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+6  作者: 横尾劇場
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プロローグ

 故郷というものがいまいちわからない。

 自分にはそんなものないのではないかとよく思うし、出身地はどこかという質問にはしょっちゅう言葉に詰まる。自分にとって家という概念が曖昧なのだと思う。

 帰巣本能が弱い。というか、薄い。

 生まれてから二十一年間、住む町をころころと変えてきたせいかもしれない。賃貸アパートばかりに住んできたぼくにとって、家とは『部屋』であり、ぼくにとって『家』を象徴するのは建物ではなく、『ドア』なのである。

 一軒家というものを見ると自分には縁遠いものだと感じるし、何十階とあるマンションにも敬遠してしまう。

 うん。そういう家もあるよね。いいねー、庭がある一軒家。ぼくには関係ないけど。

 そんな調子だ。貧乏性。小心者。まあ、当たらずとも遠からずだ。

 どこにどれだけ長く住んでいても自分が新参者の気分が付きまとう。

『慣れ親しんだ土地』というものが理解できない。

 だってぼくが今いるこの場所は『とりあえず今だけ』いるだけで、ここで生まれたわけでもここで骨を埋めるわけでもない。人生においての通過点。そのうち別の『部屋

いえ

』に移り住んで生きていくのだろう。

 ぼくには「ここがぼくの故郷だ」と「これがぼくの家だ」と胸を張って言える場所がない。それが寂しいことだと思ったこともあるし、人生そういうものだと思ったこともある。

 家。

 そして家族。

 そういう曖昧模糊とした抽象的な言葉に明確なイメージを持つことなく大学生になり、一年が過ぎた。

 そんなぼくだから、いい加減に電車で三時間もかかる場所から大学に通うのも限界が来て親元を離れて下宿しようと決めたときも大した感慨はなかったわけで「ああ、今度はあそこに住むのな」と思っただけだった。

 五年ほど過ごしただけの、思い入れもない部屋を出て別の部屋へ流れていく。それだけのこと。

 そんなふうに思っていた。

 とまあ。ごちゃごちゃ言葉を並べてみたけれど、言いたいことを伝えるには全然足りないと思うわけで、そろそろ話を始めよう。

 これは、ぼくの『部屋』の話だ。

 これはぼくと、その同居人たちの物語だ。

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