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歩みの過去  作者: んやな
14/32

スカージ


「お前が俺たちとパーティー組みたいのか…!?」


「………………」


マスターに俺たちの前に連れてこられたのは、クライスだった。


「レンさんも、リリアさんも途中で帰っちゃうんだもんな、でもこれから、よろしくお願いします」


俺たちは正直言葉も出せなかった。あれだけのことをしておきながら、悠々と俺たちの前に来れる神経がわからない。


「クライス君、よく俺たちとパーティーが組みたいなんて言えたね?」


「あっ!クライスでいいですよ、確かにお二人の強さに比べたら全然ですけど、お二人から学ぶことは多いと思いまして、ギルドマスターに無理言ってお願いしたんですよ」


違う、俺が言いたかったことはそう言うことではない。


「……違う……アスタルのこと」


リリアが俺の代わりにクライスに言ってくれる。


「あぁ、あいつのことですか、でも今日来てくれてわかりましたよね?アレが皆の意見ですよ、それより早く依頼行きましょうよ!」


アスタルのことを本当にまったく気にしてない様子に、手が出そうになる。

俺の握った拳をリリアの手がそっと包む。


「ダメ……」


リリアにそう言われ少し頭が冷える。


「ふー………よし!じゃあさっさと終わらせよう………」


「じゃあなに行きますか?オークですか?ゴブリンですか?それとも他の魔物ですか?」


「……薬草…採取」


「え!?はっはっはやだなぁ、もうあいついないんですよ?」


「嫌なら別にいいよ、クライス君」


自分でも驚く程冷たい声が出てしまう。


「あ、いやというわけでは…」


「そこまでだ、お前ら初めてのパーティーの依頼が、採取って言うのも味気ないだろ?それに、今はギルドじゃ、採取系の依頼は無いしな、ちょっと待ってろ俺がちょうど良い依頼持ってきてやるから」


そう言ってマスターがクエストボードまで依頼を取りに行く。


「チッ!」


さっさと依頼を終わらせようとしたのを、邪魔されて思わず舌打ちが出てしまう。


「おっし、持ってきてやったぞ!隣町のと、この街の間ら辺にスカージの巣が見つかったらしくてな、そこのスカージの殲滅をやってきてくれ」


俺は、ギルドマスターが持っていた依頼書を乱暴に取りギルドを後にする。



急いでスカージの巣に向かおうと早足になるが、


「ちょっと待ってください!」


クライスにそう言われて、俺たちは足を止める。


「……なに!?」


「馬車借りに行かないんですか?逆方向ですよね?」


「俺たちは、馬車より強化して走った方が早い、俺たちのパーティーメンバーなら、ただ走ってついてくるぐらいできるよな?」


「いやそれは……」


ついてこれないのは、わかっている。むしろ置いていこうと俺はしているし、そう思っていると


「もちろんついて行けますよ、ただそうなると戦闘の魔力が無くなるかもしれないので、自分だけでも、馬借りてきますね」


そう言ってクライスが勝手に馬を借りに走って行ってしまった。

クライスの見栄を張るのも、言い訳もすべてに苛立ってしまう。




しばらくその場で待っていると、やっとクライスが馬を連れて戻ってくる。


「お待たせしました!!」


「行くぞ………」


俺はそれだけ言って、街の外を目指す。

街の外に出ると俺とリリアは身体強化をして、目的地を目指す。

もちろんクライスは付いてこれない、馬なんかに俺たちがスピードで負けるわけがない。








しばらくすると、俺とリリアは目的のスカージの巣の近くに着く。

クライスも一応場所を知っているし、後から来るだろう。


「さっさと終わらせよう」


俺は、でっかい蟻の巣のような穴が開いたスカージの巣を見つめながら言う。


「………うん」


俺とリリアが静かに移動しながら巣の周りのスカージを慎重に一体づつ片づけて行く。

あらかた巣の周りのスカージを討伐をすると、俺たちは少し巣から離れる。


「ちょっと周りの奴ら多かったな…今回の巣は結構大きいかもな」


「………時間かかる…めんどう」


そう言いながらリリアは、液体状の解毒薬のビンを鞄から出す。

リリアは、無詠唱の水の魔術でビンから取り出し、そのまま並列魔術で火を出すと解毒薬に当て蒸発させようとする。


「いましたー!!探しましたよー!!」


大きな声でそう言いながら馬に乗ったクライスが近づいて来る。


「大きな声を出すな」


「………迷惑」


俺たちにそう言われて少し気まずそうにするが、話を変えようとしたのかリリアの手元を見て、


「何してるんですか?」


と言ってきた。

本気で言っているのか?スカージの巣を殲滅する時の基本だろうが


「こうやって解毒薬を蒸発させたのを、風の魔術で巣の中に送り込んで、それで出てきたスカージを少しづつ狩るんだよ」


「へー」


と感心するクライスだが、いい加減にしてほしい。

別にスカージの巣の殲滅するための基本を知らないのはいい、だがこの依頼は、クライスも一緒に受けている、知らないじゃ済まされないだろう。


「でもあのスカージですよね?」


そんなことを言い出したクライスを無視して俺は、リリアが蒸発させた解毒薬を風魔法で運び始める。


「我に集い敵を焼失させよファイアーブロー」


「おまっ!」


自分の作業に集中していたせいで、クライスの魔術の反応に遅れてしまう。

俺が制止させる前に、クライスがスカージの巣に向かって魔術を放つ。


「見ましたか?僕の魔術の実力!!これが僕の本当の実力ですよ!」


そう言って自慢げに俺に言い放つが、俺たちはそれどころでは無かった。

クライスの魔術で上がった砂埃を俺が風魔法で飛ばす。そこには完全に巣穴がふさがったスカージの巣があった。


「リリア!!」


「うん!!」


俺がそう言うと珍しくリリアが、慌てたように返事をする。


「どうしたんですか?慌てて、スカージの巣穴は僕の魔術で壊しましたよ!」


「お前な!!」


俺が文句を言おうとしたがそれと同時に、地面からスカージの手が何本も生えてくる。


「リリアはスカージの瘴気を!俺が殲滅させる!」


そう言って、地面から出てきたスカージを俺が素早く魔術で討伐する。

解毒薬を送り込んで無かったので穴の中から、溜まっている瘴気が噴き出てくるが、それをリリアが風の魔術で飛ばしてくれる。


「わぁあああああ!!!」


クライスの叫び声が聞こえて、クライスを見るとスカージを倒していたが純粋に数に押されて今にも、襲われそうになっていた。


「クソッ!」


クライスに近づき周りのスカージを倒すがその間に、何匹ものスカージのうちもらしを出してしまう。

リリアの方を見るがリリアは際限なく、穴から出てくる瘴気を何とか処理しながらスカージの相手をしている。

しかし、時間が経てば経つほど処理しないといけない穴が増えていく。

俺も何とか瘴気を魔術で飛ばしながら、倒すがクライスのそばから動けないため、自然とうちもらしの数は増えていく。


数分経つと、俺とリリアは瘴気の処理が間に合わなくなり、あたりに少しずつ瘴気が溜まり始める。


「撤退だ…」


俺がもう無理だと判断してリリアとクライスに、撤退の指示を出す。

リリアが頷き俺がクライスを抱えてその場を後にする。


俺にはうちもらしたスカージで被害が出ないことを願うことしかできなかった。


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