(3) 光心祭第一幕
遅くなりました(汗)すみません(笑)あと、今回少しばかり長いです。
それではどうぞ……。
この世界において痛みはそれほどない。片腕が取れれば向こうだと呻くほど痛いが、こちらだとタンスの角に足の小指を全力でぶつけてしまうぐらいで終わる。それでも十分痛いが、あちらで片腕が取れるのよりかはまだマシだろう。
しかしこれが裏目に出るときがある。戦闘中、気がついたら右腕がない、という事態だ。こちらでもあちらと同じように、腕が落とされれば治らないし、酷いと出血多量で死に至る。これを防ぐため、こちらでは、こちらでは………。特に何もしていない。
それと、なんとも不思議な話ではあるが、『痛覚』は軽減されても、熱い、冷たい、などは軽減されない。
結果論は痛くはないけど、火傷とかには注意してね、ということだ。
チュートリアル007
ピンポーン
巨大なお屋敷の呼び出しチャイムをナントさんが押した。
「ただ今戻りました。ナント・タマールです」
『チェックカードもしくは招待券を、カメラにかざしてください』
機械の音声で門が喋ってきた。ナントさんはそこに自分の執事専用っぽいカードかざした。
ティロリン
機械音声が流れ門が開いた。流石は金持ち。
『確認しました。E級執事のナント・タマールさんですね。お勤め御苦労様です』
「ありがとう」
き、機械が人間を思ってくれている。こんな時代が向こうでこないかなぁ………。
死人島有数のNPCの金持の家にしては質素な感じと思ったりもしたが、そう考えた三秒前の自分を速攻で抹消するはめになった。一見して外見は日本のお屋敷だが中は洋風だったり中華系だったり外見と同じ和風だったりと、色々だ。ナントさんによると、部屋ごとにテーマが決まっているらしい。俺は感受性がそこまで豊かじゃないからわからんが……。
「今日は顔合わせと、ちょっとしたイベントがあるそうです。すみません、何より急で。それに私は下っ端なので…」
「いいですよ、気にしないでください。情報があると少しは動きやすいと思いますが、俺はサプライズとかそういうのこう見えて結構好きなんで」
「すみません。ありがとうございます」
しぶしぶ体を小さくさせ門をくぐる。門が小さいわけでは無いのだが、少し緊張していたのでそうしてしまった。
俺が緊張していたのがわかったのか家の中を進んでいる時にナントさんが「あんまり緊張しなくて大丈夫ですよ」と一声かけてくれた。執事ってすばらしい。
「着きました。ここです」
俺が連れてこられたのは大きな部屋だった。真ん中には石でできた四角い闘技場のようなものがある。
周りには観客たちが大声を出して「はやくしろー」だの「まだなのか」とか言っている。誰かが闘うというのはなんとなくわかるのだが、それ以外はよくわからない。
その闘技場の上にはすでに二十人ほどの人がいた。その中の半分ほどを占めているスーツ姿は、多分この家の執事だろう。あとはなかなかの装備と面持ちをした使徒がの残りの半分だ。
執事に一人使徒がいるように見える。中でも目立つのは、普通の執事服の胸元に金の刺繍でライトハート家の家紋を縫ってある執事だ。彼は多分この執事の中で一番ランクが高いのだろう。ローブで身を包んでいる使徒が横にいる。抑制はしているとは思うが、殺気が出てるのがわかった。
またそれとは別に嫌な視線を感じたのは俺の気のせいか……。変なことにならなければいいのだが……。
と、少し悩み事をしていると、この大広間の一番大きな扉が開かれ、奥からいかにも金持ちといった雰囲気を醸し出しているおっさん。は、失礼か。おっさん改め、紳士が出てきた。
「長らく待たせてすまない。では、これより第七回、光心祭を始める」
「待ってましたー」「OH-YHA-」「ヒーハー」
「………は」
思わずくちをあんぐりと開けて呆然としてしまったことは隠すことのできない事実だ。光心祭とは、光心すなわちライトハート家が開催しているサシの決闘型依頼で、一位か二位になるとライトハート家のチェックカードをもらえる大会のことだ。ほかにも報酬は多いらしいが大会によってそれも異なるらしい。『独奏者』もちの俺には無縁の産物かと思っていたが…、こんなシュチュエーションで出られるとは、運がいいのか悪いのか…。
