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隣の花は赤い  作者: メガセリオン
起きた
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起きた

 目覚めてから、まず、天井に違和感を憶えた。

 昨日は自分の家で眠ったはずだ。搭乗したエヴァが暴走したということはない。にもかかわらず、知らない天井を拝む羽目になったということは、地震や火事といった災害か、強盗や誘拐などの犯罪に巻き込まれたのだろう。

 この時はまだジョークを考える余裕さえあった。しかし、周囲を見渡して、部屋の隅にあった姿見を発見した瞬間、それまでに思いついたつまらないジョークは全て忘れるにことした。

 姿見の鏡面には、一人の若い女性が映っていた。高校生か大学生ぐらいの歳だろう。

 この部屋にあるハンドバッグ、ピンク色の絨毯、部屋の各所に守るように配置された縫い包みから、ここが所謂「女の子の部屋」だということは察した。

 「女の子の部屋」に女性がいても何も問題はない。寧ろ、俺が「女の子の部屋」にいることの方が余程違和感がある。

 だが、今の状況でこの部屋に俺の姿がないことは大問題だ。

 何故なら今、俺の視界の上では姿見がほぼ真正面の位置にある。しかし、鏡面にはこの部屋の様子とこの部屋の住人と思わしき女性しか映っておらず、俺の姿は微塵も映っていない。そして、鏡面に映った女性と俺の目が合っている。

 この状況から推察したことが事実であるかを確かめるべく、姿見に近寄っていく。

 俺が姿見に近寄っている間に、鏡の中の女性はベッドから降り、こちらに向かって歩み寄ってきた。鏡の前に辿り着く頃にはその女性と向かい合う様な形になっている。

 鏡面を触り、姿見の裏を覗いてみたが、何の仕掛けも施されていなかった。鏡に予め作成した映像が映写されているわけではないようだ。

 自分の右手を確認する。手の大きさは普段より小さく見え、人差し指の方が薬指よりも長く、生命線が少し長い。薬指の先端を反対の指の爪で軽く突くと感覚が伝わってくる。

 これでハッキリした、この状況は見せかけではない。俺は今、本当に鏡の中の女性と同一の肉体で活動している。そして、ここはこの女性の私室ということなのだろう。

 脂肪と筋肉の感覚は最先端科学を極限まで駆使すれば、人工筋肉などで誤魔化せる可能性が僅かにあるが、流石に人間の指の先端ほど敏感な神経の感覚を再現することは現代の科学技術では不可能だ。

 だとすれば、何が起きてこのような状況に至ったのだろうか?

何者かが俺の脳をこの女性に移植したのか?それとも、この女性に何らかの方法を用いて俺の記憶を上書きしたのか?いや、人為的なものだけとは限らない。俺が今認識しているこの世界が実はパラレルワールドで、この女性は元の世界においての俺と対になる存在であり、何らかの要因で意識が混線して……。


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