表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

理の章

ナインヘルツ暦3000年代に彼女は現れた。


初代アークマスターに捧げられた、唯一絶対最強たる歴代アークマスターの中でも特別な称号『太聖』。


彼女は史上二人目の特別なアークマスターとして『理聖』を戴いた者となる。


名をタニアという。


タニアに関する記述はあまりにも少ない。


タニアがアークマスターとして歴史に現れた出来事、それはこの上なく異色だった。


当時にはタニアとは異なる別の者に聖紋があり、アークマスター『槍聖』としてその力を奮っていた。


世界最強として絶大な畏敬を得ていた当代アークマスターの前にタニアが現れた瞬間、アークマスターから聖紋が消える事となった。


過去、希少な事例ではあるが二者が相対し、これまでのアークマスターから聖紋が消え、もう一方の者に聖紋が移る事は歴史の記録に残っている。


その事案に該当するのであれば、少々珍しい聖紋の移転として歴史に記されたであろう。


だが、聖紋が消えた後もタニアに聖紋が宿ることなく全世界から消えたのは、未だかつてこの時をおいて他にない。


何故このような事が起こったのか。


後世でも様々な研究者がこの興味深い事案を解き明かそうと諸説挙げるが、千年を経ても決着はついていない。


この逸話から、タニアは『無痕のアークマスター』とも呼ばれている。


アークマスターとなったタニアは間をおくことなく『理聖』の称号を贈られた。


タニアには記録を読み明かしても特筆すべき功績らしい功績を残してはいない。


それでもなお、最後の神話たる獄冥戒竜を打ち滅ぼす歴史上世界最高の偉業を成し遂げた初代アークマスター『太聖』と同列に並ぶ称号『理聖』をタニアは贈られた。


これが何を意味するのか、何を以って贈られたのか。疑問は多い。


そして歴史に出てわずか数年でタニアは人知れず消えた。


タニアの最後の足取りは東へ向かったとだけ記されている。


さて。タニアに関する記述は以上で終わりだが、話はまだもう少し続く。


別の視点で見ると非常に興味深い事があるのだ。


それはタニアが現れ、消えるまでの数年間においての各国の様子である。


当時、ダーンドール神国、アスリア連合国、アトラス大帝国、タロウル帝国といった世界の超大国をはじめ、世界の有力国のほとんどで政争が突如激化していた。


不審な事件。謀殺。失脚。紛争。失踪。


特にナインヘルツの伝説に関わる地では不可解な事件が相次いだ。


治安は荒れ、国には不穏な空気が流れる


世情の不安に伴った怪しげな宗教団体の跋扈。


各国の国境線では細かな争いや不穏な出来事の件数が不自然なまでに伸びていることが記録に残っている。


当時を生きた高官の言葉では、いつ大戦乱が起こってもおかしくはなかったという。


それも、これらの異常は前兆となるものがほとんど見当たらず、原因不明とされる。


ただ、これらはタニアが現れた時期と一致している事に着目する者がでた事で研究者はおろか、世間でもこの事を結びつけて想像を膨らませている者は多い。


これもひとえに彼女の正体の不透明さが原因であろう。


なお一説には、タニアの容姿は中性的な麗人であったとも、まだ幼い少女であったとも言われている。


最後に、彼女を知る者の多くはこう述べていた。


彼女こそは女神であると。


そして少ないながらも真逆の言葉を残す者もいる。


あれは人間ではない、おぞましいバケモノだと。


また、タニアが消えてから遥かな時が流れ、世界各地の人々の間に一つの奇妙な噂が口にのぼった。


噂の名は風果てる地。この世界のどこにも誰にも見つからない箱庭。


選ばれた者にしか招かれることのない不思議な楽園の話。


伝説に曰く。


其は風果てる地。愚かなまでに優しい女神に祝福されし楽園なり。


ある童話がその噂をモチーフに描かれているが、その作者は楽園の主をタニアとしている。


遥か後年において決して知りえるはずのない彼女の姿を見たことがあるのか。


その疑問について作者は何の言葉も残していない。


主だった小話はこれでおしまいです。

あと2,3の捕捉をしてぼちぼち小説を再開します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