最終話
いつも通りの朝ごはん。
愛理と私の二人きり。
三人でご飯を一緒に食べたことなんて、あっただろうか?そんなことも思い出せないぐらい、俊雄の存在は遠くなりつつある。
ぱんぱんに腫らした目で、愛理がご飯を食べている。
その様子を見ていると苦しくなって、思わず愛理を抱きしめた。
「…おかあさん?どうしたの?」
「ごめんね、愛理。だめなお母さんでごめんね…」
涙がとめどなく溢れてくる。私が俊雄のことをどう思っているのか、そんなことはこの子はとっくに気づいていたのだ。
子供だからわからないだろう、ずっとそう思っていた。でも実際は逆だった。子供だからこそ、変化に敏感なのだ。そんなことに気づかなかった自分が恥ずかしかった。
「ごめんね、ごめんね…」
「おかあさんどうしてないてるの?どこかいたい?」
「ううん、どこも痛くないよ。大丈夫。」
涙を拭って立ち上がる。
「愛理、今日はご飯食べたら、公園に行こうか!!」
「公園!やったー!!」
無邪気に喜ぶ愛理を見て、思わずにっこりとする。
私が今までこの小さな女の子に求めていたのは、「いい子」でいることなんかじゃない。
「私にとって都合のいい子」でいることだったんだ。
子供らしいことを一緒にしてあげもせず我慢ばかりさせて、私はなにをやっていたんだろう。
愛理がよく気がつく素晴らしい子だったからなんとかなっていただけなのに。
でも、今日からは違う。
子供らしいことをいっぱいさせてあげたい。
いい子じゃなくたって愛理のことが大切な気持ちは変わらない。
そう思うと胸がすーっとして、気分が明るくなった。
「さあ、ご飯食べちゃおー!」
「おー!」
二人きりのご飯。
でも、幸せだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
中途半端なところで終わってるじゃん!と思うかもしれませんが、もともと中編の予定でしたので、ご了承ください。
これからどうなるかは、あなたのご想像にお任せいたします。