第2話 異世界転生
あれ...ここは?起き上がって周りを見渡す。周りに人が住んでいるという気配はない。そこは限りなく続く荒野であった。焦げ臭い...。あれ、俺はなんでこんなところに...自分の部屋にいたはずだ。ワンテンポ遅れてパニックが訪れる。あっ、そう言えばあいつはどこに行ったんだ。あいつなら何か知ってるだろう...いや、知ってるはずだ。しかし、ここは一体なんだろう。もしかして、これが俺が求めた非日常か...異世界...。
「お困りのようですね?ま、何にも理解されておりませんでしたから仕方がないと思いますが。」あいつの声が聞こえた。そいつは宙に浮いてた。これだけのことがあったんだ、宙に浮いている位普通か...。
「ここは一体どこなんだよ!俺がさっきまでいた場所は?どうなるんだよ」
「あなたが耳を塞いでいた時に全てお話ししましたよ?まぁ、それだったら聞こえませんけどね。」
相変わらずそいつは顔に笑いを浮かべてた。
「こちらのためにもきちんと理解していただけないと今後困りますね。まず、貴方には先ほど死んでいただきました。」
死んだ...?早速理解できない。そいつは俺のそんな様子を察したのかこう話した。
「あなたはこの世界がゲームであるということを理解していますか?あぁ、情報統制は完璧ですね。まず、この世界はゲームです。あなた方の数千...数億年先の生物が開発した巨大シュミレーションゲームです。そのうちの一つのステージが貴方が前いた世界です。」
ぽかーんとした。驚くという感情はこの時のために残しといたのかと思う。そいつは構わず話を進める。
「そのゲームのプレイヤーは貴方の世界では神と崇められたものです。あぁ、申し遅れました。私はプレイヤーの召使いの様なものです。神の使いと思っとければ良いですかね。」
こんなものが神の使いなのか...もう、驚きすぎて言葉が出ない。
「だから、あなたの家やメールアドレスを知ることなんて容易です。面白いことに人がなにを思っていることも分かっちゃいますね。」
そいつは、すごいでしょ、と言わんばかりに胸を張った。あれ...
「今までの話で一つ疑問点がある。なんで俺を死ななければいけなかったのか?」
ぽんと手を叩き、そいつは話し始めた。
「死ぬというのはゲームオーバーと思っていませんか?」
「思うもなにもそうだ。」
「その時点から違います。このゲームにおいて死ぬというのは、セーブするということです。人が死んだら身体を除いた全て、記憶など、はセーブされます。そして、大半の人は天国か地獄というセーブ縛りのステージに移動します。貴方にわかりやすく説明するとですね...ゲームのマップ移動の際にセーブが必要ですよね。それと同じです。」
わかるようなわからないような、曖昧な気持ちである。
「まさかここは地獄?」
こんなにも地獄が地獄らしいのかと笑いたくなる。
「いえ、それは違います。大半の人は天国か地獄に送られます。しかし、プレイヤーが数人だけ天国と地獄に行くことが出来ない、特別な力をもたせた人を選びます。あなたがそれに当たりますね。」
…ん?
「なんで俺が選ばれたんだよ!」
ハッハッハッハ。そいつが高らかに笑い始めた。
「あなた、自分で望んでたでしょ?忘れたんですか?」
雷で打たれたような衝撃が全身に回る。あぁ、俺は日常なんて捨てたいと心から思った。だから、こんな非日常な体験ができるのか。そう考えると期待と不安が頭の中で交錯する。これからどうするんだろう。手を天に突き出す。でも、なんだかましな日になりそう。
「新たな気持ちでこれからを生きようとしているところ悪いですが、あと約2分後にあなたは死にます。」
顔が真っ青になる。どういうことだよ。
「自分の意思でセーブできないのかよ!」
「失礼ですが、あなたは一人の登場人物にしか過ぎません。あくまでも、セーブが可能なのはプレイヤーです。」
そいつの顔を思いっきり睨む。あぁ、ましな日にはならないのかな。不安しかない。2分後、遠くで光の球を見た、と思った瞬間なんにも感じなくなった。死んだ。あとでそいつから聞いたが、俺がいた場所は戦場であったらしい。不安すぎる。