、街の近くの茂みに隠される。


「ふー結構人運ぶのって、疲れるっすね」


額ににじむ汗を拭い、男はどこかにかけていく。

僕は、今しかないと思い片足と体を使って、芋虫の様に地面を這って移動する。

早く僕を殺して…お願いだから、だれか




そんな、僕の願いはいつも通り、叶うことなく男に見つかってしまう。

戻ってきた男の隣には、馬車と杖を突きながら歩く男がいた。


「これっすよ」


「フォフォ、探してたのにぴったりデスヨ!」


二人は、しゃがみこんで僕の体を上から下まで観察しながら話し始める。


なんだ?誰なんだ?


「フォフォ、これ約束のお金デス」


「いやぁ、ありがたいっす」


二人は僕を見た後に、お金の受け渡しをしていた、正直何が起こっているのか、僕にはわからなかった。


「病み上がりで、まともに稼げなかったから、助かったっす!」


「フォフォ、じゃあもらっていくデスヨ」


「かまわないっす、あっでもここの冒険者には、そいつ死んだことになってるっす、バレることは避けてくださいっす」


「大丈夫デス、もうすぐ違う街に行く期間デスので」


「ならあっしも安心です、では、あっしはこれで!」


そう言って、男は去って行く。


あいつはなんだ!僕が命を助けただろう!ふざけるなっ!なんで……なんで…誰か僕を殺してくれ…


「フォフォ、じゃあ今日からワタシの見世物小屋で、道化師として頑張って、稼いでくださいね」


その時、僕は売られたんだと確信する。

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