「めんどい開会の言葉とかは飛ばして早速第一試合をしようかねぇ。じゃ、後頼むよ、サルコ・ティーナ君」
と、言ってライトハート家現頭首、ライトハート=カムル=リバリルーンは出口へと姿を消した。あとに残されたティーナと言う執事は、眠そうな面を下げてマイクがなかったら聞こえなさそうな声を出した。
「それじゃあ当主様もあぁ言っていらっしゃいますので、早速第一回戦、始めましょうか」
結構テキトウなのだろうか、この大会自体はかなり神聖なものと、聞いていいたが…。
「えー、はい、一回戦の方はS級執事の推薦者と、A級執事のアポさんで、どうぞ前へ。はぁなんで俺が…」
最後の方になんか言った気がしたがそこは耳を塞ごう。
S級執事のアポストルは、中肉中背のスーツ姿が似合いそうな男性で、ビジネスマン面をしている。だが彼の手には杖が握られている。おそらく、魔術師の類だろう。名はタロウ・サトウ。(誰もが思うだろう、普通だなぁ。と…。)
対して、A級執事のアポストルは小柄で明るい茶髪をしている。両腰には一本ずつ対の剣、双剣が装備されている。名はハヤト・スギマツ。
タロウの杖は壱段の神間からドロップするアイテムだ、対するハヤトはおそらくA級神間のドロップアイテムだろう。
モンスター、もといい、神間のドロップアイテムは基本、そのモンスターのランクから±2ほどであるので、どちらかと言えばタロウの方が優勢に見えるが、この世界はどこぞやのRPGではない。技術はもちろん。体力、身体能力、精神力が求められる。それになりより、経験値が数字ではなく、生で伝わってくる。一応、ランクやスキルレベルといった形で区分けはされているが、それはあくまでその人の努力の勲章のようなものだ。と、俺はつくずく思う。
「えー、決闘はまぁ、ダウン制で、それじゃ、始め」
開始直後ハヤトが動いた。右腰から剣をとりタロウに突進攻撃を仕掛ける。10m程あった二人の距離は一気に近づいた。と、思われたが、タロウの冷静極まる一声でその予想は打ち砕かれた。
「―――フォティア」
タロウが掲げた杖の先に人の頭ほどの紅い球体ができてきた。強いエネルを感じる。ただ万物を破壊しようとする本能を埋め込まれた機械のように……。火球がチリチリと音を立てながらハヤトに向かって放たれる。タロウのフォルティアは真っすぐハヤトに飛んでいく。
するとハヤトは避けようとはせず、対の剣を顔の前にバツの字に出した。すかさず集中するためか、目を一瞬閉じ、その間に口が動く。
「デュアル・武零度」
通常魔法攻撃は避ける、もしくはこの状況だと一度止まりガードしなければならない。が、もう一つ手がある。そのもう一つを目の前でやっているが、スキルを対象の魔法以上のエネルでぶつけると魔法を止められる、か、撥ね返せる。しかしどちらも成功率は五分五分で、そこは技量にかかってくる。
無事フォティアを二つの氷剣で、パリィしたハヤトは、この決闘を楽しんでいるのか、タロウに語りかけるように言った。
「―――っつ、つえーな、あんた」「ぬしもなかなか、だが」
火球をパリィしている間に、タロウは新たな魔法の詠唱を終えていたらしい。
俺が知っている限り詠唱を行うことには、二つほど意味があり、一つは単純に魔法そのものの発動に詠唱が不可欠なものと、もう一つは、自分よりレベルが高い魔法を発動するために必要な時もあるらしい。もっとも俺は、魔法は使わず剣に、エネルを加えて攻撃などをするソードスキルがメインだが…。
俺があまり?いや、まったく使わない魔法の復習をしていると、先ほどから詠唱を終えていたタロウが、杖を両手剣を持つように持ち、魔の法を口にした。
「フレイム・クロス」
杖をバツの字に振る。すると宙に描いた杖の軌道から、バツの字の火の塊ができた。クロスになっている炎塊は、ハヤトを真正面から焦がしたように見えたが、ハヤトは、炎塊の下を見ごとにスライディングして避けて見せた。ランナーがホームベースにスライディングするようだった。
結果はセーフ。俺はしばし「おー、ナイスホームイン」と、心中感心していたが、クロスになっている炎塊は右肩上がりの/と、右肩下がりの\の二つに分かれ、孤書きながら、ハヤトを追撃しようとしていたのだ。タロウが短く呟いたのが聞こえた気がした。「ツインフレイム・スラッシュ」と。
