アリサとケイト
辺境伯ジーリオ家令嬢 アリサ16歳 フルール王家に最も信頼されている格式の高い貴族家の令嬢。2年前王都へ出立する前に従姉妹達からケイト王女の噂を聞き王都滞在に不安を募らせていた。
フルール王家 ケイト16歳 冷静沈着にして冷酷無比。いつも凛々しいパンツスタイル。四人の兄がいる末っ子。
王国防衛三大家 ジーリオ家 ピオニー家 ペオーニア家 この三家が最高格である。
2年に一度貴族家は王家に対し人質となる子女を遣わさなければならない。男子なら王国軍の一員として2年間配属され剣技と魔法が授けられ領地へと戻る。
女子には一般層や男性貴族に与えられる物より一線を画す高性能で高機能なスマホが与えられ、王家が用意した部屋の中でほぼ軟禁状態となる。
男子は王国軍の一員となる事で国へ対する愛国心と忠誠心を養い、女子は情報を扱う専門知識を身につけるためこの様な体制が取られている。
貴族の格に合わせ監視する者の格も上がりジーリオ家の場合最高格である王家の姫が監視を担当する。
王女ケイトは冷酷無比な厳しい監視官でありケイトに監視されることになる格の高い貴族令嬢達は王国滞在に難色を示す。(ただし拒否権は無い)
2年間の滞在費、領地から王都までの路銀は基本的に貴族家の持ち出しである。
これは貴族家の資産を程よく削り王国へ反旗を翻す事を防ぐ目的もある。
ただし王国防衛三大家で辺境伯であるジーリオ家、ピオニー家、ペオーニア家の滞在費は王国持ちとなっている。
アリサは14歳の頃より王都に滞在しそろそろ2年が経とうとしていた。
そして今日もケイトが日常の見回りでアリサの部屋へ監査に来る。
「監査の時間だ。変わりないか」
ケイトがドアを開け目に飛び込んできたのは、髪はボサボサ、ジャージであぐらをかきソシャゲに興じるアリサの姿だった。
「んぁ?」
間抜けな声を出しケイトを見るアリサにギリっと歯軋りをし詰め寄る。
「き・さ・ま・は! 格式高きジーリオ家の人間だ! それがなんだ! そのだらしのない姿は! さっさと着替えて背筋を伸ばせ!」
当然の叱責すると次は胸元から書類を取り出す。
「それに何だ! 貴様の今月の滞在費は! スマホゲームに500万Cだと!? こんなもの許容できん!」※1C=1円
と、これまた当然の叱責をするが、しかしアリサは嬉しそうにスマホの画面をケイトへ見せる。
「でもでも見て! そのおかげでソシャゲのイベントで458/500位に入れたの!」
「500万使ってその順位なら才能が無いからやめてしまえ!」
至極真っ当ごもっともである。
「あと滞在延長届を出している様だが貴様の様な奴をこれ以上王国に置いておけるものか! とっとと領地へ戻れ!」
滞在延長申請書類を見せつけケイトの魂の叫びが部屋中に響き渡る。アリサは驚き、そしてすぐ寂しそうな表情となりケイトの横へ来るとその腕を取り耳元で囁く。
「そっかー…でも寂しくなっちゃうな…おはようのチューも出来なくなるし〜…」
「う…」とケイト。
「おやすみの裸足ぺろぺろも出来なくなるんだね〜…」
「ううう…!」と葛藤するケイト。
そしてケイトはアリサの滞在延長申請書類に、
「承認!」
と叫び判を押すのだった。
【それぞれの印象】
ーケイトの場合ー
「ジーリオ家の娘は以前滞在していたジーリオ家当主の妹の娘達に負けず劣らずの淑女と聞いていたが…」
ケイトはスマホゲームに夢中になっているアリサに目をやる。
「うにゃ!」「うぇ!?」「うへあ♪」
「噂とは当てにならないものだな…」
もっともである。
ーアリサの場合ー
「従姉妹の二人はケイトちゃんが恐ろしい子って言ってたけど…」
アリサはケイトの裸足をぺろぺろする。
「うにゃ!」「うぇ!?」「うへあ♡」
「噂って当てにならないものね…」
それはアリサのせいである。
【アリサの形容詞】
今日も今日とてアリサの監視という名の生活指導へやってくるケイト。
アリサの部屋へ入ると彼女はスマホの画面に齧り付きながら、うまうまスティックを齧っていた。
「また貴様はそんな物を食べて! あーあー! 粉が服について汚れているでは無いか! ほら! さっさと着替えろ!」
ケイトはアリサの腕を引っ張り立たせてやると、アリサはふらついてケイトの胸の中に寄りかかる。
「あはは…ごめんねケイトちゃん」
そう言うとそのままケイトの胸に顔をうずくめる。
「ケイトちゃんのニオイ落ち着く〜」
無碍にもできず顔を真っ赤にしてどうすればいいのか分からなくなるケイトだった。
「とにかく早く着替えろ!」
ケイトはどうにか繕いアリサをクローゼットへ押しやる。
アリサがクローゼットを開けるとそこには全く同じデザインのジャージが10着(+真っ白なドレス1着)が並んでいる。
「どれにしようかな〜」
と、全く同じにも関わらず選び始めるアリサ。
「いや…どれも同じだろ!」
当然の意見にアリサはジャージを指差し真剣に説明を始める。
「違うわ! ケイトちゃん! これは普段着用! こっちは新弾ガチャの時の勝負服!それから…」
謎のこだわりを見せるアリサに呆れて物が言えなくなるケイトだった。
ケイトがアリサの顔を見ると口の周りにうまうまスティックの粉がついてる事に気づき、胸ポケットからハンカチを取り出し口周りを甲斐甲斐しくふいてやる。
「全く…いいか? 遠く東の国にはこんな言葉がある」
『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』
「美しい女性の代名詞の様な言葉だ。それが何だ今の貴様は!」
『立てばふらふら、座ればスマホ、歩く姿は見た事ない』
そしてケイトは気付いてしまった。
(あれ…? もしかしてこいつ…私が居ないとダメになるんじゃ…)
「ケイトちゃん、脱がせて〜」
本気でアリサの将来を心配するケイトだった。
【格式錯誤】
王都近くに領地を持つ貴族令嬢が辺境出身のアリサをバカにする。
「あなた辺境の出なんですって?通りで見窄らしい格好ですこと!」
貴族令嬢の出立ちはまさに令嬢に相応しいドレス姿。方やジャージに裸足スリッパのアリサ。
確かに辺境出身のため言い返せないアリサの元にケイトがやってきて反論。
「辺境伯と言うのは外敵から国を守る国防の要! 王国に信頼された者にしか与えられない高貴な爵位だ! 貴様の様な有象無象の弱小貴族とは格が違うのだ! 失せろ!」
ケイトの一喝に身を縮めて退散する貴族令嬢。
ありがとうと手を握るアリサにケイトは顔を真っ赤にする。
「わかったか! 貴様はそれほど格式の高い家の者だ! だからその服装をなんとかしろ!」
「うー…」
そう唸るとアリサはケイトのほっぺにチュ!
