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初投稿の素人です。

書ける時には書くってかんじでいきます。

よろしくお願いします。



最後に見た風景は爽やかな、よく晴れた空だった。


俺は事故で死んだ。

通勤途中に居眠りだか、酔っ払いだかの車に横から轢かれたのだ。


よく、物語で死んだ後に自分が死んだことが分からずに彷徨ったり、強い思いや恨みに縛られて地縛霊になるなんてものがあるが俺はそうならなかった。

追突された後も意識があったせいで自分がもうすぐ死ぬってことは分かっていた。自分を轢いた相手に対しても理不尽だなとは思ったが強い恨みは湧かなかった。


俺は幼い頃から無頓着な人間と呼ばれてきた。良く言えば無欲、悪く言えば自我に欠けている。何故、そんな風になったのかは分からないがとにかく物事に執着することが苦手だった。

周りから見れば人畜無害で気前が良いように見えていたかもしれない。しかし、結局は生まれ持っての無頓着さが災いして、人と深く付き合うことはできなかった。

そして、それは生に対しての執着においても同様だったようだ。


意識が終わる直前、俺は思った。次があるならばもっと心躍る人生を送りたい・・・と。








「おう、帰ったか。やはり今回はずいぶん早かったようだな」


眠りから覚める直前のような定まらない意識。誰かの声が聞こえてくる。


(ん・・・、誰だ・・・?)


声に出したつもりだったのに、俺の口からは何も出てこなかった。というより、俺には体が無かった。自分がここにいるということは認識できるのに、まるで気体になったかのように揺らぐことしかできない。


「まったく、まともに話ができるカタチすら保てなくなるなんて、おまえらしくないんじゃないか?しかも、今回は記憶ももどっていないようだな。しかたない・・・」


そう聞こえてきた直後、カタチの定まらない俺の体を無数の手が掴んできた。そして、まるでパンでもこねるように固めたり伸ばしたりを繰り返す。しばらくすると俺は生前の姿でそこに立っていた。


「これで話ができるな」

目の前にいたのは大きな犬だった。レトリバーのような見た目だが大きさは俺が知っているそれの3倍はある。


「犬が喋ってる・・・?」

俺は思わず呟いていた。


「おいおい、失礼だな。しかし、この姿を見ても思い出さないってことは久々に最初から説明しなくちゃならんようだな」


そう言って犬は話し始めた。かなり長いだったのだが不思議なことに前から知っていた話を改めて聞いているように頭に入ってきた。

話を要約するとこうだ。この犬の名前はアレスで自分の何回も前の前世で兄弟のように生きた存在だった。

そして、二人はその世界で大きな功績を残して死んだ。その功績の大きさから死後に世界を創った神に呼ばれ、自らの下級神として仕えるように要請されたのだ。

しかし、前世の俺は神として世界の外側から見ているだけというのを喜ばず、その要請を断ろうとしたのだそうだ。ところがアレスの考えは違っていて、下級神となり人として知ることはできない知識を得たいと思ったのだそうだ。

こうして二人は別々の道を歩むことになると思われたのだが、二人の魂の絆は強く、一方が神となってしまったことが影響し、俺自身も通常の輪廻転生を行えなくなってしまったのだ。

どのように通常でないかというと、まず、強い運命に導かれること。これは良くも悪くもまともな人生を歩めないということらしい。平凡な家庭に生まれても戦乱に巻き込まれ最終的に英雄となってしまったり、王族に生まれても革命が起きて没落して復讐に生きる人生を送ることになったりと、物語のようなことが起こるらしい。

次に、一つの人生が終わるとその功績がポイントとして計算されて次の人生に特典や条件をつけることができること。ポイントは使用しない限り累積し続けて、一定以上のポイントが貯まると強制的に下級神となってしまうそうだ。

このポイントを使うとチートな能力を得たり、一生働かなくてもいいような家に生まれることもできるみたいだ。

ここまで聞いて疑問が浮かんだ。俺は今回の人生においては強い運命的なものも感じられなかったし、生まれた家柄や能力も平凡だったのは何故だろう?

そのことについてアレスに尋ねてみたところこのような返事が返ってきた。


「ああ、前回はいつもの世界じゃなかったからな。あまりにも激動の人生ばかりを送るのに疲れたって言っておまえは地球の神にポイントをささげて、平凡な家庭・平凡な人生・執着心の無効化を特典に転生したんだぜ。貯まってたポイントの半分も使うなんて破格もいいとこだ。回収できたポイントなんて僅かだしな」


なんと、余暇を過ごすぐらいの感覚で人生を送っていたようだ。後悔は感じないが後先考えていなかったと思われる自分に軽く呆れてしまった。


「んで、次はどうするんだ?記憶は戻してから行くか?どうせ向こうで生まれてしばらくしたら忘れちまうけどな」


次か。いざ次を選べると言われると、すぐには思いつかないものだ。前回に地球に生まれるのに破格のポイントを使ったってことは地球に生まれてチートってのは無理なんだろうな。記憶も戻してしまったら今の自分じゃなくなってしまいそうで怖い。


