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黒騎士の章

巨人と獄冥戒竜の争いから遥かな時が流れた先にて。


人々は魔物との遭遇を避けながら集団で暮らし、各地と交流して少しずつ繁栄していた。


やがて西の大陸にはアスリアという名の国が興り、ますますその勢いは増していく。


そんな中、ただ一人残された巨人の姫は森の奥深くで静かに楚々と暮らしていた。


ある日、一大王国となったアスリア国の第三王子が狩りへと森に入っていく。


第三王子は成人(15歳)前と年若いながらも勇猛と善行で知られており、


黒炎の紋章を戴き、黒騎士と呼ばれていた。


鳥を追って森の奥深くへと進み、湧き水でできた湖のほとりで王子はその目を疑った。


森の静寂の中、翡翠の瞳と輝く太陽のような黄金の髪を持つ美しい娘が座り込んでいた。


娘は人間へと姿を変えた巨人の姫であった。


王子は興奮した様子で娘に声をかけ、娘は恥じ入るように立ち上がる。


娘は熱さましの薬を求めて森に来たと話し、


それならばと王子は姫の手を引いて城へと連れて帰った。


王子は娘を歓待しようとするが、娘は丁重にそれを辞し謝礼を重ねて村へと帰っていった。


それから王子は何度も城を抜け出し、娘のいる村や森へ遠乗りを繰り返した。


城の重臣達に厳しい顔で諌められようとも構わず王子は足繁く娘の下へと通う。


ある日、娘は自分が最後に残った巨人の姫である事を王子に明かし、


巨人の遺した莫大な財宝を王国に全て献上しようとした。


国王は嬉々として財宝の隠し場所への案内を娘に頼み、


娘は国王以下、第二王子と第三王子が率いる軍隊と使者たちを森へと連れて行った。


しかしある村の男が突如森に火を放ち、勢い良く広がった火の手は大火となり天を焦がす。


突然の大火事に森の動物や魔物は暴れだし、姫や国王達にもその暴走は避けられなかった。


魔法での消火も満足にできぬまま皆は混乱し、場は阿鼻叫喚の坩堝と化す。


その最中第二王子は炎にまかれて命を落とし、第三王子と巨人の姫は連れ立って


猛る炎の中へとその姿を消した。


炎は深い森を四分の一ほど焼き払い、鎮まった。


国王達は命からがら森から抜け出し、王子達と財宝が炎の中に失われてしまった事を


しみじみと嘆き、憤った。


それからまたしばらくの時が過ぎて。


第一王子がアスリア国の王位を継ぎ、国は前王の時代よりますます苛政に喘ぐようになる。


そこへ東の海を隔てた大陸から侵略者達が津波のように押し寄せてきた。


前王より平和の続いていたアスリア国は瞬く間に外敵に侵略されていき、それでも宮廷は


王都を守る砦に侵略者が姿を見せるまで満足な指示を出す事もできなかった。


やがて決戦により王都は陥落し、国王が豪族達と共に首を刎ねられたという知らせは


王都から逃げ出した民によって方々に伝わる。


もはや王国は崩壊し、残った地方の豪族もまた抵抗か恭順か逃亡かを腹に決めようと


悲壮な空気が王国を包んでいたその時。


かつて巨人達の暮らしていた森から7人の男女が現れた。


彼らは一様に黒の戦装束を身に纏い、黒炎の紋章を抱き、巨人の秘宝を携えて


王国各地を巡り侵略者達を打ち破っていった。


侵略者の前に頭を垂れていた豪族達は彼らが王家の血筋である事を認めその御旗の元に集い、


民は唯一善徳で知られる第三王子の血に希望をもって支持した。


やがて第三王子の血を引く7人の御子らと最も協力的な5人の豪族を中心として


風の魔王パズズを擁する侵略者を王都から撃退することに成功した。


アスリア国は一時の崩壊による混乱を収めはしたものの、17の大小の国々に分裂し、


それぞれ独立して治めることとなる。


しかし7人の御子と5人の豪族が治める12ヶ国は連合を組み、長きに渡り盟友として


共に繁栄していく。


そしてこの12ヶ国が擁する騎士団はディストウェルブ黒騎士団として歴史に銘を残した。


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