謎の日常の始まり2
「確か明日は一限の講義だけだったな。血液型とDNAの検査のための採血に病院へ行こう。脳の検査もしておきたいが、CTやMRIの画像だけじゃなく脳波なども調べる場合時間が掛かるから、こっちは来週に持ち越す。脳検査は予約が必要なので、パソコンか携帯のパスワードを教えてくれ」
う……遂にに来ちゃった、この時が……ん、ちょっと待って……良かった、まだ大丈夫そう!
「はい、わかりました。ケータイのパスワードは1021、私の誕生日と同じです」
「成程、わかった。一応パソコンの方も聞いておきたいのだが」
「え、えーと……PCの方も携帯と同じにしておきますね」
「ん? わざわざパスワードを変えなくても、メモにパスワードを書くか、テキストファイルを開いてそこにパスワードを入力しておけば済むと思うぞ?」
「い、いえいえ実は前からいちいちパスワード入力するの面倒だと思ってたんですよ! どうせ見られて困るものとかも入ってないですし、丁度いい機会です」
「そうか、ならば携帯の方をしばらく弄らせてもらうぞ。扱いに慣れておく必要があるのでね」
どうにか塔野さんの意識をPCから逸らせた……。私はPCを起動してパスワードを入力する。このパスワードは引出しに入ってるアキラくんのフィギュアの生年月日と同じだ。私がパスワードを忘れちゃったとしても、引出しの中を見ればすぐに思い出せるように、アキラくんのフィギュア(台座の裏にアキラくんのプロフィールが書いてある)入れてたってわけ。でも、長いパスワードだったけど何回も入力してるうちに完全に覚えちゃったから、今は、友達に腐女子がバレないようにするために引き出しに入れてある。アキラくん以外のも沢山持ってるけど、他の子達は実家に置いてる。
そして、塔野さんからは見えないようにブラウザを起動して、人に見られたら、アブノーマルな性癖だと思われちゃいそうな履歴を消した。
これで心配ごとはもうなくなった。あとは自分で言った通りにパスワードを私の誕生日に変えるだけ……。
「この携帯で検診の予約を取りたいのだが、問題ないか?」
「え、ええ大丈夫です」
「では明日13時に血液型検査の予約をしておく」
「わかりました……それじゃあ、荷物を持ったら塔野さんの部屋の方に行きますね」
体が入れ替わったから、当然帰る家も入れ替わる。塔野さんの家は私の家より狭いけど、元々この部屋以外はあんまり使ってなかったから、ゲーム機さえ持っていけばあの広さでも十分快適に過ごせそう。
私は塔野さんのリュックサックに、テレビに繋げてあったゲーム機を入れて背負った。
「そうか、何かあればメールを送る、外出する時は携帯を必ず持っていてくれ」
「はい、では……また明日」
「ああ、道に迷わないように気を付けてくれ」