婚約破棄……の予定でしたが
久しぶりの投稿なのでリハビリ作です。
俺には婚約者がいる。
名前はスノウ・セッタ。
ちなみに俺、ユーリウス・フォレスターは18才。
そんな年で婚約者が存在する俺は、実はこのフォレスター国の第1王子だったりする。
婚約者とは会ったことが無い。
セッタ家はこの国が崇拝する宗教の大司教の家計であり、16才を迎えるまで家族以外の異性に姿を見せてはいけないという決まりがあるからだ。
それほど婚約者を意識したことも無い。
なにせ、姿どころか噂さえ聞かないのだから。
そんな俺の前に現れたのが姫野 愛。
そこで思い立った。
ああ、これ乙女ゲームだわ……
男の名誉として言わせてもらうが、断じて俺は乙女ゲームをプレイしていない。
プレイしていたのは俺の幼馴染の女だ。
あの人が格好いいだの、あの人声が素敵だの、毎日のように聞かされれば頭に残る……
たしか、魔法溢れるこの国に日本人の女が迷い混むとこから始まって、異世界からの迷い人は国に繁栄をもたらすとかで王室で保護されて、それで第1王子だの筆頭魔法使いだの護衛騎士だのと距離を縮めんだよな。
そんで、その第1王子の名前がユーリウス・フォレスター。
はい、俺ー。
その姫野 愛っつー奴は、ぶりっこだし、なんか支離滅裂な事言い出すし。イケメン好きだし、ぜってー俺の好みじゃねーんだけど、これが物語の強制力ってやつなのかな……すげー惹かれた訳よ。
可愛いと思ったし、守ってやりたいし、他のやつらが喋ってたら嫉妬もした。
「ユーリウス。私ね、ユーリウスが1番大好きっ!」
そーんな言葉囁かれて、俺はノックアウト。
婚約者がいるんだぞと嗜めてくる父親である国王にイラッと来て、ぜってー破棄してやるって思った。
そんな折りに国王から話されたのは、婚約者のスノウ・セッタの16才の誕生日をこの城で盛大に祝うって言うこと。
俺はチャンスだと思ったね。
国王に進言したところで、ダメだと一刀両断されるに決まっている。だから、隣国の王族も招待するらしいパーティで宣言すればいいだろう。
破棄と、愛との婚約が決まってからでも、愛の優しさは国王と王妃にわかってもらえるはずだ。
その時の俺は妙に冷静だった。
だが結局ただのバカ王子だった。
そして当日。
スノウが生まれたその刻までは会えないという事もあり、俺は美しくきかざった愛を他のやつらと奪い合いながらエスコートをして、俺達はパーティ場に入った。
その様子を見た国王が訝しげな顔をし、それに怯えた愛に俺は優しく囁く。
「もう少しだけ我慢してくれ。セッタ嬢が現れたら破棄を申し出て君を婚約者にしてあげれる。」
そんな言葉に愛は嬉しそうにはにかんだ。
その時の俺は愛のそんな笑顔にときめいていた。
刻一刻とスノウ・セッタの誕生した時間が迫る。
会場の国賓達が今か今かとそわそわしている。
俺ももう少しで愛しい愛を自分の物に出来ると心踊らせていた。
そしてその時。
開かれる大扉。
そこから一人の女性。いや、まだ少女と言っていいあどけない表情の女性が現れる。
そこから俺の行動は早かった。
「結婚してください!!!!!」
周りがシーンとなる。
愛を腕にまとわりつかせた俺を諦めた様子で見ていた国王が驚きで目を見開く。
憐れみを含んだ表情を浮かべていた王妃が扇子で口元を隠すのも忘れて口を半開きにする。
1歩遅れた愛が後で喚き、愛の取巻き達も俺を責める。
だが俺には関係ない。
俺の意識は全て、目の前にいるスノウ・セッタに向いている。
腰元まで伸ばされた綺麗な黒髪、白磁のように真っ白な肌、大きな瞳と、うっすら色付いた頬に、控えめな桜色の唇。
見ため以上に、この人は俺が前世から恋い焦がれた人だ。
瀬田 雪。
俺の義理の母親だ。
俺は前世で、俺が18才の頃父親が再婚した相手を愛してしまった。
年は30才。
けどそうは見えない程若くて明るくて、一目惚れだった。
何度もアタックした。
でも、私は貴方のお母さんだから、って悲しげに笑われて、それからそんな悲しい顔させたくなくて諦めたふりして、お母さんと言って笑った。
忘れられなかった。
父親から奪いたかった。
けど、父親も大事で、雪さんにも笑って欲しかったから、自分の思いは心に閉じ込め蓋をした。
そんな相手が今目の前にいる。
その容姿は雪さんを若くしたような感じ。
でもそれだけじゃない。
この人は『瀬田 雪』本人だ。
そのあと普通に挨拶周りを済ませ、騒ぐ愛達をスルーして、俺達はやっと二人で話す時間を得た。
「スノウ……いや『瀬田 雪』さん」
「ユーリウス様……やっぱり『優李』くんなんだね。」
そのあと、どんな物語になるのかは、みんなの想像にお任せします。




