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一章 ACT-6 光と風の戦い

二週間ぶりの更新です。

反省はしています。

 フレーナ達三人は今、王宮の中庭にいた。

 ベルジュロン伯爵に案内され、王宮までやってきたわけだ。今、王宮にはフレーナ達の入隊の知らせを受けた特科隊のメンバーが揃っている。

 ベルドランの説明によると、特科隊は三隊に分けられていて、その内のフレーナ達が入隊するのがワルキューレ隊。その他にケルビム隊、ワイバーン隊に分けられている。ワルキューレ隊は女子だけで編成されているらしく、フレーナ達もすぐに馴染める、とベルドランは言った。

 フレーナは三つの幟の中から、ワルキューレの紋章を探し当てた。


「あそこじゃないですか? ワルキューレ隊は」


「そうね。紋章が分かりやすいのね」


 テテュスが立ち上る三つの幟を眺め、感想の述べた。三人は隊長と思しき少女の下へ向かった。

 三人が近づいて来たのを見て、その少女は振り向いた。フレーナ達に負けず劣らずの愛嬌ある顔で、綺麗に澄んだ緑の髪を腰の辺りまで垂らしている。

 少女は笑顔で先頭のフレーナに手を差し出してきた。フレーナも笑顔でそれを握り返す。


「私はミーナ・アルフレッド。ワルキューレ隊の隊長を務めているの。貴方方が新規入隊の方々?」


「はい。フレーナ・ルル・オルフェウスです」


「私はテテュス・レーゲル。よろしくね」


「私がヴェスタ・ヴェルドルです」


 三人はそれぞれ名前を名乗った。ミーナが驚いたような表情でフレーナを見つめる。


「貴方、王家の血を継いでいるの?」


「はい、直系です。とは言っても、帝国との間に生まれた身ですが……」


 ミーナは思い出したように呟いた。


「貴方、お兄さんがいたでしょう?」


「えっ!? どうしてその事を?」


 フレーナの問いに、ミーナはこめかみに手を当てて、考え始めた。なにかを思い出そうとしているようにも見える。

 ミーナはゆっくりと顔をあげ、ある名前を口にした。


「ルシフェル……だったかしら……実はね、以前帝国に行った時に彼の名前を知ったの。その時は何とも思わなかったんだけど、貴方のミドルネームで思い出したわ」


「お兄様は生きているんですか?」


「ええ、それは確かよ」


 フレーナは安堵の溜息を漏らした。テテュスも傍で顔を輝かせている。

 フレーナは、特科隊に入隊したことを早速、喜んだ。ずっと探し続けてきたルシフェルの存在を確かにすることが出来たのだから。

 ミーナが他の隊員に指示して、場所を空けさせた。


「フレーナ、貴方はかなりの腕前を聞いているわ。私と手合わせしないかしら?」


「え!?」


 ミーナは杖を取り出し、続けた。


「私は風系統の魔法使い。貴方は光と聞いているわ。それも特別な」


 ミーナはそう言い、自分の胸に付いている勲章をフレーナに見せた。風翔龍ワイバーンの紋章のそれは、偉大なる風の使い手であることを表す勲章だった。

 フレーナの顔が真剣になった。


「……私の勲章を知っているんですか?」


 ミーナは何も言わずに頷く。

 フレーナは自分の胸の勲章をミーナに見せた。そこには六枚の翼を広げた天使が描かれている紋章があった。これは偉大なる光の使い手を表すものだった。

 しかもフレーナの光の魔法は違った。光の使い手自体が少ないのだが、その中でも一握りしかいない光の魔法、それが光の裁きライト・オブ・ジャスティスだ。

 光の裁きライト・オブ・ジャスティスは、光魔法最強の系統だ。その光の前で、立っていられる者はいないという伝説が残るほどの強力な力を持つ。

 

「で、どうかしら? 相手にとって不足はないと思うんだけど」


「……分かりました。その勝負、受けて立ちます」


 フレーナは頷いた。

 ミーナがフレーナと距離をとり、お互いに向き合う。


「フレーナ、頑張って!」


 テテュスがフレーナを応援した。

 フレーナも笑顔をテテュスに返し、ミーナに向かい合う。

 こういった試合は、まず第三者の合図で始まり、お互いに詠唱を開始する。相手に致命傷を与えない程度の魔法しか使わないが、時々怪我人も出る。

 今回はヴェスタが開始の合図をする。ヴェスタが二人の間に立ち、お互いが準備出来ていることを確認する。


「では、始め!!」


 ヴェスタの叫びと同時に、ミーナが素早く杖を構え、詠唱を開始した。フレーナも詠唱を開始する。

 魔力が辺りに充満し、空気を満たす。精神を研ぎ澄ませているため、周りの群集は声一つ立てない。先に詠唱が完成したのは、ミーナだった。フレーナが一秒ほど遅れて、完成させる。


