第6話 この世界
階段を下り、いつもの応接室に行く。そこにはやはり、リリカがソファに座っていた。俺を待っていたかのように、入ってきた瞬間、リリカが立ち上がる。
「先ほどはすまなかった。つい、嫌なことを思い出してしまった。そこに座ってくれ。」
リリカの向かい側に座るが、相変わらず沈黙が続く。無理もないかと思いながら、下を向いているリリカを見る。
何分経ったのだろうか、こういう間はとても長く感じる。やっと、リリカの重い口が開いた。
「その...銃と呼ばれるものは、本当に誰にでも使えるのだな?」
「うん。」
再び、リリカは下を向いた。
「あの、もしよかったら話してくれませんか?」
彼女はゆっくりと顔を上げ、今にも泣きそうな顔をしていた。俺はドキッとする。そして、彼女は語ってくれた。この世界について。
「この世界にはある大きなものさしがある。それは魔法耐性の強さだ。魔法耐性が弱い者は強い者の奴隷となる。ひどいことに、支配層は優劣をつけたがる。エリカの一家も奴隷であった。」
エリカのあの言葉を思い出す。慈悲と名前を与えてくれた、と言っていた。あの時にからかってしまった自分が恥ずかしい。
「だからこそ、その銃には驚きを隠しきれない。魔法なんて無かったら、このような格差は存在しなかった。」
何にも言えなかった。どんなことでも格差は存在してしまうのか、優劣をつけたがるのが知性を持つ生物のさがであるか...。しかし、多くの人は格差をなくすことは、それは皆が蔑まれることに繋がると言った。感情的になっても物事は解決しない。膝に手をつき、立ち上がり、リリカの方に手を差し伸べる。
「なら一緒にぶち壊そうぜ。その前に、やるべき事があるだろう?夜の訓練は楽しみにしてるぜ。きちんと、俺も戦えるように指導してくれ。なに、心配することはないさ、俺にはこいつがあるからな。」
バックから拳銃を取り出す。あぁ、人柄に合わないようなことをやってしまったな、と今更後悔する。リリカは急に笑い出した。
「すまんな、最初会った時では、どこか虚ろで弱い人だと思ってたのだ。しかし、こんなにも力強い言葉を言うなんて、笑ってしまう。」
アハハ...弱い人間か。
「お前を世界一強い存在にしよう。しかし、ぶっ壊すのは隣の国に行ってからだ。そこまでにくたばったら、おじゃんになるな。」
リリカは俺の手を握り、立ち上がる。
「さぁ、やってやろうじゃないか。」
握る手が強くなっていく。痛い...強い人間になるのはまだまだ先になるかな、と痛感する。