想定外の連続4
「そうですか、じゃあ、早く行きましょう」
彼女は席を立ち、会計に向かった。やはり不思議だ、何故彼女は先程からずっと嬉しそうな表情をしているのだろう? 元の状態に戻っているとはいえ、原因が未だに分かっていないというのに。
まあいい。感情と表情が常に一致するとは限らない。案外不安を隠しているだけなのかもしれない。レジの前で彼女が待っている、会計を済ませて病院に向かおう。
ファミレスから十分程度歩き、総合病院に到着した。俺はすぐに受付に向かい、保険証を提出し名前を名乗る。俺の名前を聞いた受付の事務職員は、俺達にエントランスホールで待つように言った後、内線で電話をかけ始めた。
しばらく長椅子に座って待っていると、一人の白衣を着た男が話しかけてきた。
「やあ、塔野くん。久しぶりだね~」
「三ヶ月ぶりですね、さっさと用件を済ませましょうか」
俺は立ち上がり、エレベーターに向かおうとした。
「まあ、待ってくれよ。久しぶりに会ったんだし、もう少し話してからにしない?」
しかし、彼は俺を引き止め、悠長に雑談を持ちかけようとする。
「検査結果によっては色々と準備が必要になるので早めに済ませたいのですが」
「わかってるよ、軽い自己紹介ぐらいしてもいいだろ? ほら、そこの彼女が戸惑ってるし」
顔色を伺ってみると確かに萱間志穂は、この馴れ馴れしく話しかけて来た白衣を着た男の登場に戸惑っているようだ。
「では簡単に、この人の名前は高堂良治、32歳。この病院の院長だ」
「え……この人が院長さんなんですか!……若いですね」
彼女がこの白衣を着た男、高堂さんを若いと言ったのは、この軽卒な態度からではなく、二十代と年齢を詐称したとしても、まず気付かれない容姿のせいだろう。
「うん、前の院長がうちの親だからね。いわゆる襲名って奴かな。ちなみに塔野くんとの付き合いもうちの親と塔野くんのお父さんから来ててね……」
「その話は絶対に長くなります。どうしても話したければ、後にしてください」
「ハイハイ、わかったよ、うちのナースみたいなこと言うね〜。えーと、萱間志穂ちゃんだったっけ、塔野くんと一緒に俺に付いてきて」
高堂さんの無駄話が始まる前に本題に入れるのは運が良い。検査を終えた後の会話もこの程度で良いのだがな。