「まっ…まあ!明日からはちゃんとスルンダゾ!」
真っ赤な顔で頭から湯気を吹き出しながら立ち去っていくケイトだった。
【お姫様】
ケイトにいつも服装のことを怒られるアリサは気付いてしまう。
「ケイトちゃんもお姫様っぽい服着てないわ!」
ケイトの服装はどちらかと言うと男性っぽい動きやすいパンツ姿。
「あたしの服装をうるさくいう前にまずケイトちゃんにお手本を見せてもらわなくちゃ!」
意気込んでケイトの部屋へ突撃するジャージ裸足スリッパのアリサ。
「ケイトちゃん!あなたもお姫様っぽい格好を…!」
ドアを開けて目に飛び込んできたのは今まで見たことのないドレス姿の麗しいケイト。
「あ…兄達が私に着せるためにこんなフリフリな服を…」
照れながらスカートの裾を持ち上げモジモジしているケイトを見て、アリサは鼻血を吹き出しながら悶死した。
【ケイトと四兄様】
ケイトの部屋での一幕。
「ケイトちゃんとそのお兄様達は阿修羅や鬼神と噂されているけど…それってどんなものなのかしら…」
そこへケイトの四人の兄達が次々部屋へと駆け込んでくる。
「ケイト〜!この前の地方行幸でこーんな可愛い服を見つけてきたぞ〜」と三男。
「ケイト〜!俺はこーんな可愛い靴を見つけてきたぞ〜!」と次男。
「ケイト〜!兄さんはこーんな可愛いポシェット見つけてきたぞ〜!」と四男。
「ケイト〜!私はな〜んにも見つけられなかったぞ〜!」と長男。
そして四人の兄達が寸分の狂いもなく声を揃えて叫ぶ。
『さあ!これを身につけて可愛いケイトを見せておくれ!』
「私に可愛い服は似合いません〜!」
真っ赤な顔で逃げるケイトにそれを追いかける兄四人。
それを見てアリサは手を打つ。
「なるほど!鬼神や阿修羅というのはとっても家族愛に溢れている人達という意味なのね!」
納得納得と頷く間違った知識を身につけたアリサなのであった。
【初めての便り】
2年前辺境のジーリオ家。
アリサの王都滞在が始まった当初アリサの父ブルボは娘からの手紙を心待ちにしていた。
「ああ…我が愛しのアリサ…王都での生活に不便はないだろうか…」
そこへ執事からアリサの手紙が届いたことを知らされる。
待ち侘びていた手紙に逸る気持ちを抑え早速封を開け目を通す父。
『お父様、私は毎日ソシャゲ三昧で日々を満喫しております。我が家でも恐れられていたケイトちゃんとも毎日おはようのキスからおやすみの裸足ペロペロまで毎日仲良くさせて頂いております。そちらはお変わりないでしょうか。お返事お待ちしております。追伸 この間追加されたアルティメットレアのキャラデザがお父様に似ていたため100万Cを投入し一枚確保出来ました!今度そのキャラ…』
ここまで読むと父はそっと手紙を閉じ窓の外を見つめほろりと涙を流し黄昏る。
「俺…娘の育て方…間違えたかな…?」
そしてニート大覚醒を果たした娘に頭を抱えるのであった。
【初めての社交界】
2年前アリサ社交界デビュー
フルール王妃トワレはその厳格さでケイト以上に恐れられていた。
社交界でもトワレに取り入ろうと近付いてくる者も多いが、視線を送られた者はそのあまりの冷たさに凍りつき退散していくという。
「ふん…妾の視線如きで逃げ出すとは軟弱なものよの。ならば最初から近寄らねばよかろうに」
豪華な扇で口を隠しながら逃げ出した貴族達を嘲笑う。
そこへケイトがアリサを連れてやって来る。場違いなジャージ裸足スリッパ姿のアリサを見て絶句するトワレ。
「ケイトが友として妾に自慢しておる由緒あるジーリオ家の娘がその様な姿でなんということじゃ!家名を汚すつもりかえ!?」
閉じた扇をアリサに差し当然の怒りを向けるトワレに申し訳なさそうに俯き目に涙を浮かべ小動物の様に震えながら上目遣いで謝罪する。
「ドレスを汚してしまい…今ある服がこれしかなく…申し訳ございません。お義母様!あっ!違う!お母様!じゃなくてお母さん!じゃなく王妃様!」
とんでもないことを言い放ち慌てふためくアリサを見てトワレは鼻血を吹き出しながら卒倒した。
【アリサの叔母様】
2年前ジーリオ家邸宅で娘からの手紙に頭を抱えるブルボの元に彼の妹アロマがやって来た。
「兄さん久しぶり〜! 頭抱えてどうしたのさ?」
「これを見てくれ…」
そう言って震える手でアリサからの手紙を妹に渡す。
「あっはっは! 裸足ぺろぺろ! やるねぇ!」
「笑いごとじゃないぞ! あのケイト様の足をぺろぺろって…うあぁあ!」
またも頭を抱え悶絶する父ブルボ。
「裸足ぺろぺろかぁ〜! あたしも若い頃トワレのくっさい足ぺろぺろしてキレイにしてあげたっけ! さっすがあたしの姪っ子! 血は争えないもんだね!」
あっはっは!と豪快に笑う妹を見て落涙しながらつくづく思う。
(俺…養子に行ってもいいかなぁ……?)
