現状確認
「……まさか、鏡を見るまで己の身に起きた異変に気付かなかったのか? 全く、君が外に出ようと思い至る前に辿り着くことができて良かったよ。もし、そのまま外に出ていたら……いや、今は特に何も起きずに済むか……」
う、嘘だ……な、なんでこんな……朝起きたら男の人になってるなんてありえないよ。ていうか、そんなの漫画の世界の話でしょ? そうだ! これはきっと夢なんだ! きっと、普段から妄想ばっかりしてるからこういう無駄にリアリティのある夢を見るようになったんだ。そういうことにしよう。
「9番目の仮説が概ね正しいとすると、もう少し詳しく君に話を聞く必要がある。そうなると、君が声を出せないのは不便なのだが……本当に声を出せないのか? 試しに普段話す時よりも低い声で発声してみてくれ」
とりあえず流れに従って、この私にそっくりな人の言う通りにしてみよう。
「……あ、あ~……あいうえお……かきくけこ、さしすせそ、この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから竹立てかけた……」
私にそっくりな人の言う通り、いつもよりかなり低く声を出せば、確かに声が出せた。ただ、出てる声は男の人の声だったけど。
「やはり、この方法で発声が可能になったか……ならば、俺とほぼ同じ状態という前提で話を進めて良さそうだな……さて、このまま一方的に質問し続けるのは気が引ける、一度君の質問にも答えておこう。何か聞きたいことはあるか? この意味不明な現象に関しても、根拠のない憶測だが、それでも構わないのならば、答えられる範囲で回答しよう」
私にそっくりな人は私と違って気が利くみたいで、こっちにも質問するきっかけをくれた。体が男の人になってるのもとんでもないことだけど、よく考えたら、ここまで見た目が私にそっくりな人がいるっていうのも、夢の中とはいえ、とても不思議なことだよね。
「じ、じゃあ、聞くけど、貴女は一体何者なんですか?」