風刃ウィンド・カッター!」


 ミーナが叫び、杖の先から風が刃となり、放たれる。それに対して、フレーナも魔法を開放した。


光の防御壁(ライト・ウォール)!」


 フレーナの前方に光の壁が現れ、風刃ウィンド・カッターを防いだ。しかしお互いに魔法の腕はプロ級だった。

 間髪いれずに、風刃ウィンド・カッターがフレーナに向かって飛んだ。フレーナの杖からも光の槍(ライト・ジャベリン)が飛び、お互いの中間点で衝突し、爆発する。

 ミーナの得意とする瞬間的な詠唱は、戦場で最も重宝する事柄だ。素早いほど、敵に隙を与えない。

 ミーナは杖を振り上げ、溜めていた詠唱を放った。


風撃砲ウィンド・キャノン!!」


 風撃砲ウィンド・キャノンはミーナの使う風魔法の中でも強力な部類に入る呪文スペルだ。強烈な風の砲撃がフレーナを襲う。フレーナの光の防御壁(ライト・ウォール)がその魔法を受けて、爆発した。光の防御壁(ライト・ウォール)が砕けて、光の結晶になった。


「止めよ!」


 ミーナが短く詠唱し、風刃ウィンド・カッターを放った。フレーナの光魔法は詠唱に多少、時間がかかる。

 これで勝負はつくと思われた。

 風刃ウィンド・カッターがフレーナのいる場所に当たり、土煙を舞い上げた。ミーナは自分の勝利を悟り、杖を下ろした。


「まだです!」


 突然の叫び声にミーナは前方に杖を構えなおした。しかしフレーナは前にはいなかった。

 ミーナの後頭部に杖が向けられる。突如、背後に現れたフレーナは予め詠唱しておいた魔法を開放した。杖から撃たれた衝撃波ショック・ウェーブがミーナの体を中庭の端まで吹き飛ばした。


「勝負ありですね」


 フレーナは杖を収めると、倒れたミーナの手をとり、立ち上がらせた。フレーナは爽やかな微笑みを見せ、立ち上がったミーナと握手を交わした。


「いい試合でした。ありがとうございます」


「私こそ……貴方を見くびっていたかもしれないわ。出来たら、貴方に隊長の位を譲りたいぐらいよ」


「そんな、隊長なんて。ミーナさんじゃないと、ワルキューレ隊の隊長は務まりませんよ」


 ミーナは頬を赤らめ、俯いた。

 フレーナの笑顔の前では、老若男女、全てが照れずにはいられない。フレーナの笑顔の魔法だった。

 そんな二人の様子を見ていたベルドランが拍手しながら、二人に歩み寄った。


「いやいや、素晴らしい試合だったよ。こんな試合、見たことない。お互いのレベルが桁外れなうえに、最後には友情の芽生え……僕は今、最高に感動している!」


 ベルドランは大げさに声を張り上げながら、二人を褒め称えた。

 笑いながらベルドランの褒め言葉を聞いているフレーナとミーナに、ヴェスタとテテュスが駆け寄った。まず初めに、テテュスがフレーナに質問を投げかけた。


「ねえ、フレーナ。どうやってミーナちゃんの後ろに回り込んだの?」


 フレーナは杖を抜き、説明を始めた。


「今のは、ミーナさんが風撃砲ウィンド・キャノンを撃ったのと同時に、瞬間移動テレポート呪文スペルを唱えたんです。光の防御壁(ライト・ウォール)が爆発した時に、土煙が上がったので、その隙に魔法を放って、瞬間移動しました」


「でも、普通は気づくんじゃない? ミーナちゃんも一応プロの魔法使いよ。相手が詠唱したことくらい、見なくても分かるはずよ?」


 テテュスの言っていることはもっともだった。

 プロの魔法使いは、目ではなく、相手の放つ魔力波で唱えた魔法を予想する。ミーナとフレーナはそれが可能なはずだ。


「はい。だからあえて自分の出す魔力波と精神波を大気中のそれに同調させました」


「それって、凄く難しいんじゃ……」


「まあ、そうかもしれません」


 テテュスは又もや、フレーナの魔法の才能に驚かせられることになった。

 ヴェスタは魔法の知識が豊富なため、理解出来たようだが、テテュスは理解出来ずに呆けている。そんな三人の様子にミーナはとっておきの笑みを見せた。


「皆さん、このワルキューレ隊には新隊員を歓迎するためのある催しがあるのよ」


「催し?」


 テテュスが鸚鵡返しに聞いた。

 ミーナが王宮の一角を指差す。そこには湯気が立ち上っていた。そう、お風呂だ。


「新隊員はまずボディーチェックを受けます。あのお風呂で。そして検査員はもちろん私よ」


 ミーナの男子にとっては素晴らしい催しに、三人は顔を見合わせた。そんな三人を他の隊員が捕まえ、風呂場へと連行する。


「え!? 私にも拒否権が!」


 そんなテテュスの叫びに対して、ミーナは一言、言った。


「拒否権は無し! これは隊長命令よ!」


 三人はなす術も無く、風呂場へと連行されていった。中庭に残された他の隊の男子は、羨ましそうにその姿を目で追っていた。


ご意見・ご感想をお願いします。

あと、誤字脱字などのご報告もどうぞ。キャラ紹介を更新いたしました。

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