【お母様の趣味】
ある昼下がりのこと。ケイトとトワレは紅茶を嗜んでいた。
「ケイトや。アリサの最近の様子はどうじゃ」
「はあ…相変わらず部屋でスマホをいじっております…」
呆れた様にいいお茶を啜るケイト。
「ふむ…ではアリサに伝えておくれ。このアルティメットレアのキャラクターは完凸させ、この裸足女子キャラに踏ませると限界突破をすることが出来…」
アリサのソシャゲ毒が自分の母にまで回っていた事に戦慄するケイトだった。
【四兄様の戦果】
ケイトの部屋で戦の時の話題が持ち上がる。
「私は戦の時敵の根城を発見したぞ〜」さすが鷹の目を持つサン兄様。
「俺は敵の総大将を捕縛したぞ〜」さすが隠密行動の達人のニイ様
「兄さんはその間敵軍を抑えていたぞ〜」さすが一騎当千のヨン兄様。
「私はその時な〜んにも残さなかったぞ〜」さすが期待を裏切らないイチ兄様。
そして四人の兄達が寸分の狂いもなく声を揃えて叫ぶ。
『さあ!ケイト!我々に労いの言葉をおくれ!』
「お疲れ様です。全兄様」
笑顔で労うケイトにほわ〜っと顔を緩める兄四人。
それを見てアリサは手を打つ。
「なるほど!戦にも普段の性格が出るものなのね」
割と説得力のある推論に納得納得と頷くアリサなのであった。
【超必殺技】
ある昼下がりの王宮の中庭。
テーブルを挟んでアリサとトワレが座りスマホに目を落としている。
「お母様行きます! ローファーパージ! 裸足全開!」
「うむ良いぞ! 妾も行くぞ! ハイヒールパージ! 裸足全開!」
二人のスマホを連打する指が次第に早くなっていく。
「裸足臭気97%!98…99…」
「裸足臭気100%! 行くぞアリサ!」「はい! お母様!」
アリサとトワレは見事な二重奏を中庭に響かせる。
『届け我らの芳しき裸足の臭い! くらえ! ベアフット・フレグランス!』
※彼女達は真面目に本気です。
そして両者のスマホに討伐完了の文字が表示された。
「やりましたお母様! これでレアアイテムゲットです!」
「うむ! 我ら二人にかかればレイドボスなぞお茶の子さいさいじゃ!」
大喜びするアリサとトワレを見てケイトが呟く。
「もうこの国終わりだわ…」
その背中には哀愁が漂っていた。
しかしこの時中庭にはアリサ、ケイト、トワレの他に実はもう一人いた。
チョキチョキと剪定鋏の音を鳴らす庭師の男。しかしこの男は他国の諜報員であった。鋏を動かしながら小声で呟く。
「ふ…王妃トワレよ。ぬかったな…フルール王国の秘密…確かに聞かせてもらったぞ!」
そう言うと男は中庭から立ち去り本国へ連絡する。
「軍総司令部へ! フルール王国の新たな暗号が判明した!」
『なに! よくやったぞ! それでその暗号とは!?』
「【届け我らの芳しき裸足の臭い! くらえ! ベアフット・フレグランス!】だ!解読頼む!」※彼は真面目に任務中です。
こうして永遠に解読出来る訳の無い暗号が他国に伝わるのだった。
【バスタイムキャンセル】
夕暮れ時、ケイトはアリサの部屋へお風呂の時間を告げに来た。
「アリサ、風呂の準備が整った。準備して浴場へ向かえ」
しかしアリサはスマホの画面を凝視し、一向に準備を始めない。
「貴様! 聞こえているのか!? さっさと準備をしろ!」
ケイトが声を荒ららげて準備するよう促すが、アリサはやはりスマホを凝視しながら左手の掌ををケイトの方に向ける。
「ごめんケイトちゃん。今日はお風呂キャンセル。今大事な所なの。これをこうするとガチャテーブルが切り替わると裏技サイトに…」
デマ情報を信じて爆死続きのガチャをなんとかしようとするアリサ。
ケイトが引っ張ってでもお風呂に連れて行こうとするが、接着剤で床とお尻がくっついているかのように引き剥がせない。
「おのれ…なんとしてでも風呂にだけは入れんと…」
ケイトは思案する。そして一つアリサの習性を利用してお風呂へ向かわせる作戦を思いついた。
アリサの背中側へ回り耳元で囁く。
「風呂に入れば私の脱ぎ立てブーツを嗅ぎ放題なんだが…そうか…残念だ」
「はいっ! 今すぐ準備しますっ!」
アリサはスマホを投げ捨てウキウキでお風呂の準備に取り掛かった。
毎日アリサをお風呂に入れるために身を削る苦労人のケイトであった。
【情報教育の成果?】
ケイトはアリサ部屋へ話しにやって来た。
「アリサ。今月分の滞在費についてだが…」
ドアを開けるとそこにはアリサの姿はなくテーブルに置き手紙が置いてあった。
「おのれ…逃したか」
ケイトに怒られるのを察しアリサは逃亡していた。ケイトは置き手紙に目を通す。
『ケイトちゃんへ。今月はソシャゲで1万C溶かしちゃいました。ごめんなさい』
「全く…仕方のない奴め…まあ今までの事を反省し1万で我慢したようだし承認してやるか」
ケイトはアリサの成長(?)を感じ書類に承認印を押してやる。
そして後日、精算日にケイトは驚愕する。
「なんだと!? これはどう言う事だ! ガチャ代が300万だと!? バカな! あの時確かに1万Cと…!」
そこでケイトは気付いてしまった。
×1万C
◯1万C=300万C
「叙述トリックか! 図られた!」
アリサの方が一枚上手だったようだ。
【敗北と勝利】
ケイトはアリサの滞在費が膨らみ続ける事に頭を悩ませていた。
「このままでは王国はアリサのソシャゲに食い潰される…どうすれば…」
王国の財政事情は風雲急を告げていた。
そんなケイトの元へ王国財務担当官がやって来る。
「ケイト様今年度の王国の税収及び支出の件ですが…」
「ああ…わかっている…税収に対し宮廷費が高額になっているのだろう…何とか対策を練らねば…」
眉間に皺を寄せるケイト。しかし財務担当官は意外な言葉を発する。
「いえ、スマホゲーム『フィート=トゥ=テン』の開発会社が空前絶後の営業利益を叩き出しまして納税額が当初予定の100倍近くになり今年度の宮廷費に回せる金額に余剰が出ましてそのご相談に…」
「なん…だと……!?」
【新感覚裸足バトルゲーム『フィート=トゥ=テン』新弾ガチャ!URガチ勢トワレ王妃様の御御足!排出率0.02%(国内通信の場合:天井無し) 排出率0.0001% (国外通信の場合:天井無し)】
国内外からガチャが回された結果王国の財政は潤った。
そしてこれがケイトの辞書に敗北の文字が刻まれた瞬間だった…
【隣国全力前進】
暗号が伝わった他国の総司令部は暗号の解読の頭を悩ませていた。
「なんと高度で難解な暗号だ…!我が国の最新暗号解読技術でも歯が立たん!」(当たり前)
「総司令! フルール王国で動きあり! モニターをご覧下さい!」
【新感覚裸足バトルゲーム『フィート=トゥ=テン』新弾ガチャ!URガチ勢トワレ王妃様の御御足!排出率0.02%(国内通信の場合:天井無し) 排出率0.0001% (国外通信の場合:天井無し)】
「何!? 王妃の裸足だと!? それは国家機密級の情報ではないか! ハッキングしてデータを盗み出せ!」
「駄目です! 強固なセキュリティにより突破出来ません!」
他国総司令は奥歯を噛み歯軋りをする。そして決断した!