《ツインフレイム・スラッシュ》。それは、フレイム系統の中では、かなりランクの高い火属性魔法だった気がする。この魔法は放った魔法を、その名の通り二つに分けスラッシュ型にする。火属性魔法と言っても、フレイムだけでなく、先ほどタロウも使った、フォティア系や、純粋なファイヤ系などがあり、その数は未知数であるのが魔法の現状だ。
と、また話がそれてしまったが。ハヤトは先程タロウが口にした言葉が聞こえていなかったのだろう。スライディングから大勢を立て直し再度加速する様子が覗える。だが、予想道理というかなんというか、……。炎塊は加速をかけたハヤトのそれより多少速かった。
対のスラッシュの予想接点にハヤトが来た瞬間。対のスラッシュは基の形のバツになり、ハヤトの背中に炸裂した。その後ハヤトは地面を一回転し、背中が地面に着いたところで、終了と言わんばかりの歓声と、それを決定ずけるベルが鳴り光心祭、第一試合目が終了した。
その後は今のような暑く見どころのある試合があるわけでもなく、光心祭は進められていった。
途中、「はぁ?」っと言いたくなるような闘いをしているアポストルがいた。そいつの試合だけ少し解説するとしよう。
それは第四試合での出来事だった。決闘者は三角帽をかぶったあからさまに、魔法使いチックなオーラを醸し出している、顔だけを見てもなにを考えていいるのかわからない、ポーカーフェイスな男と、スキンヘッドをした暴走族の、闘いであった。
結果は魔法使いの圧勝と言うか、勝負にもならなかった。
スキンヘッドは颯爽とウィーリーでステージに上がり観客を盛りあがらせた。そして開始のベルが鳴ると、バイクに内蔵されたミサイルを二発撃って、勝ちを確信したのか「ヒャッハー粉々になって俺様の桜吹雪となれ―、ウィーアー」とか、訳のわからんことを抜かしていたが、魔法使いはポーカーフェイスに似合う澄んだ声で、一言「アミナ」と、ギリギリ俺に届く声で発した。
《アミナ》は基本防御魔法の中で一番ランクの低い技、しかし、完全に制御できない『変な魔法』として魔法使いの中でそこまでではないものの知られている。と、言うのも。一つは《アミナ》はリフレクト型の魔法であるのに、剣や槍などと言った、いわゆる近距離攻撃にしか活用できない。また、これはランクが一番低いEランクであるため。成功率もとてもではないが、高いとはいえない。以上の二点から、《アミナ》は変な魔法と認識されているのだ。
だが、今、目の前にある光景は《アミナ》という魔法の域を超えていた。ミサイルはもちろん長距離攻撃、もしくは中距離攻撃に配分されるはずだ。しかし、このとんがり帽子はミサイルを正確に跳ね返して見せた。
俺にここまでの知識があったのはヒロのおかげと言えよう。しかし、今のような知識がない、もしくは「アミナ」といった声が聞こえないと、ただの《リフレム》にしか見えないはずだ。なぜ俺が聞こえたかと言うと、次が俺の番だったことで、控え席に座っていたからだ。
と、ここで、思考を戻して辺りをうかがった。あの、目線が感じられたからである。しかしこちらを見ているものは何もなかった。
戻ってきたミサイルに対処できず、自分のミサイルによってダウンになったスキンヘッドはいつの間にか観客の笑い声と化していた………。
はぁ、ため息が出てきてしまいます。なんとか八月下旬からだいたい二ヶ月。てかもう十月も終わってしまいます。ハッピーハロウィンが怖いです。
こんなんでやってけるのか!とか思ってる方も少なくないでしょう。一応原本はできてるんですよ。そこらへんの紙に…。でもそれを打つのが…。ボクはあまりタイピングが早い方とはいないんで。
と、まぁ言い訳はこのくらいにして。
次投稿するのはきっと二月の下旬になるかと思います。ご察しの方もいるかとは思いますが。学業デス。はぁ、じゅ、受験なんて無ければいいのに…。
と、また心中を呟いてると、net上で叩かれ兼ねないので、ここら辺にしておきます。え~、続けて行くつもりですのでそれではまた。
とりっく・おあ・とりーと「お菓子頂戴」