現状確認2
「俺が何者であるか、その質問に対しての答えは、『昨日の夜までは間違いなく塔野誠一という一人のフリーターの男だった』だが、今の俺が『俺は塔野誠一だ』とただ名乗ったところで、誰も信じはしないだろうがな」
「え、えーとつまりどういうことですか?」
「俺は塔野誠一というフリーターの男だった、だが朝になったら顔も名前も知らない赤の他人の姿になっていた、しかも、目の前に様子のおかしい元の自分の姿をした者がいる、つまりは君と同じ状況ってことだよ」
「わ、私と同じ……ってことはこの体はまさか……その体が私の体で、この体はあなたの体、なんですか?」
「その体が本当に俺の物かどうかは断定できないが、現状だけを見れば俺と君の体が入れ替わっている、と判断しても遜色はないだろう」
入れ替わりって……あれ、そういえば、そんな感じの漫画を昨日PCで読んでたような……。いやいや、そんな……関係あるわけないよね……?
「な、なんでこんな事になっちゃってるんですかね……?」
「そこまでは俺にもわからない。むしろ、それを君に聞こうと思っていたぐらいだ、7月13日の午後11半より前に何か変わったことはなかったか? 俺は昨日、この時間に就寝した。それより前の日にも特に変わったことはなかった。だから、何かあるとすれば君の方だと思っていた。しかしその様子だと、やはり心当たりは無いらしいな」
「そ、そうですね……。心当たりは……全く……ない……です」
う、うーん、やっぱり話さなきゃダメ……なのかな? でもあの漫画って結構……。
「ふむ……少々緊張しているらしいな。布団から出て、そこの椅子に掛けるといい。何か飲みながら、落ち着いて話し合うとしよう。水、コーラ、ジャスミン茶があるが、どれが……いや、味覚の変化を調べるために、全種類持っていこう」
そう言って、私……じゃなくて、塔野誠一さんは靴を脱いで、この部屋の冷蔵庫の前まで真っ直ぐ進んで、冷蔵庫のドアを開けた。