薬剤採取
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少し更新が遅れましたが、これからしっかり更新予定ですので応援よろしくお願いします。
「さて……今日は、二人に調合教えるのかぁ…僕に出来るかな」
ギルド行く途中で見つけていた広場で、日課の鍛錬を朝に変えて布で汗をふきながら鍛錬を終える、この後の用事を思い出して少し不安になる。
でも、期待に応えたいと思う自分もいるので少しだけ気合が入る。
僕は不安と気合の入り混じった初めて感じる感情を落ち着かせながらギルドに帰ってくる。
「よかったわ、帰ってきたのね」
「あ!アスタルーおはよう!」
ギルドに入るとすぐに二人の姿が僕の目に入る。
「朝起きたらアスタルいないんだもん、探したんだよ!」
「すみません、少し鍛錬してまして」
今まで無かったので、僕を探していたと言うミスティの言葉が嬉しくて口角が上がってしまう。
「それじゃ、調合を教えようと思うんですが、何から教えましょう…?」
「ウチは最初っから教えてほしいわね」
「私もー、正直調合については何も知らないんだ」
「そうですかじゃあ……あれ?」
僕は二人に最初っから教えようと鞄から薬草を探すが昨日の件で全部使ってしまったのか、鞄の中には、昨日のあまりで朝受け取っていた、解毒薬のビンが一つしか入っていなかった。
「ごめんなさい、薬草が残ってないみたいで…」
せっかく、初めて人に期待されたのにそうそう躓く自分に嫌気がさす。
「ああ、いいわよギルドにある在庫もらってくるから」
ミネルバさんは、ギルドにある薬草をとってきてくれる。
しばらくすると両手一杯に薬草を抱えてミネルバさんが戻ってくる。
「はいどうぞ!じゃあ、早速初めてもらえるかしら」
そう言いながらギルドの机の上に薬草を無造作に置く。
僕はそれを一つ一つ手に取って驚愕する。
「あの、ミネルバさんこれって本当に在庫ですか?」
「そうよ!ふふすごいでしょ、ウチの冒険者たちは薬草採取って言う小さな仕事もしっかりこなすのよ」
ミネルバさんは少し得意げに胸を張る。
「あの…とても言いづらいですが……これで調合してもまともなのができないかと…」
ミネルバさんは首をかしげながら薬草を手にする。
「何で出来ないの?ほら、この辺なんてつい最近とってきたばっかりできれいな薬草よ?」
「うん、状態もきれいだしなんでダメなの?」
ミスティも薬草を手に取りしげしげと観察をする。
「えっと、その持っているので言うと、ミネルバさんが手にしているのは、見た目はすごくきれいですけど、まだ若くて解毒するための栄養をしっかりと蓄えられてません。ミスティが持っているのは、というより全体的に根がついていないので、劣化しているのが多々ありますね」
「え…アスタル君もしかして、見ただけで薬草の成長具合がわかるの?」
「結構大まかではありますが、それなりには」
僕がそう言うとミネルバさんも、ミスティも驚いたように目を開いて僕を見る。
「薬草採取よ!アスタル君の知識は正直知らないことばかりだわ、文字通り一から教えてもらえるかしら?」
僕はいいけどミスティは馬車で薬草採取ばかっじゃは嫌だと言ってたし不安になり目を向けるが、うんうんと頷いて行く気満々のようだ。
「じゃあ、採取から調合まで教えますね、今から出発でいいですか?」
「もちろんよ!」
「うん!」
二人から了承をもらい早速薬草採取に向かう。
街から出て少し、初心者がよく使う採取場所にミネルバさんに連れて来てもらった。
道中はミスティがミネルバさんに熱心に治癒魔術について質問していた。
「早速採取なんですが、基本は根からの採取でお願いします」
「はいはい!アスタル先生!なんで根からの採取なんですか!引っこ抜いたほうが早いと思います!」
ミスティが手を勢いよく上げ質問をする。というか先生って…
さらに荷が増した気がして不安が増加する。
「えっと、確かに調合するときは根は使わないんですが、根から採取したほうが根から劣化するので、調合で使う葉の部分の劣化が遅れるんですよ」
