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いい子  作者: 嶋倉
4/5

思考

気づいたら朝だった。

横を見やると、愛理が泣きはらした目で眠っていた。

まだぼんやりしている頭のまま着替えて、昨日のことを思い出す。

「「おとうさんとおかあさんのおはなしみたい」」

その言葉が脳内でぐるぐるする。

今まで敏雄に対してどう思っていたのか?いや、きっと「何も思っていなかった」のだろう。



敏雄に会ったのは17の冬だった。ギャルになって髪を金髪にし、毎日ゲームセンターやコンビニに入り浸った。私の母は厳しくて、「いい子」でいることを強制させた。それがとても苦しかった。

『いい子にしなさい。外で遊んでばっかりでみっともない。勉強しなさい。』

それが母の口癖だった。私は母を喜ばせるために、楽しかった外遊びをやめた。泣きながら勉強をした。でも、いくら勉強しても成績はまんなかあたりで、母はそれが不満だったようだ。母と話すときには、自分の中で決めたたくさんのルールがあった。

母の意見は全肯定する。

絶対に悪い態度をとらない。

発言は、母を怒らせるようなことをいわないように考える。

疲れていても笑顔でうんうんと話を聞く。

母と話すのは、誰と何をするよりも緊張した。ルールを守っていても怒られるときがあった。そんなときはどうしていいかわからないまま、布団でこっそり泣いた。

父は母にぞっこんで、いつでも母の味方だった。


母と話すことが、次第に苦痛になっていった。


そして私は次第に家に帰らなくなり、ギャルとなった。

そんな荒んでいたときに出会ったのが、敏雄だった。

当時大学生だった彼は、私がいつもいくゲーセンでバイトしていた。

毎日そこにいっていたので、私と敏雄は自然に顔見知りになった。

彼のバイトが終わったあと、よく二人で話をした。聞くと、彼も親とうまくいっていないようだった。私はとても親近感がわいた。「苦しんでいるのは自分だけじゃなかったんだ。」その事実がたまらなくうれしく、私は彼に依存していった。

仲良くなってから三か月ぐらいしたあとに私から告白して付き合った。その二か月後に結婚した。親は反対していたが、縁を切ることを条件に了承された。

家を出ていく日に、母は私とちらりとだけ見て、ぼそりとつぶやいた。

「結局友里は最後まで、いい子になれなかったね。もうお前はいらないから、二度と戻ってこないで。」

私は何も言わないまま家を後にした。



付き合った当初はもちろん、敏雄のことが好きだった。でも次第にそういう気持ちはなくなっていった。それでも結婚したのは、

「早く母から逃れたい。」

それだけだった。

敏雄もどうやらそうだったようで、結婚してからは遅く帰ってくることが多くなった。一人で寝るのは寂しかったが、私は何も言わなかった。もし今ここで仲が悪くなって離婚でもしたら、私の行き場はなくなってしまう。そう考えると恐ろしくて、私は何も行動できなかった。

愛理が生まれてからは愛理のことだけ考えていればよかった。転勤するというときは、寂しくてしかたがないと思っていた。でも敏雄のいない生活に慣れつつあった私は敏雄がいなくてもやっていけるようになった。敏雄に対してなにも思わなくなっていったのだ。

そのことは、無意識のうちに考えないようにしていたのだと思う。でも、昨日の愛理のひとことによって考えさせられたのだ。


なんとも思ってない人とたくさん我慢してまで夫婦していて、本当にいいの?


私はこの問いと戦わなければならなくなった。

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