「ならば引け! なんとしてでもトワレ王妃の裸足データを手に入れるのだ!」
『はっ!』
こうして他国総司令部全員はガチャ沼にハマって行くのだった。
ガチャ沼にハマって1時間が過ぎようとしている他国総司令部。
「誰か! 引き当てた者は居るか!」
「駄目です! 全く引けません!」
渋すぎるガチャ設定に総司令は頭を悩ませる。
「おのれ…ここで退くべきか…いやしかし…! ここまで引いたのだ! もしかしたら次は出るかもしれん! 今更引くのを退くわけ訳にはいかん!」
「全員退くな! 次は必ず出る! 引き続けろ!」
『はっ!』
知らず知らずのうちに他国の防衛予算を削り切っていたフルール王国。ガチャ沼とは恐ろしいものである。
【側室制度の真実】
アリサ、ケイト、トワレの三人による中庭でのティータイム中、王国統一前の話題が持ち上がる。
「あの頃あたしはお家でお父様のご無事を願っていたわ」
アリサがジャージ裸足トイレサンダル(中庭用)で、胸に手を当てしおらしく目を閉じて思い出す。
「ふ…今の貴様とは似ても似つかないな」
笑いながら紅茶を口にするケイトを見ながら頬を膨らませるアリサ。そして思いついた様に次はトワレに問いかける。
「あの時はご側室の方もいらしたのよね? その方々は今どうしてらっしゃるの?」
「4人おった側室は失脚した第二を除き妾が領地と爵位を与え、その任を解かれた後、今は王国防衛の一助となっておる」
アリサは目を輝かせトワレを見つめる。
「王宮を出た後の事も考えて差し上げるなんて! さすが優しいお母様!」
アリサの言葉に表情は変えないが少し得意そうに紅茶を飲むトワレお母様。
「そうじゃ。それは妾の慈悲、政治判断じゃ」
そしてティーカップを受け皿の上に置くと今までの無いくらい力強い口調で言った。
「そう! 側室制度を廃したのは決してもっと王とイチャイチャしたかったからではないぞ!」
ケイトとアリサは顔を見合わせ小声で囁く。
「あれがお母様の本音だ」
「ふふふ。お母様可愛い」
トワレの乙女な一面を知るアリサだった。
【アリサの従姉妹】
辺境のジーリオ家邸宅のすぐ近く。ブルボの妹アロマの居宅がある。
妹の子、18歳のアクアと10歳のマリンは紅茶を嗜みながら王都滞在中のアリサから届いた手紙を読んでいた。
「アリサ姉様王都でエンジョイしてるみたい」
マリンが手紙を置き紅茶に口をつける。
「そうねえ。ふふ、でもスマホがあるんだから『front』のDMでもいいのにね」
ティーカップの横に置いた自分のスマホに目をやりながら上品に紅茶を飲むアクア。
「でもあたし達が王都にいた時ケイト王女様仲良くなんて出来ないくらい物凄く怖かったのに、アリサ姉様すごいわ」
「本当ねえ。裸足ぺろぺろなんて出来る雰囲気じゃなかったもの」
どうやらアリサは従姉妹達への手紙にも『おはようのキスからおやすみのぺろぺろ』を知らせている様だ。
「でもアクア姉様、ケイト王女様の裸足臭そうでしたよね!」
「そう! あたしも王都にいる時それ、ずっと思ってたわ! 裸足舐めたら美味しそうって!」
二人は目を輝かせ今までにないくらい盛り上がる。
「今度王都に行ったらあたし達もケイト王女様の裸足ぺろぺろさせて貰いましょう!」
「そうね! みんなで舐めっこしましょう!」
まるでうまうまスティックを食べるかの様にケイト王女の裸足ぺろぺろ計画をお上品に立てている二人を、たまたま妹に用事があり立ち寄っていたブルボが目撃し大号泣しながらつくづく思う。
(もうやだ……ジーリオ家…………)
いよいよ養子に行く決意を固めるアリサの父ブルボであった。
【元側室達の現在】
ー第一側室の場合ー
ある日ケイトはスマホの練習動画を見ながら王宮の庭で薙刀の稽古をしていた。アリサはその様子をベンチに座り見守っている。
「ケイトちゃんのその武器は矛とも違うのね」
「うむ。これは遠く東の国の薙刀という物だ。貴様も稽古するか?」
「今日は普段着だから遠慮しておくわ」
いつも通りのジャージ裸足トイレサンダル(庭用)の姿のアリサ。
「私も普段着だが?」「ほら、あたしサンダルだし」「そうか。ならば仕方ない」
そんな話をしていると横からねっとりとした甲高い声が聞こえて来た。
「ほほほ。ケイト王女、そんな屁っ放り腰では敵にやられますよ?」
声の方に振り向くとそこにはトイレのすっぽんを片手にこちらに歩いてくる女性がいた。
ケイトは嫌そうな顔をして呟く。
「元第一側室か…」
「あのお方が?」
ケイトは元第一の方へ一歩踏み出し薙刀を向ける。
「屁っ放り腰かどうか手合わせしてみるか?」
「ほほほ。受けて立ちましょう」
元第一はトイレのすっぽんをケイトに向け、そして太刀合いが始まる。
元第一の女性はロングスカートとハイヒールという出立ちながらケイトの繰り出す攻撃をトイレのすっぽん一本でいなし続ける。
「凄いわ! あの動き! あの身のこなし! 並の達人じゃない!」
ニート大覚醒を果たしたとはいえ、さすがは王国防衛三大家の令嬢。元第一の実力を即座に見抜く。そしてアリサの体に流れるその血が騒ぎ始める。
「すっぽん一本で戦うあのお姿! あの方こそ伝説のスッポニエンヌ(すっぽん淑女?)に違いないわ!」
アリサは元第一の元へ駆け出す。
「く…強い…!」
「ほほほ。今日も引き分けということにいたしましょう」
決着のついたケイトと元第一の前にアリサが駆けつけ深々とお辞儀をする。
「先生! あたしにもすっぽんの使い方教えて下さい!」
「ほほほ。宜しくてよ」
そして元第一の手解きが始まる。
「まずはすっぽんを構え、腰を落とし、トイレの穴を見据え、すっぽん!」「すっぽん!」
こうしてアリサはスッポニエンヌ(???)への道を一歩踏み出すのであった。
ー第三側室の場合ー
元第三側室は暗殺術の使い手であり日々その技術の研鑽に励んでいた。
その無表情の目には確かな狂気が宿っている。
街で買い物をしカゴに大根とさつまいもを刺しながらも暗殺術の開発に頭を回す。
「確実に仕留めるには相手を籠絡する事も有効。その術を考えないと」
そんな元第三の目にベンチに座る、買い出し(という名目のデート)中のアリサと、その監視(という名目のデート)中のケイトがベンチに並んで座ってアイスを食べているのが飛び込んでくる。
