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BE THERE

BE THERE - Report #1 -

作者: 宇生時経

世にも奇妙な物語のようなオムニバス形式で

忙しい中でも手軽に書き足せるスタイルにしたいと想い、

この作風となりました。


文章力などは稚拙ですが、気軽に楽しみながら書いております。

お楽しみ頂けるのであれば幸いです。


コメントなど頂けるようでしたらお待ちしております!

- Report #1 -


[Media :(仮名)桂木 勝義(22)]

[Case :友人関係   ]

[Place :都心     ]

[Subject:合わない時間 ]


いつものように彼は目覚ましで起こされる。

寝起き独特のミルキーなイメージに

少しずつフェードインしてくる家のノイズ。


まだ温々とした布団の中で、彼は生活感を取り戻す。

一階からは、焼いたベーコンの美味しそうな匂いが漂ってくる。


今日は平日。

彼は久々の有給休暇を会社から貰っていた。


……いつもと違う時間。


今日は何をしようか。


今日はいつもより、味噌汁や卵の黄身がおいしく感じる。

何も考えたくない寝起きに最初に感じたものだ。

疲れているのか、栄養が偏っているのか。

だが、その味覚の理由なんてどうでもいいといった様子。

まぶたは座ったまま、それ以上考える気もない。


「とりあえず外にでよう……」


彼は歯を磨き、身支度も適当に整え、

椅子の背もたれに掛かったパーカーを羽織る。

その表面についたシワが幾層にも付いている事から、無精さが伺える。

髪の毛も中途半端に短く、また昨晩の寝相も悪かったせいだろう。

後頭部に発芽玄米の芽のような寝癖がひょこっと顔を出している。


とりあえず町へ出る。


電車から見る景色は、出勤時に見るそれと特に変わりはない。

電車の吊り広告も見飽きた。


代わり映え無い空間。


一つ新鮮と言えば、普段あるラッシュアワーの溢れる群衆とその熱気が無い位だ。

車両内にこもりきった異臭が、その戦々恐々とした数時間前を思い起こさせる。


「つまらない」


自分の会社都合の折にたまたまもらった休暇だ。

時間の合う知り合いなどほぼ居ないだろうと、

彼は雑踏の中で途方に暮れていた。


それでも遊びたいと考える勝義。


彼は携帯電話をふと手に取る。

ライフラインとまで言われるようになった、

まさに暇人のお助けグッズ。


彼は手当たり次第知人友人に電話するが、

1人、2人とかけては圏外のアナウンス。

中にはCALLするが一向に応答しない相手もいる。

次第に苛立ってくる様が

連絡先を探すスピードの違いに現れていた。


「みんな忙しそうだな……」


ふと自分が孤独感に襲われる一瞬。

いま自分は人と違う時間を過ごしている事に改めて気づく。

何もできない自分の"程度感"を感じているのだろう。


「……ゲーセンにいくか」


一人ではカラオケいったりボウリングしたりは出来ない。

出来ないことはないのだろうが、彼には楽しめない。

結局一人で遊んでも不自然じゃない場所をあれこれ考えたが、

本屋で立ち読みして時間を潰すのは面白くない。


そこで学生の頃になんとなく友人と遊んでいたゲームセンターに行くことにした。

別に得意といえるゲームはないが、唯一遊ぶといえばレースゲーム。

免許取ってから車には全然のってないペーパードライバーの彼。

運転感覚を試すかのように、ちょっとだけ遊んでみる事にした。


GAME OVER


刹那的に没頭したゲームの世界から呼び戻される合図。

ゲームの結果、時間切れで中間チェックポイントにすら到達出来なかったという、

なんとも歯切れの悪い終わり方。

わざわざお金払ってゲームする為に外に出た訳じゃないけど、

お金がなければ楽しみは買えない暇人の悲しさが押し寄せてくる。


「俺は今暇人なのか?」


ふと、自分の置かれた状況を振り返る勝義。

ゲームセンター内に鳴り響く打撃音やけたたましい掛け声も

背景音にしか聞こえていない。


「……忙しいのは嫌だ」


だから折角もらった休みを満喫しようとした。

でも自分が没頭できる何かが特にある訳でもない。


「……退屈するのも嫌だ」


だから外に出かけた。

結局お金を使って、なんとなく退屈をしのいだだけ。


全部嫌な事ばかり先にたつ。

目的もなく、中身もない休みに、彼はようやく時間の浪費感を味わった。


「何のために休んだんだ……」


「……ま、どうでもいいや」


彼は一瞬悩んだだけで、そそくさとそのゲームセンターを後にした。


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今はまだ特段珍しくもない被験者(メディア)である。

何処にでも居る。


君にとって、彼に対する今回のレポートはツマラナイかもしれない。


だが彼に内在する"因子"は、表面上からは解らない、抜け出せない程の闇である。

この闇が引き起こす出来事に、彼は次第に飲まれていくやも知れない。


彼が感じた軽度の葛藤が、今後彼の道を決める"キッカケ"になる事を期待したい。


2009.10.1


R.John

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