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一章 ACT-7 お風呂=サービスシーン

今回はノリで書いてしまった話です。でも反省はしていない。

 フレーナ達、三人は大浴場の脱衣所で途方に暮れていた。

 強制検査をいう名目で三人は隊員に連行され、今に至っていた。仕方なく三人は服を脱ぎ、入浴の支度をしていた。逃げ出そうにも出入り口にも隊員がいるため、それも不可能だった。


「どうします?」


 フレーナは渋々と服を脱いでいるテテュスとヴェスタに尋ねた。


「私、諦めた」


「私もよ」


 二人は同時に答えた。驚くほどのシンクロ率だが、今は誰もそこを突っ込まない。そんな余裕はないのだった。三人の貞操が掛かっている今回の催しをどう乗り切るのか、大事なのはそこだった。

「私も覚悟を決めます。だから頑張りましょう」


「ええ」

「そうね」


 二人の返事を受け、フレーナは大浴場の入り口の扉に立った。そこでフレーナは自分の薄い胸を見つめる。

 やはり小さかった。別にそれが悪いわけじゃないが、隣の三人と比べると、どうにも目立つ。しかし今は大きい小さいを気にしていられない状況だった。


「行きましょう」


 フレーナは深呼吸し、扉を開いた。

 中は湯気で溢れていて、視界はほぼ真っ白だった。目がなれると、漸く素晴らしい浴場の風景が飛び込んでくる。

 この大浴場はいくつかのスペースに区切られていて、その一つ一つに効能が存在するらしい。元々は東方の文化らしいが、詳しいことは分からない。

 ヴェスタは漂ってくる湯気の香りを嗅いで、呟いた。


「地下の源泉から直接引いているみたいね。これはいいお湯よ」


「そうなの?私にはサッパリだわ」


「でも身体に良さそうな雰囲気はしますね」


 三人はそれぞれ温泉を批評した。

 この大浴場は、王宮にある三つの浴場の中でも一番大きい物だ。普段は王族、貴族専用だが、今日は特別な許可が下りているらしい。もっともフレーナは王族なので何時でも入れた。


「お三方、待っていたわ! 準備はいい?」


 背後から美声が聞こえた。

 三人は分かりきった顔で振り返り、その人物を改めて確認する。背後に居たのは、薄緑の髪をポニーテールに結い上げて、胸にバスタオルを巻いているミーナがいた。その目は爛々と輝いている。


「では身体検査を始めましょうか? フレーナちゃん以外の二人は皆に任せるわ。私はもちろん……」


 ミーナはフレーナにじりじりとにじり寄った。。その目は酷く恐ろしいものだった。例えるなら、蛙を捕らえんと忍び寄る蛇が相応しいだろう。

 他の隊員はテテュスとヴェスタを別のスペースに連行していった。

 残されたフレーナは正面で意味ありげな笑顔を見せているミーナを見つめた。


「あの……一緒に、普通にお風呂に入りましょう?」


 フレーナは”普通”を強調するのを忘れなかった。

 しかしそれで引くミーナ・アルフレッドではない。ミーナは不気味なほど不自然な笑みを崩さぬまま、独り言のように呟き始めた。


「大丈夫、大丈夫。別にとって喰うわけじゃないわ。ちょっとした検査よ。け・ん・さ」


「や…………」


 フレーナの言葉は続かなかった。

 理由は明白。ミーナの両手がフレーナの薄い胸を鷲掴みにしたからだった。バスタオルの上からだとは言え、ちょっぴり犯罪、な光景だった。

 もちろん当のフレーナは硬直している。王宮の中庭の彫像の如く微動だにしない。いや、出来ないという表現のほうが正しいのかもしれない。

 ミーナはそんなフレーナの様子を見て、更なる打撃を与える。両手で揉みしだいたのだった。


「や……ん! ちょっ……や……めて…………」


「あらあら? 王女様は栄養不足かしら? どれどれ」


「ふぁ……やめ…て……くだひゃい…………」


「あら、呂律が回ってないわよ? まだまだね~」


 頬を見事に紅潮させ、逆上のぼせているフレーナの表情もまた、軽く犯罪だった。ミーナも自分が恥ずかしくなったのか、手を止めて離した。

 フレーナはへなへなと浴場の床に座り込む。


「やり過ぎちゃったかしら?」


 ミーナは悪びれた様子も無く、笑顔を浮かべた。フレーナを抱きかかえ、奥のシャワースペースに向かう。そのシャワースペースには連行されたテテュスと数人の隊員がいた。テテュスがぐったりとしたフレーナを見て、甲高い声を上げる。


「フ、フレーナ!? ミーナちゃん、フレーナに何をしたの!?」


「ちょっとした身体検査よ。少しやり過ぎちゃったみたいだけど」


 ミーナが舌を出してテテュスに微笑む。

 ミーナはフレーナの身体を洗ってあげようと、胸のバスタオルに手を掛け、外そうとした。


「お楽しみのようですね」


 不意に声が響く。それは聞き覚えのある声だった。しかし本来、ここに居てはいけない人物の声だった。

 一同が声の人物を確認しようと、振り返る。シャワースペースの入り口に立っている人物は紛れも無い、茶髪の好青年、ベルドラン・オルオールだった。


「きゃあああぁぁぁ!! 何でここに居るのよ! 変態! ド変態!!」


 ベルドランは表情一つ崩さず、懐から一枚の羊皮紙を取り出した。それは何かの許可証らしく、国王の花押が押してある。


「ちゃんと陛下の許可は頂いておりますので、ご安心を」


「そうなの……、って! そう言う問題じゃなーい! 常識を弁えなさい! 常識!」


「気をつけますよ。それよりもリンドール閣下がお呼びです。至急、謁見室までお越しくださいとのことです」


 リンドールの名を聞いて、一同が真顔になる。

 リンドールは軍の出で立ちの宰相だ。人柄のいい人物で、宮廷の軍人、顧問官からの絶大な信頼を得ている。しかしそれと同時に貴族連中からは快く思われていない。理由はもちろん軍人の出だという事だ。


「はい。では直ぐに参ります、とお伝えください」


「分かりました」


 ベルドランは立ち去り際に思い出したように言った。


「そうそう。婦人方が先ほどのような醜態を晒すのはあまり宜しくないですよ」


「…………あんた、何時から見ていたのよ」


「では」


 ベルドランは意に介した素振りも見せず、立ち去っていった。

 一同も謁見の準備をするべく、シャワースペースを後にしたのだった。

 

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