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外伝之弐 秩序の破壊
ナインヘルツ暦3000年代において。
フィーラル大陸東部に名工として名をはせる万頭鬼定という者がいた。
彼が打った最高傑作たる九本の太刀は大業物と謳われ、当代最高峰の妖刀とされる。
――其は輝けし刃。太陽を与えよう。
――其は滴る刃。月を与えよう。
――其は不動の刃。大地を与えよう
――其はさざめく刃。海を与えよう。
――其は駆ける刃。風を与えよう。
――其は焼き払う刃。雷を与えよう。
――其は猛々しい刃。虎を与えよう。
――其は羽ばたく刃。鳥を与えよう。
――其は虚ろう刃。無現を与えよう。
これらの太刀が一躍有名になったのはカルトーの戦いにおいて。
両側の陣営にそれぞれ太刀の持ち主がいた。
圧倒的戦力差のあるこの戦い自体は当然片側の余裕ある勝利と思われていた。
しかし結果は両者共に全滅。
妖刀を振るう二者は互いに暴力の嵐を吹き荒らしながら辺りを巻き込んで戦い続け、全てを薙ぎ払った。
そうして最後には両者共に相討ちで幕を閉じた。
故に、これらの太刀は『秩序の破壊』と呼ばれている。
所有者に破壊と破滅を呼び寄せる呪いの妖刀として。