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孤独の境界  作者: 四世夜
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(3.5) 光の始まり

前回の予告を大胆にスルーし、今回、『.5』という形で優輝編を書いてみました。また前回から、この世界のことを少しでもわかっていただくために、チュートリアルとして、世に言う『取扱説明書』的なのを載せています。それでは、どうぞ。

『エネル』とは―――。


『エネル』とは、人間個人個人の中にある、いわば、魔力のようなもの。某RPGなんかだと、MPとか、 AP、TPとか、そんな感じです。


これは、人間の持つ能力を飛躍的に上げる、いわば能力の燃料と考えてください。『エネル』は、もちろんあちら(・・・)の世界にいらっしゃる人間様もお持ちですが、こちら(・・・)にいる方は、この『エネル』を簡単に引き出せる、※『病気』と言えばいいでしょうかね。そんなモノにかかられています。        『エネル』は色々と役に立ちます。それをまとめてみました。


『エネル』基本事項入門編―――上級編などは商店等でお買い求めください。      

一、スキルを使うときに必要となります。

一、『エネル』が切れると、とてもじゃないけど、立っていられなくなります。

ま、このチュートリアルは使徒様にわかっていただければ、いいわけなんで、そんなものを想像していただければ、よろしいのではないでしょうか。

※チュートリアル022参照

                              チュートリアル005






白い光、希望の欠片、自由への道、なんでもいいが、そんなモノが見えた気がしたが、そんなモノはないことを、私は知らしめられた。


血と鉄の匂い、朽ち果てたブタたち(奴隷)のうめき声、狂った鎖の狂想曲、ほのかに残る腐ったドックフードの味、暗黒のキャンパス。これが地獄絵図か……。


私は五感で感じる事を簡略化してみた。こんなことをしてもタダまた苦しくなるだけ。私は奴隷。明日にはいなくなっているかもしれない存在。鞭で叩かれ、重労働をさせられ、病気やけがをしたら殺されていく…………


『そんなことはないんじゃないかな』

「え?!」


牢の隅にうずくまって、震えながらそれを詠唱していた私の口が止まった。と、言うより止めさせられた。具体的に言うと私の口の上に、もう一つの唇があったのだ。世に言うキスというものだ。始めてだった。


何がって?こんなにも不幸せな気持ち(・・・・・・・)になったのは、ということだ。今までは、どれだけ辛くても、『自分は奴隷だから仕方がない』と紛らわすことができた。しかし、キスは『自分が奴隷だから』と言い逃れできない部類のものなのだ。


だが、同時にとても幸せになった。相手の唇から、生命の熱っぽさが伝わってくる。甘い。でもどこか悲しげな感じも伝わってくる。でも、このままずっとこうしていたいと思った。と、いつの間にか自分の顔も、熱を帯びていた。


そこで意識が戻り、自分が今どんな状況なのかを悟った。つい目の前の顔を殴ってしまった。


「あ、……――――――」


人の顔を殴るなどしたら奴隷はすぐに捨てられる。危険と認識されるのだ。今回もそのことが、頭をぐるぐるとしていたが、そんなことはないと目の前にいるコイツ(・・・)を見てわかった。直感と言うやつだ。


「いったーーーー」


なんとも間抜けな声を出して、私が殴ったコイツは牢の冷たく、汚い床に転がる。服に泥と血がつき、見る間に床と同じように、汚くなる。


上にはてかてかと輝く、ふわふわの白い何か。下は群青色の丈の長い何か。私が八歳で奴隷になったせいもあるのかもしれないが、こんな服をしている者は見たことがなかった。


「なにじろじろ見てんだよぉ」


言葉を失ったとはこのことか……。キスをしてきて、殴られたというのに、コイツの第一声はそれだった。








「はぁ、優夜にボクの心臓あげて、もう死ぬ覚悟だったのに……。また来ちゃったよ。どうすればいいと思うかね?ニイナ(217)君。この質問に答えてくれたら、キスした理由を教えてもいいよ」


急に現れて私にキスをしてきた変態―――名前はまだ知らない―――は、私(奴隷コード2・17(ツー・ヒトナナ))をニイナ呼ばわりして、投げかけてきた。キスをした理由なんかどうでもいい。と思いながら適当に答える。


「この暖かい、上着を下さったのはすごく感謝しています。でも、私はその優夜とあなたが呼ばれている方を知りません、ので返答は難しいです。ただ……」

「ただ?」

「いえ、なんでもありません」


ただ、ここから抜け出したい。とは、言えなかった。コイツはどう見ても、そんな野蛮なことができる柄じゃないと思ったからだ。


私がいるのは独房だ。私はいや、私たちの民族はこの世界で、唯一エネルをうまく使うことができると、される民族だからだ。その名も『戦闘民族シャイン・トゥル・バトス』この世界で、最も強い民族。使徒が来るまでは、だが……。


カツカツカツカツ。一定の速度で近づいてきたその音に、私は意識を戻す。この音は、監察官!

コイツが見つかったら、コイツだけでなく、私も殺されると、悟った。なにかを探すように、独房の中を動き回っている、変態に小声で言う。


「監察官が来たからどっかに隠れて」


そう言ったはずなのに、変態は


「問題ないよ」


と、返してきた。はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?