「あのケイト王女があんなジャージ裸足トイレサンダル(デート勝負用)少女と!?どうやってあの氷のように硬く冷たい心をアイスのように柔らかく蕩けさせたんだ!?」
驚愕の狂気の宿った目を見開く元第三。そしてはっと気づく。
「そうか! わざと見窄らしい服装で近付き懐に入り込む! なんて鮮やかな籠絡術!」
大根とさつまいもをかき分けその隙間から本日の買い出しメモを取り出し、手早くメモを取る元第三。
第三はさらに観察を続けていると二人の会話が聞こえて来た。
「ケイトちゃんのアイスも美味しそう! 一口ちょうだい?」
「仕方ないのない奴だな。ほら」
そう言ってアリサの方に自分のアイスを差し出すケイト。そしてぱくり食べるアリサ。
「おい! 一口が大きい! 半分も食べる奴があるか!」
「おえんね(ごめんね)、ひゃあくひうつひであえるね(口移しであげるね)」
そう言うとケイトの唇に自分の唇を寄せて行くアリサ。
「バカ! こんな一目の多い所でそんな事出来るか!」
言いながらアリサの顔を押し戻すケイト。「ほっか(そっか)」と言いアリサは口の中のアイスをごっくんと飲み込んだ。
その光景を見ていた第三は衝撃を受ける。
「アイスを口実に口付けを迫り、そして口の中に仕込んだ毒を飲ませる! なんて高度な暗殺術!」
第三の体は自然にアリサの方へと駆け出していた。
「師匠! アタシにその籠絡暗殺術! ぜひご伝授下さい!」
ジャンピング土下座をしアリサに弟子入り志願する元第三であった。
ー第四側室の場合ー
買い出し(デート)の帰り道。先程の人物が元第三側室だと説明したケイト。
「あの方面白い人ね」
「呑気に言うな…奴はプロの暗殺者だぞ…」
「あんさつ…ああ! あの方はお菓子職人なのね! 確かにお芋持ってたものね!」
アリサはさつまいもで餡を作る職人と勘違いをし、そんな彼女を呆れたようにみるケイト。
そんな二人の前から乾いた笑い声が聞こえて来た。
「あは! お久しぶり!」
乾いた声の主は元第四側室の女性だった。
ケイトはおでこを押さえ首を横に振る。
「今日はなんでこんなに元側室に会うのだ…アリサ、奴は元…」
「部長!」
ケイトが紹介しようとした矢先アリサが元第四の元へ駆け出した。
「あは! アリサちゃん!『フィート=トゥ=テン』の次のガチャ何を実装しようか相談しようと思ってたの!」
「そうですね…まずはこのノーマルレアの強化用の餌に『王国鬼神四兄様』をバラ売りしてそれから…」
スマホを取り出し説明し出すアリサ。
何を隠そう元第四側室は貴族でありながら今やゲーム開発会社の部長にまで出世(?)していたのである。
「あのスマホ中毒の第四がゲーム会社の部長とは…世の中も変わったものだ…」
アリサと第四が知り合いだったことはもとより、ゲーム会社の部長になっていた事に驚くケイトなのであった。
ー第二側室の末路ー
元第二側室は王国軍将軍と不義密通を繰り返し、その間に出来た子を王座に就かせようと画策し、当時18歳の息子が第三側室に気持ち悪く付き纏うようになり目に余るためトワレにより追放となった。
追放後兵に追われる息子が王宮に逃げ込み当時8歳のケイトに自分を気持ち悪く匿うよう命令し、
ケイトが薙刀で始末しようとした所をブルボに止められ、後を任せて立ち去った。
王宮の掃除は完全の終わりこの後側室制度は廃止された。
そして現在、元第二は山奥のボロ小屋に身を隠し暮らしていた。
今でも息子に付き纏われ気持ち悪い思いをさせられた元第三側室にその命を狙われているのだ。
「ああああ! こんなボロ小屋で暮らすなんて! もう耐えられない! 将軍! なんとかなさい!」
「しかし…国外に出る事もできず街に暮らす訳にもいかず…身を隠すにはここが一番安全ですぞ」
なんと追放されてもなおこの二人は一緒に暮らしていた。
その時ボロ小屋のドアがギギギと開いた。身構える二人。
「父ちゃん! 母ちゃん! 街でお芋と大根もらったよ!」「目が怖いおばさん!」「でもいつも優しいの!」
なんとこの8年の間に三人の娘を儲けていた。気持ち悪く付き纏っていた息子の妹達とは思えないほどの可愛らしく心優しい娘に成長していた。
権力に執着せず(出来ず)生活しているため、娘達も真っ直ぐ育ったようだ。
「ああ〜! おかえりなさい娘ちゃんズ! ママとっても心配してたわ!」
元第二は顔を真っ赤にして娘達を迎える。
「しかし…いつも野菜をくれるその人物は一体…」
「ああ〜! 娘ちゃんズ! 今日も可愛いわぁ〜!」
気持ち悪い息子の事は忘れ、なんだかんだボロ小屋で幸せに暮らしているようだ。
【お父様の苦悩】
辺境のジーリオ家にペオーニア家当主セミージャが旧友ブルボに招聘されやって来た。
ペオーニア家もジーリオ家同様外敵に対処する王国防衛三大家の一つだ。
「ようブルボ。久しいな」
「ああ、よく来てくれたセミージャ。そちらはどうだ?」
「相変わらずだよ。一時よりは攻勢も落ち着きはしたがな。ああそれとうちの娘がもうすぐ王都に行く事になってな。王都に木登り出来る木はあるかと心配してるよ。全く…誰に似たんだか」
「ははは! かわいいもんじゃないか!」
和やかな雰囲気でそれぞれの家族の事を談笑していたが、ここで急にブルボが厳しい顔になりセミージャの目を真剣に見つめる。
「セミージャ実はお前に頼みたい事があるんだ」
あまりの真剣な目にセミージャも身を乗り出し聞きいる。
「どうした…外敵が新しい魔法兵器でも開発してきたか!?」
「俺を…お前の養子にしてくれ!」
「は!?」
あまりにも唐突なブルボの頼みに驚きのあまり声を失う。
「頼むぅぅう! 俺もうジーリオ家でたいぃぃい!」
「お…落ち着け! 落ち着くんだブルボ!」
大号泣しながら旧友の足に縋りつき懇願する父ブルボであった。
ブルボのあまりの取り乱し様に王国防衛三大家の三者会談が開かれる事になった。
ブルボ・ジーリオ、セミージャ・ペオーニア、スプラウト・ピオニーの三人は円卓を囲みブルボに事情を聞く。
ピオニー家当主スプラウトがブルボに尋ねる。
「一体どうしたと言うのだ!? 家を捨てて出て行こうとするとは…お前らしくもないぞ!」
スプラウトの問いにセミージャが事前に聞いていた事を伝える。
「どうやら娘の事で悩みがあるらしい。詳しくは三人揃ってからと言う事で詳しくは分からんが…」
「なんだそんな事か! お前の娘は良いお嬢さんじゃないか! うちの娘を見てみろ! 毎日馬を乗り回してまるであいつ自身が暴れ馬みたいだぞ!」
