神々の章
始まりの女神は森へと入り、その中心たる大樹の元で様々な生き物を産み落とした。
広大な大地は新たに出でた生き物を受け止め、『世界』の各地へと散らばっていった。
始まりの女神は新たに神々をも産み出し、やがて神と精霊と妖精と獣とが共に交わる日々が続いた。
西では巨人が、東では仙人が大地の主人として神々と暮らす事となる。
神々は花が咲き乱れる飢えと寒さのない楽園で日々を過ごしており、楽器を奏で愛の詩を詠み交わす。
神々は数々の愛憎と苦楽と悲喜の出来事を物語として綴り、神術を各地に刻んだ。
地獄から悪魔が現れいずる時には力を以って撃退した。
そんなある日、夜が明けると始まりの女神の姿が消えていた。
神々はそれに気が付くと大いに慌て、空を駆け巡り、大地を踏み鳴らし、必死に始まりの女神を探した。
しかし大樹にも天空にも大海にも草原にも火山にも森にもどこにも見つからなかった。
神々は母たる始まりの女神の喪失に大いに嘆き悲む。
涙は大河を成し、嗚咽は大空を雷雲で覆い、『世界』は慟哭に包まれた。
やがて落ち着いた神々は新たな指導者を決め、始まりの女神を偲んで広大な緑と水に満ちた森を作り上げる。
神々はそれぞれの祈りを込めて生み出した自らの僕たる獣をその森に遣わし、森を守り慈しんだ。
いつか始まりの女神が戻ってきた時に、彼女が愛した緑豊かな場所で迎えられるようにと。
神獣が集うこの森はやがて神獣の森と呼ばれた。