カツカツカツカツと、徐々に迫ってくる監察官の足音に、一切動じることもせず。変態は笑顔で格子の外に向かって、手を振っている。


コイツほんとにおかしいのではないか。私が絶句している間にも、監察官は近づいてきた。


カツカツカツカツトン。


「エネルが使えるからってここを抜けだそうなんて考えるなよ。まぁ、もう七年もここにいるんだから、そんなことしないとは思うが。ヒャハハハッハ。あぁつまんね、次の奴は安全だから、ちょっと気晴らしにブッ放すとするか」


カツカツと監視官は離れていった。


ん?んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん?


ばれなかった?なんで?目の前でニコニコしながら手振ってたのに!え?


「だから大丈夫って言ったでしょ。でも、最後に奴が言った言葉は気になる」


コイツの『やったこと』と、『言ってること』を同時に処理できないでいた私はとりあえず『言ってること』の返答をした。


「多分、普通に、殺すって意味か、性的にヤルってことではないんじゃない」


驚きでつい口調が、いつも道理ではなくなってしまったが、()は私の些細な悩みも気にしないで、一言つぶやいた。


「許さない」


彼の茶色だった髪が、だんだんと色が抜け、白色になっていく。髪が茶色だと、気楽で能天気のような雰囲気を醸し出していたが。今はその逆。殺気と凶気で渦巻いている。あの白色に変色する髪は、我らシャイン・トゥル・バトスのもの…………。


でも、こんなのありえない。たしかにシャイン・トゥル・バトスはこの世界(・・・・)で一番強い民族。だが、こんなにも膨大なエネルは持てないし、発することもできない。使徒でなければ。いや、使徒でも難しいだろう。


パラパラパラ。儚い音を立てて、昨日まで私が寝ていた固く冷たいベッドが砕け散った。すでに彼の周りには、小さな剣が円を描いている。最初は彼がスキルか何かで、手から出した一本だけだったが。それが、周り始め。ベッドを砕いたかと思ったら、その破片は長さ30㎝ほどの剣になった。


もちろん彼は剣に触れていない。剣が彼の周りを、生きているかのように回る。その剣の、空を切る音が聞こえてくるほどに、速く、鋭く、また美しい円を描いていた。


八歳で奴隷になるまで、おばあちゃんがよく話してくれた童話、『輝と夜の兄弟』に出てくる、『輝きの英雄』にとても似ている。その話は昔、始めてこの世界に来た使徒が、幾多の困難を超えて、もとの世界に帰ると言うものだった。


輝きの英雄の名は確か『優輝』だったと思うが。今はそれより変態こと、(仮)輝きの英雄を、止めなければならない。なぜならここは…………死人島上、最も力のある、ライト・ハート家に並ぶ、ダーク・ハート家直属の奴隷収容施設『六忌幽の舘』なのだから。


六忌幽それはダーク・ハート家が、管理している(・・・・・・)神間のことだ。言うまでもなく、人類の敵であるが、こいつらは知性が高いため人間の言葉を理解し、考えて行動に移すことができる。


それに奴等は『学び』をする。どこまでも進化していくと考えられるため、生かしておくのは危険とされてきた。こういった高い知性と、高い戦闘力をもつものが、『段』のクラスのMOBなのだ。もちろん六忌幽のほかにも『段』クラスはザラにいる。私はそんな奴らに会うのも嫌だが………。


しかし、ダーク・ハート家は腕利きの使徒42人を雇い、六忌幽を直属の部下にした。―――その際どれだけ死んだかは詳しく記されていないが、帰ってきた使徒は半分もいなかったと聞く―――だから、それをちゃんとコイツに教えた上で、戦いに行かせなければならない。


だが、会ってまだ三時間と立ってないのに、こいつならやってくれるのではないかと、感じてしまうことが面白い。これが私が今まで知りたかった、人間の魅力なのだろうか……。


「なぁ、ニイナはボクと一緒に居たいか」


今までの緊張感のない口調とは打って変わって、聞き心地のいい透き通った声で聞いてきた。


でもどうして『ここを出たいか』ではないのだろう。それに、『一緒』と言う言葉が妙に引っ掛かる。まっ、まさか。そんなありえない。こんなにがさつな私だぞ。普通の人としてちゃんと育ってきてもない、奴隷で薄汚れてる。それにまず第一に、女としてどうか、惚れる要素なんて全くの皆無だぞ。


いや、いや、いや、いや、いや。妄想が飛躍し過ぎたか。そうだ、そんなことは断じてないんだ。私の妄想なんだ。


「わ、私は…私はどうすれば」


やっと自分を保って発した言葉が、それだった。


「なら、このままここに残って、奴隷として死を迎えるのかい?……女としてではなく」


剣の空を切る音で、最後の方が聞こえなかったが、本音は、正直この人とずっと一緒にいたいと思った。


体がだんだん熱くなってくる。今日二回目の、始めての感覚。これが世に言う『恋』と呼ばれるものか。


私は決めた。この人と一緒に行くと。たとえこの恋が幻想だったとしても、私は後悔しない。


「お願いします。一緒に連れて行ってください」

「合格。でも、そんなに改まんないでいいよ。なにが使える?剣の類だったら『聖製』できるよ。ま、この部屋にある簡素な木材と、この鉄格子の破片でだけど」

「では、投げ槍(ジャベリン)で」

「了解。ごめん名前を言ってなかったね。優輝です。よろしくお願いします」


双子の兄の話です。こっちの方がなんか自分では好きです。(笑)

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