わっはっは! と豪快に笑うスプラウト。それにセミージャも続く。
「そうだぞブルボ。俺の娘も毎日木登りばかりして怪我をしないかヒヤヒヤしているんだ。それに比べればお前の娘は淑やかで羨ましいくらいだ」
セミージャはブルボの肩を叩き励ましてやる。
「じゃあ…これを読んでみてくれ…」
そう言うとブルボはテーブルの真ん中にアリサから届いた手紙を置いた。
それを手に取り読んでみるセミージャとスプラウト。
『お父様ご機嫌いかがですか。私は相変わらずソシャゲのガチャを回し500万を溶かしましたが、ケイトちゃんとも毎日おはようのキスからおやすみの裸足ペロペロまで毎日仲良くさせて頂いております。最近ではトワレお母様とも仲良くさせて頂き、同じソシャゲ仲間として『届け我らの芳しき裸足の臭い! くらえ! ベアフット・フレグランス!』と力と声を合わせレイドボスを…』
ここまで読みそっと手紙を閉じ立ち上がるセミージャとスプラウト。
「じゃ…じゃあなブルボ! もう友達やめるわ!」
「うむ! 強く生きてくれ…!」
早々と立ち去ろうとする二人に縋るブルボ。
「待て! 待ってくれ! 俺を見捨てないでくれぇええ!」
おいたわしや…ブルボお父様…
【お手紙辺境事変】
王宮のアリサは父への手紙を認めていた。
『お父様ご機嫌いかがですか。私は『王国鬼神四兄様』のガチャで大爆死し、ケイトちゃんの裸足ぺろぺろで慰めてもらいました』
そこまで書いてたまたま横にいたケイトが手紙を取り上げる。
「馬鹿者! こんな事を書いてはジーリオのおじさまが困惑するだろうが!」
「え〜…いつもこうやって書いていたんだけど…」
ケイトはこの二年間の毎日の秘め事が大好きなジーリオのおじさまにバレている事に絶望するが、すぐに気を取り戻し手紙の書き方を指導し始める。
「いいか! ガチャや裸足ぺろぺろ以外で楽しかった事を書け! そこに絵でも添えればそれらしい手紙になる!」
「そうなのね! 赤裸々に全部書く事はないのね!」
『お父様ご機嫌いかがですか。私は先日ケイトちゃんとデートしてアイスを食べっこしました。とっても楽しかったです。』
その横にアリサとケイトのイラストが添えられる。
「うむ。それならばおじさまも心配なさらないだろう」
「ありがとう! ケイトちゃん!」
この2年で初めてまともな手紙を書く事に成功した瞬間だった。
辺境のジーリオ家。なんとか友情崩壊の危機を乗り越えた父の元にアリサから手紙が届く。
「てが…みか…」
ブルボは震える手で封を切り手紙を読み始めた。
『お父様ご機嫌いかがですか。私は先日ケイトちゃんとデートしてアイスを食べっこしました。とっても楽しかったです。』
ブルボは手紙を落とし愕然とする。
「なんだこの手紙は! 今までの文体と違いすぎる! まさかこれはアリサからの救援要請か!」
そしてブルボは剣を手に立ち上がる。
「皆の者集まれ! 敵国にアリサが拉致されたようだ! 救援へ向かうぞ!」
『ははっ!』
こうしてまた一つ(勘違いにより)敵国の一部隊が消滅した。
【伴侶の心得】
今日は中庭で珍しくソシャゲをせずトワレによる真面目な話がなされていた。
「良いかアリサよ。王の伴侶は常に冷静でなければいかん。王が血気に盛るあまり周りが見えなくなった時、我ら伴侶がそれを正し支えねばならぬからだ」
「はいお母様。常に冷静に、ですね」
ジャージ裸足サンダル(勉強用)の姿でノートに書き写しながら真面目に聞くアリサ。うむ。と言いながら紅茶を優雅に飲むトワレ。
「そなたもいずれ王の伴侶となる身。忘れぬようにな」
「はい、お母様! 肝に銘じてケイトちゃんを支えます!」
そう言うと二人揃って紅茶を飲む。
いつの間にか親公認の許婚同士になっている事に顔を真っ赤にするケイトであった。
【王位の行方】
四兄様達に王位についてどう考えいるかケイトは質問してみた。
「私は王宮の尖塔で見張りをするからケイト任せたぞ〜」さすが鷹の目を持つサン兄様。
「俺は王国の敵をこっそり始末して来るからケイト任せたぞ〜」さすが隠密行動の達人のニイ様
「兄さんは攻め入る敵を倒すからケイト任せたぞ〜」さすが一騎当千のヨン兄様。
「私はな〜んにも心配してないからケイト任せたぞ〜」さすが期待を裏切らないイチ兄様。
そして四人の兄達が寸分の狂いもなく声を揃えて叫ぶ。
『アリサ! ケイトの事を頼んだぞ!』
「はい全兄様! お任せ下さい!」
いよいよもって逃げ場がなくなる真っ赤な顔のケイトだった。
なんと数年ぶりに王が王宮へと凱旋した。
「おかえりなさいませ、我が王よ」と姿勢よく出迎えるトワレ。
「おかえりなさいませ、お父様」と珍しくドレス姿のケイト。
「おかえりなさいませ、国王様」と何故かいるジャージ裸足トイレサンダル(正装用)のアリサ。
馬から降り出迎える三人を見回し王が威厳ある声で応えた。
「うむ、ご苦労。まずは部屋へ戻る。話はそこでするとしよう」
颯爽と王宮へ向かっていくフルール王。
「すごい…国王様オーラが違うわ…!」
「お前は頭ボサボサジャージでオーラのかけらも無いからな」
その言葉に頬を膨らませるアリサを見てケイトははっとする。
「貴様! 王を出迎えるのにジャージとはどう言う事だ!」
「大丈夫! サンダルは正装用よ!」
「そう言う問題では無い!」
痴話喧嘩をする二人を他所に国王とトワレは王宮へと入って行った。
部屋に入るとフルール王はテーブルに自分のスマホを置くと椅子に座りトワレに近況を聞く。
「お前達も変わりはないか?」
「ございませぬ。王国は王と兄弟、そして三大家により平和が保たれおります」
トワレは王のティーカップに紅茶を注ぎ終わると王のスマホに目をやる。
「王よ…スマホの充電は切らさぬよう申し上げておいたはずです」
「ん? すまん。地方の開墾に夢中で忘れていた」
「忘れていたでは済みませぬ!」
トワレは語気を荒らげ王に進言する。
「『フィート=トゥ=テン』のイベントが始まると事前に『front』のDMでお伝えしていたはずです! 私は王とアリサと三人でレイドボスを倒そうと楽しみにしておりましたのに!」
「す…すまんトワレ! ほんとにすまん!」
タジタジになっている父王を見てケイトはつくづく思う。
(あれ…?この国私が何とかしないとダメになるぞ…!?)