「へーそうなんだね!じゃあ早速取ってくるよ」
ミスティはそう言って元気にかけていく、残ったミネルバは神妙な表情で僕に話しかける。
「そんな知識どこで知ったのかしら?私も一通り治療系のことは学んできたつもりなんだけど…」
「いや…昔ギルドで薬草を買い取ってもらえなくなってしまって、それで理由を聞いたら僕が取ってきた薬草は状態が悪いって言われて、それで、状態をよくする方法を取ってきた薬草を片手に色々研究しただけですよ」
結局買取してもらえませんでしたけど、という僕の言葉はミネルバさんの耳には入っていなかった。
(独学で……どんな本にも書いてなかった知識…これを公表すればもっと多くの在庫が保管出来る、いえ多くの命を救うことができる、それにしてもこの子がいたギルドは何を…こんな人材をどうやったら埋もれさせれるのよ)
もっと大きな才能の持ち主がいたことを知らないミネルバは、アスタルがいたギルドへの苛立ちがこみ上げていた。
「アスタルー取ってきたよ!」
二人がそう話していると、ミスティが根が付いた薬草を片手に走ってくる。
「これは少し若いですね、それにあまり強い育ち方してないですね」
「えー!!結構きれいなの選んだのに…それに育ち方って?」
ミネルバさんも話しを聞くために近づいて、ミスティが持っていた薬草を手に取り何がダメなのか観察する。
「アスタル君、お姉さんも何がダメかわからないわ」
僕は二人に薬草の状態の確認を教えるためにその場にあった薬草の葉を一つちぎる。
「これが育ち過ぎた薬草です、ミスティが持っていたのと比べると、色が少し濃くないですか?」
二人は僕から薬草を受け取るとミスティが持ってきた薬草と見比べる。
「確かに違うけど…」
「こんなのわかんないよアスタル」
「それは慣れてもらうしか…」
そう言いながら薬草を探すとちょうど良い状態を見つけたので葉をちぎる。
「それで、これが一番ちょうど良い成長具合の薬草です」
そう言って僕は二人に渡すが違いがわからず光にすかしたり試行錯誤しながら違いを探っていた。
「これは、たくさん薬草見るしかないから、これ以上は僕は何も出来ないと思います…でも今から教えるのは簡単ですから」
僕がそう言うと、二人はひとまず薬草の成長具合は置いとくようで真剣に僕の方を見る。
「ちょっと待っててください」
二人にそう残して最高状態の薬草を探す。
運よくすぐに見つかったので走って二人のもとに戻る。
「これを先ほどの薬草の葉と重ねて視てください」
僕から薬草を受け取り葉を重ねる。
「少し大きいのかしら…?」
「確かに、言われてみたらそうかも」
「それは、以前に人か動物かに踏まれてつぶれた薬草です」
今日何度目かわからない難しい顔を二人は作る。
「解毒に必要な物質は、その葉が成長するための栄養に集中してるんですよ、なので一回踏まれたりすると、治そうとして普通のものより多くの栄養分を吸収して、結果葉が大きくなるんです」
「へーそうなんだね」
ミスティは納得したように頷くが、その知識の価値がわかるミネルバは何度目かわからない衝撃を受ける。
「だから僕は、若い葉を見つけたら踏みつけて、次来た時に採取できるようにしていました」
「そ…そう」
ミネルバは、特に下に見ていたつもりは無いが自分の半分も生きていない少年が出す知識に言葉が出せなくなっていた。
「それじゃ採取「わぁあああ!」えっ?」
採取を始めようと言おうとしたが、誰かの叫び声が聞こえて、その声が聞こえたほうを警戒する。
ミスティとミネルバさんも戦闘態勢をとっている。
「ああああぁあ!!」
駆け出しのような装備をした冒険者が、遠巻きに何かに追われているのが見える。
「どうしたんですか!!?」
僕は大きな声でその冒険者に聞くと、冒険者もこちらに気づいたようで、必死に走りながら叫ぶ。
「に、逃げろ!!瘴気化したゴブリンが!」
そう言われて冒険者の後ろを見ると、瘴気を浴びて瘴気化した2メートル程のゴブリンが走っていた。