「とりあえず、記憶はこのままじゃだめかな?あと、地球の姿のままで行くことってできないの?あ、あと、それが可能だったら向こうの世界の基礎知識だけでも先にもらえたりしないのかな・・・」


生前には執着心なんてなかったはずなのに、一度死んだからだろうか、いろいろと欲が出てきてしまった。



「ははは、今回は意欲的だな。もう、あっちで生まれたくないなんて言ってた前回とは大違いだ。よし、良いだろう。全部可能だぞ。まずは世界の基礎知識を頭に送るぞ。あと特典として選べることのリストはこの石板を見てくれ」


そう言ってアレスは前足を俺の頭に置いた。ちょうど、お手をしているような格好だ。

次の瞬間、俺の頭には膨大な知識が流れ込んできた。ワドルディアと呼ばれるその世界の言語や生活習慣、おおまかな地図や住んでいる種族、通貨など。簡単にいうと地球の感覚ではファンタジーな世界だ。しかし、電気ではなく魔法が発達していて、機械に近い道具などもあるようで文明として一概に遅れているという感じではないみたいだ。魔物が存在していることも魔法が発達した理由の一つのようだ。

また、特典のリストは渡されたスマホっぽい石板に以下のように映し出されていた。


保持ポイント:42143


アイテム(必要100〜40000)

・装備系

・消費系

・設置系

・移動系

能力(必要10〜100000)

・スキル系

・魔法系

・ステータス系

・称号系

環境(必要1〜50000)

・人族系

・魔族系

・魔物系

・その他

 

最上部に表示されたのが現在の俺の現在の保持ポイントのようだ。その他の項目はアイテム・能力・環境が大ジャンル。装備系・消費系といった〜系の表示が中ジャンル。さらに〜系の表示をタッチすると単品のアイテム名等が表示されるようだ。大ジャンルの横のカッコ内はそのジャンルで消費するポイントの最小値と最大値とのことだ。

消費ポイントが最大の10万というのが「下級神化」で(自動使用)となっていた。


俺はそれぞれの項目を単品まで確認し考える。

まず、環境項目のその他「前世引き継ぎ」(消費1万ポイント)と「若返り10年」(消費1千ポイント)は取ることにした。俺が死んだときの年齢は28歳。全盛といえるほどではないが若かったのだが、やはり10代の肉体と比べると衰えはあった。

あとはスキル系で身体強化をMAXにし、ステータスをアレスにアドバイスを求めながら、そこそこ強い人間レベルに上げていった。ちなみに魔法関係には手を出さなかった。

俺は銃や魔法等の飛び道具より、戦うなら肉体を使って戦いたいと思っているからだ。

これで合計1万4千ポイントを消費した。


あとはアイテムだが、お決まりの「アイテムボックス」(消費1千ポイント)と防御性能はそこそこで見た目と着心地を自由に変更できる「自在の服」(消費200ポイント)をゲットした。

残りは2万7千ポイント足らず。

普通に生きていくには十分な準備ができたと思う。


「おまえ、今回は何かやらかしそうだな。中途半端にポイントを残すと次にここに来るときにはあっさり下級神化ってのもあり得るぞ」


アレスのこの一言が俺にポイントの消費意欲を湧かせる。

何か飛びぬけて世界に影響を与えないもので、ポイントを消費しなければ!


俺は空を晴れた日に空を漂う雲のように穏やかな人生を送りたいんだ。

空を・・・空・・・!


「アレス、移動系の中にある飛行船って基礎知識には無かったけど、どんな扱いなんだ?」


「ああ、まったく無いわけではないけど、新たに造る技術が残ってないからほぼ遺失技術のようになってる。俺たちがいた時代が最盛期だったんだよな」


それを聞いてから、俺は移動系の中から飛行船を確認していく。竜を模した戦闘特化のもの、大型の旅客機に似た輸送に特化したもの、鳥に似た速度に特化したもの。

そして、缶詰のような形をした居住と生活に特化したもの。

これだ!

消費ポイントは2万3千。船内は三層構造で最大収容人数は30人。住居や風呂等の生活に必要なものが完備されていて、通常の燃料はワドルディアの空気中に漂っている魔法の元となる物質だ。俺は即決でこれを獲得することにした。

残りのポイントを使って1年分ほどの食料や生活用品、飛んでいる船を隠ぺいするための設置型のアイテムを取った。残りポイントは43のみ。俺が地球人として生きた分のポイントと同数らしい。これは残しておくことにする。


異世界(本来は元の世界)への出発の準備は完了だ。


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