ここに来て王位を継がなければと責任感が芽生えるケイトであった。
フルール王は地方での出来事を話す。
「無能な反乱貴族が壊滅させた田畑を回復させたり、新しく開墾したりしてな。こちらへ帰って来る暇がなかったのだ。すまなかったな」
「田畑は国の礎。仕方ありませぬ」
先程とはうってかわり信頼の視線を寄せるトワレ。
「その貴族が残した砦を保育園にしてな! 王様先生と呼ばれて園児と遊んでいたわ!」
「子は国の宝。さすがは我が王」
豪快に笑う王を見て満足そうに頷くトワレ。
「砦の壁を園児達とよじ登って攻城戦ごっこをしたりな!」
「未来の平和に備える。全く我が王は抜かりがございませぬ」
王とトワレの会話を聞きながらアリサはケイトと腕を組み耳元で囁く。
「あたし達も将来あんな夫婦(?)になろうね」
「う…うむ…そうだな」
顔から火が出るほど真っ赤にして答えるケイトだった。
ここでやっとアリサのジャージに気付くフルール王。
「なんだ? あのジャージ裸足サンダルの娘は」
「お初にお目にかかります。辺境伯ブルボ・ジーリオが娘、アリサ・ジーリオでございます。ソシャゲのギルドではお世話になっております」
恭しくジャージのズボンを摘んでお辞儀をするアリサ。
「お前がブルボの娘か! はっはっは! 有事に備え動きやすい姿をするとは! さすが奴の娘だ!」
「お褒めに預かり光栄に存じます」
「うむ! ケイトの伴侶として申し分無い! 許す! 結婚しろ!」
そう言うとぐいっと紅茶を飲み干し、スマホと充電器を手に立ち上がり国王。
「じゃ! 充電器取りに帰っただけだし、俺、王様先生に戻って来るわ!」
国王は片手を上げ颯爽と部屋を出て行った。
「ふふふ…やはり我が王はああでないとな」
満足そうに紅茶を口にするトワレに、嬉しそうにケイトと腕を組み寄り添うアリサ。そしてサラッと将来のアリサとの結婚が認められ顔を真っ赤にして口をパクパクさせながら頭から湯気を立ち上らせるケイトの姿がそこにあった。
【二人の舞踏会】
王国主催の舞踏会が開かれる事になりケイトはアリサの部屋へと向かう。
「アリサ、今回の舞踏会には貴様にも参加してもらうぞ」
「え〜…今日の夜ガチャの新弾が…」
唇を尖らせ渋るアリサに詰め寄るケイト。
「き・さ・ま・は! 由緒あるジーリオ家の人間だと言っているだろう! 舞踏会に出るのは義務だ! 拒否は許さん!」
いつもなら折れてくれるケイト。しかし今日に限っては絶対に参加しなければ困るかのように迫って来る。
そんなケイトを見てアリサも諦めて舞踏会に参加する事にした。だがしかしここで問題が起こる。
「あああ〜!あたしのドレスがシミだらけ!」
アリサの白いドレスに点々と何かのシミがついてしまっていた。
「何でそんなシミがついているんだ! ちゃんとクローゼットに入れておいたか!?」
そこでアリサは数日前のことを思い出す。
「そうだ! あの時うまうまスティックを食べてて…床に粉が落ちて汚れたからこのドレスで床を拭いたんだった!」
あまりの衝撃に顎が外れるくらい大きく口を開け、まさしく呆れて物が言えなくなるケイト。
「何でドレスを雑巾代わりにするのだ!」
「だってぇ! ジャージ汚れたら困るもん!」
綺麗なドレスよりも今着ているジャージの方が大切なアリサであった。
「仕方ない! 今回は私のドレスを貸してやる! 来い!」
言うが早いかケイトはアリサの腕を掴み自室へと引きずっていく。
そしてケイトの部屋のクローゼットに掛けられている数々のドレスの中から純白のドレスをアリサに手渡し着替えるように言う。
「私と背格好も似ているし入るはずだ。さっさと着替えろ!」
「はーい…」
渋々ドレスに着替えるアリサ。衣擦れの音が部屋に響く。そして、
「あの…ケイトちゃん…」
「着替え終わったか? では会場へ…」
そう言ってケイトがアリサの方へ振り向くとアリサは胸を押さえて言い放つ。
「このドレス…お胸が苦しいわ…」
ケイトに寒風が吹き荒ぶ…。ケイトの辞書にまた一つ文字が刻まれる。『完敗』の文字が…
ケイトは気を取り直しアリサに背を向けドアへと向かう。
「多少胸が苦しくても我慢しろ! 今日はもうそのドレスで行くしかないんだからな!」
ぶっきらぼうに言い放つケイトに何か気に触ることを言ったかと申し訳なさそうにするアリサだったが、ふと思いつきドレスの裾を両手でもってケイトに尋ねてみる。
「ねえケイトちゃん。このドレス似合ってる?」
ケイトは振り向かずアリサに答える。
「由緒あるジーリオ家の娘なんだ。 ドレスくらい似合って当然だ」
「そうじゃなくて…」
アリサは俯いて少し頬を紅潮させモジモジしながら再度問う。
「ケイトちゃんがどう思ってるのか…聞かせてほしいな〜…なんて…」
しかしケイトはその問いに何も答えず部屋から出て行ってしまう。
アリサは少し落ち込み気味にケイトのあとを追う。
(似合ってるかどうか…?そんなの…直視できないくらい似合ってるに決まってるだろうがぁああぁ!)
ケイトは顔を真っ赤にしに自然ににやけて来てしまう口元を必死で押さえ早歩きで会場へと向かうのであった。
舞踏会には王国滞在期間外の貴族の子女達も大勢招かれている。
いつも通りのパンツスタイルのケイトと純白のドレスのアリサが入場すると男性貴族の視線は当然のようにアリサへと釘付けになる。
「おい…あんな美人の女の子…この城に居たか?」
「いや…見たことないな…ケイト様にいつもドヤされてる情け無いボサボサ貴族なら見たことあるけど…」
そのボサボサ貴族と同一人物とは露知らず口々に噂する。
そんな中一人の貴族令息がアリサへと近付き手を差し出す。
「お嬢様。宜しければ私と踊っては頂け無いでしょうか」
慇懃に誘って来る令息に少し戸惑うアリサが丁重にお断りしようとした時、二人の間にケイトが割って入る。
「まだ…舞踏会は始まっていないのだが?」
「すっ…すみましぇんでしたぁあ〜!」
凍てつく眼光を飛ばすと恐れをなして逃げ去って行く令息。
舞踏会中アリサに寄り付く虫は全て払い落とすつもりでいるケイトなのであった。
舞踏会が始まり皆が踊り出す中アリサとケイトは隅の方で立ち尽くしている。
ケイトが目を光らせているため怯えた男性達は全く近寄って来ずアリサもどうしていいのかわからなくなっていた。
「あの…ケイトちゃん…何か怒ってる…?」
「怒ってなどいない。警戒してるだけだ」
目を血走らせ悪い虫が付かないよう見張り続けるケイト。
「でも…せっかくの舞踏会なんだから踊らないと勿体無いよ…?ケイトちゃん踊って来たら?」
「私はいい。…アリサ…あんなに嫌がっていたのにお前は踊りたいのか?」
俯いて体を揺らすアリサ。
「あたしは…別に…ケイトちゃんの踊りを見れたらそれでいいかな」
