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アクレニア戦記 ~二つの決意~  作者: 冬永 柳那
三章 真実の一端
19/41

衝動

ガチャガチャガチャモグモグモグモグゴックン


「ぷはー!!! い・き・か・え・っ・たーーーー!!!」


港から一転、近くにあった宿屋にシオンたちはいた。


そのシオンたちは、自らの目の前の机の上に広がる世界に絶句している。


信じられないほどに散らかった机。


原因は積み重ねられた皿と、満足そうにお腹を擦っている少女を見れば検討がつくだろう。


「いやー、ごめんね、これだけ食べちゃってさ。ここ一週間ぐらい何も食べてなかったんだよねー」


「…い、一週間…」


「…それでこの食いっぷりな訳ね…」


「…ほわー…お皿の塔が出来てますよ…」


汚れた口元を充てがわれた白い布で拭きながら、少女は自らの状況を説明する。


だが、その説明も三人にとっては上の空で、机の上の広がった惨状を見つめてほとんど聞いていなかった。


「あ、私の名前はカナ。カナ・コルセルニアだよ。ありがとうね、命の恩人さんたち。カナって気軽に呼んでね」


「…そんな大それた事はしてないよ。僕はシオン・セナ。僕もシオンでいいよ」


「…ユフェルニカ・シーファスよ」


「リィナ・ハーキュリーです! よろしくお願いしますね、カナさん!!」


カナが頭を下げながら自己紹介した事に、シオンは少し苦笑しながらもその自己紹介に答えていく。


途中、ユフィーの氷の態度には少し違和感を感じる物があったが。


「…そういえば、カナさんって槍を使って戦うんですか?」


リィナが今まで気になっていたであろう事を口にした。


カナの背中に担がれた長槍。鉄槍のようで、持ち手の部分が黒光りして鈍い輝きを放っている。


剣士として、そして同じ女としてそのような武器を持ち歩いている訳をリィナは知りたかったのだ。


「ああ、これ? 私、トレジャーハンターやってるの。その時に魔物に襲われること何てたくさんあるから、こうやって自衛?のために持ち歩いてるの」


「ふえーー…。そうなんですか…すごいですね!」


「そう言うリィナちゃんだってすごいの持ってるじゃん」


今度は逆に、カナがリィナの腰にさした風燐華を指差した。


確かに、この世界では剣を鞘に入れておく事自体が珍しい。


武骨な両刃剣が多いこの世界では、鞘に入れておくなどという動きの阻害される行為は基本的にしないのだ。


ただ唯一、エスカレルニア王国の極東の地域だけで造られる『刀』だけが例外とされている。カナはその事を言っているのだ。


「あ、これですね。風の聖霊さんからもらった魔剣、風燐華です」


その刀の輝きをカナに見せようと、鞘から刀身を抜こうとするリィナ。


だが、その動きを焦ったシオンが必死に止めた。


「ダメだって! まだあんまり制御しきれていないんでしょ!? こんな店の中で出さないの!!」


「あ、そうでしたね。…すいません」


事実、リィナは未だ風燐華の力を制御しきれていない。


帆船に乗っている間に、魔力の練り上げの感覚をユフィーに習ってはいたのだが、風燐華自体が持つ魔力に引っ張られて細かな制御が出来ていないのだ。


そのために、下手をすれば刀を鞘から引き抜いただけで暴風が巻き起こるという危険がある。


シオンはそれを懸念して、リィナに刀を抜くのを止めさせたのだ。


だが、その懸念とは裏腹にカナの両目は完全に輝いてしまっていた。


「すごいすごいすごいすごーーーい!!! 魔剣とかってどうやって手に入れるの!? なにそれなにそれ、すっっっっっごーーーーーく気になる!!!!」


身を乗り出しながらシオンとリィナに詰め寄るカナ。


両目をキラキラさせながら涎を垂らして詰め寄るその様は、もはや恐怖としか言いようがなかった。


「ちょ、ちょっとカナ、落ち着い───」


「…凍らせるわよ?」


「ひうっ!」


「ユフィー! いきなり何するんだ!」


暴れ出そうとするカナをシオンが抑えようとしたとき、絶対零度の魔力の流れとユフィーの冷やかな声がカナを貫いた。


その寒気にカナは小さく悲鳴を上げながら飛び上がり、その隣にいたシオンはユフィーの行動を咎める。


「…ふん」


その咎めもユフィーの耳には入らず、ユフィーは小さく鼻を鳴らした後に宿屋から出て行ってしまった。


「ユフィー! リィナ、カナ、勘定はこれで済ませておいて。僕はユフィーを追いかけてくる」


ユフィーを追いかけるため、シオンは持っていた有り金を全て机に置いた後宿屋から飛び出していった。


「…ひー、ふー、みー……うわ…何この大金…これだけ食べたのにまだおつりがくるよ…」


「シオンさん…どこにこんな大金隠してたんでしょう…」


机に置かれた金貨銀貨様々なお金の数々に、カナは純粋に驚き、リィナはどこか驚く所が違っていた。





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