「…本当に?」
横目でアリサを見るケイト。アリサはまだ俯いて体を揺らしている。そして俯いたままケイトの手を握りしめる。
「あたし…ケイトちゃんと踊りたいかな…なんて…」
みるみる顔が真っ赤になっていくアリサとケイト。
ケイトは大きく息を吐きアリサの前に来ると跪いて手を差し伸べる。
「アリサお嬢様、私と一緒に踊って頂けますか?」
アリサは頬を紅潮させたままケイトの手を取る。
「もちろんです。ケイト様」
そして二人のダンスが始まる。
ケイトの見事なリードにアリサは優雅なフォローで応える。
あまりの優美なダンスに次第に招待客の視線は二人に集まり出しいつしか踊っているのはアリサとケイトのみになっていた。
それに気付かず二人だけの世界に入り込みステップを踏み続ける。
そしてアリサがケイトに体を預け踊り終わった所で、会場中からの拍手喝采が二人に浴びせられた。
いつの間にか踊っていたのが自分達二人だけだったと気付き両人とトマトのように顔を真っ赤に染める。
「すごい! なんて優雅で美しいダンスなんだ!」
「まるで王子様とお姫様みたい! 素敵でしたわ!」
鳴り止まない拍手に照れくさそうに応えるアリサとケイト。
「ふふ…ケイトちゃん王子様みたいだって!」
「全く…私はお姫様だと言うのに…」
顔を見合わせ幸せそうに笑いあう二人はまさに理想のパートナーそのものだった。
そしてアリサは耳元でこそっと話す。
「たくさん踊ったからきっとケイトちゃんの裸足とっても臭くなってるはず。帰ったらぺろぺろしてキレイにしてあげるね」
「う…うむ…宜しく頼む…」
今夜の裸足ぺろぺろは激しくなりそうである。
【2年前の出会い】
王都に着き馬車のドアが開かれる。従姉妹達からケイト王女の厳格さを聞いていた当時14歳のアリサは馬車から降りるのを躊躇う。
「…不安だわ…ケイト王女様…どれほど厳しいのかしら…」
重い足取りで馬車を降り王宮の入口を見やるとパンツスタイルの凛々しい人物が見えた。
「王子様かしら…」
アリサはその人物の方へと歩み寄り、ドレスのスカートの裾を持ち挨拶をする。
「ジーリオ家当主の娘、アリサ・ジーリオでございます。この度、王都滞在義務のため辺境よりやって参りました。2年の間宜しくお願い申し上げます」
恭しく丁寧に挨拶をするとアリサの前の人物も直立したまま答える。
「遠路はるばるご苦労。私はフルール王が娘ケイト。2年の間貴様の監視を務める。来い。貴様の部屋へ案内する。」
そう言うと踵を返し姿勢良く王宮の中へと歩み出す。
「王子様じゃなくて…このお方がケイト王女様だったのね…」
聞こえない様に小さく呟き、アリサもケイトのあとをついて行く。
部屋へと着くと荷物を置き椅子に座るよう促されたので素直に従い着席するアリサ。
そしてケイトが目の前のテーブルの上に箱を置いた。
「これが貴様のスマホだ。明日から情報システムの知識を学んで貰うが、本日は自由に使う事を許可する。家族らと連絡を取ると良い。では失礼する」
そう言うとケイトは部屋を後にした。
「はぁ…緊張した…噂通り厳しいお方だわ…あ! そうだ!」
アリサは箱を開け早速スマホを取り出し初期設定を済ませる。
「スマホを頂いたら『front』でアクアお姉様とマリンにDMを送る約束をしていたのよね」
『たった今王都に着きました。二人の噂通りケイト王女様は厳しいお方です。少し不安ですが2年の間耐えて見せます』
「はあ…本当に不安…」
スマホをテーブルに置き天井を見てケイトの事を思い浮かべる。
「でもケイト王女様…ブーツの中の裸足…美味しそう…」
不謹慎な事を考えてしまい首を強く振って邪な思いを掻き消すアリサだった。
その夜シルクの寝巻きに着替え就寝前の監査の備えるアリサ。
「寝る前にも見回りがあるなんて…厳しすぎるわ…」
不満を漏らしながらベッドに腰掛けケイトを待つアリサ。
そしてドアがノックされケイトが入って来た。
「変わりはないか」
「はい…ございません」
ケイトの方を見ず俯きながら答えるアリサ。
「うむ。では休むと良い」
そう言い残しドアに向かうケイトが出て行く、と思ったその時ケイトが立ち止まり痛そうに足を
見ている事に気づくアリサ。
「どうかなさいましたか?」
「いや…今日は色々忙しくてな…歩き回ったので少し足が痛いだけだ。問題はない、気にするな」
「もしかして、私のために…」
そう言うとアリサはケイトの元へと歩み寄りケイトの肩に手を掛けた。
「ケイト王女様、どうぞこちらへ」
アリサはケイトをベッドへ腰掛けさせその足のブーツを脱がせてやる。
一日中歩き回ったその足は親指の付け根が赤くなっており、そして蒸れのため物凄い臭いを漂わせた。
ケイトは顔を赤くしアリサの手から足を外そうとするがしかしアリサはそれを逃さずしっかりと掴み押さえ込む。
そしてアリサは大きく息を吸い込み、ケイトの足の臭いを味わうようにその臭気を肺へと送り込む。
「ケイト王女様…私のためにこんなに赤くなるまで…臭くなるまで…ありがとうございます」
そう言うとアリサは迷わずケイトの足を口に含む。
「うぇ!?」
あまりの衝撃に思わず情け無い声を響かせるケイト。だがアリサは意に介さず足を舐め続ける。
ケイトは口に手を当て足からの刺激に耐え続ける。
そしてケイトの足はアリサの舌によりキレイに舐め取られ、臭いが無くなりツルツルになった。
「ごちそうさまでした」
イタズラっぽい笑みを浮かべケイトを見上げるアリサ。
ケイトは顔を真っ赤にしてブーツを手に取り立ち上がり裸足でドアへと向かう。
「ケイト王女様。私のためにありがとうございます」
深々とお辞儀するアリサ。
「わ…私は私の仕事をしたまで! 気にするな!」
振り向かずそう言うとドアを力強く締め出て行ってしまった。
「怒らせてしまったかしら…明日が怖いわ…」
自分のした事を少し後悔しながらアリサは眠りについた。
翌日。朝の監査の時間がやってくる。
アリサはドレスに着替え椅子に座りケイトを待つ。
そしてドアがノックされケイトが入って来た。
「朝の監査だ。変わりないか」
「ございま…」
言いかけてアリサは何かを思い付いたように、
「ございます…ケイト王女様お耳を」
「何…何か問題が…!?」
ケイトの顔が厳しくなりアリサに言われた通り耳を寄せる。
そしてアリサは近づいて来たケイトのほっぺにチュ!
いきなりの事に顔を真っ赤にして狼狽えるケイト。
そしてアリサは笑顔で言う。
「おはようございます、ケイト王女様。これから2年の間、宜しくお願い申し上げます」
それから…
「ケイト王女様!」「ケイト様!」「ケイトちゃん、脱がせて〜」
毎夜毎晩…
「うにゃ!」「うぇ!?」「うへあ♡」
こうして2年の間に王国一の幸せバカップルが誕生するのであった。




